青単《死せる生》を予言する

Pierre Dagen

Translated by Kenji Tsumura

原文はこちら
(掲載日 2017/12/27)

イントロダクション

やあ、また会ったな。

今日はここ最近Magic Onlineで大量発生しているデッキの詳細についてお話ししよう。”大量発生” というのはこれがモダンで肝心なデッキってことを意味するわけじゃないし、おそらくこれまでにこのデッキに関して聞いたことすらないプレイヤーだっているだろう。だがここ1ヶ月かそこらで、俺は少なくとも異なる4つのバージョンと対戦した。

数名の競技プレイヤーもこのデッキを支持しており、その中には良き友人でありMOCS優勝者であるマグナス・ラント/Magnus Lanttoも含まれている。

このデッキがどれほど優れているのかだって?それについてはこれから話していこうじゃないか。しかしこのデッキは紛れもなく刺激的で斬新なデッキだ。なおかつ直線的なカードを減らすことで、対応するのが難しくなっている。

噂の新デッキ

これは “青単色の《死せる生》デッキ” だ。君が思った通りにな。青単色の《死せる生》デッキを作る上で鍵となるのは、《予言により》とモダン環境で最高の0マナ呪文である《死せる生》《祖先の幻視》の2種を悪用することだ。

死せる生予言により祖先の幻視

この形にはいくつかの利点がある。まず《予言により》を解決すれば、即座に “待機” カードをキャストできることだ (普通に考えたらそれは3ターン目だろうな) 。仮にこれらのカードを引けなかったとしても、《予言により》の “時間カウンター” は増え続けるし、 “待機” カードを引いた瞬間にコンボが完成する。

逆に《予言により》を引けない、または解決できない場合には、依然として君は《祖先の幻視》を “待機” することができる。これはいつだって悪くないオプションだよな。言い換えるなら “このコンボ” は実は即座に両カードを引く必要がないんだ。そのおかげでデッキの信頼性は大きく向上しているし、ひどい手札がくる可能性も下がっている

意思切る者秘法の管理者通りの悪霊縞カワヘビ

墓地を肥やすためには、古典的な《死せる生》デッキがそうしていたように《秘法の管理者》といったデカブツを “サイクリング” する。これにより墓地には《死せる生》で戻ってくるクリーチャーを落とせるし、《死せる生》を引きやすくなる。典型的な《死せる生》と異なり、このデッキは《死せる生》を “続唱” で導く必要がない。つまるところ3マナ以上のカードしかプレイできないという制約がなくなっていて、どんなカードでもデッキに入れることができるんだ。これはこの構成の大きな利点と言える。

このバージョンはよりスムーズで適応力に富み、爆発力にこそ欠けるものの安定性の増した《死せる生》と考えることができるだろう。対戦相手に干渉する手段は増えているし、手札から唱える都合上《死せる生》を引くことにも何ら問題がないため、元祖《死せる生》と比べて悲惨な手札を抱えることもなくなっている。さらには4枚の《謎めいた命令》を含めて終盤戦に強いカードが豊富なため、コンボを妨害してくるカードに対しても十分な備えがあると言える。

謎めいた命令

4

一方で、コンボを成立させるのは以前よりもかなり難しくなっている。(A) 過去のリストが実質 “続唱” カードだけの1枚コンボだったのに対し、このリストでは《予言により》《死せる生》の両カードを引く必要がある。(B) 《予言により》《死せる生》は4枚ずつしか入れられない。青単がそれら2枚のカードを使って達成するコンボを、従来のリストでは “続唱” カード1枚で実現でき、なおかつそれは8枚採用できた。言い換えるのなら、より多くの持続性やオプションと引き換えに、速度を犠牲にしているということだ。

暴力的な突発悪魔の戦慄

このデッキをプレイすべきだろうか?

この質問に簡単に答えることはできない。このデッキは間違いなく実戦レベルだが、改善すべき弱点があることも確かだ。現状のままでも、従来の《死せる生》と比較して明確に優れているマッチアップが少しばかり存在する。コントロールデッキ全般、そしてほぼ全てのミッドレンジデッキがこれに該当するだろう。打ち消し呪文が多く、自身のコンボ達成まで対戦相手を抑え込んでおける可能性が高いため、普通に考えてコンボデッキに対しても相性が良くなっているはずだ。

つまり、打ち消し呪文やコントロールの要素が重要なマッチアップにおいては、速度面で失ってしまったもの以上に大きな利益があるということだ。青白コントロール、ブルームーンなんかが正にそれだな。以前は勝てないほどに相性が悪かった青赤ストームやタイタンシフトといったデッキも相性が改善されているだろう。

これらのマッチアップでは3ターン目までにコンボが揃うかどうかを気にする必要がないし、コンボパーツ以外のカードを引いても歓迎できる。なぜなら (A) それらは必要であれば “サイクリング” できるし、(B) 対戦相手がクリーチャーを出していなければ質の悪いクリーチャーでも攻撃することが可能だし、 (C) 打ち消し呪文の場合は賞味期限が十分長いからだ。

ギデオン・ジュラ血染めの月ぶどう弾原始のタイタン

他方で、青単バージョンは従来のバージョンと比べてコンボを達成するのが非常に遅い。そしてこれはクリーチャーベースの攻撃的なデッキに対して良くない変更だ。親和、人間、《死の影》、バーンといった、序盤からかなりの圧力をかけてくるデッキと対峙する際にはとてもじゃないが勝てそうにない。それらのデッキがやりたいことを妨害するには打消し呪文ではあまりにも非効率的だし、必要なターンまでにコンボをセットアップするのはかなり難しいからな。

電結の荒廃者教区の勇者死の影大歓楽の幻霊

これらプレッシャーに晒されるマッチアップにおいては序盤に負けてしまうため、終盤戦での強さは何の意味も持たない。それにもしも序盤の攻勢から生き残ることに成功したとしたとしても、墓地対策カードに負けてしまう可能性だって十二分にある

このデッキは基本的にたくさんのカードを引くことができるが、それらのカードは極めて影響力が低いことが多い。3ターン目に《予言により》《死せる生》を揃えるという夢に多くを捧げているため、それ以外のプランを実行する術が乏しいんだ。

例えば、俺は青単《死せる生》相手にこんな勝ち方をしたことがある。こちらのドローは平凡そのもので、2ターン目に《安らかなる眠り》をキャストし、5ターン目に普通にキャストされた《秘法の管理者》に対して《流刑への道》を唱えてからその他のカードをプレイし始めたんだ。その間に対戦相手がしていたことと言えば、3枚の《祖先の幻視》で9枚もの追加のカード (!) を引いたものの、彼は更なるドロー呪文や重たいデカブツしか引くことが叶わず他のゲームプランを実行するには至らなかった

安らかなる眠り

このことで俺はとても心配になった。とりわけ、もっと慎重な構築をしていれば向けられた対策カードを余裕で対処できるであろうほどのドローエンジンをすでに有しているということを鑑みればな。

このデッキを改善すべきだろうか?

青単《死せる生》デッキに関してかなり悪い意見を持っているように見えるかもしれないが、このデッキがプレイするに値しない紙の束だと思っているのであればわざわざ記事を書いたりはしない。悪い側面があるのは確かだが、引き増し呪文・《予言により》《死せる生》というこのデッキのエンジンの中核はとても一貫性がありそれほど多くの枠を必要としないんだ。そのため、俺はこのエンジンの中核のみを残し、より良いリストを作れないものかと考えた。

まず初めに、青単色のままである必要性はない。なぜならば同じギミックを採用し続ける限りは今以上の爆発力は望めないし、それならばコンボが揃うまで対戦相手を妨害する手段が必要になるからだ。我々が欲する妨害手段はモダン環境にはあるものの、ひとつとして青には存在ない。思い付いた中で最良のカードは《岸の飲み込み》だが、これは期待外れだった。

《岸の飲み込み》がダメな理由

(A) カードが弱い。

(B) 4マナのカードは遅すぎるし、これを考慮しながらプレイするのは簡単 (《翻弄する魔道士》なんて咳きこんじまうよな) 。

(C) たくさんの軽いクリーチャーが4ターン目までにパワー5を超えてしまう。《頭蓋囲い》《タルモゴイフ》、ライフが9未満の《死の影》などなど。

翻弄する魔道士頭蓋囲い岸の飲み込みタルモゴイフ死の影

もちろん色を足せばマナベースは悪化するだろう。だが公平に言って、このデッキは青単色であることによってそんなに大した利益を享受しているようには思えない。単色のおかげで入れられるであろうお得な特殊地形たちは実のところ全くの役立たずで、なぜならその得によって君が何かをできるようになるわけではないからだ。そして君のやりたいこと (《予言により》《死せる生》) が大したマナ拘束を要求しない以上、2色目を足す余裕は十分にあると言って差し支えないだろう。

緑を除く他の色は、どの色もこのデッキで上手く機能するオプションを与えてくれる。俺のお気に入りは黒だ。このデッキの全体的なゲームプランとよく噛み合う《叫び大口》があるし、必須というほどではないが《バントゥ最後の算段》もある。これは驚くほど《予言により》と上手く機能するだろう。

叫び大口バントゥ最後の算段

白にも《前兆の壁》《反射魔道士》といった “戦場に出たとき” に誘発する能力を持ったクリーチャーがいるため、黒と同様に魅力的な色だ。

前兆の壁反射魔道士

さあ、それを踏まえると何を抜くべきだろうか?そうなんだ。続いての理論は数枚の “サイクリング” カードを減らすべきというものだ。とりわけ自分の首を絞める可能性があり、なおかつキャストすることができない《通りの悪霊》はその筆頭と言える。こいつを抜いてしまうと3ターン目に《死せる生》をキャストし、その時点で勝つことは難しくなるだろう……だがそれがどうしたって言うんだ?

通りの悪霊

干渉の手助けになってやがて墓地に行くことになったり、あるいはそれ自体が単体で十分優秀であるようなクリーチャーをデッキに入れておくということは、有効札を毎ターンきちんと引き入れられるという単純な恩恵によって長期戦を勝ちきるための手段になる、ということを意味している。

スタンダードの青白王神を見れば、それがこのプランを実行しているデッキだと分かるはずだ。盤面を止めるためにクリーチャーをキャストし、最終的にそれらのクリーチャーは墓地に落ちるんだ。 (必要とあらば全体除去呪文を使って、クリーチャーが墓地に落ちるのを助けることもできるだろうな……) 。

博覧会場の警備員機知の勇者発明の天使

こうすることで君のコンボエンジンは素晴らしい価値を実質的に2回生み出すことになり、序盤の猛攻を凌ぎ切った末に負けなくなるだろうし、これは対戦相手がコンボを妨害してきたときにも役に立つだろう。

君はこのデッキについてどう思う?

ピエール・ダジョン

この記事内で掲載されたカード

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