プロツアー『霊気紛争』現地レポート Day3

晴れる屋メディアチーム

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1日目のレポートは【こちら】
2日目のレポートは【こちら】

 プロツアー『霊気紛争』、3日目。

To define is to limit.(定義するということは、限界をつくるということだ)
オスカー・ワイルド

 425名いた参加者はついに8名に絞られ、栄冠をその手に掴み取らんとこのプロツアー・サンデーの舞台で戦います。はたしてプロツアー優勝の栄誉に浴すのは――!?

 晴れる屋メディアでは、本日も特派員・渡辺 和樹によるプロツアー現地レポートを、本記事内で随時更新していきます!




Hareruya Pros/Hopesの2日目日成績まとめ

By Hareruya Media team

 さて、Hareruya Pros/Hopesのメンバーは2日目を経てどのような成績を残しているのか? さっそくここでチェックしてみよう。

プレイヤー ドラフト スタンダード 最終成績
Jeremy dezani3-02-311-5
Lukas Blohon2-11-410-6
中村 修平1-23-210-6
Michael Bonde2-12-39-7
齋藤 友晴2-12-39-7
Petr Sochurek3-02-39-7
高橋 優太2-12-39-7
原根 健太1-24-19-7
Pierre Dagen1-24-19-7
八十岡 翔太1-22-38-8
Martin Muller2-12-38-8
木原 惇希1-22-37-9
津村 健志初日敗退
Oliver Polak-Rottmann初日敗退
平見 友徳初日敗退

 ジェレミー・デザーニ/Jeremy Dezaniが最終成績を11-5のという好成績で終えており、初日終了時点から好成績だったルーカス・ブローン/Lukas Blohon、中村 修平が後に続いている。

 残念ながら今回はトップ8進出プレイヤーは出なかったものの、Hareruya Pros/Hopesの次回のプロツアーでの活躍に期待しよう。



スタンダードメタゲームブレイクダウン雑感: 2日目編

By Atsushi Ito

 プロツアー『霊気紛争』は2日目に入り、4勝4敗以上のプレイヤーたちのデッキのみを集計したいわゆる「勝ち組のメタゲーム」【2日目のスタンダードメタゲームブレイクダウン】が公開された。

 【初日の段階】では「サヒーリ・コンボ」「黒緑アグロ」「マルドゥ『機体』」の3つのアーキタイプが同程度の割合で合計で70%を占めるという、奇妙にもバランスがとれたメタゲームだったが、2日目はそれがどのように推移したのか。早速結果を見ていこう。

「サヒーリ・コンボ」の凋落

サヒーリ・ライ守護フェリダー

 使用者72人中、2人目に進出できたのはわずか26名。進出率36.1%。今回、明らかな負け組となったのが、ジェスカイコントロール型の「サヒーリ・コンボ」だ。

 4色「サヒーリ・コンボ」の方はもう少しマシな2日目進出率とはなっているものの、やはり負け組であることは同様だ。

 では、「サヒーリ・コンボ」を食い物にし、その分高い2日目進出率を誇った「勝ち組アーキタイプ」とは何だったのか?

「マルドゥ『機体』」、猛る

キランの真意号無許可の分解ゼンディカーの同盟者、ギデオン

 95人中72人が2日目に。進出率、75.8%。非常に高いアベレージで上位卓を独占していたのがマルドゥ「機体」だ。

 禁止改定により《密輸人の回転翼機》を失ったとはいえ、『霊気紛争』で獲得した《産業の塔》、そして何より《キランの真意号》は、このデッキを復権させるには十分すぎた。

 何より、今回のプロツアーでは「機体」デッキはほとんど意識されていなかったのである。

スタンダードは次のステージへ

 今回のプロツアーではマルドゥ「機体」が勝ち組となったが、「サヒーリ・コンボ」や「黒緑アグロ」ではなくマルドゥ「機体」がトップメタだとわかれば、それに対応したデッキも出てくるだろう。

 これを前提に、はたしてスタンダードの今後のメタゲームはどう変わっていくのか。デッキビルダーたちの手腕に期待したい。



Deck Tech: ルーカス・ブローンの「ジェスカイ《電招の塔》コントロール」

By Kazuki Watanabe

 トップ8の中に、《サヒーリ・ライ》《守護フェリダー》、”コピーキャット”とも称される『サヒーリ・コンボ』の姿はなかった。

サヒーリ・ライ守護フェリダー

 それでも、このプロツアーの中心には『サヒーリ・コンボ』の姿があった。今回のデッキ分布は、”『サヒーリ・コンボ』を意識したメタゲーム”と称するべきであろう。

 そんな中、惜しくもトップ8進出を逃したが、このプロツアーで観客を魅了し、活躍を続けたプレイヤーがいる。

 【プロツアー『異界月』】のチャンピオン、ルーカス・ブローン/Lukas Blohonだ。

 彼がスタンダードで使用したデッキは、白青赤のジェスカイカラーのコントロール。しかも、大半のプレイヤーが「ジェスカイと言えば、サヒーリ」という選択をする中で、まったく別のコンセプトでデッキを組み上げている。早速、話を伺ってみよう。

--「今回、このデッキを選択した理由を教えてもらえますか?」

Lukas「そのためにはまず、なぜ『サヒーリ・コンボ』を使わなかったのかを説明する必要がありそうですね」

--「確かに、ジェスカイと言えば『サヒーリ・コンボ』と思っている人も多いでしょうから、説明していただけると嬉しいです」

Lukas「わかりました。まず、当然ですが『サヒーリ・コンボ』も試しました。このコンボは、シンプルで強力です。たった2枚のカードを盤面に出せば、勝利が手元にやってきますから、インパクトも十分ですよね。ですが、その”インパクト”が違った意味で気になりました。簡単に言ってしまえば、『サヒーリ・コンボ』は目立ちすぎたのです。プレイヤー全員が”コピーキャット”を意識するのは、想像に難くありません」

領事の権限異端聖戦士、サリア

--「なるほど。対策されてしまう、と考えたわけですね」

Lukas「そうです。私自身、コンボが好きではないという側面もあるのですが、対策されることが分かった状態で使う気には到底なれませんでした。同型対決になったときのように、ただ『サヒーリを通せるかどうか』というゲームは、私の好むものではありませんからね」

--「そういった中で、このデッキを選んだ理由はどこにあるのでしょうか?」

Lukas「まず、コントロール寄りのデッキを使いたい、というところから始めました。相手の動きに対して対応するようなカードを多数搭載できるデッキが、この環境ではベストだと考えたのです。『サヒーリ・コンボ』に有利に立ち回りながら、トップメタに対抗できるデッキ。それがこの『ジェスカイ《電招の塔》コントロール』です」

電招の塔

--「では、この3色を選んだ理由を教えてください」

Lukas「コントロールにも様々な色が存在します。青黒、青赤、青黒赤(グリクシス)、白青黒(エスパー)など様々です。さて、どれにしようかと考えたときに、『サヒーリ・コンボ』を選ばなかった人は何を選ぶか? と考えました。それが『黒緑』です」

--「直近のSCGでも結果を残していますし、こちらもかなりの”インパクト”がありましたね」

Lukas「そうですね。そして、『サヒーリ・コンボ』のようなデッキには、私のように『こういうコンボは好きじゃない』と思っている人が必ず存在します。少なくとも、『黒緑が嫌い』という人よりは多いでしょう。そういった人たちはシンプルな『黒緑』を選ぶ、と考えました。結果、『黒緑』に強い《燻蒸》を採用できる白、という選択になりました」

燻蒸

--「『黒緑』にとって、《燻蒸》のような全体除去は天敵ですよね」

Lukas「一度相手に唱えられたら、この辛さがわかるはずです。盤面をリセットしてしまえば、あとはアドバンテージを稼ぐことができるこちらが有利になるでしょう。赤のカードは最低限ですし、《ショック》では火力不足のように思うかもしれませんが、《電招の塔》があることで、想像以上に火力を飛ばすことができます。3点火力がどれほど厄介かは、マジックプレイヤーならお分かりでしょう」

ショック

--「では、『サヒーリ・コンボ』に対してはどのように立ち回るのですか?」

Lukas「サイドボードの《否認》《払拭》を投入するのは分かりやすいと思いますが、相手が除去をサイドアウトすることを見越して、《氷の中の存在》《竜使いののけ者》を投入します」

氷の中の存在竜使いののけ者

--「なるほど。この辺りは、常套手段に近いですね」

Lukas「そうですね。相手が重たいコントロールならば《竜使いののけ者》が大活躍しますし、逆に速いアグロならば《光輝の炎》《氷の中の存在》が頼りになります。特に《氷の中の存在》は、アグロデッキで採用されている《屑鉄場のたかり屋》を完全に受け止めることができます」

屑鉄場のたかり屋

--「タフネス4は頼りになりますよね」

Lukas「かなり固いですね。相手の動きを数ターン止められれば、十分に働いてくれている、という評価です。時間を稼げば稼ぐほど有利になる、と考えながらゲームを進めれば問題ありません」

--「その他に、『サヒーリ・コンボ』と対戦するときに気を付けるべきことはありますか?」

Lukas安易にフルタップしないということでしょうか。当たり前ですが、相手の手札に《サヒーリ・ライ》《守護フェリダー》があれば負けてしまいます。常にカウンターを構えなければいけません。結果、《秘密の解明者、ジェイス》は強力なカードですが、サイドアウトすることが多いですね。唱えながらカウンターのマナを残す、となれば当然出番が遅くなりますし、それならば別の軽いカードを使用する方が安全ですから」

秘密の解明者、ジェイス

--「ありがとうございます。それでは最後に、このデッキを使ってみたい! と思った読者にアドバイスをお願いします」

Lukas「このデッキは、環境のデッキに対して有利に立ち回れるように、特に『サヒーリ・コンボ』と『黒緑』という二大トップメタは明確に意識して構築しています。トップ8にこそ残りませんでしたが、『サヒーリ・コンボ』は弱いわけではありません。2枚で、そして6マナを用意すれば勝てるデッキですからね。『黒緑』も依然として強力なデッキタイプです」

--「まだまだこの2つのデッキは、環境に姿を見せるでしょうね」

Lukas「そうだと思います。そして、これらに有利に立ち回れるのが、『ジェスカイ《電招の塔》コントロール』です。コントロールを使いこなすのは難しいかもしれませんが、このデッキを使用すればトップメタと戦いながら上達できるはずなので、ぜひ試してみてください」

※画像をクリックすると拡大します。

Lukas Blohon「ジェスカイ《電招の塔》コントロール」
プロツアー『霊気紛争』

5 《島》
3 《平地》
4 《霊気拠点》
4 《港町》
4 《さまよう噴気孔》
3 《感動的な眺望所》
3 《尖塔断の運河》

-土地 (26)-

4 《奔流の機械巨人》

-クリーチャー (4)-
2 《ショック》
4 《蓄霊稲妻》
2 《鑽火の輝き》
1 《神聖な協力》
4 《不許可》
2 《燻蒸》
1 《隔離の場》
2 《否認》
4 《予期》
3 《電招の塔》
1 《秘密の解明者、ジェイス》
4 《天才の片鱗》

-呪文 (30)-
3 《氷の中の存在》
3 《払拭》
3 《光輝の炎》
2 《竜使いののけ者》
2 《グレムリン解放》
2 《否認》

-サイドボード (15)-
hareruya

 読者へのアドバイスを述べて荷物をまとめたLukasに「お疲れさま」と一言声を掛けた。すると帰ってきた言葉は、トップ8に進出できなかったこと、そして、それ以上の悔しさを、私にぶつけてくれた。

Lukas「Hareruya Prosとしてトロフィーを掲げたかったのですが……」

 いつか必ず、その日が来るはずだ。私はそう信じている。そして、「楽しみにしています。そのときは、またインタビューを受けてもらえますか?」と尋ねると、こう答えが返ってきた。

Lukas「もちろんです。あなたに、プロツアーチャンピオンとして話をしたいですね。では、これからも頑張ります」

 トップ8の発表に湧く、会場内。その喧騒にかき消されない、力強くも優しい言葉を私は胸に刻み込む。」



ジェレミー・デザーニが振り返る『霊気紛争』ドラフト

By Kazuki Watanabe

 プロツアー3日目。いわゆるプロツアー・サンデーが始まった。

 トップ8の戦いが行われる横で、プロプレイヤーはドラフトに興じている。数えきれないほどプロツアーに参加している中村 修平に聞いてみると、

中村「毎回恒例ですね。決勝ラウンドを横目に、みんなでドラフトをやるのは」

 とのことだ。

 今回、中村が参加した卓は、ベン・ルービン、イヴァン・フロック、ベン・フリードマン、クリスティアン・カルカノなど、錚々たるメンバーで行われている。その中に、初日に【この環境のドラフトの鍵】を語ってくれた、ジェレミー・デザーニの姿もあった。

 その彼の思考の深さ、そして正確さは、彼がドラフトラウンドで3-0を果たしたことからも明らかだろう。

 ドラフトの合間を縫って、少しだけ話を聞いてみよう。


--「ドラフトは6-0だったみたいだね。おめでとう!」

Jeremy「ありがとう。初日に書いてくれた記事の価値が少し上がったかな?(笑)」

--「そうだね。とても助かるよ(笑) 今回使ったデッキについて教えてもらえる?」

Jeremy「1stドラフトは、得意の青白飛行でまとめて、2ndは青黒だった。どちらも理想的なデッキだったよ」

--「なるほどね。普段、ドラフトの練習は、どうやってやってるの?」

Jeremy「ラファエル・レヴィ、クレッグ・ウェスコーたちと一緒に練習することがほとんどだね。Magic Onlineでもやるけれど、それほど多くない。今回は直前の【グランプリ・プラハ2017】に向けた練習もあったから、少し濃密だったかな」

ラファエル・レヴィ(左)とクレッグ・ウェスコー(右写真中央)

--「リミテッドのグランプリだね。13位だったそうだけど、ドラフトの成績は?」

Jeremy3-0/2-1だよ」

--「すごいね! ということはこの2週間で1敗しかしていないわけだ!」

Jeremy「そうなるね。負けたのは、今回トップ8に入賞を果たしたPV(パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ)だけだ」

パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ
※画像は【マジック:ザ・ギャザリング日本公式ウェブサイト】より引用しました。

--「好成績を残し続けているけれど、練習の秘訣を教えてもらえる?」

Jeremy「重要なのは、ただ回数を重ねるだけの練習をしてはいけないということだろう。1つのピック、1つのプレイ、1つのコンバットに対して、思考を止めてはだめだ。これはどのフォーマットに対しても言えることだけど、リミテッドは特にそれが顕著だ。基礎力が重要だから、常に養う感覚を持つべきだよ」

--「なるほど。プロプレイヤーの言葉としては、非常に重いね」

Jeremy「プロツアーやグランプリに向けて練習できる時間は限られている。だからこそ、最大の効率を出さなきゃいけない。マジックで勝つために必要なのは、やはり考えるということだ。今回、あの舞台(決勝ラウンドが行われているフィーチャーエリア)で戦っている彼らは思考を積み重ねてきた。だから入賞している。そこに私が座れていない、ということは、やはり足りなかったのだろう」

--「このドラフトはすごくフレンドリーに進行しているけれど、みんなが真剣な表情を見せるのも分かる気がするよ」

Jeremy「当然さ! 強いプレイヤーと対戦し、意見を交換する。こんなに楽しく、そして強くなれる場所は限られているからね」


 初戦を終えたジェレミー。次の対戦相手は、ベン・フリードマンのようだ。

 プロプレイヤー同士が楽しそうに、そして高度なプレイを繰り広げている。その光景を眺めつつ、私に残されている“プロツアーを観戦できる限られた時間”を有意義に過ごしてみたい。



プロツアー初参戦!Hareruya Hopes・木原 惇希にインタビュー

By Kazuki Watanabe

 会場で、初めてのプロツアーを終えたHareruya Hopesの木原 惇希に会うことができた。

 今回の結果に、きっと彼は満足していないだろう。そう思って今回のプロツアーの感想を聞いてみると、

木原「悔しさが残りましたね」

 と、想像通りの答えが返ってきた。そして、続けられた言葉は、次の戦いを見据えたものだった。

木原「この悔しさを、次に繋げないといけません」

 それでは、今回の戦いを振り返りつつ、彼のこれからを伺ってみよう。

初めての舞台で

木原「ドラフトも構築も、悔しさが残りましたね。ドラフトでは、カードの点数に差があると実感しました。結果、シグナルが読みづらくて、デッキの形がちぐはぐになってしまった気がします」

 Team Cygamesの合宿に参加し、その後もドラフトの経験を積んだ木原。海外プレイヤーとの認識の差があった、と彼は述べる。特に「白のカード」で、それが顕著だったようだ。

画像は【Team Cyagems】より引用しました。

木原「たとえば、《浮遊化改造》の評価は明確に低かったですね。流れて来た上で、色が被っていました。そもそも全体的に白の評価が低かったようで、流れて来るものを受け止めていたら、白を“やらされていた”ような状態になっていました」

浮遊化改造

 木原は、1stドラフト、2ndドラフト共に、赤白を使用している。しかしそれは「使わされた」という認識の方が正しいようだ。同卓の人間と、環境に対する共通認識を持っているかどうかでドラフトは大きく変化する。これもまた、環境初期のドラフトのおもしろさであり、難しさだ。

 続いて、話はスタンダードに移る。環境を読み解き、ベストなデッキを持ち込むプレイヤーである木原は、コントロールのような「選択肢の多いデッキ」を好む。これは自他共に認めるところだが、今回の使用デッキを聞いてみると、私の想像とは異なる答えが返ってきた。

木原「今回は、4C機体を使いました。メインボードは青を使わないので、マルドゥ機体、と言うべきですかね」

キランの真意号屑鉄場のたかり屋無許可の分解
チームから得たもの

 これは、【Team Cygamesの覚前 輝也が構築合宿に持ち込んだデッキ】とのことだ。少し驚いた表情でメモを走らせていると、

木原「想像とは違いますよね? 僕も、自分でデッキを構築する場合には選択しないデッキだったと思います」

 とのことだった。チームによる調整から得たものは多かったらしく、

木原「デッキをシェアして議論をすることから得られたものは、かなり大きいですね」

 と普段とは違った手ごたえを感じているようだ。そして、メタゲームの”予想と結果”について、こう続けた。

木原「想像よりも、機体が多かったですね。僕はもっとコントロールが多いと思っていました。今回は、サヒーリ、黒緑、機体の三竦みでしたが、これはほとんど予想通りです。機体の枠がコントロールじゃないかな? と思ったこともありましたが、サヒーリに有利な機体が多かったのは、当然といえば当然ですね」

 環境に存在する、圧倒的な速度を見せる”コピーキャット”。その流行具合、そして機体の有利具合を考えれば、今回のメタ分布は想像通りだったようだ。サヒーリ・コンボについて木原に意見を求めると、その答えは単純明快だった。

サヒーリ・ライ守護フェリダー

木原「あまり好きなデッキではないんです。《サヒーリ・ライ》《守護フェリダー》のどちらかだけでは到底勝てませんし、採用されているのは守るカード、消極的なカードが多いので。もちろん、強さはあると思うので、意識はしていましたけど」

 その上で、今回のデッキの改良点を伺ってみた。

木原「今回はサイドボード後に青をタッチする形のマルドゥ機体なのですが、青を抜いて純正なマルドゥ機体にしてみたい、と思いますね。4Cにすることで《産業の塔》《霊気拠点》に頼らざるを得ないのが気になっていて。色拘束を少しタイトに、3色でまとめてみたいな、と思います」

歩行バリスタ

 そして、環境全体についての反省点、特に《歩行バリスタ》の存在について述べる。

木原「意識しすぎましたね。黒緑を警戒するあまり、《経験豊富な操縦者》を始めとして、タフネス1の評価を低くしすぎました。次に向けて、認識を改めないと……」

次なる挑戦

 ――次に向けて。

 プロツアーが終わったばかりの木原は、明確に次の戦いを見据えている。

木原「来週の、グランプリ・ピッツバーグ2017には遠征するつもりなので、帰国したらデッキを考えます」

 普段は独自の視点でデッキを調整する木原。プロツアーが終わり、その日常が戻ってくるらしい。そうなると、彼が使用するのは……。

木原「プロツアー後は、機体が流行すると思います。当然、強さを見せていますから。メタが固まれば、コントロールの出番だと思いますね」

 選択肢の多いデッキを好む木原の真骨頂が見られそうだ。とは言え、安易に好みのデッキを使用するようなことはないだろう。それは木原も当然分かっていることだ。環境を読み切ったデッキを構築する難しさを噛みしめながら、

木原「思い浮かばなくて、また機体を使うかもしれませんけど」

 と明るい笑顔を見せてくれた。

必ずまた、この舞台へ

 さて、木原にとっては初めてのプロツアーであった。多くのプレイヤーにとって、緊張する場であるに違いない。しかし、この会場で木原の対戦を見続けた私には、決してそうは見えなかった。「緊張はしましたか?」という問いに対して、彼はすがすがしく答える。

木原「まったくしませんでしたね。普段とやることは変わりませんし、盤面を見ているので、相手が誰でも気になりません。ただ、やはり上手い人が多いという印象はありましたね。レベルの高い対戦を、ずっと続けられる場所だと思います」

 「だからこそ」

 と一呼吸を置き、木原は会場を眺め、モニターに映る準決勝の模様を見つめながら続ける。

木原「また来たい場所です。グランプリ、そしてRPTQで権利を取りたいです。そして、シルバー・レベルを目指したいですね」

 何度も見ている優しい笑顔が、ひと際輝いて見えたのは、会場を照らす照明のせいだけではないだろう。

 最後に、木原 惇希の人柄を知らない人に、彼の人柄をよく表したエピソードを、紹介することにしよう。

 彼は、「多くの方から応援してもらえるようなプレイヤーになりたい」とインタビューで答えている。これは決して飾った言葉ではなく、彼の本心だ。このインタビューを締めくくるのも、そんな彼の人柄をよく表している彼自身の言葉がふさわしいだろう。

 インタビューを終えようと、私がメモを閉じる直前のことである。彼は一言、「次のプロツアーに向けた抱負」を付け加えた。

木原「Hareruya Hopesとして、みなさんに応援してもらえるように。必ず、プロツアーに戻ってきます



トップ8デッキリスト雑感

By Atsushi Ito

 2日間、計16回戦のスイスラウンドが終わり、ついに【トップ8デッキリスト】が出揃った。

 その結果は、「マルドゥ『機体』」が6人、「黒緑アグロ」とその亜種の「ジャンドエネルギーアグロ」が1人ずつという、非常に偏った結果となったのだ。

 もちろんこれはあくまで日々刻々と変化するメタゲームのある時点を切り取った結果に過ぎないと考えられるが、しかしいずれにせよ、この8つのデッキが現時点で最高のデッキたちであることは疑う余地がない。

 では、それらのデッキの勝利の秘訣とは何だったのか?早速、その8つのデッキをそれぞれ簡単に見ていこう。


Marcio Carvalho「マルドゥ『機体』」
プロツアー『霊気紛争』(スイスラウンド1位)

4 《平地》
3 《山》
4 《産業の塔》
2 《霊気拠点》
4 《感動的な眺望所》
4 《秘密の中庭》
1 《凶兆の廃墟》
1 《鋭い突端》

-土地 (23)-

4 《模範的な造り手》
4 《スレイベンの検査官》
2 《発明者の見習い》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《経験豊富な操縦者》
2 《ピア・ナラー》
2 《異端聖戦士、サリア》

-クリーチャー (22)-
3 《ショック》
4 《無許可の分解》
4 《キランの真意号》
1 《霊気圏の収集艇》
3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文 (15)-
2 《無私の霊魂》
2 《グレムリン解放》
2 《燻蒸》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《大天使アヴァシン》
1 《ショック》
1 《断片化》
1 《致命的な一押し》
1 《空鯨捕りの一撃》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《鋭い突端》

-サイドボード (15)-
hareruya


グレムリン解放燻蒸大天使アヴァシン

 メインボードは《サヒーリ・ライ》メタの《異端聖戦士、サリア》と押し込みに長けた《ピア・ナラー》を併用し、最適化したといった感じのレシピだが、サイドボードは随所に工夫が見られる。

 2枚と多めに搭載された《グレムリン解放》《キランの真意号》《霊気圏の収集艇》をめぐる同型対決で後手番を跳ね返す切り札となるし、《燻蒸》の採用により、黒緑アグロ相手に緩急自在にゲームプランを選択できる。

 1枚差しの《大天使アヴァシン》も白青フラッシュの衰退により最近見なくなっているカードであることから、無警戒で殴ってきた対戦相手に刺さるシチュエーションが多そうだ。


Lucas Esper Berthoud「マルドゥ『機体』」
プロツアー『霊気紛争』(スイスラウンド2位)

3 《山》
3 《平地》
1 《燻る湿地》
4 《産業の塔》
2 《霊気拠点》
4 《感動的な眺望所》
4 《秘密の中庭》
1 《凶兆の廃墟》
1 《鋭い突端》

-土地 (23)-

4 《模範的な造り手》
4 《スレイベンの検査官》
3 《発明者の見習い》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《経験豊富な操縦者》
2 《ピア・ナラー》
1 《異端聖戦士、サリア》

-クリーチャー (22)-
2 《ショック》
4 《無許可の分解》
4 《キランの真意号》
2 《霊気圏の収集艇》
3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文 (15)-
2 《無私の霊魂》
2 《グレムリン解放》
2 《領事の旗艦、スカイソブリン》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《発明者の見習い》
1 《断片化》
1 《致命的な一押し》
1 《空鯨捕りの一撃》
1 《耕作者の荷馬車》
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
1 《鋭い突端》

-サイドボード (15)-
hareruya


霊気圏の収集艇領事の旗艦、スカイソブリン

 同型戦では「いかにして後手番をまくるか」がテーマになる。鍵となるのは「アクション数」と「《キランの真意号》への対処」となるが、もう一つ鍵となりうるものがあるとすれば、「《霊気圏の収集艇》の絆魂によるダメージレース逆転」だろう。この「3マナ圏の《ピア・ナラー》《模範操縦士、デパラ》《異端聖戦士、サリア》《霊気圏の収集艇》の4択」は、遊びスロットの少ないメイン戦での勝率を改善する要素となりうるため、慎重に選択したいところだ。

 また、《グレムリン解放》があるとはいえ、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》にも対処できる上に空を支配できる《領事の旗艦、スカイソブリン》は依然として強力だ。


Liu, Yuchen「マルドゥ『機体』」
プロツアー『霊気紛争』(スイスラウンド3位)

3 《平地》
2 《山》
3 《産業の塔》
3 《霊気拠点》
4 《感動的な眺望所》
4 《秘密の中庭》
4 《尖塔断の運河》

-土地 (23)-

4 《模範的な造り手》
4 《スレイベンの検査官》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《経験豊富な操縦者》
3 《模範操縦士、デパラ》
1 《ピア・ナラー》

-クリーチャー (20)-
4 《ショック》
4 《無許可の分解》
3 《キランの真意号》
2 《霊気圏の収集艇》
1 《耕作者の荷馬車》
3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文 (17)-
3 《金属の叱責》
2 《致命的な一押し》
2 《断片化》
2 《石の宣告》
2 《否認》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-サイドボード (15)-
hareruya


尖塔断の運河金属の叱責否認

 メインボードの構成がほぼ変わらないため「マルドゥ『機体』」と一括りにしているが、実はサイドに青をタッチするか否かで大きく2種類に分かれる。

 《金属の叱責》は自然に展開しながら「手がかり・トークン」などで無理なく構えることができるため、特にミッドレンジ・コントロールに対して無類の強さを誇る。

 しかしそのために《尖塔断の運河》《耕作者の荷馬車》まで採用しなければならず、デッキ構成に負担がかかるのは間違いない。その歪みは特に同型対決においては致命傷となりかねないため、メタゲームの進展次第だが、今後は数を減らしていくかもしれない。


Donald Smith「マルドゥ『機体』」
プロツアー『霊気紛争』(スイスラウンド4位)

3 《平地》
4 《産業の塔》
3 《霊気拠点》
4 《感動的な眺望所》
4 《秘密の中庭》
4 《尖塔断の運河》

-土地 (22)-

4 《模範的な造り手》
4 《スレイベンの検査官》
2 《ボーマットの急使》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《経験豊富な操縦者》
2 《模範操縦士、デパラ》
2 《異端聖戦士、サリア》

-クリーチャー (22)-
2 《致命的な一押し》
1 《ショック》
4 《無許可の分解》
4 《キランの真意号》
3 《霊気圏の収集艇》
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文 (16)-
4 《金属の叱責》
2 《折れた刃、ギセラ》
2 《致命的な一押し》
2 《断片化》
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
1 《ショック》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《乱脈な気孔》

-サイドボード (15)-
hareruya


ボーマットの急使致命的な一押し折れた刃、ギセラ

 「マルドゥ『機体』」のデッキ構築で難しいのは、《模範的な造り手》のための「アーティファクトの数」だ。ここに《発明者の見習い》まで加わってくると、《スレイベンの検査官》《キランの真意号》《屑鉄場のたかり屋》の12枚だけでは足りず、何かしらのアーティファクトをデッキに入れる必要が出てくる。そこでこのデッキでは《発明者の見習い》を抜いて《ボーマットの急使》で代替することで、デッキの動きを滑らかにすることを意識している。

 また、このリストではメインで《ショック》の代わりに《致命的な一押し》を多めに搭載していることにより、「機体」同型でメインから《キランの真意号》に対応できるカードが増えている。同型の増加を見越すならば選択肢の一つとして検討しておくべきだろう。

 サイドの《折れた刃、ギセラ》は今後サイドボードの《グレムリン解放》が定着していった場合、同型戦で色付きの飛行クリーチャーの需要が高まることにより、出番が増えていく可能性もありそうだ。


Jan Ksandr「黒緑アグロ」
プロツアー『霊気紛争』(スイスラウンド5位)

7 《沼》
6 《森》
2 《進化する未開地》
4 《花盛りの湿地》
4 《風切る泥沼》

-土地 (23)-

4 《歩行バリスタ》
4 《巻きつき蛇》
3 《屑鉄場のたかり屋》
2 《残忍な剥ぎ取り》
3 《ピーマの改革派、リシュカー》
3 《不屈の追跡者》
4 《精神壊しの悪魔》
4 《新緑の機械巨人》

-クリーチャー (27)-
3 《ウルヴェンワルド横断》
1 《致命的な一押し》
4 《闇の掌握》
2 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》

-呪文 (10)-
3 《致命的な一押し》
3 《精神背信》
2 《ゲトの裏切り者、カリタス》
1 《不屈の追跡者》
1 《害悪の機械巨人》
1 《人工物への興味》
1 《造命師の動物記》
1 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》
1 《生命の力、ニッサ》
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》

-サイドボード (15)-
hareruya


精神壊しの悪魔

 純正の黒緑アグロで唯一トップ8に勝ち残ったのは「昂揚」型だった。《精神壊しの悪魔》はマルドゥ「機体」との地上と飛行のダメージレースを制するのに役立つため、これから目にする機会が増えるかもしれない。


Martin Juza「ジャンドエネルギーアグロ」
プロツアー『霊気紛争』(スイスラウンド6位)

4 《森》
2 《山》
1 《沼》
1 《燃えがらの林間地》
4 《霊気拠点》
4 《獲物道》
4 《花盛りの湿地》

-土地 (20)-

4 《緑地帯の暴れ者》
4 《牙長獣の仔》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《通電の喧嘩屋》
2 《不屈の追跡者》
1 《ピーマの改革派、リシュカー》

-クリーチャー (19)-
4 《霊気との調和》
2 《ショック》
2 《蓄霊稲妻》
4 《無許可の分解》
3 《キランの真意号》
2 《高速警備車》
3 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《生命の力、ニッサ》

-呪文 (21)-
4 《致命的な一押し》
3 《新緑の機械巨人》
2 《不屈の追跡者》
2 《領事の旗艦、スカイソブリン》
2 《生命の力、ニッサ》
1 《ショック》
1 《反逆の先導者、チャンドラ》

-サイドボード (15)-
hareruya


緑地帯の暴れ者

 実はトップ8で《キランの真意号》以上に使われていたのは《屑鉄場のたかり屋》(31枚!)だった。この”何度でも蘇る3/2のアタッカー”への対策こそ急務かもしれないのだ。その点、《緑地帯の暴れ者》は3/4というサイズがナチュラルにかみ合っており、《キランの真意号》に「搭乗」できたり、《致命的な一押し》の「紛争」も容易になるため、次なる注目株と言えそうだ。


Eduardo Sajgalik「マルドゥ『機体』」
プロツアー『霊気紛争』(スイスラウンド7位)

3 《平地》
4 《産業の塔》
3 《霊気拠点》
4 《感動的な眺望所》
4 《秘密の中庭》
4 《尖塔断の運河》

-土地 (22)-

4 《模範的な造り手》
4 《スレイベンの検査官》
1 《発明者の見習い》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《経験豊富な操縦者》
2 《模範操縦士、デパラ》

-クリーチャー (19)-
4 《致命的な一押し》
4 《無許可の分解》
1 《発火器具》
4 《キランの真意号》
3 《耕作者の荷馬車》
3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文 (19)-
3 《金属の叱責》
2 《呪文捕らえ》
2 《ショック》
2 《断片化》
2 《苦い真理》
2 《燻蒸》
1 《空鯨捕りの一撃》
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-サイドボード (15)-
hareruya


発火器具呪文捕らえ

 《発火器具》は「アーティファクトの数」を確保しつつ「サヒーリ・コンボ」の対策にもなるという面白いテクニックだ。また、サイドの《呪文捕らえ》はわからん殺し要素が強く、使い方によってはゲームの決定打となりうるだろう。


Paulo Vitor Damo da Rosa「マルドゥ『機体』」
プロツアー『霊気紛争』(スイスラウンド8位)

4 《平地》
2 《山》
4 《産業の塔》
1 《霊気拠点》
4 《感動的な眺望所》
4 《秘密の中庭》
2 《尖塔断の運河》
1 《乱脈な気孔》
1 《鋭い突端》

-土地 (23)-

4 《模範的な造り手》
4 《スレイベンの検査官》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《経験豊富な操縦者》
2 《模範操縦士、デパラ》
2 《ピア・ナラー》

-クリーチャー (20)-
3 《ショック》
4 《無許可の分解》
4 《キランの真意号》
2 《耕作者の荷馬車》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文 (17)-
3 《金属の叱責》
2 《異端聖戦士、サリア》
2 《致命的な一押し》
2 《儀礼的拒否》
2 《グレムリン解放》
2 《尖塔断の運河》
1 《耕作者の荷馬車》
1 《反逆の先導者、チャンドラ》

-サイドボード (15)-
hareruya


乱脈な気孔

 「マルドゥ『機体』」のレシピで差をつける要素として「マナベース」もある。《乱脈な気孔》《致命的な一押し》で強くなった黒マナの需要を満たしつつ後半有用な土地として機能するため、土地構成上のテクニックとして覚えておく価値はありそうだ。



エピローグ

By Kazuki Watanabe

 プロツアー『霊気紛争』は、ブラジルのルーカス・エスペル・ベルサウドの勝利で幕を閉じた。

※画像は【マジック:ザ・ギャザリング日本公式ウェブサイト】

 彼は優勝者インタビューで、「今日は、カードをシャッフルしているだけでも楽しかった」と述べている。

 トロフィーを掲げるチャンピオンと、祝福する仲間たち。その中には、準優勝を果たしたマルシオ・カルバリョの姿もある。

 フルセットの熱戦。見事なプレイングを見せてくれたチャンピオンに、改めて拍手を送ろう。

 宴の後に訪れる静寂。

 薄暗かった会場が、人工的な蛍光灯の光で照らされる。プロツアーが、夢の時間が終わりを告げる合図だ。

 プロツアーが終わるということは、この現地レポートが終わるということでもある。私に許された時間は、あとわずかだ。

 「さて、何を書き記しておこうか」と思いながら、この数日で通いなれた道を歩く。ふと見上げると、夕焼け空が目に飛び込んだ。プロツアー『霊気紛争』を照らす、最後の夕陽である。

 ダブリンに夕陽が沈む。そして、世界のどこかで夜が始まり、またあるところでは朝が始まっている。

 東京の空の下、シドニーの片隅、ホノルルのビーチ、そして次なるプロツアー『アモンケット』の舞台となるナッシュビルの街角。

 世界中のマジックプレイヤーが、このプロツアーの結果を目にしていることだろう。ブラジルは、ひと際大きな歓声に包まれているに違いない。

 プロツアーが終わっても、マジックは終わらない。次の戦いが、もう始まっている。今回の結果を元に世界中のマジックプレイヤーが自分のデッキに手を伸ばし、ゲームを動かしていくだろう。数多のプレイヤーがプロツアーで綴った物語は、受け継がれ、そして再び綴られる。

 「このゲームに終わりはない。どこまでも続く」と、私は信じている。

 すなわち、ここで筆を置くことは、物語に終止符を打つことではない。

これからも続く物語に、

そう、終わりのない本に、

ひとまず栞を挟むことに過ぎないのだ。

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