Translated by Kenji Tsumura
(掲載日 2017/12/12)
またひとつの週末が終わり、またひとつのトピックが生まれた。この度のトピックは素晴らしいニュースだ。ワールド・マジック・カップ2017 (以下WMC) が閉幕したわけなんだが、我々オーストリアチームは再びトップ8に入賞することができたんだ。
Top8!!!!!#MTGwmc #hareruya #hareruyapros
— Oli Polak-Rottmann (@polakrottmann) 2017年12月2日
旧式の世界選手権を除けば、これが俺にとってキャプテンとして参加する2度目のWMCとなる。過去の大会はいずれも素晴らしい体験だった。
グランプリ・リヨン2017
今年のWMCはフランスのニースで開催され、その前週にはグランプリ・リヨン2017も行われた。WMCのチームメイトは、選手権王者のエイリアス・クレッカー/Elias Klockerと、準優勝者であるエイドリアン・シュレンク/Adrian Schrenkだ。
フランス入りするまでチームメイトと直に会ったことはなかったものの、エイドリアンはハイレベルの大会に参加した経験がなかったこと、エイリアスはこれまでに2度のグランプリトップ8を記録し新シーズンで良いスタートを切ったことは知っていた。俺とエイドリアンは同じチームでグランプリ・リヨンに参加したし、エイリアスは違うチームで参戦していた。したがって、俺たちはこのフォーマットへアプローチするアイディアをたくさん学ぶことができたんだ。
11-3 #gplyon ; 10th place, a lot of fun and great practice for next week. My own 13-1 record ignited the for the #wmc #hateruya deck(4-1) pic.twitter.com/6FBx4C1ldV
— Oli Polak-Rottmann (@polakrottmann) 2017年11月26日
WMCの調整 ~ドイツ・フランスチームと共に~
グランプリ・リヨンが終わり、WMCの調整のためにドイツ・フランスチームと共にニースへと移動した。これまでに何度かドイツチームと一緒に調整したことはあったが、フランスとの共同作業は両国にとって初めての経験だった。ドイツとフランスのキャプテンはマルク・トビアシュ/Marc Tobiaschとピエール・ダジョン/Pierre Dagen。彼らは俺と同じHareruya Prosであり、来るチームプロツアーにおけるチームメイトでもある。そこで俺たちはWMCに向けて共に調整することに決め、正しいデッキが見つけられるように願った。
マルク・トビアシュとピエール・ダジョン
オーストリアは過去に2度WMCでトップ8に進出したことがあるし、フランスも1度の優勝を含む2度のトップ8を記録している。それゆえにオーストリアとフランスチームには大きな期待を寄せていたし、ドイツには昨年度の9位という成績を塗り替えたいと熱望しているマルクがいたんだ。
各国のキャプテン以外のメンバーには面識がなかったため、調整初日は自己紹介、そして各チームや各人のデッキ・スキルについてのアイディアを話し合うことにした。俺たちの共通の認識として、どこのチームも赤単を持ってくるであろうと考えていた。というのも、ティムールエネルギーをチームデッキに組み込むことがいささか困難である以上、赤単こそ最強の選択肢だと見なしていたからだ。
したがって、WMC本戦で多くのチームがティムールを選んだことに少しばかり驚いた。《反逆の先導者、チャンドラ》、《削剥》、《栄光をもたらすもの》といったカードを上手く分け合うのが非常に困難だと考えていたし、エネルギーシステムの基盤は十分すぎるほどに強力なため、他のバージョンに移行することは容易に思えたからだ。
全てのチームが赤単を使うと仮定すると、エネルギーデッキは大きな問題となる。スゥルタイ型、《静電気式打撃体》型、4色《豪華の王、ゴンティ》型、それにマルクスペシャル型を試した。《静電気式打撃体》型はすぐさま候補から外したものの、他の3つは妥当なデッキで、環境に存在する他のデッキに対して明確な強弱があるとも思えなかった。
そして “サードデッキ” は本当に問題児だった。最初のうちはサードデッキは青白副陽で決まりだろうと思っていたんだが、 “チーム共同デッキ構築・スタンダード” というフォーマットにおいてこれが正しい選択でないことは明白だった。
オーストリアのチームメイト2人は青白王神を高く評価しており、このデッキに多くの時間を費やした結果、赤単とのマッチアップを除けばかなり良いデッキという印象だった。そのため、我々はかなり早い段階で青白王神を使うことに決めて、エイドリアンは残りの時間を全て赤単との調整に充てることにした。調整の結果赤単との対戦を五分にまで持ち込むことができたし、青白王神という選択には満足している。
さあ、エネルギーデッキの話に戻ろう。ダジョンはスゥルタイを、マルクは彼独自のリストを、俺は《豪華の王、ゴンティ》入りの4色を好んでいたもんだから調整には多くの時間が必要だった。ここで重要となるのは、チームの中で誰がエネルギーデッキを使うかということだ。
青白王神に関しては俺よりも他の2人の方が経験豊富だったため、俺がこのデッキを使うという選択肢はなかったものの、俺たちのチームは未だに誰がどのデッキを使うかを決めかねていた。俺は全てのデッキで十分な練習を積んでいたため、俺自身が好きなデッキを使うことよりもチームメイトが使いやすいデッキを選んでくれることの方が重要だった。
エイリアスは赤系のデッキよりもエネルギーデッキを好んでいたから、俺が赤単を担当することになったんだ。もし俺がエネルギーデッキの担当ならスゥルタイを使っただろうが、エイリアスはマルクオリジナルの《奔流の機械巨人》型を使うことに決めた。
デッキはシートAに4色エネルギーコントロールを、シートBに青白王神を、そしてシートCに赤単を配置した。多くのチームはキャプテンがエネルギーデッキでB席に座ると仮定し、B席に赤単は少ないだろうと予想したんだ。青白王神にとって考えうる中で最悪だと思われるマッチが赤単だったため、王神をB席に置くことにした。
フランスは “青白サイクリング / 赤単 / スゥルタイエネルギー” を、ドイツは ” 4色エネルギーコントロール / 赤単 /マルドゥ” を使用することになった。3チームで一緒に調整したのに全チームが違う組み合わせに落ち着いたことは奇妙に思えたが、 “最適な3つの組み合わせ” よりも “各人が使い慣れたデッキ” を優先した結果だろう。
WMCではティムールを組み込んだデッキが優勝を収めたものの、それでもなおティムールを使わずに他のデッキを選んだ方が良かったと考えている。トーナメントレポートに移る前に、俺たちのデッキリストをご覧いただこう。
1 《森》
1 《山》
1 《沼》
1 《泥濘の峡谷》
1 《異臭の池》
4 《霊気拠点》
4 《植物の聖域》
4 《花盛りの湿地》
2 《竜髑髏の山頂》
1 《水没した地下墓地》
-土地(22)- 4 《光袖会の収集者》
4 《つむじ風の巨匠》
4 《ならず者の精製屋》
1 《豪華の王、ゴンティ》
2 《スカラベの神》
3 《奔流の機械巨人》
-クリーチャー(18)-
3 《否認》
2 《強迫》
2 《チャンドラの敗北》
2 《人工物への興味》
1 《豪華の王、ゴンティ》
1 《蓄霊稲妻》
1 《秘宝探究者、ヴラスカ》
-サイドボード(15)-
4 《ラムナプの遺跡》
4 《陽焼けした砂漠》
1 《屍肉あさりの地》
-土地(24)- 4 《ボーマットの急使》
4 《損魂魔道士》
4 《地揺すりのケンラ》
3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》
4 《暴れ回るフェロキドン》
1 《アン一門の壊し屋》
4 《熱烈の神ハゾレト》
-クリーチャー(24)-
ワールド・マジック・カップ2017大会レポート・初日
俺たちは戦う準備ができていた。そしてチームシールドのプールを受け取ったんだが、もらったパックは爆弾レアもマーフォークもない平凡な内容だった。残念ながらデッキの写真を撮るのを忘れてしまったが、俺たちは赤緑恐竜、 (吸血鬼ではない) 白黒コントロール、青赤海賊を組み上げた。
1回戦のペアリングを見にいくと、幸運にも1回戦は不戦勝だった。4勝しか必要のない初日に不戦勝がもらえるなんて、これ以上の幸運はないな。
不戦勝後は強敵であるJoel Larssonが率いるスウェーデンチームと当たった。俺はキャプテン同士の対決に敗れてしまったものの、チームメイト2人が勝利してくれたため、3-0という完璧な成績のためにはタイを倒すのみとなった。そこそこの引きでこの試合には敗れてしまったが、リトアニア、パラグアイと倒して必要だった2勝を成し遂げた。ドイツチームと共に4-1という十分な成績で2日目に進出したんだが、フランスは4-3という成績で不幸にも2日目進出は叶わなかった。
ワールド・マジック・カップ2017大会レポート・2日目
ステージ1ではスコットランド、そしてタイ、パラグアイと再び顔を合わせることになった。スコットランドとタイを相手に大接戦を制したことで、3回戦を戦わずしてステージ2へと進出することが決まった。
ステージ2ではイタリア、ブルガリア、そしてウルグアイと同組になった。1回戦目でイタリアとのハラハラするゲームに敗れてしまったため、ブルガリア、次いでトップ8を賭けてウルグアイと戦うはめになってしまった。
赤単ミラーマッチを即座に勝利してチームメイトに駆け寄ると、2人とも1本目を先取していたが、続く2本目を落としてしまった。俺はトップ8に進めることを切に願っていたが、ここからの20分間はここ何年かで最も長く感じる時間だった。しかしエイドリアンが3本目を勝ち取ったことでトップ8進出が決まった。
長い時間がかかったものの、ようやくプレミアイベントでトップ8に返り咲くことができたんだ。それにトップ8では先手が取れるような高い順位になるだろうと予想していた。ただし、結果として俺たちは6位通過だったために、日本を相手に後手で戦うことになってしまったんだ。勝つためには最善を尽くすしかないな。
Congratulations to the teams in places 5-8 of the #MTGWMC Top 8: Poland, Austria, China, and Slovakia! pic.twitter.com/E0f4hpC18D
— Magic Pro Tour (@magicprotour) 2017年12月2日
ドイツチームと夕飯に出かけ、お互いの準々決勝について話し合った結果、後手ではあるものの勝算のある挑戦だと感じられた。俺は青白王神という最高のマッチアップだし、エイリアスは《反逆の先導者、チャンドラ》の入っていない赤単と相見え、残る青白王神対ティムールだって最悪のマッチアップってわけじゃない。
不幸にも、あまりやりようがなかった試合を特に見どころもなく落とすこととなってしまい、エイリアスも同様に敗れたことによって、トップ8止まりでトーナメントを去ることとなった。
Herzlichen Gluckwunsch an Team Deutschland fur den 3. und Team Osterreich fur den 6. Platz von 73 Nationen! Eine wirklich tolle Leistung beim World Magic Cup! Vielen Dank fur das spannende Wochenende! #MTGWMC #TeamGermany #TeamAustria pic.twitter.com/r6Dmp2MIyu
— Magic Deutschland (@wizards_magicDE) 2017年12月4日
とはいえ、俺はこの結果に満足しているし来年もこの場所に戻ってこられることを願っている。
優勝を収めた日本チーム、そしてトップ8に残った面々はおめでとう!
楽しいクリスマスを!そして良いお年を!
オリヴァー