プロツアー反省会 -僕がゾンビを使った理由と、次の目標-

Petr Sochurek

Translated by Takuma Kusuzawa
原文はこちら
(掲載日 2017/08/08)

こんにちは、Petrです! 今日は一週間前にあったプロツアー『破滅の刻』でどのようなことが起こったかについて、書いていこうと思います。

この大会でプラチナレベルに届くには4敗で切り抜けないといけませんでした。簡単でないと分かっていても、目標を達成するため頑張らない理由はありません。悪いデッキを持ち込むという前回の過ちを繰り返さないため、今回はチームでの調整が始まる前から、各デッキを触ってみてスタンダードの感覚を掴んでおきました。

画像はMagic: The Gathering日本公式より引用しました。

Pauloのような長くプロマジックの世界にいる熟練プレイヤーの知識は膨大で、どんなデッキであっても、サイドボードなども含めてすぐに使いこなせてしまえると思います。僕はそんなレベルにはまだ到達できていないので、デッキをうまく回せるようになるまで数日必要です。大会直前に最高のデッキを見つけたものの、うまく回せないことを理由に二番目のデッキで妥協せざるを得ない状況は避けたかったのです。

リミテッドについて

スタンダードについては自信があったのですが、リミテッドでつまずきました。今までは構築では安定して結果を出せていたにもかかわらず、リミテッドでめちゃくちゃになっていましたが、ここ最近は大きく成長できたと思っています。リミテッドには集中的に取り組んで、実際、過去二回のプロツアーでは5-1で終えることもできていたのですが、このフォーマットに臨む上でどうすればよいか分からない部分も出てきました。例えば、ランプが強いということは知っているのですが、ランプを組むためには爆弾レアを剥く必要があると感じていたのです。

蝗の神王神、ニコル・ボーラススカラベの神

青赤コントロールは明確に強いのですが、カードの奪い合いになるのが心配でした。プロツアーではよくあることで、各色、各アーキタイプが均等にピックされれば、その中で「ベスト」のアーキタイプが存在するわけですが、そうするとそのアーキタイプの奪い合いになります。

多くの人が、Ondrej Straskyも提唱する「強いアーキタイプを取りに行くドラフト戦略」に沿って進めます。つまり、始めは自分のやりたいアーキタイプで使うカードを取りに行き、その枠が空いていなければ戦略を切り替えることになるので、始めから人気のアーキタイプを避けた方が結果的に良いことも時々起きるのが実際です。もちろん、はなから諦めるのではなくて、人気のない他のアーキタイプが近いピックで組めるのであれば、そちらへ逸れていくことを視野に入れることもあると思います。

オアシスの祭儀師選別ワーム呪文織りの永遠衆突破

さて、強い選択肢としては青緑系のランプと青赤があるわけですが、他はどうでしょう?

黒はとにかく避けたいです。黒いコモンの一覧を見るとほとんどが使えなくて、黒いデッキは伸びしろが大きくないということがわかります。協調してもらえれば白黒ゾンビが強いのですが、よほどの強運がなければ組めませんし、基本的には黒は避けるべきです。パックの中で一番強いカードが黒いときに、それを取った上で全体的に順調なピックができたとしても、平均すると良いデッキにならずに終わることが多く感じられるので、他の色のカードを取った方が良いです。

白に関してはあまり自信がないのですが、チーム内では良くないという意見が多く、僕も黒以外の色では一番弱いのではないかと思います。ただ黒よりは圧倒的に良いですし、他のプレイヤーも白が好きじゃないようなので、空いている色になりやすいかもしれません。

栄光をもたらすもの

最終的にプロツアーでは、青赤か青緑系のデッキが開いてるか見つつ、空いてなければ白いデッキにするという戦略で臨みましたが、実際には全く違う形で進行しました。一度目のドラフトは《栄光をもたらすもの》を含め、考えられる限り強いカードを詰め込んだという、狂ったような赤単になりました

Reid Dukeには負けてしまいましたが、2-1です。僕はここで他の選手のことを買い被って、たまたま誰も赤に触らなくてラッキーだっただけだろうと思い、二度目のドラフトでも当初の戦略を変えませんでした。これが間違いで、似たような強さの白いカードを優先して取っていったところ、最悪の結果となりました。できたのは青白のゴミデッキで、0-3に終わります。

一日目を6-2で終え、スタンダードにも自信があったので、ドラフトで2-1さえできればプラチナレベルに届くかもしれないと考えていただけに、二日目のドラフトが終わったあと、途方に暮れてしまっていました。いい勉強になりましたね。

スタンダードについて

僕がスタンダードに持ち込んだのはゾンビデッキで、チームメイトのほとんどが赤単か黒緑昂揚を使っていましたが、自分のデッキにはとても満足していますし、また次も使うことでしょう。

先にも書きましたが、スタンダードのほとんどのデッキを新セット発売前に試していて、ゾンビデッキがいかに強いか分かっていました。デッキに入っているカードはどれもおかしくて、最強の除去があり、クリーチャーは軽いうえに、倒さずに放っておけば瞬く間にサイズが膨れ上がっていきます。

欠点があるとすれば、皆がすでに全体除去や《マグマのしぶき》などの対策をしっかり準備していることと、コントロールや《霊気池の驚異》相手だと相性が良くないことです。

霊気池の驚異

ただ《霊気池の驚異》は禁止になりましたし、赤いデッキ相手にほぼ勝つことのできないコントロールを持ち込むのは、どこか狂っていたりしないと中々できることじゃありません。もちろん中にはコントロールを使っている人もいるでしょうが多くはないでしょうし、ゾンビデッキはどんなクリーチャー戦でも優位で、特に対策できていない相手はどうしようもなくなるので、とても良い地雷デッキに見えたのです。

これが僕と中村 修平、Oliver Tiu、Jacob Wilsonが使うことにしたデッキリストです。

このデッキリストには本当に満足していて、スタンダードは7-2で終えることができました(1戦はゴールドレベルに手が届きかけていたOliver Polak-Rotmannにトスをしています)。

メタゲームは移りゆく物なので、常に調整していかなくてはなりませんし、今もなおゾンビデッキが活躍できるかは定かではないですが、もし触ってみたいなら、現状のデッキリストはこんな感じなので参考にしてください。

初めてこのデッキを触る人へ

青白《王神の贈り物》を使っている人はもういないと思うので、《屍肉あさりの地》はわざわざ入れるほどでもないと思います。

最後の望み、リリアナゲトの裏切り者、カリタス

あと、プロツアーでは《最後の望み、リリアナ》《ゲトの裏切り者、カリタス》をメインデッキに入れることはなかったのですが、これは間違いだったと思っています

どちらもとても強いカードですし、《呪われた者の王》《金属ミミック》がどちらもあまりいい動きをしていなかったので入れ替えるべきでした。結局、どちらもすでに勝っている試合でしか仕事をしないのです。

サイドボードについて

今はランプとコントロールにもっと注意しないといけないと思います。プロツアーでは、赤単相手にあまりに弱いためかほとんど見られませんでしたが、多くの人が赤単に相性の良い黒緑かゾンビを使うようになるであろう今、この二種にとても相性が良いのはランプとコントロールなのです

精神背信

《精神背信》を4枚入れるのは絶対ですが、その後は色々と考えられます。

灯の再覚醒、オブ・ニクシリス

個人的に良いと思うのは《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》です。忠誠値が6まで上がるので《破滅の刻》で倒されず、他のカードでもどうしようもないですし、除去を抜いて《不屈の追跡者》《難題の予見者》が辛くなってしまうところを《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》であればどちらもカバーできます。

大災厄

《大災厄》も同様で、ランプもコントロールも手札に持っている特定の切り札が唱えられるのを頼りにしていることが多いですし、《氷の中の存在》《不屈の追跡者》がふいに出てきたときに対応できることが重要になります。一切仕事をしないかもしれない、いつもの除去をデッキに残しておく余裕はないはずです。

しばらくはメタゲームがポンポンと変わっていくでしょうし、結局のところ、古き良きじゃんけん環境に落ち着くと思います。僕からのアドバイスとしては、今のうちにデッキを一つに絞り、その一つをしっかり回せるようになっておくことが、ここ数週間で最も重要になると思いますので、頑張って練習しましょう

僕のマジック人生について

今シーズンはゴールドレベルで終わってしまいましたが、正直に言うとこれはこれで幸せにも感じています

二年前に、「この先ゴールドレベルのプロプレイヤーになれるよ」と言われたなら興奮したでしょうが、プラチナレベルになったあとでは目標とすべきでないのは明白です。僕は去年より一回りも二回りも強くなっていますが、正直に言うと、去年こんなによい結果を残せたのは、ミッドレンジのグッドスタッフが環境のベストであり続け、僕の得意としているアーキタイプでもあったという、運が良かっただけのことだったと思うのです。

今年はデッキ選択、リミテッド、アグロデッキの回し方など、いろんな角度で成長することができましたが、プラチナという地位に返り咲くにはもっと頑張らねばなりません。まだまだ学ぶことがありますし、まだ自分で思っているほど良いプレイヤーでもない、と気付けたのは確かです。これからも全力を尽くしていきます。

いつも読んでくれてありがとうございます!

Petr

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