ANTで勝利をつかもうじゃないか

Marc Tobiasch

Translated by Yoshihiko Ikawa

原文はこちら
(掲載日 2018/04/04)

今回はレガシーにおけるベストデッキかもしれない、あるデッキについて話していこう。

大幅なアップグレードがありつつ、このデッキは長いことレガシーに存在している。このデッキにはいくつか弱点があり、その弱点の大部分は《意志の力》を使えないことに起因しているんだが、デッキ自体のパワーレベルが高く、無敵の手札が存在しうるためにどんなマッチアップでも勝利できる。

むかつき苦悶の触手

そう、僕が言及しているデッキこそストーム、もしくはAd Nauseam Tendrils(以下ANT)と呼ばれているデッキだ。このデッキには構築の余地が無数にあり、またサイドボーディングの選択肢もたくさんあるので、想定しているメタゲームに対してフレキシブルに対応できるんだ。

1ターン目に勝利することができるとはいえ、ザ・スパイ《ゴブリンの放火砲》デッキ、赤黒リアニメイトといった1ターン目に仕掛けられないと負けるであろう”オール・イン・コンボ”デッキではない。通常は十分な妨害を挟んだ後に、2ターン目や3ターン目に勝利することになる。

ANTはカウンターが多いデッキやキルターンが遅いデッキに対して非常に強く、《虚空の杯》デッキ(もしダイスロールに負ければ)と《実物提示教育》は厳しいマッチアップになる。

冥府の教示者苦悶の触手ライオンの瞳のダイアモンド

ANTの基本的な前提は、1ターンに呪文を9回プレイした上で《苦悶の触手》を唱えて相手のライフを吸い尽くすことだ。デッキに《苦悶の触手》は1枚しか入っていないが《冥府の教示者》《ライオンの瞳のダイアモンド》の組み合わせが《Demonic Tutor》《Black Lotus》のように機能してくれるだ。《冥府の教示者》をプレイしスタックに積んだ上で《ライオンの瞳のダイアモンド》を使えば、「暴勇」するため好きなカードをサーチしつつ、《ライオンの瞳のダイアモンド》から出た3マナを使ってそのカードをプレイできるからね。

典型的なゲーム展開としてはこんな感じだ。

1ターン目:

土地をプレイ。《思案》をプレイしてエンド。

2ターン目:

苦悶の触手

このようにして、相手の《意志の力》を乗り越えた上で、9個のコピーとともに《苦悶の触手》で相手のライフを吸い付くし、2ターン目に勝利することができるんだ。

デッキには他にも様々なシナジーがある。《ギタクシア派の調査》《陰謀団式療法》《渦まく知識》《ライオンの瞳のダイアモンド》(《むかつき》のような重いカードをライブラリーに戻し、その後《ギタクシア派の調査》のようなキャントリップをプレイすることにより、それに対応して《ライオンの瞳のダイアモンド》からマナを出せば、そのマナを重いカードのプレイに充てることができる)、《炎の中の過去》《ライオンの瞳のダイアモンド》(《炎の中の過去》には「フラッシュバック」があるので、《ライオンの瞳のダイアモンド》のマナを効率的に使ってプレイできる)など。

ANTの大きな強みはもちろんそのスピードであり、除去など相手のデッキの多くのカードを無駄にできる。もう一つの強みは情報だ。対戦相手とは異なり、こちらだけ手札破壊と《ギタクシア派の調査》のおかげで完全な情報を得られるんだ。このことにより、ANTと対戦する際はプレイが非常に難しい。《暗黒の儀式》《ライオンの瞳のダイアモンド》といったマナ加速をカウンターすべきなのか、それとも《冥府の教示者》まで待つべきなのかが分からないからだ。手札にもよるが、この判断がゲーム勝敗を分かつので、「通さないといけないカードを、いかにカウンターさせないようにするか」がANTプレイヤー側の任務となる。

デッキの核:

以下のスペルはどれもデッキにマッチしており、枚数を減らすことはないだろう。

手札破壊の選択はメタゲームによる。最も一般的なのは《陰謀団式療法》3枚+《強迫》3枚という構成だ。

陰謀団式療法強迫

補足すると、土地は最低14枚は必要だ。15枚が基本で、その結果フレキシブルなスロットは5-6枚程度ということになる。このスロットの最も一般的な構成は以下の通り。

これは広いフィールドで使用できるため、「基本キット」と僕が呼んでいるものだ。十分な量の妨害と早いターンでの安定した勝利を与えてくれる。現在のメタゲームに合わせると、このフレキシブルなスロットを以下のように埋めることを提唱するよ。

ここまでの内容をまとめると、こういうデッキリストになる。

将来的には変わるかもしれないが、今のメタゲームであればこのリストをオススメするよ。

むかつき

《むかつき》はデッキの中で一番弱いカードだ。なぜなら、どんなタイミングでも、《むかつき》のせいで死んだり、低いライフでターンを渡すことになることがあるからな。《むかつき》を採用している理由は、多くのタイミングで弱い手札からでも早いターンに仕掛けられるようになるからだ。

例えば、「《暗黒の儀式》《ライオンの瞳のダイアモンド》《ライオンの瞳のダイアモンド》《冥府の教示者》《Underground Sea》(あと1枚は手札破壊など)」という手札であれば、「チューターでのチェイン」(《冥府の教示者》《冥府の教示者》をサーチすることにより、2マナでストームを1増やすこと)をするほどのマナを生み出すこともできず、また《ライオンの瞳のダイアモンド》はフラッシュバックできないため《炎の中の過去》ルートで勝つのにもマナが足りないので、1ターン目に《むかつき》ルートを選ぶことになる。

闇の誓願

《闇の誓願》は少し弱い、5枚目の《冥府の教示者》として機能する。手札を空にする必要がないというメリットはあるが、《むかつき》で公開してしまうと5点も食らうし、コンボスタート時に要求されるマナも多い。しかしながら、最もよくある機能不全な手札はフィニッシュ/サーチがないパターンなので、それゆえこの1枚を追加する価値は十分にあるといえるだろう。

陰謀団式療法思考囲い強迫

《秘密を掘り下げる者》デッキがコントロールデッキと同じぐらいのシェアを占めている今のメタゲームでは、速度よりも弾力性の方が重要なので、7枚目の手札破壊を採用することにした。

夜の囁き

《夜の囁き》についても触れておこう。このカードは《トーラックへの賛歌》のようなカードからの軽くて強いリカバリー手段として重宝している。また、《炎の中の過去》でより多くの枚数をフラッシュバックすることを可能にしてくれる。「儀式」呪文たちは黒マナしか生み出してくれないので、《炎の中の過去》をプレイする場合は青マナが足りず、逆に黒マナが余りがちだからだ。

炎の中の過去

以上の理由から、僕の意見では《炎の中の過去》の2枚目を採用しないのは間違いだと考えている。《炎の中の過去》は1枚で”マナの使い道”と”ニの矢”の2つの働きをするのだ。単に墓地のすべてのドロースペルをフラッシュバックすることによって十分の数のストームを稼ぎながら勝ち筋を探すことができるし、手札に《炎の中の過去》があれば、《冥府の教示者》《ライオンの瞳のダイアモンド》で仕掛ける際に相手のカウンターへの対抗策ともなる。十分なマナがある状態で仕掛けていれば、《冥府の教示者》をカウンターされたとしても、捨てたばかりの《炎の中の過去》をフラッシュバックすることにより再度《冥府の教示者》を唱えることができるからね。

不毛の大地もみ消し

15枚目の土地は自分のデッキだけを考えるなら必要ではなく、基本的には《不毛の大地》への備えとして採用されている。しかしながら、《不毛の大地》の採用数が減っており、《もみ消し》も今の環境では見なくなってきているので、14枚でも一般的には問題はない。《もみ消し》《不毛の大地》の組み合わせがまた再興するようであれば、15枚目の土地をメインボードに戻すべきだろう。《もみ消し》が入っていない《不毛の大地》デッキに対しては、《島》《沼》をサーチするようにすれば大きな問題にはならないだろう。

思考囲い強迫

また、僕が《強迫》よりも《思考囲い》を優先していることに気づいただろうか。《死儀礼のシャーマン》《秘密を掘り下げる者》と直面する際には、2点のライフはとても重いものになる。だが、このフォーマットには捨てさせたいクリーチャーが大量にあるんだ。例えば、仕掛ける直前に《強迫》をプレイしたら《瞬唱の魔道士》が見えたときを考えてほしい。《死儀礼のシャーマン》《秘密を掘り下げる者》を捨てさせれば、2点のライフよりも遥かに長い時間を稼ぐことができるし、2枚《実物提示教育》を抱えているときに《グリセルブランド》を捨てさせることもある。結局のところ、今のレガシーではクリーチャーがとても重要な役割を果たしているので、「クリーチャーを捨てさせることができる」というオプションのために2点のライフを払う価値があると僕は考えている。

サイドボード

僕が今使っているサイドボードでは、2枚目の緑マナ源&必要になりそうなマッチにおける追加の土地として、15枚目の土地を採用している。こんな感じだ。

大抵のカードの採用理由は自明だろう。

ザンティッドの大群

《ザンティッドの大群》はコントロールデッキに除去を残すことを強要するためと、《実物提示教育》デッキ対策だ。もし相手が《実物提示教育》をプレイしてきたら、この《ザンティッドの大群》を出すことができ、返しに攻撃してから仕掛けることで、相手が《グリセルブランド》で何枚ドローしようがお構いなしにコンボを決めることができるんだ。《ザンティッドの大群》がない場合、一度《グリセルブランド》が場に出てしまうと、手札破壊でカウンター呪文を落としてもまたドローされてしまうため、勝つのは非常に厳しくなってしまう。

外科的摘出

《外科的摘出》ミラーマッチと、このカードなしでは厳しいマッチアップであるリアニメイトに対するカードである。

地の封印

《地の封印》《死儀礼のシャーマン》/《瞬唱の魔道士》デッキに対する優秀なカードであり、そういったデッキがサイドインしてくるであろう《外科的摘出》も合わせてシャットアウトできる。

夜の囁き巣穴からの総出

《夜の囁き》は消耗戦にうってつけのカードで、特に《トーラックへの賛歌》デッキに対して強い。《巣穴からの総出》《むかつき》と似たような役割で、《むかつき》では遅いマッチアップで使われる。正しいマッチアップで使用すれば、多くのゲームで1ターン目に8-10体のゴブリントークンを出して勝利できるのだ。墓地に《陰謀団式療法》があれば、トークンを並べた上で「フラッシュバック」して全体除去を捨てさせることもできる。

真髄の針

《真髄の針》《騙し討ち》《演劇の舞台》に対する軽い妨害カードとして重宝する。

君だけのサイドボードを作ろう

サイドボードには他にもたくさんの選択肢がある。例えばもしデス&タックスが多いと予想するなら《夜の戦慄》が完全にシャットアウトしてくれるし、《ハーキルの召還術》は茶単や《虚空の杯》デッキを粉砕してくれる。《致命的な一押し》はあらゆるヘイトベアーたちに対して強力であり、《秘密を掘り下げる者》デッキに対しても時間を稼いでくれる。

夜の戦慄ハーキルの召還術闇の腹心

追加の《苦悶の触手》を取れば、8枚の手札と素引きした《苦悶の触手》だけでスタートできるのでカウンターを構えてくるデッキに対して非常に強くなる。《闇の腹心》《ザンティッドの大群》と似ていて、相手の除去スペルがサイドボード後に減っているようであれば基本的にこれだけでゲームに勝つことができる。《虐殺》《夜の戦慄》と同様だし、サイドボードに《金属モックス》を用意すれば、正しいマッチアップにおいては1ターンキルの確率を上げてくれる。このように、出場するトーナメントがどんなメタゲームであるかを慎重に分析し、適切にサイドボードを組み上げるんだ。

ANTをプレイするプレイヤーへアドバイス

ANTの回し方を覚えるためにできる最高のアドバイスは「とにかく練習して、練習して、練習しまくること」だ。ただその上で、下記のコツは参考になるだろう。

強迫思案

仕掛けるターンまで手札破壊を温存するように努めよう。レガシーにはドロー呪文がたくさんあるので、1ターン前にカウンターを持っていなかったからと言って、このターンにカウンターを持っていないとは限らない。

目くらまし呪文貫き

多くのデッキが採用している妨害手段はとても限定的なものなので、ANTにとってはロングゲームの方が良い場合もある。もし《目くらまし》《呪文貫き》、さらには《狼狽の嵐》すらケアできれば、多くのデッキはコンボを止める手段を《意志の力》に頼ることになる。よって、もし急いで決める必要がないのであれば、リスキーな賭けをすべきではない。

むかつき

もし《むかつき》ルートを回避できるのであれば回避すべきだ。大抵の場合は《むかつき》ルートでも十分うまくいくが、そうでない選択肢があるならそれを選ぼう。

思考囲い稲妻

確定で勝てるのでない限り、対戦相手のキルターンを見極めて、その1ターン前に仕掛けるようにしよう。手札破壊や《稲妻》があるデッキに対しては少し変わってくるが、念頭に置いておいてくれ。

ライオンの瞳のダイアモンド突然の衰微

手札破壊が多いデッキに対しては《ライオンの瞳のダイアモンド》を先置きしておくのが一般的だ。ただし、《突然の衰微》には気をつけよう。相手の死に札を有効活用させてはならない。

冥府の教示者コラガンの命令

最後のマナ加速呪文に対応して、《コラガンの命令》《冥府の教示者》を捨てさせられないよう気をつけよう。これを避けるためには、手札にマナ加速を残した状態で《冥府の教示者》をプレイして、その後にスタックしてその最後の1枚であるマナ加速をプレイすれば良い。

意志の力陰謀団式療法渦まく知識

手札が分からない状態で《陰謀団式療法》をプレイするときは、このターンに仕掛けるならば《意志の力》を指定しよう。もしそうでないなら《渦まく知識》を指定するといい。

読んでくれてありがとう。

マルク・トビアシュ

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