Translated by Yoshihiko Ikawa
(掲載日 2018/02/27)
2013年、私は青単信心を使ってプロツアー『テーロス』を優勝しました。
このデッキを最初に作ったとき、チームメイトのほとんどが「《思考囲い》や《嵐の息吹のドラゴン》、《スフィンクスの啓示》のような素晴らしいカードを使うべきだし、こんな弱いカードたちのために時間を無駄にすべきではない」と私に進言したのを覚えています。
優秀なカードたちで構成されたデッキを使う方がリスクが低いのは確かに真実ですが、シナジーこそが最高のデッキを作る術なのです。私はこのデッキが素晴らしいと確信していました。調整当初は、ラファエル・レヴィだけが僕の味方でした。
調整を開始して数日後、13人中9人ものチームメイトが考えを改め、最終的にプロツアーで青単信心を使うことに決めました。そして私を含めた使用者10人全員が2日目に進出したのです。皆さんもご存知の通り、私は青単信心のミラーマッチだった決勝戦でピエール・ダジョンを打ち破りました。決勝戦がミラーマッチだったというこの事実により、青単信心はこれまで最も成功したデッキのうちの1つに数えられています。
《タッサの二叉槍》
プロツアー時点では、私たちは《タッサの二叉槍》を1枚使用しました。手札が0枚だと《海の神、タッサ》が悲しむだろうという理由ではなく、《タッサの二叉槍》がとても優れたカードだからです。
《タッサの二叉槍》の力を最大限活かす方法は、回避能力を持った軽量クリーチャーをデッキに大量に入れることです。青単信心では、12枚の飛行クリーチャーと、好きなクリーチャーを「ブロックされない」ようにできる《海の神、タッサ》が4枚入っていました。このエンチャント/アーティファクトが戦場にあると、基本的にすべてのクリーチャーが《巻物泥棒》に変貌します。小型のクリーチャーを厄介な存在に変え、対戦相手にそれらすべてを対処するよう迫るのです。《巻物泥棒》の群れを無視することは不可能でしょう。
《至高の評決》を打たれた直後ですら、《変わり谷》のような土地で攻撃してカードを引くことができるのです。
状況は限られますが、特に《海の神、タッサ》のような無敵のブロッカーがいるときは、《タッサの二叉槍》の2番目の能力も有用です。対戦相手のクリーチャーにアタックを強制させることにより、《タッサの二叉槍》を除去として使うことができます。
《タッサの二叉槍》の強さに感銘をうけたので、3位入賞をしたグランプリ・ウィーン2013を含む、プロツアー後のすべてのイベントで私は2枚目を採用することにしました。
このグランプリ・ウィーン2013の初日で、人々が私に尋ねてきました。
「成績はどうだい?」
「全勝だよ」
「なんだって?俺はさっき君が負けるところを見たよ。あれは3ゲーム目だったよね?」
「あぁ、3ゲーム目だったさ。試合の最後まで見ていたかい?」
「いいや、でもあそこから逆転できるだなんて想像もできなかったよ」
私はフィーチャーマッチでエスパーコントロールと対戦していて、すでに手札は0枚でした。《思考を築く者、ジェイス》を「-2」能力で使いきったものの、不幸にも公開されたのは《島》3枚でした。対戦相手は《ヴィズコーパの血男爵》と《思考を築く者、ジェイス》をコントロールしていて、2枚の《拘留の宝球》で《潮縛りの魔道士》2枚と《海の神、タッサ》を追放していました。《ヴィズコーパの血男爵》の攻撃で私のライフは4まで落ち込みました。これ以上攻撃は通せないので、次のターンで生き残るには《変わり谷》でチャンプブロックをしなければなりません。敗北する直前であり、勝利までの道のりは程遠い、絶望的な状況でした。
残り時間が5分しかない状態で贔屓のチームが0-2で負けているサッカーの試合のように、人々は観戦をやめ去っていきました。
しかし私が引いたカードが《サイクロンの裂け目》であり、それを相手のターン終了時にプレイしたため、2枚の《拘留の宝球》を含む対戦相手のパーマネントがすべて手札に戻り、3体のクリーチャーが戦場に帰ってきました。その直後のターンで私が引いたカードが《タッサの二叉槍》でした。そう、この瞬間で最高のカードを引いたのです!《タッサの二叉槍》を戦場に出して攻撃し、《波使い》と《反論》を含む3枚のカードを引きました。大量のカードを引いたことにより、このゲームを勝利することができました。《タッサの二叉槍》が敗北を勝利へと変えてくれたのです!
このシーズンの終了時、私は世界一のプレイヤーである称号、2014年最優秀選手(プレイヤー・オブ・ザ・イヤー)に輝きました。青単信心と《タッサの二叉槍》はこの成功に多大な貢献をしてくれました。《タッサの二叉槍》は私の人生を変えたカードの1枚だと言えるでしょう。