(掲載日 2018/01/16)
みなさん、こんにちは。
個人的に、マジックで最も好きなことは新しいアイディアを探すこととデッキを作ることです。まだ終わりを迎えておらず、新たな発見の余地があるフォーマットをプレイしているときは良い気分です。それに、自分が作ったデッキで大会に参加するのは喜ばしいことですよね。
オリジナルデッキと対峙する相手は、暗闇の中でプレイするようなものです。それによって対戦相手はミスプレイをするかもしれませんし、間違ったサイドボーディングをしてしまうかもしれません。そして、ゲームの間にあなたのデッキに何が入っているかを予測するのは難しいでしょう。
最たる例 : 私がプロツアー「テーロス」で使用して優勝した「青単信心」デッキや、ラファエル・レヴィー/Raphael Levyと私が使用した土地から赤マナが出せないにもかかわらず2枚の《炎呼び、チャンドラ》を採用した「白緑トークン」デッキ。《炎呼び、チャンドラ》は人々を驚かせ、私たちが本来勝ちえなかったゲームで勝利をもたらしてくれました。ラファエルはそのデッキでグランプリ・マンチェスター2016を優勝しています。
私はモダンのメタゲームが好きです。私たちはいくつもの素晴らしいデッキを使うことができます。現時点でいくつかのデッキは人気がありませんが、私見では十分な努力をすればそれらのデッキでも大会で勝つことができると思います。
モダンではミラディンブロックと基本セット第8版、それに14年分のマジックのカードを使用することが可能です。これは新しいアイディアを探したり、デッキを作ったり、特定のアーキタイプを改善することができるだけの広大なカードプールです。
本日は「白黒《小悪疫》」に焦点を当てていきたいと思います。これは決して新しいデッキではありませんが、まだまだ未開拓で最適な構成が見出されていないデッキです。
このデッキを好んでいるのは、このデッキの持つサイドボードの可能性です。モダンでは、多くの種類のサイドボードカードや対策カードにアクセスすることができます。私にとって、黒と白はその中で最良の色です。
「発掘」デッキに対する《安らかなる眠り》や《虚空の力線》、「親和」デッキに対する《石のような静寂》や《斑岩の節》、「バーン」デッキに対する《集団的蛮行》など、各デッキに対してこれ以上の対策カードがあるでしょうか?白黒のデッキはサイドボード後に多くのデッキにとって悪夢となりえるのです。
ただし、自身のゲームプランはしっかりと持っておかなければいけませんし、メインボードをどのような形にするのかを決めなければいけません。
デッキ
最初は古典的なリストからスタートしました。《小悪疫》と、それを上手くサポートできる《悪臭の荒野》、《トロウケアの敷石》、《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》という3種類の土地を採用していました。
このデッキは《小悪疫》、《ヴェールのリリアナ》、《密輸人の回転翼機》、《集団的蛮行》といったカードで手札を捨てることができます。これが墓地から価値を生み出す《恐血鬼》や《未練ある魂》を採用している理由です。
デッキの他の部分は、《致命的な一押し》、《コジレックの審問》、《思考囲い》などの軽くて素晴らしい黒いカードで構成されており、フィニッシャーとして《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を使用しています。
白黒《小悪疫》 ver.1
1 《平地》
4 《神無き祭殿》
4 《乱脈な気孔》
3 《秘密の中庭》
3 《悪臭の荒野》
4 《トロウケアの敷石》
3 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
-土地(24)- 4 《恐血鬼》
-クリーチャー(4)-
4 《コジレックの審問》
3 《思考囲い》
4 《小悪疫》
1 《集団的蛮行》
4 《未練ある魂》
1 《残忍な切断》
3 《密輸人の回転翼機》
4 《ヴェールのリリアナ》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
-呪文(32)-
このバージョンでは悪くない結果を手にしましたが、良い結果というほどではありませんでした。マナベースは信じられないほど良かったものの、いくつか明確な弱点が浮き彫りになったのです。私はこのデッキを妨害デッキやコントロールデッキとみなしており、攻撃的なデッキだとは思っていません。したがって、《恐血鬼》によって得られる価値は非常に小さなものでした。プレインズウォーカーを守るというゲームプランにおいて、《恐血鬼》の “ブロックできない” という欠点は致命的です。
純粋なコントロールデッキと対峙しているのでもない限り、《恐血鬼》は多くのマッチアップで活躍するとは思えません。ゲームに勝利する方法は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》であり、《恐血鬼》で数点のライフを削ることではないのです。
《恐血鬼》と《未練ある魂》を同じデッキに入れると、墓地対策カードがとても効果的になってしまいます。すでにメタゲーム上には「発掘」、「青赤ストーム」、「グリクシス《死の影》」といった墓地を使うデッキがあり、これは私が避けたいと考えている事柄です。また、あなた自身がサイドボードに《安らかなる眠り》を入れようと考えているのであれば、間違いなく墓地に依存するカードを8枚も入れない方がいいでしょう。
《恐血鬼》を抜いた場合は《密輸人の回転翼機》を起動するためのクリーチャー数が十分とは言えず、《密輸人の回転翼機》で捨ててインパクトのあるカードも減ってしまいます。では、《恐血鬼》と《密輸人の回転翼機》を抜いた枠に何を採用すべきでしょうか?
私たちは他の勝ち手段となるカードを探していますが、それだけとは限りません。このデッキには自身の手札を捨てる効果を持つカードがたくさんあるため、本来はサイドボードであるカードをメインに採用して相性最悪のマッチアップに備えることができます。もしもそれが必要でないマッチアップなら、捨ててしまえばいいのです。
最も相性が悪いマッチは明らかに「発掘」です。また、前述の通りモダンで墓地を悪用するデッキは「発掘」だけではありません。そこで、2枚の《安らかなる眠り》と1枚の《ルーンの光輪》をメインボードに採用することにしました。「探査」コストは使いづらくなることを加味して、《残忍な切断》を《喉首狙い》へと変更しています。また、《密輸人の回転翼機》がなくなってしまったことによる手札を捨てる効果を補完するために《集団的蛮行》を1枚加えました。
代わりの勝ち手段として、2枚の《金切り声の苦悶》と1枚の《試練に臨むギデオン》も用意しました。プレインズウォーカーのルール変更のおかげで、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》と併用できるのは素晴らしいですね。
メインボードの変更点:
In
Out
サイドボードの変更点:
白黒《小悪疫》 ver.2
1 《平地》
4 《神無き祭殿》
4 《乱脈な気孔》
3 《秘密の中庭》
3 《悪臭の荒野》
4 《トロウケアの敷石》
3 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
-土地(24)- -クリーチャー(0)-
4 《コジレックの審問》
3 《思考囲い》
4 《小悪疫》
2 《集団的蛮行》
1 《喉首狙い》
4 《未練ある魂》
2 《金切り声の苦悶》
2 《安らかなる眠り》
1 《ルーンの光輪》
4 《ヴェールのリリアナ》
1 《試練に臨むギデオン》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
-呪文(36)-
このバージョンでは勝率を上げることができました。《安らかなる眠り》が強いというわけではなく、何の仕事もこなさなかった《恐血鬼》と《密輸人の回転翼機》が抜けたことが主な要因でしょう。
どんなカードをデッキに入れるのであれ、これら7枚のクリーチャーよりもそれらのカードの方が良い可能性があります。代わりに入れた《試練に臨むギデオン》、《ルーンの光輪》、《安らかなる眠り》は私に勝利をもたらしてくれました。《金切り声の苦悶》は可愛らしいカードではあるものの、《恐血鬼》と同じ問題を抱えています。このカードは対戦相手のライフを消耗させますが、実際のフィニッシャーは《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》なのです。
事前の予想通り、メインボードよりもサイドボード後のゲームでより多くの勝利を手にしました。使用できるサイドボードカードはきわめて優れていたのです。
私は《大爆発の魔道士》を何度となくサイドインしました。「トロン」や「《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」に対しては、《小悪疫》が唯一の土地破壊呪文であることから1本目では苦戦を強いられますが、そこに《大爆発の魔道士》があれば幾分かマシになります。《大爆発の魔道士》は他のマッチアップでも使用しましたし、多くのデッキに対して素晴らしいカードだと感じました。次なるバージョンではメインボードに試してみたいと考えています。
「発掘」に対して《安らかなる眠り》ほど有効ではないとしても、《外科的摘出》はより多目的なカードでたくさんの用途に使うことができます。《大爆発の魔道士》で破壊した《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》や《ウルザの塔》に対して使用したり、手札破壊や除去した《死の影》を全て追放することもできます。それに《安らかなる眠り》とは異なり、自身の《未練ある魂》と対立してしまうこともありません。
このデッキで試してみたいと思った勝ち手段が《苦花》です。これは2マナのプレインズウォーカーのようなもので、《ヴェールのリリアナ》や《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を守るのに役立ちます。全てのマッチアップで良いカード、というわけではありませんけどね。ライフ回復手段が《乱脈な気孔》しかない以上、《苦花》を2枚プレイしたくはありません。まずは1枚から試してみて感触が良いようであれば増量し、引いてしまった2枚目以降は手札を捨てる効果で有効活用したいと思います。
《試練に臨むギデオン》は悪くありませんでしたが、《大爆発の魔道士》を3枚追加したのでマナカーブに気を配らなければなりません。
《ルーンの光輪》は素晴らしいカード (詳しくはこちらの記事をご覧ください) ですが、たくさんのプレインズウォーカーと併用すると弱いカードになりかねません。《ぶどう弾》や《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》といったカードを指定したときは素晴らしいカードですが、クリーチャーを指定した後にそのクリーチャーを殺さなければいけないなんて馬鹿げています。《ルーンの光輪》はサイドボードに1枚あればいいと思います。
大量の《安らかなる眠り》をプレイする代わりに、4枚の《虚空の力線》を試してみたいです。ゲーム中に引いてしまった2枚目以降の《虚空の力線》は、例によって手札を捨てる効果に充てしましょう。
《暗黒破》は《貴族の教主》と《極楽鳥》を使ったデッキや、「親和」に対して素晴らしいカードです。「発掘」によりデッキを掘り進めることで《未練ある魂》を見つけることだってできますが、3枚目の《斑岩の節》を追加したため《暗黒破》が必要かどうか確信が持てません。
こちらが次に試してみようと考えているリストです。
メインボードの変更点:
In
Out
サイドボードの変更点:
In
Out
白黒《小悪疫》 ver.3
1 《平地》
4 《神無き祭殿》
4 《乱脈な気孔》
3 《秘密の中庭》
3 《悪臭の荒野》
4 《トロウケアの敷石》
3 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
-土地(24)- 3 《大爆発の魔道士》
-クリーチャー(3)-
4 《コジレックの審問》
3 《思考囲い》
2 《外科的摘出》
4 《小悪疫》
2 《集団的蛮行》
1 《喉首狙い》
4 《未練ある魂》
1 《苦花》
4 《ヴェールのリリアナ》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
-呪文(33)-
まとめ
このデッキは明確にありえる選択肢かつ十分に競技的です。「白黒《小悪疫》」はどんなデッキにだって打ち勝つことができると感じた半面で、自滅してしまうこともあると思いました。
《小悪疫》をキャストする際に、《トロウケアの敷石》があるかどうかで大きく事情は異なります。自身の土地を破壊してしまうことは悪影響を及ぼすことがありますし、とりわけ《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をキャストしようとしているときはそれが顕著になってしまいます。
大会に向けてデッキを選ぶにあたり、新しいものを取り入れたり個性を出すことで対戦相手を驚かせることができ、大きなアドバンテージを得られるでしょう。ただし、自分自身に正直になり、そのデッキが十分ではないと思うのであればそれを使用しないでください。
目的はあくまで対戦相手を罠にかけることです。ダメなデッキを使って自ら罠にかかるようなマネはしないように。
この記事をお楽しみいただければ幸いです。
ジェレミー・デザーニ