ペトルが斬る!~『カラデシュ』スタンダード環境の総決算~

Petr Sochurek

Translated by Jun’ya Takahashi

みなさん、こんにちは。 Petr です。 今回の記事では、皆さんが夢中になっている スタンダード についてお話します。 現在のスタンダード環境は、とても面白い局面を迎えていて、「これから事態がどう転ぶのか」には大きな注目が集まっているのです。

およそ一月ほど前に僕は 【一本の記事(英語版)】 を寄稿しました。 そこで話したのは、 『白青フラッシュ』は見た目ほど支配的な存在ではなく、『赤緑《霊気池の驚異》』や《無許可の分解》を4枚採用したアグロデッキが活躍するだろう 、といった内容でした。 それほど難しい予想ではなかったとはいえ、今の環境が僕の想像通りに進んだことは嬉しかったです。

でも、今はそういった予想をするのも少し難しくなってしまいました。 現在強いとされるデッキたちは、進歩し、調整された結果、隙の無いデッキになったからです。 そのため、Tier 1のデッキたちに有利かつ、雑多なデッキたちも入り混じったフィールドを勝ち抜く戦略を探し出すのは難しくなってしまいました。

マドリードの失敗談

「これからの数週間に何が起こるか」 という話をする前に、まずは、 【グランプリマドリード】 の出来事についてお話ししましょう。 僕は「黒緑昂揚」を使ったのですが、 僕はこのことに関して自分を許せそうにありません。

僕の考えはこのようなものでした。 「黒緑昂揚」は素晴らしい戦略を持つ強力なデッキなので、メタゲームの立場が悪いにもかかわらず、未だに大勢のプレイヤーがこれを使うと考えられました。 そんな彼らには勝てますし、 僕はこのデッキをたくさん使ったことがあるので、上手に使うことができます。 それに、あらゆるマッチアップで何をすべきかも知っていたのです。

どうでしょうか? 正論に聞こえませんか? でも、そうじゃありませんでした。 僕はプロのマジックプレイヤーなので、「このデッキを使うのが下手だ」とか「このデッキを十分に使ったことがなかった」みたいな言い訳をするべきではありません。 そのトーナメントで勝つためにできる限りの準備をしなかった人は、たとえ結果が悪かろうと文句を言う権利はないのです。

そして、僕はその準備ができていませんでした。 なぜなら僕の敗因は アグロデッキとの練習不足 にあったからです。 オンラインでもほぼ対戦したことのなかった彼らに対して、僕はいいサイドボードプランがありませんでした。

発生の器 ウルヴェンワルド横断

僕がサイドアウトしたのは《発生の器》でした。 戦場に影響しないものに3マナを費やす暇はないだろうと考えたからです。 でも、正解は違いました。 アグロデッキはサイドボード後は機体やプレインズウォーカーを積んでたしかに遅くなっていて、僕は ”昂揚” できないまま2枚の《ウルヴェンワルド横断》を抱えて負けてしまいました。 これはつまり、《発生の器》自体はアグロとのマッチアップでは弱いのは確かですが、 自分のデッキを動かすためには欠かせない大事なカード なので、1~2枚は減らせるかもしれませんが、 数枚は残しておかなければならなかったのです。 そう、やらかしちゃいました。

密輸人の回転翼機 ゼンディカーの同盟者、ギデオン

なんにせよ、このトーナメントのベストデッキは「4色機体」だったと思います。 このデッキは何だってできるのです。 「黒緑昂揚」には少し不利ですが、他のデッキすべてに勝てます。 《模範的な造り手》《密輸人の回転翼機》《無許可の分解》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》。といったブン回りがありますし、どのデッキを相手にしても素晴らしいサイドボードプランを持っているすごいデッキです。 こんな感じのデッキですね。


Petr Sochurek「4色機体」

3 《山》
3 《平地》
4 《霊気拠点》
4 《秘密の中庭》
4 《感動的な眺望所》
4 《尖塔断の運河》

-土地 (22)-

4 《発明者の見習い》
4 《スレイベンの検査官》
4 《模範的な造り手》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《経験豊富な操縦者》
2 《異端聖戦士、サリア》

-クリーチャー (22)-
3 《蓄霊稲妻》
4 《無許可の分解》
4 《密輸人の回転翼機》
3 《耕作者の荷馬車》
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文 (16)-
4 《流電砲撃》
2 《革命的拒絶》
2 《精神背信》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《儀礼的拒否》
1 《断片化》
1 《街の鍵》
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
1 《大天使アヴァシン》

-サイドボード (15)-
hareruya

コントロールデッキの抱える問題点

さて、それでは「今、何が起こっているのか」について話していきましょう。 おそらく人々は「《霊気池の驚異》」を倒すためにコントロールデッキを試そうとしています。 そして、それで「《霊気池の驚異》」を倒すことはできるはずです。 しかし、そのコントロールデッキは、アグロデッキに本当にぼこぼこにされてしまうでしょう。

天才の片鱗 奔流の機械巨人 スフィンクスの啓示

現在のスタンダード環境におけるコントロールデッキが抱えている問題は次のようなものです。 アグロデッキとの対戦を思い浮かべてください。 なんともツイてることに除去で序盤をしのぎ切ることができました。 しかし、あなたはまだ有利でも何でもないのです。 ただ数枚のカードを交換できたというだけで、まだ簡単に倒されてしまいます。 《スフィンクスの啓示》でもあれば、ただ生き残ればいいのですが、今のコントロールデッキはそうではないのです。 終盤は《天才の片鱗》でドローして《奔流の機械巨人》に繋げることはできますが、 コントロールにはアグロよりも多くの土地が入っているため、2:1交換をしても、それを繰り返さなければまったく意味がありません。

これはとても重要なことです。 たとえかなりの勝率が残されていたとしても、いつだって除去を引けるわけではなく、ときには手札が重いカードだらけになってしまうこともあります。 またあるときには、序盤の解答こそ見つけても、1枚の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》だけで負けてしまうのです。 アグロデッキを対策することもできますが、そうすると遅いデッキに負けることになります。 わかりやすく言うと、コントロールデッキはとても難しく、あなたが 八十岡 翔太 でもない限りは大人しくコントロールデッキ以外を使うことをオススメします。

《霊気池の驚異》はどうかな?

《霊気池の驚異》」には、メインボードからコントロールとのマッチアップを改善する方法はありません。 それはコントロール対策をするとアグロデッキに負けてしまうからです。 だから「《霊気池の驚異》」はなんとかして進化しなければなりません。 それがどういう形になるかはいまいち想像できませんが、おそらく Steve Rubin のように《つむじ風の巨匠》を使いはじめるのではないでしょうか?


Steve Rubin「ティムール《霊気池の驚異》

6 《森》
3 《山》
1 《島》
2 《燃えがらの林間地》
3 《進化する未開地》
4 《霊気拠点》
3 《植物の聖域》

-土地 (22)-

4 《導路の召使い》
4 《つむじ風の巨匠》
3 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
2 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
2 《約束された終末、エムラクール》

-クリーチャー (15)-
4 《霊気との調和》
4 《蓄霊稲妻》
1 《苦しめる声》
4 《発生の器》
3 《織木師の組細工》
4 《霊気池の驚異》
3 《反逆の先導者、チャンドラ》

-呪文 (23)-
3 《不屈の追跡者》
2 《自然のままに》
2 《否認》
2 《ヴァラクートの涙》
2 《コジレックの帰還》
1 《世界を壊すもの》
1 《約束された終末、エムラクール》

-サイドボード (15)-
hareruya

《つむじ風の巨匠》は、多くのデッキに対してそこそこ強く、自分のデッキとも噛み合う、つまり、とてもいいカードです。 ただ、少し心配なのは、デッキ自体が力不足かもしれないということです。

織木師の組細工 つむじ風の巨匠

僕が見たとても強そうな「ティムール《霊気池の驚異》」は、《奔流の機械巨人》の入った有望そうなものでした。 そのデッキは《織木師の組細工》の代わりに、《天才の片鱗》《流電砲撃》(いくらかのテンポロスを取り戻す必要がありますからね)が入っていました。 《織木師の組細工》は、《霊気池の驚異》とはよく噛み合いますが、そうでなければ、そんなにいいカードではありません。 これがより良いアプローチであるかはわかりませんが、素晴らしいカードである《奔流の機械巨人》を使う理由にはなります。 《奔流の機械巨人》が使われない主なる原因は、 他のデッキに比べてコントロールデッキがただただ弱いから なのです。 《奔流の機械巨人》自身には何の問題もなく、とても強いカードです。

最近ツイッターに書いたことでもあるのですが、スタンダード環境を分析してみて、僕が良さそうだと思ったデッキは《先駆ける者、ナヒリ》の入った「ナヤ《霊気池の驚異》」でした。 それにとても近い形のものが 【SCG Invitationals】 で優勝しました。


Jacob Baugh「ナヤ《霊気池の驚異》

8 《森》
2 《山》
1 《平地》
2 《進化する未開地》
4 《霊気拠点》
3 《獲物道》

-土地 (22)-

4 《導路の召使い》
3 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
1 《優雅な鷺、シガルダ》
4 《約束された終末、エムラクール》

-クリーチャー (12)-
4 《霊気との調和》
2 《ウルヴェンワルド横断》
4 《蓄霊稲妻》
4 《発生の器》
4 《織木師の組細工》
4 《霊気池の驚異》
3 《反逆の先導者、チャンドラ》
3 《先駆ける者、ナヒリ》

-呪文 (23)-
3 《ヴァラクートの涙》
3 《コジレックの帰還》
3 《不屈の追跡者》
2 《自然のままに》
1 《生命の力、ニッサ》
1 《優雅な鷺、シガルダ》
1 《世界を壊すもの》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》

-サイドボード (15)-
hareruya

先駆ける者、ナヒリ 約束された終末、エムラクール

僕は《先駆ける者、ナヒリ》を入れるアイデアをとても気に入りました。 ミラーマッチでとても強く、「赤緑《霊気池の驚異》」の弱点をいくらか解消してくれるからです。 最速で3ターン目に展開できるプロアクティブなカードであり、余った《織木師の組細工》を別のカードに替えてくれますし、《約束された終末、エムラクール》《霊気池の驚異》も追放してくれます。 ”奥義” から《約束された終末、エムラクール》を投げつけることもできますね。

僕もこのデッキを試したんですが、使ったリストが明らかにまだ調整途中のものだったからか、その結果は勝ったり負けたりでした。 周りの人からは「負けたのは調整不足からだ」と言われたので、また改めて触ってみるつもりです。

「黒緑昂揚」と「《霊気池の驚異》」の関係

いま人々は「黒緑昂揚」を使うのを避けるようになりました。 よく聞こえてくる意見は、《霊気池の驚異》」に負けてしまうから 、というものです。 ただ、このマッチアップはたしかに良くはありませんが、まったく勝てないわけではありません。 彼らは「自分たちがとてつもなく不利できっと負けてしまう」と思うがあまり、極端に攻撃的だったり、リスキーなゲームプランをとって自滅しているのです。

実際にとるべきプランは、《約束された終末、エムラクール》戦争を《最後の望み、リリアナ》の力で制して、 長期戦で勝つこと なのです。 そのため、この長期戦の戦い方をできるだけ練習しておくといいでしょう。 もちろん《残忍な剥ぎ取り》2枚で殴り勝つこともありますが、それは「黒緑昂揚」がとるべきメインプランではありません。

絶え間ない飢餓、ウラモグ

とはいっても、「《霊気池の驚異》」が《絶え間ない飢餓、ウラモグ》をメインデッキに入れるようになると、ここで明らかにマッチアップの相性はとても悪いものになります。 これは人々が「黒緑昂揚」を捨てる理由になり、「黒緑昂揚」は、メタゲームが再び落ち着きを見せるまでの数週間は姿を消すでしょう。 僕は「黒緑昂揚」がまた戻ってくると信じていますが、おそらく、そのときがくる前に『霊気紛争』が発売されるので、あまり関係ないかもしれません。

まとめると、もしこれからスタンダードで勝ちたい人は、 ぶっ壊れたアグロデッキ か、 最強の「《霊気池の驚異》を探してみるといいでしょう! 応援してます!

もしなにか訊きたいことがあれば、【facebook】【Twitter】で質問してください! みんなの疑問に答えたいので、遠慮せずに教えて下さいね!

それでは、ここまで読んでくれてありがとう! Petr Sochurekでした。

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