皆さんこんにちは。Hareruya Prosの井川 良彦です。
先週末にアメリカ・アルバカーキで開催されたプロツアー『イクサラン』に参加してきました。
ドラフトは2-1・1-2の合計3-3と奮わなかったものの、スタンダードで4-1・5-0の合計9-1というスコアを幸運にも叩き出し、17位入賞・プロポイント15点+$3,000という望外の好成績を残すことができました。
ドラフト:3-3
— Yoshihiko Ikawa (@WanderingOnes) 2017年11月5日
構築:9-1
12-4!
そこで今回のブログでは、ラムナプ・レッドを選択した経緯や実際に使用したリストの簡単な解説、サイドボーディングの一例をお届けします。
構築ラウンド9-1という好成績は豪運による結果ですし、この記事の内容はあくまで僕個人の思考・意見であり必ずしもすべて正しいとは限りませんが、ラムナプ・レッドをプレイしている皆さんの一助となれば幸いです。
◆ラムナプ・レッドを選択した経緯
プロツアーに向けての本格的な練習は、世界選手権2017の終了後に開始しました。
今回の調整パートナーは、グランプリ・シドニー2017で共に権利を獲得したKAKAOこと中村 肇。
井川 良彦/中村 肇/渡辺 雄也
KAKAOがアブザントークンを1週間ほど回し、その間に僕がその他のティムール(4色)・エネルギー、スゥルタイ・エネルギー、マルドゥ機体、黒赤アグロ、青黒コントロールetc…といった様々なデッキを日替わりで回していくスタート。途中からは僕もアブザントークンを中心に回してみましたが、このデッキにはいくつか問題点が見つかりました。
まずメインボードの《秘宝探究者、ヴラスカ》がティムール・エネルギーとラムナプ・レッドの両方にあまり効果的ではないこと。ミラーマッチを考えると採用せざるを得ないのですが、2強アーキタイプにはどちらも6マナ払うだけのバリューがなく、2枚手札に抱えてしまうとそれだけで負けてしまうこともありました。
また、アブザントークンはメインボードこそ環境の2強と目されているティムール(4色)エネルギーとラムナプ・レッドに有利なものの、サイドボード後の勝率が思わしくありません。《強迫》《否認》といったサイドボードを無視できる勝ち手段として《艱苦の伝令》や《スカラベの神》を試してみたり、《反逆の先導者、チャンドラ》《暴れ回るフェロキドン》を後顧の憂いなく対処できる《イクサランの束縛》を増量してみたりと工夫したものの、圧倒的な成果がある訳ではありませんでした。
さらにはティムール・エネルギーの《人工物への興味》が増量されたり《自然に仕える者、ニッサ》が採用されるようになったり、ラムナプ・レッドの《暴れ回るフェロキドン》がメインボードに採用するリストが登場したりとメタゲーム的にも向かい風で、「これはアカンな」と断念を余儀なくされました。
他のデッキに目を向けると、大本命であるであろうティムール・エネルギーはカードの選択肢、3色 or 4色など構築の幅が広すぎる上に前環境での経験値も乏しいため、トッププレイヤーたちの調整チームには勝てないだろうということで避けたいところ。スゥルタイはティムールと比較して優位性をあまり感じず、コントロール系はどうやってもラムナプ・レッドや《屑鉄場のたかり屋》デッキが厳しい。
といった消去法もあり白羽の矢が立ったのが、これまでの経験値もあり、地力が高いラムナプ・レッドです。元々「ラムナプ・レッドを使う可能性は高いだろうな」という予感はしていたので他のデッキの感触を確かめることを優先していましたが、素直に環境最強のビートダウンを手に取ることにしました。
特にその決め手となったのは、MOCSと呼ばれるMagic Onlineの大会にて、強豪プレイヤーであるThalaiが使用していたこのリストの存在です。
15 《山》 4 《ラムナプの遺跡》 4 《陽焼けした砂漠》 1 《屍肉あさりの地》 -土地(24)- 4 《損魂魔道士》 4 《ボーマットの急使》 4 《地揺すりのケンラ》 3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 2 《過酷な指導者》 4 《暴れ回るフェロキドン》 4 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー(25)- |
4 《ショック》 4 《稲妻の一撃》 2 《削剥》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文(11)- |
3 《ピア・ナラー》 3 《反逆の先導者、チャンドラ》 2 《過酷な指導者》 2 《栄光をもたらすもの》 2 《チャンドラの敗北》 2 《削剥》 1 《霊気圏の収集艇》 -サイドボード(15)- |
これまで4枚固定だと思われていた《アン一門の壊し屋》が0枚!!サイドボードだった《暴れ回るフェロキドン》がメイン!!
《アン一門の壊し屋》はラムナプ・レッドのミラーマッチで弱く、またティムール・エネルギーにも後手だと余り強くないためサイドアウト率が高いカードです。一方、従来サイドボードの定番だった《暴れ回るフェロキドン》はミラーマッチこそあまり強くないものの、ティムール・エネルギーにも中々の活躍をする上に苦手としているアブザントークンを始めとした様々なマッチアップにおいて活躍するので、サイドイン率がかなり高いカードです。
「それなら最初から《アン一門の壊し屋》を抜いて《暴れ回るフェロキドン》をメインに入れてしまえ」というこの発想は目から鱗でした。サイドボードの枠が空くのも好印象。
また、《暴れ回るフェロキドン》と共にメインに採用された《過酷な指導者》もティムール・エネルギー相手に非常に良い働きをしました。前環境で試したときはすぐ死んであまり役に立たない、殴れない、といった印象だったのですが、《暴れ回るフェロキドン》と合わせて採用することにより、合計8枚(メインは6枚)もの「ヘイトベア―」戦略で天敵の《つむじ風の巨匠》を咎められるようになったのです。
このリストに感銘を受けて早速試したところ、手応えや良し!! ということで、このリストを微調整したラムナプ・レッドを使うことになったのです。
◆使用したデッキリストの解説
15 《山》 4 《ラムナプの遺跡》 4 《陽焼けした砂漠》 2 《屍肉あさりの地》 -土地(25)- 4 《損魂魔道士》 4 《ボーマットの急使》 3 《地揺すりのケンラ》 3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 2 《過酷な指導者》 3 《暴れ回るフェロキドン》 4 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー(23)- |
4 《ショック》 4 《稲妻の一撃》 2 《削剥》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文(12)- |
3 《ピア・ナラー》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 2 《チャンドラの敗北》 2 《過酷な指導者》 2 《栄光をもたらすもの》 1 《暴れ回るフェロキドン》 1 《削剥》 1 《霊気圏の収集艇》 1 《マグマのしぶき》 -サイドボード(15)- |
「土地25枚・《地揺すりのケンラ》3枚」というこのリストは、もしかしたら過去の「《謎めいた命令》3枚フェアリー」(※)のように世界中で批判・非難されるかもしれませんね。
ですが、明確な意志があってこのバランスになっているので、簡単に解説したいと思います。
※世界選手権2010のエクステンデッドにて、友人のJonathan Randleに《謎めいた命令》3枚のフェアリーをシェアしたところ、6-0でトップ8入り!後日Channellfireballの記事で、PVことPaulo Vitor Damo Da Rosaに「《謎めいた命令》を減らすぐらいならデッキからランダムに1枚抜いた方がマシ」と酷評されました。
土地25枚について
僕のリストで一番特徴的なのがコレでしょう。
ラムナプ・レッドの土地の枚数は24枚が一般的ですが、この枚数については旧環境からずっと懐疑的でした。
ラムナプ・レッドの強みは
だと個人的に考えているのですが、最初の3つに共通する点は「土地を伸ばすことが必要不可欠」ということです。
《熱烈の神ハゾレト》をスムーズにプレイするためには当然4ターン目までに4枚の土地が必要で、1ターンでも着地が遅れるとそのラグがそのまま敗因になることも少なくありません。また仮に4ターン目に《熱烈の神ハゾレト》をプレイできたとしても、5枚目の土地がなく2・3マナのカードが溜まると5ターン目に殴れないことも多々あります。
手札を使いきれない状態での《ボーマットの急使》もリターンが少ないので、なるべく毎ターン土地を置き、手札を消費しながら《ボーマットの急使》貯金を貯める必要があります。
これらの通り《熱烈の神ハゾレト》《ボーマットの急使》《地揺すりのケンラ》《ラムナプの遺跡》といったマナフラッドに強いカードが多数採用されていますが、これらは逆にいうと「土地が詰まると機能しない/しづらいカード」でもあるのです。
軽いアクションが多くても、土地が止まると簡単に負ける。ある程度序盤スムーズに動ければ、多少土地を多めに引いても勝てる。
これがラムナプ・レッドの実態だとしたら、土地24は本当に適正枚数なのでしょうか?
こう考えて調整を重ねましたが、フラッドよりスクリューで負けることの方が多かったので、土地を25枚に増量しました。
調整パートナーであるKAKAOも土地25枚に同意してくれ、調整段階でも実際に手応えが良かったので、異端ともいえるであろう「土地25枚のラムナプ・レッド」を自信を持ってサブミットすることができました。
なお25枚目の土地として採用した《屍肉あさりの地》は《スカラベの神》対策でもあります。「膠着してからの《スカラベの神》」は負けパターンの1つでしたが、《屍肉あさりの地》で墓地を追放することで実質5/5バニラにさせ、《熱烈の神ハゾレト》の2点ダメージ連打で勝利することも容易くなりました。Magic Online上で増えていた《王神の贈り物》デッキや白青「蘇生」「永遠」デッキに耐性が付くのもプラスです。
《地揺すりのケンラ》3枚、《暴れ回るフェロキドン》3枚について
《地揺すりのケンラ》はマナフラッドに強くデッキにフィットしたカードであり、対コントロールのベストカードではありますが、トップメタであるティムールエネルギーにはあまり強くないカードだと考えています。2/1というサイズが《つむじ風の巨匠》の飛行機械トークンで簡単に止まる上に《逆毛ハイドラ》には「永遠」しても無力であり、後手で2枚引くと敗因にすらなりえるからです。
また同様に《暴れ回るフェロキドン》もどのマッチも最低限以上の働き・打点を稼ぎますが、3マナという重さもあり、なるべく2枚引きたくはありません。3マナのカードは《熱烈の神ハゾレト》を機能させる都合上なるべく減らしたいという理由もあります。
これらの理由から、
固定スロット
空きスロット
という枠組みの中で、どれもマッチアップや先手後手により一長一短であり、複数枚引きたくないカードなので
という枚数バランスに落ち着きました。
《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を2枚にするというプランもあったのですが(僕は当初2枚派でした)、KAKAOの「先手2ターン目のバリューがでかすぎるから《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》は3の方がいいよ」という冷静な意見に助けられました。改めて感謝!
《反逆の先導者、チャンドラ》の2枚目について
トップメタであるティムールエネルギーとの相性はほぼ五分であり、端的にいうと「先手が有利」なマッチアップです。
そこで、「先手4ターン目《熱烈の神ハゾレト》」と同じぐらい勝率が高かった「先手4ターン目《反逆の先導者、チャンドラ》」の確率を上げる=先手での勝率を上げるために、2枚目をメインに投入しました。相手の《逆毛ハイドラ》より先に《反逆の先導者、チャンドラ》をプレイできると、ティムール・エネルギー側がかなり無理な戦闘だったりリソースを割く必要がでてくるため、一気に盤面が有利になるのです。
先手だと初手7枚+ドロー3枚の計10枚なので、単純な計算だと《熱烈の神ハゾレト》と《反逆の先導者、チャンドラ》が計6枚入っていれば、どちらかをプレイできる計算です。
土地を25枚に増量したこともあり、「4ターン目に《熱烈の神ハゾレト》か《反逆の先導者、チャンドラ》をプレイする」という意志が明確なリストになったと思います。
「《熱烈の神ハゾレト》の上から追加する枠」に《栄光をもたらすもの》を採用しているリストもありますが、《反逆の先導者、チャンドラ》だと「4ターン目《反逆の先導者、チャンドラ》⇒5ターン目《熱烈の神ハゾレト》」とスムーズに動けるのに対して「4ターン目《熱烈の神ハゾレト》⇒5ターン目《栄光をもたらすもの》」だと《熱烈の神ハゾレト》が殴れるか不確定&5枚目の土地が必要、という点が個人的に気になったので、《反逆の先導者、チャンドラ》を優先することにしました。
◆サイドボーディングの一例
基本的な考え方
ティムール(4色)・エネルギー
VS ティムール(4色)・エネルギー(先手)
In
Out
VS ティムール(4色)・エネルギー(後手)
In
Out
ラムナプ・レッド
VS ラムナプ・レッド(先手)
In
Out
VS ラムナプ・レッド(後手)
In
Out
スゥルタイ・エネルギー
VS スゥルタイ・エネルギー
In
Out
全部のマッチアップは書ききれないので重要なマッチアップだけをピックアップしましたが、いかがだったでしょうか。
冒頭に書いた通り、このサイドボーディングはあくまで僕の思考・意見であり必ずしも正しいとは限りません。手に合わないことや、まったく違ったサイドプランで勝っている方もいらっしゃるでしょう。皆さん自身のリストやサイドプラン、プレイングにあったサイドボーディングを行うのが一番良いと思います。ただ、それでも今回の記事が少しでも参考になれば嬉しいです。
現在のプロポイントは15点。「グランプリ・シドニー2017上位(今PT)」「プロツアー『イクサラン』上位(プロツアー『イクサランの相克』)」に加えて「昨シーズンのシルバーレベル」「今シーズンのシルバーレベル(最低でもプロポイント22点必要)」といった流れで、今シーズンのすべてのプロツアーに参加することができる見通しが立ちました。
2014-2015シーズンは今回と同様1stプロツアーで15点取ったものの、ゴールドレベルに到達することはできなかったので、今シーズンこそは着実にプロポイントを稼いで、ゴールドレベルを目指していきたいと思います。
それでは、また次回のブログで!
井川
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