『イクサラン』の部族を楽しむシンプルな方法 -白緑恐竜に挑戦-

Marc Tobiasch

Translated by Daijiro Ueno

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(掲載日 2017/11/02)

普段僕たちが部族中心のリミテッドをしているとき、ドラフトはどの部族で行くか決めて、そのクリーチャータイプを選別するというゲームになる

例えば『アモンケット』を振り返って考えるとゾンビたちがそれに当たるね。なぜならほとんどの「部族」セットは部族カードを持っていれば強くなるような軸となるカードたちがあるからだ。それらのカードは条件を満たすカードの枚数分だけ価値が高くなる。

呪われた者の王束縛のミイラ

もし君が《呪われた者の王》《束縛のミイラ》のようなゾンビとシナジーのあるカードを持っていれば、その部族のクリーチャーたちは単体の価値よりも高い働きをする。このことは、もっと優れていて色も合ってるカードがあったとしても部族カードを優先する気にさせる。

『イクサラン』に関して、これは違う。看板的には「部族のセット」とは言われるし、部族以外の色の組み合わせ――たとえば、白青、黒緑といった部族に該当しない色はたしかに組みにくい。しかし、真に部族の軸となるカードの数はかなり少なく、基本的にどの色の組み合わせでもコモン、アンコモン共にいくつかだけだ。

そして最も大切なのは、これらの軸となるカードは該当するクリーチャータイプの数を参照することはないということだ。ほとんどの場合、その効果を得るためには一枚だけそのクリーチャータイプをコントロールしていれば良い。《身勝手な粗暴者》《ティロナーリの騎士》を見れば分かるよね。

身勝手な粗暴者ティロナーリの騎士

だから部族の一つ(あるいはそれに合う色)をドラフトをしているときの目標は、できるだけ多くではなくて、継続的に1体を場に残せるだけの数、部族をピックすることだ。これはクリーチャータイプを考慮せず、基本的にはただ単にその色の組み合わせをピックしている、ということを意味する。そうすれば、ほぼ自然に十分な数の部族の軸になるカードをピックすることになっているからね。部族に対応する色だったら、その部族のクリーチャーはたくさん存在するだろうから、十分な数をピックするということは、あまり難しいことではないよ。

だからドラフトの間はクリーチャータイプを意識するよりも、マナカーブに沿っているか、コンバットトリックや軽いカードを優先しているか、といったことの方がより重要なんだ。もちろん、もし2枚のカードがあって、それらのカードパワーとマナ域がとても近かったとしたら、自分の部族を取った方が良いのは明白だ

コモンで部族の軸となるカードは《キンジャーリの呼び手》だけだ。彼が生み出す疑似的なマナは、ゲームの中でプレイした恐竜たちの分だけ増えていくからね。また、《キンジャーリの呼び手》は少し特殊で、十分な数揃えば、違ったデッキ構築を可能にしてくれるんだ。

キンジャーリの呼び手

もし3枚、あるいは4枚もこのカードを持っていれば、デッキの中の恐竜たちのマナコストは右上に印刷されている本来の数字より実質1つ少なく見ることができる。《キンジャーリの呼び手》は事実上、白緑の多色カードなんだ。だから色が合っていれば、後半にピックしたくなるだろう。ただし、白赤恐竜は大抵の場合もっと低いマナカーブで攻撃的だ。だから元々軽いクリーチャーをさらに軽くするような0/3クリーチャーはあまり魅力的じゃないね。

白緑は《キンジャーリの呼び手》によって高いマナ域のカードをプレイし、戦場を膠着状態にさせるのに成功したら、巨大な恐竜たちで勝つ、という今あまりドラフトされないランプスタイルのアーキタイプだ

崇高な阻止

このドラフトというフォーマットの大半ではコンバットが重視される。そのため、白緑の戦略に必要なカードは少し遅れててもピックできるから、《崇高な阻止》や他の除去を早めに確保して、クリーチャーはあとで取れば良い。重高タフネスのブロッカーや、重いフィニッシャーは大抵の場合は、最後の方に回ってくるものさ。卓の中で、君ぐらいしか欲しがらないからね。

こちらのプランは、高タフネスのクリーチャーを展開してブロックすること。クリーチャーがコンバットトリックと引き換えになれば、それはそれでいい。いずれ相手はコンバットトリックを使い果たし、地上では攻撃できなくなる。だから君は飛行持ち用に除去を温存すべきだ。それから相手が2マナの軽いクリーチャーをドローしたとして、君も同じ様な状況になったとする。そうすればいずれ君は《巨大な戦慄大口》《轟く棘背びれ》《古代ブロントドン》といったカードのパワーで相手を圧倒できるわけさ。

巨大な戦慄大口轟く棘背びれ好戦的なブロントドン

《好戦的なブロントドン》は特に良い。なぜならこのカードを出したターンに皆で殴りにいけるからだ。そして《イクサーリの卜占師》《聳えるアルティサウルス》で場を埋め尽くして、突如凶悪な存在になって速やかにゲームを終わらせる事だってできるだろう。

《輝くエアロサウルス》や下位種の《プテロドンの騎士》もまた、戦場が膠着したらすごく良いカードになる。そして他の白をピックしているプレイヤーがこれらに興味を持っていたとしても、早い段階でこれらをピックできることもある。戦略上、マナカーブを埋めることをあまり考えずに済むからね。

イクサーリの卜占師輝くエアロサウルスプテロドンの騎士

基本的に白緑恐竜ランプはこのフォーマットにおける唯一の防御的戦略なんだ。特定のレアに強く依存することはないし、多くのデッキはこのデッキに対する準備はできないはずさ。これを構築するには、《崇高な阻止》《イクサランの束縛》《葉を食む鞭尾》、《狂暴な踏みつけ》など、それと似たようなカードたちからピックすべきだろう。それか、白、緑どちらかをピックしていて他の色をピックしようとしていたならば、この戦略はまっとうで保険的な戦略だね。

イクサランの束縛葉を食む鞭尾凶暴な踏みつけ

白緑アーキタイプのほとんどのカードは他と交換可能で、プレイアブルなカードを十分確保しつつ、遅い段階でも白緑に移行することができる。このプランを選択をして、君が十分な数の《平和な心》系カードを持っていなかったら、少なくとも2枚の《押し潰す梢》を用意しよう。《大気の精霊》といった大型の飛行持ちや、《風と共に》がつけられたクリーチャーたちは、数少ない「場の膠着状態からの負け」をもたらすから、《押し潰す梢》は遅い段階でも確保できる素晴らしい回答なんだ。

押し潰す梢大気の精霊風と共に

多様なデッキがこのフォーマットでは存在するけれど、中でも白緑は僕に多くの成功と楽しみを与えてくれたアーキタイプだ。だから将来みんなが同じように成功を掴み、楽しめることを願っているよ!

■ 環境の概観

それから、常に心に留めておくべきだと思うこの環境に関する概観を、以下にまとめておくよ。

アグレッシブな戦略は、十分な低コストのクリーチャーが確保できているならば、レート以上の働きをする。《ティロナーリの騎士》《身勝手な粗暴者》を見ればわかるよね。除去は重くて、コンバットトリックは強力で軽い。そして、強襲が環境の中心にあって、フォーマット自体がとてもアグレッシブなんだ

このセットには通常よりも多くの回避能力持ちがいる。ここ最近のどのセットよりもコモンに飛行持ちが多く、威迫やアンブロッカブルについても同様だ。このことに加えて、攻撃時に効果を得る大量のカードがある(《縄張り持ちの槌頭》など)。

縄張り持ちの槌頭

前述のコンバットトリックは、ブロックによって有利を得る戦略を稀なものにし、ライフゲームに自然にもつれこむ環境を作り出す。例外は君がコンバットトリックのために交換を行ないたいいくらかの予想外なカードたちだけだ。

大したことないクリーチャーは差し出して、他のクリーチャーでダメージレースをするべきだ。ということはつまり、カードアドバンテージを取ることはそんなに難しくないけれど、そのメリットは著しく少ないということを意味している……なぜなら、カードアドバンテージがあってもゲームの最終的な勝者になれるとは限らないからだ。他方で、絆魂と継続的なパンプアップ効果(オーラや装備品が代表的な例だ)は普段よりも優秀だよ。

向こう見ず海賊のカットラス

大量のコモン枠はプレイアブルでない(各色最低1、最高でも2枚程度)という状態で、プレイアブルなカードは欠乏している。それと同時に、良いコモンと穴埋め用コモンのカードパワーの落差は大きい。これは正しい色の組み合わせを早い段階で選択することが不可欠だということを意味する。最初のパックの4~7ピック目でどういった方向性で行くか見出せるようにしよう。

コンバットトリックはこの環境では不可欠で、相手がそれらを持っていることをしっかりと意識しよう。マナを立てている場合は警戒を怠ってはいけないよ。クリーチャーでコンバットを行う際、相手のコンバットトリックと交換する計算、もしくは自分のコンバットトリックを見せつける用意が必要になる。相手がコンバットトリックのために交換を行ないたくない場合、ブラフが有効だということも意味しているんだ。もちろん、相手がブラフを仕掛けている可能性も考えて欲しいけど、そうでない場合は前に進んだほうが良い。ダメージレースでは、1点が大切だからね

アゾカンの射手財力ある船乗り薄暮の賛美者

タフネスの点から見ると、この環境では、4が”魔法の数字”だ。ほとんどのクリーチャーが2か3のパワーを持っているからね。これはコンバットトリックを使わないと乗り越えられない壁であり、タフネスが4あるすべてのクリーチャーの価値は、一層高いものなんだ。

読んでくれてありがとう。

Marc

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