モダンの禁止改定について -解禁された恐るべき4マナ域たち-

Pierre Dagen

Translated by Atsushi Ito

原文はこちら
(掲載日 2018/02/16)

多くのプレイヤーにとって衝撃的だったかもしれない出来事として、最近の禁止改定でウィザーズ社はモダンフォーマットにおいて何ら新たな禁止カードを出すことはなかった。ルイス・サルヴァットがプロツアー『イクサランの相克』で優勝したことで、《洞察のランタン》についての多くの不満が噴出したにもかかわらず、だ。

むしろ実際には、その正反対のことが行われたと言っていい。彼らはマジック史上で最も神話的な (まあ1枚はアンコモンだが) 4マナ域2枚を解禁することにしたのだ。そう、《血編み髪のエルフ》《精神を刻む者、ジェイス》は今やモダンリーガルとなった。

解禁に至った背景はこちらに書いてあるが、SNSに批判を書き込む前に一読してみる価値は十分にあると俺は思う。だが、君たちが本当に聞きたいのはもちろん他ならぬこの俺の意見だよな?……って、冗談だよ。てなわけで、解禁されたカードを急いで借りる算段を立てる前に (いや、別に実際はそんな必要はないけどな) 、早速この解禁が今後のモダン環境にどういった影響を及ぼしていくのかを考えてみるとしよう。

《血編み髪のエルフ》

血編み髪のエルフ

《血編み髪のエルフ》がモダンの禁止リストに名を連ねたのは、ジャンドが環境において支配的すぎると考えられた頃のことだった……そして、実際に支配的ではあった。当時はまあ当然だろうと思えたが、しかしその禁止の内容自体には全くもって賛同することはなかった。なぜなら、その頃ジャンドは《死儀礼のシャーマン》を使うことができたのであり、そしてそれこそジャンドに過大な成功を収めさせていた真のぶっ壊れカードだと俺自身は考えていたからだ。

アグレッシブなカードとしてデザインされている割に (3/2速攻でブロックすることはそんなに多くないだろうからな)、《血編み髪のエルフ》ミッドレンジのグッドスタッフにおいて重宝されるカードの典型例だ。単純にカードアドバンテージで得をすることはもちろん、シチュエーションを選んだりシナジー偏重だったりしないような、本質的にカードパワーが高いカードと組み合わせることで、より高い効果を発揮するからだ。一例として、《タルモゴイフ》《突然の衰微》《ヴェールのリリアナ》といったカードを想起して欲しい。

また、サイドボード後もデッキの性能を引き上げてくれる。《血編み髪のエルフ》をプレイするたび、3マナ以下のサイドカードにアクセスできる可能性があるからだ。他にも、うまく構築すれば狙ったカードを「続唱」で確実にめくることすらできる。たとえば簡単な例として、アグロ相手のサイド後にデッキの中の3マナ以下のカードをクリーチャーと除去だけにすることなどが挙げられるだろう。こうすることで「続唱」でそれらが確実にめくれるようにし、追加で1体のブロッカーが出てくるか即座に除去を打てるかで、いずれにせよ1枚で2体のアタッカーを対処できるようになる。

では、解禁は早まったのだろうか?ある部分ではそうとも言える。というのは、こうしたカードは時を経るごとに強さを増していく性質があるからだ。「続唱」でめくれるカードの質は上がり続ける宿命にあるわけだからな (たとえば、《血編み髪のエルフ》から《コラガンの命令》をめくってるやつがいたらまるでアドバンテージの神のような動きに腰を抜かしそうになるよな)。また、《血編み髪のエルフ》から《祖先の幻視》というレガシー級のコンボの可能性も見えてきている (《血編み髪のエルフ》が使えた頃は《祖先の幻視》は使えなかったので、それがモダンにおいてどれほどのものかはわからないが)。

とはいえ、実のところ俺自身はそこまで心配しちゃいない。「続唱」を機能させるためにはデッキ構築段階で様々な種類のカード、たとえばカウンター呪文や限られたシチュエーションにおいてしか機能しない呪文の採用を諦める必要が出てくるし、そうしたカードを使わないグッドスタッフというのは、どうあれフェアなデッキとなりがちだからだ。

さて、《血編み髪のエルフ》によってめちゃくちゃ強いミッドレンジが誕生する可能性があるだろうか?もちろん答えはイエスだろう。では、再び「エルドラージの冬」をもたらす可能性は?はっきりとノーだ。

《精神を刻む者、ジェイス》

精神を刻む者、ジェイス

この「史上最強のプレインズウォーカー、ジェイス」の帰還は、多くの人にとって《血編み髪のエルフ》よりもはるかに恐ろしい事態のようだ。その理由は俺の見たところ、《精神を刻む者、ジェイス》はモダンというフォーマットが始まったその瞬間から禁止リストに名が連なっていたカードであり、歴代でも最も強力なマジックのカードの1枚としてたびたび名前があがる上に、レガシーでも当たり前にプレイされるほどのパワーを持っている、といった点に帰着する。また、たとえば俺が君たちのドローの内容を操作することも許されることになる (ニュアンスが伝わったかな?そう、俺は《精神を刻む者、ジェイス》を使う側なので、君たちはぜひ《血編み髪のエルフ》の方を使うといい) という、退屈なゲームの勝ち方を実現する1枚でもある。俺が耳にしたのはそういった意見の数々だ。

だがはたして、このカードは強すぎるのだろうか?俺は怪しいと思っている。戦場に出たときにもたらす即時の影響としては、《思考を築く者、ジェイス》 (こいつが強すぎるなんて話にならないことについては誰でも賛成できると思う) と比べてそこまでかけ離れて著しくデカいってわけでもない。確かに時間が経てば遥かにヤバい事態にはなりうる、というのも3ターンごとじゃなくて毎ターンカードアドバンテージを得られるわけだからな。そういうわけでもちろん、《精神を刻む者、ジェイス》が対処されなければいずれはゲームに勝利することになるだろう。だがそれは大体どの4マナ域のプレインズウォーカーでも一緒じゃないか?

俺の考える《精神を刻む者、ジェイス》の強さとは、戦場に降臨させたときのそれ自体の能力の強さにあるわけではないと思う。むしろこのカードの強さとは、仮に弱いカードやシチュエーション限定的なカードを引いたとしてももはやそれを頑張ってプレイしようとしなくても良くなるという点と、それゆえにデッキ構築の自由度の幅が圧倒的に広がるという点にある

ありったけの単体除去をぶち込んだデッキを使いたいけれどもトロンが倒せない、そんなときはどうすればいい?《精神を刻む者、ジェイス》を使えばいい。純正コントロールを使いたいけれども序盤に何もしない《アズカンタの探索》を初手で引いてしまうと毎回負けてしまう、そんなときはどうすればいい?《精神を刻む者、ジェイス》を使えばいい。コントロールプランをバックアップにした青赤《裂け目の突破》デッキが使いたいけれどもどうしたって手札に《稲妻》《引き裂かれし永劫、エムラクール》がチグハグに共存してしまう、そんなときはどうすればいい?《精神を刻む者、ジェイス》を使えばいい。

いずれにせよ、4マナ域のカードにして戦場に即時の影響をもたらすことができ、ドローエンジンとして機能し、ボードコントロールの材料となり、ときに一つの (もしくは唯一の) 勝ち手段ともなりうるというのは、1枚のカードが持つ能力としては破格のもので、仮にそれ自体が強すぎるというほどではないにせよ、基本的にあらゆる青いデッキを強化するカードであることは間違いない。となるとただでさえ青がかなり強い現状、若干危ない予感がするってのは認めざるをえないようだ。

誕生した新たな選択肢

さて、上記のような考察を経たわけだが、何か新しいアイデアが生まれる可能性はないだろうか?もちろん大アリだ。《血編み髪のエルフ》については、ジャンドには言わずもがな入るだろうが、まあそれは後で触れる (「主な勝ち組デッキ」の項目を見てくれ) としよう。俺の考えでは他にも、今のところはまだあまり試されていない2種類のアプローチにつながる可能性がある。

血染めの月タルモゴイフ不屈の追跡者

一つ目は赤緑《血染めの月》デッキで、最近では《血染めの月》と土地破壊による純粋なマナ拘束デッキとして構築されているコンセプトがそれに当たる。言わせてもらえば、現状のこのコンセプト自体は別にそんなに良いものではない。《血染めの月》を着地させられなかったり、《血染めの月》が効かないマッチアップではこのデッキの強さは半減してしまう。

だがそこに《血編み髪のエルフ》が加われば、見違えるほど素晴らしくなる可能性がある。「続唱」で《血染めの月》の着地確率を上げられる上に、サイド後には《タルモゴイフ》《漁る軟泥》《不屈の追跡者》 (さらなるアドバンテージにつながる!) をめくれるということでアグロプランへと変形することもできるようになるからだ。そういうわけで、研究の余地は十分にあると思われる。

祖先の幻視反射魔道士聖遺の騎士

二つ目の選択肢としては、創造性を発揮したい人向けだが、狂気と紙一重の《祖先の幻視》をめくる旅に出発するというものがある。誰だって3枚ドローを「続唱」して勝ちたいに決まっているからだ。重要なのは、必ずしもめくれを安定させる必要がないってことだ……《祖先の幻視》はそれ自体かなりのパワーカードなので、手札に来た《祖先の幻視》を「待機」した上で《血編み髪のエルフ》から別のカードがめくれるようならそれはそれで構わないからだ。タダ強カードを使ってたまにカードパワーだけで勝てることもあるならそれに越したことはないって話だ。

こうなるとティムールカラーのデッキということになりそうだが、あまりコンセプトをアグロに寄せすぎない方が良いとは書いておく。《祖先の幻視》を引いたときにその性能を最大限発揮したいなら、必要に応じてゲームを長引かせたいこともあるからだ。《タルモゴイフ》《電解》《クルフィックスの狩猟者》といったカード群が思い浮かぶだろう……他方で、別の色の組み合わせを試したいと思うかもしれない。俺なら白入りを試すだろう、アグロ相手の《反射魔道士》とコンボ相手の《翻弄する魔道士》をそれぞれ「続唱」で引っ張ってこれるしな。また、さらに欲張って《聖遺の騎士》《珊瑚兜への撤退》コンボを搭載するという選択肢もある。「続唱」で探してこれるし、どちらも単体で引いても十分機能するカードだからだ。

致命的な一押し瞬唱の魔道士廃墟の地

《精神を刻む者、ジェイス》についても同様、単純に既存のデッキの強化となる他にも様々な可能性がある。聞くところによるとレガシーの「奇跡」デッキのように、《精神を刻む者、ジェイス》によって《終末》《天使への願い》を機能させるアプローチについて検討している連中もいるみたいだ。それも楽しそうではあるが、同時に《精神を刻む者、ジェイス》についてちょっと誤解があるんじゃないかとも思う。《精神を刻む者、ジェイス》は別に他のカードと組み合わせなくとも強力なので、着地させるに先立ってどのような準備をするかを考えるべきなのであって、着地させてからどうやって勝つかなんてのは二の次でいいのだ。

俺ならむしろ全力で《精神を刻む者、ジェイス》に寄せて、完璧に安全な状況で着地させられるように軽い妨害ばかりをかき集めた構築にしようと考えるかな。なぜならひとたびそういった状況で着地させることができれば、余った妨害カードは「0」能力でライブラリーに戻せばいいし、そうしたゲームの大部分は勝ち確になるに違いないからだ。そんなわけで俺が組むとしたら (というか組みたいのは) 青黒コントロールの類だね。《致命的な一押し》《コジレックの審問》をたっぷり4枚の《瞬唱の魔道士》で後押しすることで、4ターン目に《精神を刻む者、ジェイス》を設置するにあたって最高の露払いとなるわけだ。

こうした構築の唯一の弱点はそうした軽い妨害がシチュエーションを選ぶ (相手がクリーチャーを一切出さなかったり、すぐに手札を空にしてしまったりするなど) ことにあるが、それも《汚染された三角州》《廃墟の地》といった十分なシャッフル手段を確保しておけば、《精神を刻む者、ジェイス》なら解決するのは朝飯前だ。

他方で、俺は白青コントロールが大好きとはいえ、このデッキには《精神を刻む者、ジェイス》が完璧に収まるとは言いがたい。というのも、《流刑への道》は早いターンのプレインズウォーカー着地のための露払いとしては向いてない除去だからだ。それでも強力であることに疑いの余地はないが、白青では《精神を刻む者、ジェイス》に寄せた構築というのは難しいんじゃないかと思うね。

既存デッキへの影響

主な勝ち組デッキ

瞬唱の魔道士稲妻血染めの月

ストームを除く青赤のデッキ……モダンにおける青赤のデッキはコントロール要素を持ちつつも何らかのコンボ要素 (《裂け目の突破》など) を内包している一方で、少なくともサイズの大きなクリーチャーを対処する手段を欠いていることが多い。そしてまた、《瞬唱の魔道士》を4枚搭載するのが通常のアーキタイプと言える。こうした要素に鑑みると、《精神を刻む者、ジェイス》の存在によってよりスムーズに勝ち手段を揃えやすくなったり、それ自体が相手にとって対処しづらい別の勝ち手段となったり、あるいはカウンター呪文やよくありそうなシチュエーションとして《血染めの月》と組み合わせてサイズの大きなクリーチャーを対処する手段となったりすることが考えられ、結論として青赤というデッキの強さのレベルを一段階以上引き上げるであろうことが予想される。

闇の腹心タルモゴイフコラガンの命令

ジャンド……ジャンドは《血編み髪のエルフ》が最もスムーズに収まるデッキと言える (実際、《血編み髪のエルフ》があったからこそ競技シーンにおけるジャンドというものが初めて成立したのだから) 。どのリストにせよ4枚差しは間違いないだろうし、これによってあらゆるマッチアップの相性が劇的に改善する結果、ジャンドはTier 1に返り咲く (素敵だね!) ことになるだろう。まあこれは簡単な話だな。

天界の列柱流刑への道謎めいた命令

白青コントロール (それともし君たちが好きならジェスカイも)……これら2つのデッキの間には大きな隔たりがある (その理由は一方が非常に良いデッキだからだ、と俺は言いたいが) けれども、どちらも同じ理由で《精神を刻む者、ジェイス》の解禁は大歓迎と言える。どちらのデッキも盤面をコントロールすることに長けてはいるものの、《天界の列柱》などで相手を倒しきるスピードが非常に遅かったり (コンボやトロンに勝てない理由の一つだ) 、勝つのに必要なカードが多すぎるせいで初手が弱かったり (初手の《スフィンクスの啓示》を想起されたし) するからだ。だが《精神を刻む者、ジェイス》はこうした問題をすべて解決してくれる《血編み髪のエルフ》と対峙しなければならなくなったことはコントロールプレイヤーにとって試練ではあるにせよ、そうしたマッチアップは青系コントロール側に分があると俺は思うね。

ウルザの塔解放された者、カーン忘却石

トロン……そう、古き良きトロンもこのカテゴリーに含まれる。もちろん解禁された2枚はどちらも《ウルザの塔》と共存しないであろうことは承知の上だ。それでもメタゲーム的な観点からすると、これらの2枚がトロンにとってくみしやすいカードなのが大きい。《血編み髪のエルフ》が入るデッキは大抵トロンに弱いし、「続唱」の内容が安定しないのに苦労する羽目になる。《精神を刻む者、ジェイス》の方はまだマシだが、返しで《解放された者、カーン》を出される可能性があるのにメインで4マナをタップするのはさすがに見合わないし、大量のキャントリップとシャッフル手段があるトロンのライブラリートップを検閲で封じ続けるのはかなり困難と言わざるをえない。

主な負け組デッキ

死の影ティムールの激闘頑固な否認

《死の影》……まず《死の影》は少しばかり向かい風になる。ポテンシャルは確かだし、プレイされているのを見ることは引き続きあるだろう。だがしかし、モダンにおいて最も優秀な攻撃的ミッドレンジというポジションにいたのが、「とはいえジャンドと戦えるか?」と問われるようになったとしたらどうだろう?少なくともジャンドとの直接対決での相性は極めて悪いし、《死の影》のエキスパートたちはそうした状況を好まないだろうと思う。

ゴブリンの先達大歓楽の幻霊溶岩の撃ち込み

バーン……バーンも禁止改定後に変わらず残るだろうデッキだ (それ自体は良いことだ) が、ポジションは少し悪くなると思われる。《血編み髪のエルフ》はバーンプレイヤーにとってはそれほど影響を与えないが、反面《精神を刻む者、ジェイス》はかなり重大で、「消術」効果はこのマッチアップで非常に強力なこともあり、4ターン目に《精神を刻む者、ジェイス》を叩きつけられるというのはバーンプレイヤーにとって厄介なことこの上ないだろう。

洞察のランタン罠の橋発明品の唸り

ランタンコントロール……単体でドローを操作できるカードでかつ《罠の橋》とも噛み合うということで、《精神を刻む者、ジェイス》が入ったランタンコントロールと当たったらどんなにひどいゲームになってしまうのだろうかというコメントをいくつか目にしたけれども、俺はその意見には大反対である。4マナというのはメインに搭載するには重すぎるし、ドローを操作したいにせよより軽いマナで行うことができるので、そもそも《精神を刻む者、ジェイス》はランタンコントロールにはうまくかみ合わないと思われるからだ。むしろ《精神を刻む者、ジェイス》は単体でロックから抜け出せるので、ランタンコントロールに対してこそ非常に効果的な1枚である。《血編み髪のエルフ》も、適切なサイドカードを「続唱」で探しにいけるということで、ドローを止めるというロック方法に対して致命的になりえるのであり、ランタンコントロールにとってはやはり痛撃となる。結論として、ランタンコントロールはそのどちらの脅威も乗り越えうるとは思うが、「ランタンコントロールが環境を支配するかも」といった言説は誇張が過ぎると言わざるをえない。

未練ある魂包囲サイ残忍な剥ぎ取り

アブザン/黒緑ジャンク……さて、何と言えばいいのか。黒緑/アブザン/ジャンドのどれが優れたミッドレンジなのかについては今に至るまで長年議論が続いてきたところであり、実際微妙なところではあった。だが《血編み髪のエルフ》の加入はジャンドを単純にはるかに強化したし、対処を迫るデッキとしての性質を強めた上に、妨害から巻き返す力も強くなっている (その理由は《コラガンの命令》との組み合わせによるところが大きい)。

アブザンはジャンドとの直接対決において最強クラスのカードとなる《未練ある魂》を擁しているという議論を始める人もいるかもしれないが、アブザンを再びプレイするだけの理由ができるためには、メタゲーム上に大量のジャンドがいることが前提になるだろう。また、もし《未練ある魂》がそこまで問題になるようならジャンド側も《最後の望み、リリアナ》で簡単に対策することができるし、しかもちょうど良いことに《最後の望み、リリアナ》《血編み髪のエルフ》をさらに強く使える1枚なのだ。

若き紅蓮術士騒乱の歓楽者未練ある魂

マルドゥ・パイロマンサー……流行りの新顔にも、今後は厳しい運命が待ち構えているかもしれない。第一に、《騒乱の歓楽者》《血編み髪のエルフ》との優秀なカードアドバンテージ生成源としての評価の比較を行った場合、《騒乱の歓楽者》が墓地に依存している上に柔軟さに欠けるという点で、際どいところと言わざるをえない。そしてもし《血編み髪のエルフ》の方が優秀ということになったら、我々にはもはやジャンドカラーを差し置いてマルドゥカラーを使用する理由が特にないことになってしまう。

だが、仮にジャンドがマルドゥよりも明確には優秀でないという論拠を見つけることができたとしても (そしてそれ自体は容易に見つかるだろうが)、第二にどうやって《精神を刻む者、ジェイス》を対処するのかという問題が立ちはだかってくる。マルドゥはプレインズウォーカーに対してプレッシャーをかけるのに長けておらず、アクティブになった《精神を刻む者、ジェイス》を打ち倒すことはほとんど不可能と言っていい。マルドゥを使うプレイヤーたちは、かなりの向かい風となったメタゲームの中で自分たちのデッキが存在している理由がそもそもどこにあるのかを証明する必要があるという、非常に厳しい立ち位置に置かれてしまうことになるだろう。それでも多くのプレイヤーたちはその証明に挑戦するだろうとは思うのだが、賭けてもいいがその試みは失敗するだろうな。


今回はこんなところだろう。俺は今から《精神を刻む者、ジェイス》の入っていない愛用の白青コントロールとともにグランプリ・リヨン2018に向かい、王者の解禁を待たずして18回戦を勝ち抜くことができるのか、確かめてくるつもりだ。

(編注 : 結果は12-2-1で12位入賞となりました)

じゃあ、またな。

ピエール・ダジョン

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