ドミナリアを覗いてみよう

Oliver Polak-Rottmann

Translated by Takuma Kusuzawa

原文はこちら
(掲載日 2018/04/05)

(編注 : この記事の原文は4月5日に掲載されました。翻訳の都合で記事の公開が遅れてしまいましたが、オリヴァー・ポラック=ロットマン選手の熱量溢れる記事をぜひ皆さまにもご覧いただければ幸いです。)

皆『マスターズ25th』で盛り上がったところだと思うけど、通常のエキスパンションは新セット『ドミナリア』がすぐそこまで来たね。マジックの起源ともいえる次元に戻ると聞いて、すごくワクワクしたし、古き良きキーワード、能力やカードの再録が楽しみだった。あちこちから懐かしいものが集まってくる一方で、新しい能力やカードタイプがたくさん出てくるし、一部のカードは「歴史的」にすらなっちゃうみたいだ。今日の記事は、どの話題にもしっかり触れていくよ。

さて、一番目に触れるカードは最初期のマジックからいる由緒正しき《ラノワールのエルフ》

ラノワールのエルフ

新たな装いで登場したけれど、マジックを象徴する代表的なカードの1枚だ。《極楽鳥》《東屋のエルフ》など長きに渡って色んな兄弟が生まれてきたけど、ある時から似たようなカードを見なくなってしまった。正直に言えば、《ラノワールのエルフ》《対抗呪文》《石の雨》あたりのカードは、しばらくスタンダードには帰ってこないと思っていたんだ。

対抗呪文石の雨

R&Dが新セットに我らが古き友を投入することに決めたことで、スタンダードには波がくるだろう、俺が保証するよ。スペルがどのクリーチャーよりも強かった頃は、1マナのマナクリーチャーに大きな意味なんてなかったが、今であれば《ラノワールのエルフ》が環境を大きく変えるだろうと強く思うね

1ターン目ラノエルから《翡翠光のレインジャー》を唱えるところを想像してみなよ。とんでもなく強くて、青使いは後手から返せる動きをイメージできないだろう。1ターン目からの加速ができれば、後手でも先攻を奪えるし、受け身のデッキはこのエルフをすぐにどうにかできないと、準備ができる前に重い呪文でこてんぱんにされてしまうぜ。

勘違いしないで欲しいのは、昔使っていたラノエルのホコリをはらえるきっかけになってうれしいんだ。スタンダードでは1ターン目ラノエルより強い動きはなくなるだろう。環境の速度が大幅に速くなることでぼーっと突っ立っている余裕がなくなるので、スタンダードを支配していた《スカラベの神》ミッドレンジの時代は終わりかもしれない。

さて、マジック史上最強のエルフについては一度おいておいて、新しくなった「古い」やつらを見てみよう。

キーワード能力/ルール

キッカー

カリゴの皮魔女ケルドの軍監

「キッカー」が帰ってきたのは、期待していることの一つだ。かつてと同じ能力だけど、カードデザインは大きく変わったね!『インベイジョン』の頃は《調査》《偽り》のように、キッカーなしで唱えたカードは妥当な能力だったし、追加コストを払うとすごく強くなった。『ゼンディカー』ブロックで「キッカー」が帰ってきた時は、《マラキールの門番》《噴出の稲妻》みたいにリミテッドや構築で活躍するカードもあったけど、カードパワーが落ちていたな。

調査偽りマラキールの門番噴出の稲妻

今回、『ドミナリア』ではほんの少しだけカードパワーが上がっているようだけど、「キッカー」はスタンダードで活躍するギミックというよりリミテッド用に見えるね。おまけのコストがさらに高くなっているから、カードとしてのバランスが良くなっている。リミテッドでは《アカデミーのドレイク》が「キッカー」付きの《風のドレイク》として登場し、長期戦でより優位に立てるようになる。序盤でも唱えられつつ、長期戦では強化されて出てくることでマナフラッドを防いでくれる。かつての《デアリガズの息》みたいに、「キッカー」なしでは弱すぎるなんてこともない。

アカデミーのドレイクデアリガズの息

俺の予想ではスタンダードで「キッカー」が手綱を握ることはないけど、「サイクリング」のように長期戦での選択肢が増えるから、リミテッドを面白くしてくれるだろう。個人的に非公式のスポイラーは見ていないんだけれど、「キッカー」はかつてに比べてまともなカードパワーになっているみたいだ。

英雄譚

ファイレクシア教典最初の噴火

次に話すのは完全に新しいもの、「英雄譚」だ!今まで見たことのないフレームというだけでなく、新しくてユニークな効果がゲーム運びを変えるだろう。戦場にでた時と次のニターンの間効果が起きるエンチャントだ。「待機」を思わせるが、こっちはカウンターを減らしたり増やしたりすることもできる。《呪詛の寄生虫》が強くなるし、《倍増の季節》も「英雄譚」の動きを変えられる。

呪詛の寄生虫倍増の季節

プレインズウォーカーでも伝説でもないから、「英雄譚」には新しい可能性があり、どう使われるかすごく楽しみだよ。初めは弱めの能力で始まって、三番目の「運命カウンター」、いわば奥義で、とても大きな効果を発動するプレインズウォーカーみたいな動きをするようにデザインされている。初めて見た時は《パララクスの波》のようなものだと思っていたけど、まったく逆だね。

パララクスの波氷河期

3ターンかけて3体のクリーチャーをどける、1枚のカードでいい仕事をする。このカードがどう使われるか、すごく楽しみだ。《ミラーリ予想》も見てみてくれよ!

ミラーリ予想

このカードはとてもつもなく強く、三段目までの組み立てが素晴らしい。まずカウンター呪文を戻し、次にドロー呪文、そしてさらに大きなカードアドバンテージを得られる。こんなカードは統率者戦ではひっぱりだこだし、《ベナリア史》がトークンデッキに入るように、様々な構築で「英雄譚」を見ることになるだろうね。

ベナリア史

「英雄譚」はレアと神話レアにしかないだろうと思っていたけど、アンコモンも出てきているから、リミテッドでもたくさん見ることになるかな。

歴史的

セラの信奉者

お次は、今までの多くのカードの価値を変える「歴史的」だ。これまでに出たアーティファクトと伝説のパーマネント全てが「歴史的」ということになる。これが今後どういうことになるかまだ分からないけど、このキーワードでたくさんのカードが作り変えられたようなもので、パワーが増すカードも出てくると思う。今のところ、公式に出ている中で「歴史的」の恩恵を受けられるのは《セラの信奉者》で、これは構築では見ることがないだろうけど、今後どんな能力が出てきそうか予想できるよね。ティムやドロー呪文なんかが思いついたよ。アーティファクトには追い風になるし、何が出てくるか楽しみで仕方ないな。

伝説のソーサリー

ウルザの殲滅破カーンの経時隔離

最後に忘れてはいけないのが、「伝説のソーサリー」だね。これも完全に新しいもので、一部カードが以前より求められるかもしれない。《不同の力線》はここ十年見向きもされていなかったけど、「伝説のソーサリー」が唱えられるということで一躍話題のカードになってる。「伝説のソーサリー」でおもしろいのは、土地では条件を満たさないので何かしら盤面に干渉しなくてはいけなくて、クリーチャーもプレインズウォーカーもいないのに唱えさせてはくれないんだ。

占術と新しい神殿

ザルファーの虚空疾病の神殿

基本的に毎セットで登場するから、「占術」自体はもはや新しいキーワードではないけれど、《ザルファーの虚空》っていう新しい「神殿」が登場した。無色土地の枠は《廃墟の地》と競うことになるから、実際にどれくらい使われるかは全く分からないけど、神殿の強さは過去のスタンダードで散々見せつけられてる。能力欲しさに、片方の色しか使わないのに投入されたことすらあったね。今回のは色マナが出ないけれど、マナ自体はすぐに出る。

《喪心》

喪心

もう1枚、《喪心》には触れておきたい。このカードはとても強くて、伝説相手にこそ効かないけれど、この先二年はたくさん使われることになるだろうね。正直に言うと、神じゃなければ基本的に何でも倒すことができて、2マナでは強すぎるくらいだ。過去のスタンダードで《燻し》《最後の喘ぎ》《究極の価格》なんかがたくさん使われていて、このカードも完全に同じ役割を担うことになる。唯一の存在を倒すことはできないけど、よくいる奴らなら倒せてしまうんだ!

結論

カードリストの公開は始まったばかりで、新セットがお披露目され始めているのを楽しんでると思う。俺もそうだけど、皆も早く遊びたいよな!読んでくれてありがとう、また会おうぜ!

オリヴァー・ポラック=ロットマン

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