Translated by Kenji Tsumura
(掲載日 2017/10/03)
みなさん、こんにちは。僕はアルゼンチンのセバスティアン・ポッツォ/Sebastian Pozzo。今シーズンをHareruya Latinの一員として過ごせることを名誉に感じているしワクワクしているよ。
今日は僕が体験した信じられないような1年間についてお話ししたいと思う。昨シーズンはスタンダードマスターのタイトルとマジック:ザ・ギャザリング世界選手権2017の出場権を獲得することができたけど、望外の結果だっただけに喜びもひとしおだった。
僕は逸話的なマジックの記事の大ファンというわけではなく、それよりも戦略的な記事を好む。でも最近になって、最高のゲームをするにあたっていかに経験が重要であるかに気付いたんだ。そこで昨シーズンに僕が感じたことだったり、そこにいたるまでのプレイヤーとしての体験談を書くことに決めた。願わくばこの記事が誰かの役に立ちますように。
始まり
まず初めに、2016-2017シーズンが始まるまでに僕がどのようなキャリアを歩んできたかを簡潔にお伝えしよう。マジックは子供のころからプレイしていて、2008年に地元で開催されたグランプリに初めて参加し、そこでトップ8に入賞して僕にとって最初のプロツアーの権利を獲得したんだ。それまでにPTQ (プロツアー予選) のトップ8でたくさんの敗北を喫していたから、プロツアーの権利が獲得できて 本当にうれしかった。プロツアー本戦ももちろん最高だったんだけど、バカンスはそれ以上に最高だったね。とはいえ、エクステンデッドで行われたこの大会に「黒緑《死の雲》」で参加した僕は、初日を5勝3敗で終え2日目に進出して (当時は4勝4敗では2日目に進出できなかったんだ)、最終的に9勝7敗の成績を記録したんだ。
それからもマジックは続けていたけど、そんなにたくさんプレイしていたわけじゃなかった。勉強もしていたから (正直なところ一生懸命にはしていなかったけどね)、僕が大好きなマジックオンラインでのプレイがほとんどだった。勉強しなきゃいけないときにマジックオンラインの誘惑に打ち勝つのは本当に大変だったよ。
その後グランプリ・ブエノスアイレス2014に参加したことを機にトーナメントシーンに復帰した。そこで気付いたことは、僕はこういった競技の場を求めていたこと、そして自身の才能を開花させたいという願望だった。その直後にリミテッドのPTQ決勝で敗れてしまった。もちろんあと一歩のところで権利を逃したのは残念だったけど、いきなり “惜しい成績だった” という事実はとても良い兆候だった。
それから数か月後、MOCS優勝という人生で最高の結果が訪れた。これはプロツアー『運命再編』に参加できるだけじゃなく、16人のプレイヤーでゴールドレベルの称号と25,000アメリカドルを競い合う2014 Magic Online Championshipに参加できることを意味していた。
プロツアー本戦は素晴らしいもので、このときはペドロ・カルバーリョ/Pedro Carvalhoといったブラジル人たちと仲良くなれた。彼の「親和」のアドバイスはとても有意義で、そのおかげで構築ラウンドは6勝4敗だった。
ペドロ・カルバーリョ
しかしながら依然として僕にはドラフトの知識が足りておらず、ドラフトラウンドは3勝3敗でまたしても9勝7敗でプロツアーを終えたんだ。このプロツアーの前週は、アントニオ・デル・モラル・レオン/Antonio del Moral Leonたちと行動を共にした。なぜ彼にコンタクトを取ったかというと、彼もMOCSのためにシアトルに向かうし、僕たちは2人ともスペイン語が話せるからだ。
よく知らない人のために書いておくと、僕たちは彼にリミテッドのアドバイスをしたんだけど、彼は自分の「青赤双子」デッキに自信があるからと言ってモダンの調整を全くしなかったんだ。そんなアントニオがこのトーナメントで最終的に優勝することになった。それをあれほど間近で目撃できたのは素晴らしい体験だったというほかない。
アントニオ・デル・モラル・レオン
続くMOCSでは、僕の中の期待はまるで空のように高かった。手短に結果だけ話すと、僕は14回戦を終えて16人中の15位だった。参加費の4,000$、そしてアントニオやマーティン・ダン/Martin Dangといったプロツアー優勝者の近くでプレイしたことで多くのことを学べた。トッププレイヤーと僕の間にどれほどの差があるかが分かったし、トッププレイヤーまでの道のりが決して平坦なものではないことも分かった。
次のプロツアーの権利を手に入れるまでにはもう1年を擁したけど、RPTQ制度は分散を減らす上で大きな助けとなってくれた。そしてこのプロツアーのフォーマットもモダンだったんだ。そのときも「親和」をプレイして構築ラウンドは6勝4敗で、リミテッドはまたしても3勝3敗だった。ドラフトの技術を向上させなければいけないということは明白だった。幸運にも続くRPTQを突破することができ、マドリードで開催されるスタンダードのプロツアーへの参加が決まった。
このときはまだできたばかりだけど、とても大きな「Dex Army」というチームの練習に参加させてもらった。最も素晴らしかった点は、ようやくドラフトの練習に真剣に取り組めるようになったことで、マジックオンラインのドラフトに参加するだけの日々は終わりを告げたんだ。僕たちはたくさんのドラフトをこなし、カードやデッキについてたくさん話し合った。だけど最も重要な瞬間はプロツアー前日に訪れた。マルシオ・カルバーリョ/Marcio Carvalhoが僕たちを集めてこの環境について30分ほど話してくれたんだけど、僕にとってそれは全てのパズルをくっつける接着剤のようなものだった。
マルシオ・カルバーリョ
悲しいお知らせとしては、「白単人間」を好んでいたほとんどのプレイヤーが「バントカンパニー」に乗り換えてしまったことだ。でも僕には大会の直前にデッキを変える勇気がなかった。そのせいで構築ラウンドは3勝7敗だったけど、リミテッドは5勝1敗という素晴らしい成績で終えることができた。
ドラフトで敗れてしまったラウンドは、2-0で迎えたファーストドラフトの最終戦だった。ドラフト中にやり方を変えて3色目をピックしなきゃいかなかったんだけど、それができたからこそ3-0に近づくことができたんだ。これは決して特別なことじゃないかもしれないけど、プロプレイヤーが自然と行っているこの行為は当時の僕にとって全くもって簡単なことじゃなかったんだよね。
また、このプロツアーでは友人のルイス・サルヴァット/Luis Salvattoが彼の初めてのプロツアーでトップ8入賞を収めた。これで僕たちは2人ともプロツアーに参加できるわけだけど、僕にとって同じ目標に向かって成功を競い合う友人がどれほど大切かに気付くことができた。
ルイス・サルヴァット
続くシドニーで行われたプロツアーには、RPTQの結果が振るわず参加が叶わなかった。直近の2回のプロツアーに参加したあとに、また家でプロツアーの中継を見ることになったんだ。中継を見るのはとても楽しかったけど、もう一方の目では今後全てのプロツアーに参加したいと思いながら中継を見ていた。もちろん参加するだけじゃなくて、最低でも1回は成功したいとも思ったね。でもいつも願っている11勝5敗という成績は、僕にとって途方もなく遠いものだった。
2016-2017シーズン1つ目のプロツアー:『カラデシュ』 (ホノルル)
2016-2017年のマジックシーズンの到来だ。これまでのキャリアでは、シルバーレベルに到達する兆しすらなかったけれど、僕の目標は全てのプロツアーに参加すること、そして学び続けることだ。
今シーズン最初のプロツアーはホノルルで開催された。マジックオンラインでプロツアー予選を勝てたことは、いくつかの理由から最も幸せな思い出のひとつになった。まず初めに、サルヴァットもこのプロツアーに参加できるし、このプロツアーは旧システムにおいて非常に重要なシーズン最初のプロツアーだったんだ。そしてなんとしてでもハワイに行きたかったもうひとつの理由が、僕は海が大好きだってことだ。ハワイの海で泳ぐこと以上のバケーションはないと思っていたし、それに関して僕は間違ってなかったね。
PTQで使用したデッキは、長期戦を見越した黒緑タッチ青だった。《龍王シルムガル》で「白緑トークン」の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》や《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》を奪えるのが特徴かな。「白緑トークン」は最大の仮想敵だったけれど、それを倒すべくデザインされた僕のようなデッキであれ決して楽なマッチアップとは言えなかった。
次なるプロツアーに向け、「Dex Army」は共通の言語を話すプレイヤーでさらに拡大されていた。このときも依然として十分に組織化されていたわけではなかったけれど。偉大なる指導者であるカルロス・ロマオ/Carlos Romaoとカルバーリョはプロツアー直前のグランプリ・アトランタ2016とグランプリ・ロンドン2016を優勝していて、彼らの環境に対するアプローチは非常に貴重なものだった。ホノルルでたくさんのドラフトをこなしたけれど、毎日ビーチに行くのを我慢するのは本当に大変だったよ。プロツアーのあとに10日間ほど滞在する予定だったから、1日1~2時間くらいしか海に行かないように最大限の努力をした。
リミテッドに関してはすごく自身があったんだけど、スタンダードでは分かりやすい選択をした。それはStarCityGames.com Openで代表的なデッキのひとつだった「赤黒アグロ」だ。ペドロ・カルバーリョとマルセリーノ・フリーマン/Marcelino Freemanと一緒に多くのカードを試したね。彼らは僕よりも経験豊富でたくさんのアイディアを持っていたから、僕は自分の意見を述べたり実際にカードを試すことに注力した。これが僕たちが使用したリストだ。
10 《山》 5 《沼》 1 《燻る湿地》 4 《凶兆の廃墟》 3 《霊気拠点》 -土地 (23)- 4 《ボーマットの急使》 4 《発明者の見習い》 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《鋳造所の隊長》 2 《ピア・ナラー》 1 《血の間の僧侶》 -クリーチャー (19)- |
2 《焼夷流》 4 《癇しゃく》 4 《無許可の分解》 4 《密輸人の回転翼機》 2 《街の鍵》 2 《高速警備車》 -呪文 (18)- |
3 《ゲトの裏切り者、カリタス》 3 《流電砲撃》 3 《精神背信》 2 《集団的蛮行》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 1 《稲妻の斧》 1 《街の鍵》 -サイドボード (15)- |
《反逆の先導者、チャンドラ》を2枚しか採用していないこと、またはそれらをサイドボードにしてしまったことはひどい選択だった。《鋳造所の隊長》は素晴らしいカードというわけじゃなかったけれど、自身の《密輸人の回転翼機》を対戦相手のそれより大きくできるし個人的には嫌いじゃなかった。あとになってから分かったことだけど、《血の間の僧侶》をもっと採用した形の方が良かったね。
この大会は人生で初めて3勝0敗でスタートすることができた。でも大接戦になった8回戦の3本目を落としてしまい、最終的には5勝3敗で初日を終えたんだ。僕の目標は11勝5敗だから、それを達成するためには、この日惜しくも実行できなかった6勝2敗を明日遂行する必要がある。
ドラフトは上手くいったとは言えなかったけど、2勝1敗だった。あとは構築ラウンドでほんの少しの幸運を願うのみ。そして3勝0敗と経過は順調で、あと2戦のうち1回を勝てば目標達成というところまできた。しかし最初の1戦を落としてしまい、張り詰めた最終戦をプロツアー王者である瀧村 和幸と争うことになったんだ。
マッチは延長7ターン目に終了した (彼のスロープレイのワーニングにより、追加の2ターンが与えられたんだ) 。こちらは巨大な《ゲトの裏切り者、カリタス》をコントロールしていて、あと1ターンあれば間違いなく勝利できていた。僕が次のプロツアーの権利がないことを説明すると、彼は負けてしまった際のプロポイントについて少しだけ考えた後に投了してくれた。そのとき僕がどれほど感極まったことか!その並々ならぬ振る舞いは、さすがプロツアー王者としか言いようがない。
瀧村 和幸
ダブリンのプロツアーに参加できることが決まり、その次のナッシュビルに向けたPPTQで何度か敗北してしまった後、再びマジックオンラインのスタンダードPTQを突破することができた。このときは《約束された終末、エムラクール》の入った「黒緑昂揚」をプレイしたけれど、翌週に「ティムール《霊気池の驚異》」こそが最良のデッキであり、多くのプレイヤーがこのデッキを使用するだろうと判明する直前のことだった。
この時点で、マジックをより一生懸命にすることに決めても十分な見返りを受けられると分かり始めていた。それは現実世界の大会に行くだけじゃなくて、マジックオンラインでPTQに出たりすることも含めてそう感じたんだ。
2つ目のプロツアー:『霊気紛争』 (ダブリン)
続くプロツアーはダブリンだ。この時点で12点のプロポイントを持っていた (2点はグランプリでの加点) 。シルバーレベルは手が届きそうなところまできているし、10勝6敗という成績は信じられないほど難しいってわけじゃない。ダブリンではチームシリーズに参加するチームが紹介され、僕は「Dex Army」の2つ目のチームである「Ligamagic」の一員となった。
個人的にこの環境のドラフトはよく分からなくて、どうやって良いシナジーデッキを組めばいいのかさっぱりだった。構築は《サヒーリ・ライ》が最大の仮想敵で、コントロールデッキや「黒緑」もいるだろうと予想した。「マルドゥ機体」は調整終盤まであまり意識していなかったデッキだけど、調整中のデッキに満足いかなかったプレイヤーはこの「機体」に乗ることにしたんだ (優勝したルーカスと準優勝のカルバーリョもね)。
それでも僕のデッキ選択は、再びペドロの助けを借りた古き良き「黒赤アグロ」から変わることはなかった。このデッキは今回は意識されていなかったし、それはいつだって素晴らしいことだからね。もしも君が使うデッキが強く意識されている上でなおそのデッキを使うのであれば、そのデッキが信じられないほど素晴らしいものだと確信していなければいけない。
10 《山》 6 《沼》 3 《燻る湿地》 4 《凶兆の廃墟》 -土地 (23)- 4 《ボーマットの急使》 4 《発明者の見習い》 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《殺戮の先陣》 3 《ピア・ナラー》 -クリーチャー (19)- |
3 《ショック》 1 《稲妻の斧》 3 《焼夷流》 4 《無許可の分解》 2 《発火器具》 2 《キランの真意号》 3 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文 (18)- |
4 《致命的な一押し》 3 《ゲトの裏切り者、カリタス》 3 《精神背信》 2 《グレムリン解放》 2 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 1 《燻る湿地》 -サイドボード (15)- |
今回は、少なくとも《反逆の先導者、チャンドラ》が素晴らしいということは理解していた。このデッキには大量の火力呪文と、《サヒーリ・ライ》コンボを阻害できるカードが内包されている。「黒緑」デッキとの対戦において、対戦相手はサイドボード後にビートダウン対策を入れてくるだろうけど、その一方でこちらは除去呪文とプレインズウォーカーを駆使してよりコントロール寄りな立ち回りをすることになる。問題となったのは「マルドゥ機体」で、僕たちはプロツアーにこんなにもたくさんの「マルドゥ機体」がいるとは思ってもいなかったんだ。
初日は0勝2敗から始まったけど、ドラフトの最終戦には勝利することができた。スタンダードでは一度も「マルドゥ機体」に当たることなく、文句の付けようがない5-0という成績だった (どうやら「マルドゥ機体」は上位卓にたくさんいたようだね)。
2日目のドラフトもちっとも良くならず、またもや1勝2敗。スタンダードラウンドでは僕を待ち受けていた「マルドゥ機体」と4度対戦し、2勝2敗と星を分け合った。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は単体でゲームを決めてしまえるし、この成績は少しついてたと思う。唯一他のデッキと当たったラウンドにも勝利し、堅実かつシルバーレベルを確定できる10勝6敗で今大会を終え、ナッシュビルのプロツアーの権利を獲得できた。
とは言え、アルゼンチンから日本行きの旅券を取るというのは決して簡単に決断できることではなかった。だからこそグランプリ・ポルト・アレグレ2017は僕にとって非常に重要だったんだけど、ここで「マルドゥ機体」でトップ8に入賞したことで日本行きの航空券の心配はなくなった。さらには4点のプロポイントを得たことで、ゴールドレベルも現実的な目標になってきた。この時点で22点のプロポイントと2回のプロツアーに参加できることが決まっていたので、どちらかのプロツアーで10勝6敗し、グランプリで残るポイントを獲得できればゴールドレベルに到達できる。
3つ目のプロツアー:『アモンケット』 (ナッシュビル)
来るプロツアーの前に、グランプリ・メキシコシティ2017 (チームメイトはサルヴァットとマイケル・ボンデ/Michael Bonde) で1点、グランプリ・リッチモンド2017で2点のプロポイントを獲得できた。
今回もリミテッドには自信があった。環境はとてもアグレッシブで、それは僕が最も得意とするところだからね。構築の練習は、正直に言ってひどいもんだった。僕たちのチームは「ゾンビ」と「ティムール《霊気池の驚異》」がどれほど優れたデッキであるかに気付くことができなかなかったんだ。そこで僕は再び自分のプレイに自信のあるデッキ、このときはそれに該当する「マルドゥ機体」を選択することにした。
4 《平地》 3 《山》 2 《泥濘の峡谷》 4 《感動的な眺望所》 4 《秘密の中庭》 1 《鋭い突端》 1 《乱脈な気孔》 4 《産業の塔》 1 《霊気拠点》 -土地 (24)- 4 《模範的な造り手》 4 《スレイベンの検査官》 4 《経験豊富な操縦者》 4 《屑鉄場のたかり屋》 2 《ピア・ナラー》 2 《大天使アヴァシン》 -クリーチャー (19)- |
2 《致命的な一押し》 4 《無許可の分解》 4 《キランの真意号》 2 《耕作者の荷馬車》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文 (16)- |
3 《精神背信》 2 《グレムリン解放》 2 《燻蒸》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 1 《リリアナの誓い》 1 《苦い真理》 1 《苦渋の破棄》 1 《排斥》 1 《先駆ける者、ナヒリ》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -サイドボード (15)- |
僕がこのトーナメントに向けて良くないデッキ選択を行ってしまったのは確かだけど、少なくとも何度も使っていたデッキだしサイドボードを正しくチューンすることができた。「ゾンビ」と「ティムール《霊気池の驚異》」に対して1本目の相性は良くないけれど、サイドボードにはそれを改善しうるカードがある。ファーストドラフトはフィーチャードラフトだったから、ここで全てのピックを見ることができるよ。
デッキは非常に良い「白青タッチ《自然に仕える者、ニッサ》」に落ち着いた。しかし何人もの良いプレイヤーとマッチアップしてしまい、その上で少しの不運にも見舞われたために一瞬で0勝3敗してしまった。これに気落ちすることはなかったけれど、もちろんとてもがっかりした。ここから切り替えていく必要があったけど、「マルドゥ機体」特有の”色事故”、”マナフラッド”、”伝説のパーマネントばかり引いてしまう”といった不運が重なり、5回戦目も負けてしまった (少し誇張しているかもしれないけど、そう感じてしまったんだ)。
4勝4敗でも2日目に進出したいのには2つの理由があった。1つ目は10勝6敗で大会を終えて、ゴールドレベルまで残り1点にしておきたいこと。そしてもう1つは、もう一度ドラフトをしてプロツアーで初めて喫した0勝3敗へのリベンジがしたいからだ。
ラウンド7、8と、グランプリ優勝者との緊張感のあるミラーマッチ2連戦を制することができた。1試合はブランドン・バートン/Brandon Burton、そしてもう1試合はコーリー・バウマイスター/Corey Baumeisterとの一戦だ。コーリーとの試合では明確なミスプレイをしてしまったけれど、幸運にもマッチを落とすにはいたらなかった。4勝4敗でなんとか初日を通過し、初めての初日落ちという事態は回避することができた。
2日目は「白緑アグロ」をドラフトして、レアにも恵まれた。初手には臨戦態勢の《不屈の神ロナス》が待ち受けており、2パック目と3パック目では《威厳あるカラカル》を引くことができたんだ。
ドラフトを3勝0敗で終え、残りを3勝2敗することができれば目標達成だ。構築ラウンドでは2勝0敗スタートを切れたんだけれど、ここまで8連勝できたことが信じられなかった。そしてこの連勝記録は10まで続いたんだ。1勝4敗した時点で失うものはなにもなかったし、普段よりもリラックスして試合に臨めたね。最終戦はミラーマッチをトリプルマリガンで落としてしまった。とはいえ、11勝5敗はゴールドレベル到達を意味するし、これはシーズン開幕時に熱望していたものよりも大きな結果だ。
そして、ここで初めて自分がスタンダードマスターになれる可能性に気付いたんだ。スティーブ・ハット/Steve Hattoとショーン・マクラーレン/Shaun McLarenに3点、リー・シ―・ティアン/Lee Shi Tianに1点リードされていた。とはいえ、3人ものプレイヤーが自分よりも上にいたから、現実的に考えて自分のチャンスは10%かそこらだと思っていたよ。
スティーブ・ハット、ショーン・マクラーレン、リー・シ―・ティアン
次のプロツアーまでの間にグランプリ・サンティアゴ2017で2点を獲得し、トータルのプロポイントは37点になった。
最後のプロツアー:『破滅の刻』 (京都)
シーズン最後のプロツアーの準備は、家でドラフトするところから始まった。スタンダードラウンドで勝つ方が重要だったのは理解していたけど、日本に着くまでの調整序盤はドラフトに注力したかったんだ。この環境で僕がドラフトしたのはほとんどが攻撃的なデッキばかりだったけれど、その後防御的なデッキも同様に良いデッキになる可能性があると学んだね。
スタンダードの調整は「赤単」から始まった。僕の「赤単」の認識は、”とても脆いデッキ”だった。《スレイベンの検査官》は悪夢だし、《歩行バリスタ》も同様だね。ただし、回数を重ねていくうちに安定して「赤単」に勝てるデッキがないことが判明したんだ。僕たちは「赤単」に有利が付くであろう「ティムール・エネルギー」を試しもしたけど、それでも楽勝とまではいかなかった。《熱烈の神ハゾレト》は実に多くの勝利をもたらしてくれたんだ。
仮に「赤単」に55%の勝率があったとしても、他のデッキに簡単に負けてしまうようなデッキはリスクが高い。この環境にはいくつものデッキが存在するし、だからこそ攻撃的なデッキは安全な選択に思えた。そのデッキが自分の慣れしたんだものならばなおさらね。
これまでの3つのプロツアーでは良いデッキを選ぶことができなかったけど、最終的には最も成功を収めたデッキを選ぶことができたんだ。
14 《山》 4 《ラムナプの遺跡》 4 《陽焼けした砂漠》 -土地 (22)- 4 《ボーマットの急使》 4 《損魂魔道士》 4 《ファルケンラスの過食者》 4 《地揺すりのケンラ》 3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 4 《アン一門の壊し屋》 3 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー (26)- |
4 《ショック》 4 《焼夷流》 2 《削剥》 2 《集団的抵抗》 -呪文 (12)- |
3 《栄光をもたらすもの》 3 《チャンドラの敗北》 3 《反逆の先導者、チャンドラ》 2 《屍肉あさりの地》 2 《過酷な指導者》 2 《削剥》 -サイドボード (15)- |
ファーストドラフトはそこそこの「白赤アグロ」で0勝2敗スタートし、なんとかドラフト最終戦には勝利することができた。ここからはスタンダードマスターレースが始まり、次々と対戦相手を打ち破っていった。
その間他のレース参加者の成績は聞かないようにしていたんだけど、初日最終戦が終わったところでブライアン・デイビッド・マーシャル/Brian David-Marshallが僕のチャンスについて話しにきてくれたんだ。スタンダードマスターという偉業を争えることは心底幸せだけど、まだ何も手にしちゃいない。マクラーレンは4勝1敗だし、リー・シ―・ティアンも3勝2敗だ。この時点で僕とマクラーレンは同点で、リーとは5点差が付いていた。
でも忘れてはいけないのは、僕がこの大会で6勝2敗だということだ。何人かの友人が、「ドラフトラウンドをわざと投了して構築ラウンドが簡単になるようにしたら?」と僕をからかってきたけど、そんなことは考えちゃいけない。このときの僕は2つの異なる大会をプレイしていたんだ。2日目も6勝2敗ならプラチナレベルに到達できるんだからね。
2日目は最高の滑り出しだった。《不吉なスフィンクス》を開封し、2手目には《アムムトの永遠衆》が流れてきた。これは”右のプレイヤーが黒はドラフトしない”という明確なシグナルだ。最終的に《イフニルの魔神》まで入った上質な「青黒」デッキが完成した。
最初の2回戦は勝つことができたけど、最終戦の「白赤」相手には敗れてしまった。
さあ、ここからのスタンダードラウンドには大きな価値がある。初戦はあまり相性の良くない「ゾンビ」に勝利し、続く試合ではドラフトの最終戦で当たった相手との再戦 (ミラーマッチ) を制した。ここまでスタンダードラウンドは7勝0敗で、ここからの試合は全てが決勝戦のようなものだ。
初めて敗北を喫したのは、セス・マンフィールド/Seth Manfieldとのミラーマッチだった。彼の《熱烈の神ハゾレト》を《チャンドラの敗北》と《損魂魔道士》の組み合わせで対処できたものの、それは勝利するに十分ではなかった。
他のプレイヤーの結果を知ることは必然だった。マクラーレンはレースから脱落してしまったけれど、リー・シー・ティアンはここまで3勝0敗。彼はすでに世界選手権2017の権利を手中に収めているとはいえ、スタンダードマスターの称号をとても気にかけている様子だった。僕はリーに対して最低限のリードを保ってはいたけれど、2ポイント差は1マッチで簡単にひっくり返ってしまう点差だ。15回戦目は僕が目標を達成した瞬間で、試合は全てカメラに収められていた。僕の人生で最も重要なマッチはこちらで観ることができる。
マッチの相性は良かったんだけど、1本目はひどい始まり方だった。しかし彼はマナフラッドに陥ってしまい、僕はそれとは無縁だったため勝利することができた。2本目も彼に幸運が訪れることはなく、こちらのドローは非常に良かった。親愛なる《ボーマットの急使》は、間違いなくこのマッチのMVPだった。
この勝利とリーの敗戦により、スタンダードマスターのタイトルが確定した。大きな安堵感と興奮が僕を包み込み、その瞬間を友人たちと共有することができたんだ。
マルク・カルデラ―ロ/Marc Calderaroが行ってくれたインタビューは、こちらで見ることができる。
最終戦はプラチナレベルがかかった一戦だ。ただし、僕はこの一戦に落ち着いて臨むことができなかった。過去にこんな状態で試合に挑んだ経験はなかったし、おそらく判断にも影響を及ぼしたと思う。「ティムール・エネルギー」に接戦だった1本目を落とし、そのまま2本目も敗れてマッチを落としてしまったんだ。
この試合で僕の素晴らしい1年間は幕を下ろしたわけだけど、おそらくもっともっと良くできたと思う。この1年間は僕に新たな願望と野望を与えてくれた。プロツアー『アモンケット』か『破滅の刻』の最終戦いずれかを勝っていれば、僕はプラチナレベルだったんだからね。
まとめとこれからに向けて
これからまた新たなシーズンが始まるけど、新シーズンの開幕戦はほかならぬマジック:ザ・ギャザリング世界選手権2017だ。世界中の強豪を前に、謙虚に最大限の努力をしているつもりだ。
これほどたくさんの偉大なプレイヤーと対戦するとなると、それだけで僕の思考に影響を及ぼす事柄がたくさん起こるだろう。けれどこんなにも素晴らしい舞台で戦えるチャンスをくれたこのゲームへの感謝の気持ちを胸に、偉大なプレイヤーたちと14回戦を戦えることを心より楽しみにしている。例え何も懸かっていなくたって毎週やりたいくらいだよね。
結局のところ言いたいのは、君が楽しいと思うことをやるべき、ってことだね!
最後まで読んでくれてありがとう。
ポッツォ
この記事内で掲載されたカード
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2016-2017シーズンの「スタンダード・マスター」を獲得し、アルゼンチン人として初めての世界選手権出場を決めたゴールドレベル・プロプレイヤー。
その称号の通り、構築フォーマットを得意とし、特に優れたデッキを選択する慧眼を持つ。プロツアー『破滅の刻』でも大本命の『ラムナプレッド』を使用して、見事に『スタンダード・マスター』となった。
チームメイトでもあり同じアルゼンチンを代表するプレイヤーでもあるLuis Salvattoと共に、Hareruya Prosに加入。