神インタビュー: 川北 史朗 ~最古の神の最期~

晴れる屋

By Hiroshi Okubo

 川北 史朗(東京)。

 神シリーズが始まって以来、今日こんにちまで4年間7回の防衛線を超えてレガシー神の座を守り続けてきた唯一にして絶対の神。

 過去には8回分ものインタビュー記事が掲載されており、もはや語る言葉はないかと思われた川北。だが、その口から飛び出したのは衝撃の新事実だった。

川北 史朗

神の入籍

川北「実はこのたび 入籍 しました」

神の入籍

写真はお二人の許可をいただいて掲載しています。

--「えっおめでとうございます! 1年半越しの悲願達成ですね!」

川北「ありがとうございます! 出会ったのは去年の暮れごろだったのですが、お互い結婚を前提に付き合っていたのでトントン拍子で話が進んで……自分でもびっくりしています」

--「では今回は奥さまのために必勝を誓う、と……」

川北「というのが一番の理想ではありますけどね(笑) でも、さすがに今回ばかりは厳しいかもしれません。というのも最近は結婚の準備などで慌ただしくしていたこともあり、ほとんどマジックをプレイしていなかったんですよ。その上対戦相手は今乗りに乗ってる川居さんですから(川北と川居は旧知の仲)これまでで一番自信がないというのが正直なところですね。今の僕は神ではない、ただの人です」

--「ここまで自信がない川北さんを見るのは初めてなので新鮮ですね……奥さまは川北さんが神であるということはご存知なのでしょうか?」

川北「ええ、初対面で趣味の話になったときに言いましたね。『俺、ある筋で神って呼ばれてるんだけど……』みたいな感じで。まぁ、あまり興味はなさそうでしたが……」

ある筋で神。

ある筋・・・で神。

--「なるほど。奥さまはマジックについてはあまり詳しくない……?」

川北「まったく知らないですね。ゆくゆくは《渦まく知識》をプレイしてもらえたらな、とは思っていますが、マジックどころか『UNO』のルールもあまり分かっていない様子なのでどうかなー……(笑) まぁ、今回は名実ともに十中八九神ではなく人に戻ることになると思うので、身の回りが落ち着いて彼女が興味を持ったら教えてあげられたらな、と思います」

--「では、今回が神としての川北さんにインタビューをお願いできる最後の機会になるかもしれない、ということですか……」

川北「カードのテキストもちゃんと覚えているかどうか怪しいですし、何ならスタックの詰み方さえおぼろげなので、今回ばかりはそうなるかもしれません(笑)」

神の引き継ぎ

--「では川北さんの勝利の秘訣といいますか、他フォーマットなどで活躍中の後輩神に向けて“神決定戦で戦うコツ”のようなものがあればお聞かせいただきたいです」

川北「まず、神にとって一番大切なのはキャラクター性だと考えています。たとえば3期にわたってモダン神の座に就いていた市川さんなどもそうですが、『双子』や『ジャンド』といったフェア寄りのデッキを得意としているという”キャラ”があったので、挑戦者は当然それらのデッキを意識せざるを得ず、結果的にミスリードを招いていました。神決定戦では神と挑戦者の間に絶対的な情報量の差があるので、デッキを読むというより読ませるようにするのが得策だと考えています」

渦まく知識

--「なるほど。川北さんであれば、『《渦まく知識》の入った青いミッドレンジ~コントロールデッキを使用してくるキャラ』、というような感じでしょうか」

川北「そんなところですね。そこで対戦相手の使用デッキを自然と絞り込んで、それらのデッキに対して有利なデッキを選択する、といった感じです」

--「裏の裏を掻く、ということですね。話は変わりますが、川北さんといえばこれまでの全ての防衛戦を5回戦まで戦っていらっしゃいますね。これは狙ってそうしているのでしょうか?」

川北「いやーそれよく指摘されるんですけど、そういうわけではないですよ(笑) ただ、僕の場合ちょっとエンジンがかかるのが遅いというか、5ゲーム目までプレイする中で段々プレイが冴えてくるんですね。それまでは隙がある状態というか、まぁうまく勝ちを拾って5ゲーム目までもつれ込ませてきた、という感じですね。ただ、斉藤 伸夫さんとの試合などでは全力を出し切る前にやられてしまうかも……という危惧を抱いたこともあります」

川北 史朗 vs. 斉藤 伸夫

最強の刺客・斉藤 伸夫と戦った第3期レガシー神決定戦。

--「逆に言えば『神決定戦では5回戦まで挽回の余地がある』とも言えそうですね」

川北「そうですね。あと、そういう意味でも『ガンメタ』よりも『微有利』くらいの裏目が少ない/裏目を引いても戦えるデッキを選択することも一つだと思います。2本先取だと土地事故などで負けてしまうこともありますが、3本先取だと単純にゲーム回数が増える分ランダムに左右される要素が減り、実力やデッキ相性通りにマッチが進行します。なので、ハイリスクハイリターンな『尖ったガンメタ』よりもローリスクローリターンな『丸いデッキ選択』が肯定されやすいんですね」

--「前回のインタビューでも“『強いデッキ』で挑まれると厳しい”と仰っていましたが、それと通ずるところもありそうですね」

川北「ええ。自分の型を崩さないと言いますか、挑戦者側が『正攻法で戦う』という選択肢を取ってきた場合は今言った戦略は瓦解しますし、その選択肢がある時点で怖いですよね。そういう意味でも今回の挑戦者である川居さんは型を崩さなそう……僕の方も僕の方でここ数年の中で『今が一番マジックやってないし弱いな』という実感があるので、今回のマッチアップはまさに泣き面に蜂ですね」

人間として戦う神決定戦

--「川居さんとは昔馴染みだそうですが、川居さんにはどういった印象をお持ちですか?」

川北「元々AMC(※1)の強豪という認識でしたが、第8期神挑戦者決定戦レガシーマニアの二大会で立て続けに優勝しており、今一番勢いがあるプレイヤーだと感じています。最近は白青奇跡をよく使用しているようですが、昔からグリクシスデルバーやチームアメリカ(BUGミッドレンジ)なども使用していた記憶があるので、そういったコントロール系のデッキを使わせたら右に出る者はいない、強いプレイヤーですね」

--「今のお話を聞く限り、川北さん的にはかなり評価が高いようですね」

川北「これまでレガシー神の挑戦者はみなさん名の知れた強豪の方ばかりでしたが、その中でも1、2を争うくらいには当たりたくなかった相手です。使用している色こそ変われど、レガシーでコントロールデッキを使い続けてしっかり勝ってるって時点で相当な手練れ感ありますよね(笑) おまけに僕が3~4ヵ月ほとんどマジックをプレイしていないタイミングなので、まさに泣き面に蜂だなと」

--「たしかにそう言われてみると恐ろしい……(笑) では最後に、今回の神決定戦に向けての意気込みをお聞かせください」

川北「僕はもう神ではない、人間です。初心に立ち返って、挑戦者になったつもりでがんばりたいです!」

--「ありがとうございます! 当日の試合もがんばってください!」

※1:「AMC(Ancient Memory Convention)」はレガシー草の根大会。レベル1ジャッジの佐宗 一歩氏により主催・運営されていた。


 終始自信なさげに「今回は絶対勝てない」と語っていた川北。これが川北の“三味線”なのか否かは、当日の大会の様子で明らかになることだろう。

 はたして彼の運命やいかに? 明日の神決定戦の行方から目が離せない!

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