By Atsushi Ito
一体誰がここまでの躍進を予想できただろうか。
ティムール (4色)・エネルギーとラムナプ・レッドの2大トップメタが依然として高い支配率を誇るスタンダード環境で、髙野が持ち込んだのはまさかの「ティムール打撃体」。一般的な青緑2色やスゥルタイではなくティムールに仕上げているのは、攻撃力特化のためだ。
Hareruya Pros・齋藤 友晴が見出したことで知られる《暴力の激励》は、赤単がティムールに抗するための切り札として採用されたものだった。しかしそれをティムール・エネルギーベースのデッキで、前環境のように赤緑ベースならいざ知らず、《ならず者の精製屋》と《知識のカルトーシュ》を活用した青緑ベースのデッキにタッチしてインスタントの《気宇壮大》として使うというのは、対戦相手からしてみればなかなか予想できるものではない。その高い奇襲性により、ここまで何人もの対戦相手を辻斬りしてきたことだろう。
だがこの準決勝に来て、立ちはだかるのは大宮が駆るラムナプ・レッド。しかもスイス順位が8位の髙野は後手番スタートを強いられることになる。
エネルギーがなければただの3マナ1/1の《静電気式打撃体》は、《ショック》や《削剥》を連打されれば一溜まりもない。あと2勝で神への挑戦権が獲得できるというところで、メタゲームの番狂わせを目論む「ティムール打撃体」の真価が問われることとなった。
Game 1
マリガンしてしまった髙野は、先手の大宮の《ボーマットの急使》→《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》というぶん回りムーブに対して《霊気との調和》から《導路の召使い》を送り出すも、さらに《損魂魔道士》+《削剥》で処理されて苦笑いを隠さない。
だが、一方で4マナ目が引けていない大宮は続く《ならず者の精製屋》に対して《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を単体で攻撃に向かわせるだけに留める。
これを好機と見た髙野は《静電気式打撃体》を送りだし、エネルギーを9個とする。返す大宮は3マナを立ててターンを終了。
ついに《静電気式打撃体》がレッドゾーンへ向かう。当然《損魂魔道士》でブロックする大宮だが、髙野は《暴力の激励》。大宮はスタックで《ショック》を打ち込むのだが、髙野はさらなる《暴力の激励》!そして解決したのを見届けるや、10/10、20/20、40/40トランプルへと成長させる。
《ショック》、《暴力の激励》と、積まれていたスタックが逆順に解決され、2/3の《損魂魔道士》の上から39点の貫通ダメージが大宮に直撃した。
髙野 1-0 大宮
Game 2
再び髙野がマリガン。一方大宮は《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》から髙野の初動の《導路の召使い》を《稲妻の一撃》で除去しつつ《ボーマットの急使》を走らせるという順調な動きを見せる。
髙野は《ならず者の精製屋》でリソースを補充するが、今度こそ4マナ目に到達した大宮は《熱烈の神ハゾレト》を送り出す。まだアタックには行けないものの、次のターンからは破壊不能の神が髙野に襲い掛かる構えを見せる。
これに対し髙野は《霊気との調和》からサイドインの《沼》をサーチすると、《野望のカルトーシュ》を《ならず者の精製屋》に付けて《ボーマットの急使》を除去しつつ、絆魂でダメージレースを開始する。
返す大宮は《過酷な指導者》を送り出しつつ《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》と《熱烈の神ハゾレト》で8点殴り返すのだが、なおも髙野は2体目の《ならず者の精製屋》を送り出しつつ《蓄霊稲妻》で《過酷な指導者》を除去し、ライフを12対12まで引き戻す。
続く大宮のドローは《陽焼けした砂漠》。除去が引けておらず、このままでは殴り負けると判断した大宮は《熱烈の神ハゾレト》を立たせるが、返す髙野はなおも《ハシェプのオアシス》を起動して《ならず者の精製屋》2体でアタック、トランプルはないものの7点ゲインで自身のライフを15としつつ大宮のライフを9点まで落とし込む。
さらに守りに入った大宮に対し、髙野が引き込んだのは《つむじ風の巨匠》。使い道がなく溜まる一方だったエネルギーが4体の飛行機械・トークンへと結実する。
空からの4点アタックを受けて大宮のライフは5点。ラストターンのドロー……を、確認する前に髙野の「アップキープに」という声がかかった。
《ならず者の精製屋》に《顕在的防御》を打ち込んでからの《投げ飛ばし》!鮮やかすぎる勝利で髙野が決勝戦へと駒を進めた。
髙野 2-0 大宮