こんにちは!
先週末にThe Finals 2017に参加してきたのですが、幸運にも優勝することができました。
もうこの環境はもう遊びつくした!という方も多いかもしれませんが、今週末にはThe Last Sun 2017が控えていますし、まだまだ新セットが出るまでに大会に参加される方もいらっしゃると思いますので、今日はデッキリストができるまでの過程と各マッチのゲームプラン、そして松本 (郁弥) さんとのゲームの振り返りを中心にお届けしたいと思います。
グランプリ・上海2017からの変化
グランプリ・上海2017以降の主だった変化として、4色ティムールの減少と3色純正ティムールの増加が挙げられます。その理由としては、(1) 4色よりも3色の方がラムナプ・レッドに相性が良いこと、(2) 環境の変化に伴い《栄光をもたらすもの》の需要が増したこと、この2点が要因ではないかと思われます。
(1) 4色よりも3色の方がラムナプ・レッドに相性が良い
微々たる差ではありますが、3色の方がラムナプ・レッド系のデッキには勝ちやすいとされています。これは主にマナベースの差が原因で、3色の方が序盤からスムーズに動きやすく、なおかつ《霊気拠点》に注ぐ《エネルギー》の量も少ないため、《つむじ風の巨匠》や《逆毛ハイドラ》がその力を遺憾なく発揮できるからです。
《逆毛ハイドラ》の枚数が多いこともまた、4色よりも3色の方がラムナプ・レッドに相性が良いとされる要因でしょう。
(2) 環境の変化に伴い《栄光をもたらすもの》の需要が増したこと
《栄光をもたらすもの》は純正ティムールで最高の5マナ域とされていますが、グランプリ・上海2017以降に《川の叱責》がサイドボードカードとして定着していた時期があったことで、なお一層その評価を高めたと思います。
《川の叱責》はどんな状況からでも逆転が見込める素晴らしいカードですが、《栄光をもたらすもの》に対してはそれほど強いカードというわけではありません。
こちらとしては《川の叱責》をキャストするまでに可能な限り盤面を五分、またはそれ以上に保っておきたいところですが、《栄光をもたらすもの》はその「督励」能力をもってしてこちらの盤面を脆弱なものにしてしまいますし、「速攻」能力のおかげで《川の叱責》後のリカバリーも容易だからです。
また、《栄光をもたらすもの》はティムールミラーマッチで鍵となる《多面相の侍臣》、《慮外な押収》といったカードに対しても非常に強力です。
これらのカードは《栄光をもたらすもの》に対して悪くないように見えるかもしれませんが、どちらも “1回殴られたあとのアクション” です。そのため、これらのカードばかりを抱えていると対戦相手の《栄光をもたらすもの》連打に追いつくことが叶わず、ダメージレースを制するためには除去など他のアクションが必要になります。
以上の事柄を踏まえ、以前と比べて《栄光をもたらすもの》の使用枚数が大きく向上していると感じました。
実際にMagic Onlineでプレイしていても、4色よりも3色のティムールに負けることが多く、とりわけ《栄光をもたらすもの》への耐性の有無は非常に重要だと感じたため、この度はそれを意識してデッキリストを作ることにしました。
3色ティムールを意識したリスト作り
というわけで、 “《栄光をもたらすもの》に負けないように” をコンセプトに作ったのがこちらのリストです。
1 《山》
1 《島》
1 《沼》
2 《隠れた茂み》
4 《植物の聖域》
4 《尖塔断の運河》
3 《根縛りの岩山》
4 《霊気拠点》
-土地(23)- 4 《導路の召使い》
4 《牙長獣の仔》
4 《つむじ風の巨匠》
4 《ならず者の精製屋》
3 《逆毛ハイドラ》
3 《スカラベの神》
-クリーチャー(22)-
3 《否認》
2 《多面相の侍臣》
1 《マグマのしぶき》
1 《アズカンタの探索》
1 《野望のカルトーシュ》
1 《至高の意志》
1 《人工物への興味》
1 《自然に仕える者、ニッサ》
1 《王神、ニコル・ボーラス》
-サイドボード(15)-
参考にさせてもらったなべ君 (渡辺 雄也) のリストから大きな変化はありませんが、《慮外な押収》が入っていなかったりするのでその辺りのカード選択についてお話ししたいと思います。
《慮外な押収》なし
4色ティムールの《スカラベの神》、さらにはラムナプ・レッドの《熱烈の神ハゾレト》対策として最良の1枚である《慮外な押収》ですが、4色ティムール (と《スカラベの神》) の減少に伴い多少なりとも価値が下がったように思います。
前述の通り、3色ティムールに対しては “《栄光をもたらすもの》に1回殴られたあとのアクション” になるためあまり評価していませんし、現環境の《慮外な押収》は《熱烈の神ハゾレト》専用カードに成り下がってしまったように感じました。
また、《慮外な押収》をキャストした返しで《川の叱責》を打たれると投了したくなるほどのインパクトがあるため、5マナを払う価値はないと判断。
ここで空いた2枚の枠は、《逆毛ハイドラ》と《削剥》の3枚目にしました。
3枚目の《逆毛ハイドラ》
正直に言うとこの枠は何でも良かったんですが、サイドボードに《野望のカルトーシュ》を採用したかったので、それと相性が良い《逆毛ハイドラ》を増量することに。
3枚目の《削剥》
《削剥》は75枚に必ず3枚は入れる予定でしたし、エネルギー系のデッキ、ラムナプ・レッド、青白王神など、環境内の主要デッキに対して軒並み強いのでメインから3枚になりました。そのおかげでサイドボードに1枚スペースが生まれたので、《至高の意志》を採用することができましたね。
《スカラベの神》3枚
一般的には2枚のリストがほとんどですが、2枚でゲームをしていて《スカラベの神》を引きたいと思う瞬間があまりにも多かったので3枚に増量。《削剥》と同様に弱いマッチアップがありませんし、青白系のデッキに強い点も評価しています。
ここ1番でトップデッキして勝利したゲームが最低でも2回ありましたし3枚にしてよかったと思いましたが、なべ君曰く「もとのリストから黒いカードを増やすなら黒マナがもう1枚あった方がいい」とのことなので、《水没した地下墓地》を入れてこんなマナベースにした方が良いかもしれません。
《チャンドラの敗北》3枚
こちらも2枚のリストが多いですが、《栄光をもたらすもの》と《反逆の先導者、チャンドラ》に1番強いカードなので、3色純正ティムールに勝つためにたっぷり3枚。
当然ながらラムナプ・レッドにも強いカードですし、特に対戦相手が軽いプランでも重いプランでも万遍なく強い点が秀逸ですね。
今回はThe Finals本戦では3色ティムールに1回、赤系のデッキに6回 (ラムナプ・レッドに5回、デザート・レッドに1回) 当たったので、影のMVPと言えるカードです。
The Finals 2017本戦
ラウンド | 対戦デッキ | 勝敗 |
Round 1 | ラムナプ・レッド | 〇×〇 |
Round 2 | 青白サイクリング | 〇〇 |
Round 3 | ラムナプ・レッド | ×〇〇 |
Round 4 | 青白サイクリング | 〇〇 |
Round 5 | ラムナプ・レッド | 〇〇 |
Round 6 | 3色ティムール | 〇×〇 |
Round 7 | ID | |
Round 8 | ID |
ラウンド | 対戦デッキ | 勝敗 |
準々決勝 | ラムナプ・レッド | ×〇〇 |
準決勝 | ラムナプ・レッド | 〇〇 |
決勝 | デザート・レッド | 〇〇 |
という当たりで優勝。ラムナプ・レッドに《つむじ風の巨匠》を4枚引いた展開が2~3回あり、全体的についてました。
今回は動画が残っているので、せっかくなので準決勝の松本さん (ラムナプ・レッド) との試合を振り返ってみたいと思います。
※この記事はコヴァルスキ先生と先生の記事を全力でリスペクトしております(^_^;)
準決勝:松本 郁弥さんとの1本目
まず初めに、このゲームでは試合中に使用した《逆毛ハイドラ》、《スカラベの神》、《蓄霊稲妻》、《反逆の先導者、チャンドラ》を5ターン目にはすでに手札に持っていました (途中で引いた《霊気との調和》、《ならず者の精製屋》以外のカードは全部土地でした) 。
うろ覚えではありますが、2枚目の《逆毛ハイドラ》も5ターン目、遅くとも6~7ターン目までには引いていたと思います。僕の手札が分かっている方が色々と分かりやすいかと思いますので、ぜひこちらを念頭において読み進めていただければ幸いです。
ゲーム全体の流れ
松本さんは4ターン目に《熱烈の神ハゾレト》をキャストしましたが、手札を捨てれば攻撃できる場面にも関わらずしばらくの間攻撃してきませんでした。
この状態で手札に抱えておきたいカードは除去カードしかありません。つまり、こちらが大きく動かなければもうしばらくの間《熱烈の神ハゾレト》が攻撃にこない可能性が高いということです。
幸か不幸かこちらは《エネルギー》を3つ以上溜めた状態で《逆毛ハイドラ》をキャストすることができない展開だったので、とりあえずはクリーチャーを出さずに中盤戦をやりくりすることにしました。
10時間26分35秒:《暴れ回るフェロキドン》の対処
松本さんが《暴れ回るフェロキドン》をキャストした時点で、手札には《蓄霊稲妻》と《反逆の先導者、チャンドラ》の両方がありました。
ここで《蓄霊稲妻》ではなく《反逆の先導者、チャンドラ》の「-3」能力で対処したのは、(1) すでに《熱烈の神ハゾレト》が出ている以上《反逆の先導者、チャンドラ》を守り切るのが難しいこと、(2) 《蓄霊稲妻》は《逆毛ハイドラ》に使って《エネルギー》を溜めるプランを考えていたからです。
10時間30分40秒:《逆毛ハイドラ》でチャンプブロックしたシーン
松本さんが攻撃してきたときの僕の手札は、2枚目の《逆毛ハイドラ》、《スカラベの神》、《蓄霊稲妻》でした。
次のターンに《逆毛ハイドラ》をキャストすれば《エネルギー》が9個になることが確定していたので、《熱烈の神ハゾレト》を止められるタフネス6のクリーチャーが用意できることになります。
盤面が膠着したあとの明確な勝ち手段として《スカラベの神》も控えていたので、この場面で必要だったのは1番重要なリソースであるライフを温存することです。
《熱烈の神ハゾレト》は手札が少なくなければ攻撃にもブロックにも参加できないという能力の特性上、対戦相手の残りライフが多い状態で盤面が止まってしまうと劣勢を覆しづらいです。押し返す手段が《つむじ風の巨匠》の《飛行機械・トークン》であれ、《スカラベの神》であれこちらのライフが多いにこしたことはないので、ここではあまり悩むことなくチャンプブロックを選択しました。
後日談
ゲーム全体、または分岐点と思われるような場面で考えていたのはこんな感じです。
余談ではありますが、松本さんが《マグマのしぶき》を抱えていたのは全くの予想外でした。ラムナプ・レッドに《マグマのしぶき》が採用されていることは稀であり、もしも松本さんが《マグマのしぶき》を持っていたタイミングで《スカラベの神》をキャストしていたら負けていたと思います。
たまたま除去を使わせないようにクリーチャーをキャストしない展開だったのが功を奏しました。なお、松本さんの視点でのレポートもジョニーのお店に掲載されておりますので、お時間のある方はぜひそちらもご覧ください。
簡易マッチアップガイド
デッキリストが完成したのは当日の朝だったため、試す時間がなく自信がないマッチアップものもありますが、一応現在のゲームプランとサイドボーディングを掲載させていただきます。
赤系のデッキと青系のデッキに対してはあらかじめ入れ替えを決めてデッキを作った&The Finals本戦でもたくさんあたったのでそのままで問題ないでしょうが、対3色ティムール・4色ティムールの入れ替えには不安な部分もあるので、みなさまもこれを見た上で色々なパターンを試していただければと思います。
ラムナプ・レッド
対 ラムナプ・レッド
サイド後は《熱烈の神ハゾレト》以外には余裕をもって対処できると思います。ただし相手のデッキに《過酷な指導者》と《暴れ回るフェロキドン》の両方が含まれている場合に備えて、なるべく除去を温存するようにプレイできるといいですね。
相手が後手の場合は《栄光をもたらすもの》や《反逆の先導者、チャンドラ》が入っている可能性も高いので、《過酷な指導者》・《暴れ回るフェロキドン》・《栄光をもたらすもの》・《反逆の先導者、チャンドラ》のいずれが出てきてもいいように《チャンドラの敗北》が温存できれば理想的です。
青白サイクリング
3本目が終わるかどうか怪しいマッチアップなので、無理そうだと判断したら1本目はすぐに投了するようにしましょう。
対 青白サイクリング
サイド後は対戦相手にとって致命的なパーマネントが増えてグッと楽になります。青白サイクリングには《残骸の漂着》と《燻蒸》があるのでゲーム運びが難しいように見えるかもしれませんが、ある程度はこちらが望むタイミングでキャストさせることができるので、クリーチャーやプレインズウォーカーの展開の仕方を工夫してみましょう。
例えば敢えて《否認》のマナを残さなければ《燻蒸》を誘うことができますし、プレインズウォーカーを設置したい前のターンなどは思い切って動いてしまい《燻蒸》を誘うプレイも有効です。
《残骸の漂着》に対しては、《スカラベの神》だけは絶対に突っ込まないように注意しておけば大きな被害を被ることはありません。
とにかく相手が対処しづらいパーマネントをいかに設置していけるかが鍵なので、対処法が限られている《逆毛ハイドラ》と《スカラベの神》を餌に大ぶりなアクションを強制し、その隙にプレインズウォーカーなどをキャストできるといいですね。
3色ティムール
このマッチは大きく分けて、(1) 《逆毛ハイドラ》、(2) プレインズウォーカー、(3) 《栄光をもたらすもの》の3つが鍵になります。
(1) 《逆毛ハイドラ》に関しては、対処法として換算できる《逆毛ハイドラ》、《多面相の侍臣》の合計枚数が重要になります。対戦相手だけが《逆毛ハイドラ》をコントロールしていると、こちらのプレインズウォーカーは機能せず対戦相手のプレインズウォーカーは打ち落としづらいという最悪の状態になってしまうので、《逆毛ハイドラ》にはしっかりと対処できるようにしたいですね。
(2) プレインズウォーカーは先手と後手で評価が異なります。それが最も顕著なのは《自然に仕える者、ニッサ》で、後手ではサイドインすらしないというプレイヤーも多いと思います。ただし先手であれ後手であれ、更地の盤面に着地するプレインズウォーカーはゲームを決めてしまえるだけの力があるので、事前にプレインズウォーカーを牽制できるパーマネントを展開しておくか、最低でも対戦相手のプレインズウォーカーの返しで十分なインパクトを持つカードをキャストできるように備えておきましょう。
(3) 《栄光をもたらすもの》は、このマッチで最も警戒すべきカードです。対処が遅れてしまうとあっという間にライフ差が開いてしまいますし、「督励」後に対処してもカードカウントで損をしてしまいます。そのため、《多面相の侍臣》でコピーをしたいといった特殊な事情がない限りは、可能な限り戦場に出た瞬間に除去できるようにしておきましょう。
対 3色ティムール (先手)
対戦相手が後手の場合は《牙長獣の仔》を抜いてくるだろうと読んで、除去を少なめにしてプレインズウォーカーを牽制できる《逆毛ハイドラ》を残します。《栄光をもたらすもの》・《反逆の先導者、チャンドラ》さえしっかり対処できれば、長期戦ではこちらに分があるので《川の叱責》にだけ気を付けて速めに決着を付けるようにしましょう。
対 3色ティムール (後手)
逆に後手番は除去を全て残して《牙長獣の仔》に備えます。《牙長獣の仔》が残ってしまうとその後除去を構える余裕がなくなってしまい、対処が後手後手になりがちなので、2ターン目の《牙長獣の仔》は即座に除去しましょう。
4色ティムール
対 4色ティムール
黒単アグロ
あまり数が多くはないデッキかもしれませんが、Magic Onlineではよく当たる&注意点が1つあるので記載させていただきます。
対 黒単アグロ
メインボード戦は、ある程度ライフが残っている状態で《スカラベの神》か《秘宝探究者、ヴラスカ》までたどり着いてしまえばほとんどそれでゲームエンドです。
ただし《ヴラスカの侮辱》が入ってくるサイドボード後は事情が異なり、《スカラベの神》やプレインズウォーカーだけで勝てるのは稀で1枚目のフィニッシャーを対処されてしまったあとに息切れしないための工夫が必要となります。
サイドボード後の負け筋の半分以上はこちらの息切れと言っても過言ではないほどなので、《アズカンタの探索》など何かしら息切れしないカードを用意しておきましょう。
一見《アズカンタの探索》より《秘宝探究者、ヴラスカ》などの方が優れているように見えるかもしれませんが、《秘宝探究者、ヴラスカ》が登場するまで対戦相手の場に「機体」が残っていることは珍しいですし、《海賊・トークン》だけ出してすぐに《ヴラスカの侮辱》で対処されてしまう展開がほとんどでした。そのため対戦相手にとって最も対処が難しく、設置マナも軽く動きが安定している《アズカンタの探索》をサイドインするようになりました。
サイドボード後は相手も少し速度が落ちるので、とにもかくにも “息切れしないように” というのを念頭に置いてサイドボーディングを考えてみてください。
おわりに
The Finals 2017のレポートは以上になります。優勝という結果はできすぎ以外のなにものでもありませんでしたが、久しぶりに結果が出て嬉しかったです。
最後になりますが、応援してくださったみなさま、祝福の言葉をくださったみなさま、本当にありがとうございました。来年はグランプリやプロツアーでも結果が残せるようにがんばりたいと思いますので、これからも何卒よろしくお願い申し上げます。
ラッキーおじさんでファイナルズ優勝できました!たくさんのお祝いのメッセージありがとうございます!
— 津村 健志 (@KenjiTsumura) 2017年12月17日
来年はプロツアーでも結果が残せるよう精進していきます応援&祝福ありがとうございました! https://t.co/4H5EXRnAt8
それでは、また次回のブログで!
コガモ