Translated by Daijiro Ueno
(掲載日 2018/05/09)
序章 -グランプリに向けて-
グランプリ・ボローニャ2018の開催時期はかなり特殊だった。新セット後の最初のグランプリとしては異例なことに、プレリリースのわずか1週間後に設定されたんだ。新環境についての記事は限られた数しか参照できなかったから、ほとんどのプレイヤーはわずかな経験と情報しか持っていなかった。このことは、他のほとんどのグランプリとは異なり、練習次第で競争相手に対してかなり有利な立場に立てる可能性があるということを意味していたんだ。
グランプリの前週末、僕と友達のグループはイタリアでちょっと休暇を取ろうと決めた。『ドミナリア』のブースターパックを山ほど用意して、1週間ひたすら練習するためにイタリアの田舎の別荘を借りたんだ。そしてチームシールドとMagic Onlineでドラフトをプレイしたよ。僕たちは土曜の夕方遅くに到着してしまったから、周囲は真っ暗で本当に何も見えなかった。だけど、次の日起きてみるとこんな景色が広がっていたんだ。
生涯最高のドラフトテーブルだ。この週はずっと太陽が暖かく輝いていたし、チームメイトであり、プロのシェフでもあるヨリ・フッカ/Jori Hukkaが素晴らしい食事を振る舞ってくれた。グランプリに向けてここを離れなきゃいけなかったのは本当に残念だったよ。でも幸運なことに、Top 4進出がこの悲しみを和らげてくれたわけだ。
『ドミナリア』のチームシールド
チームシールドの練習を開始してすぐに、白いデッキは力不足だと気づいた。ドラフトでは問題ないけど、チームシールドでは2マナのクリーチャーに《叙爵》を付けて勝利! みたいな展開は考えられないだろう? ほとんどのプールにはデッキの核となるカードが存在している。「黒緑」や「ランプ」、「青赤アグロ」や「白青コントロール」、それに加えて平凡な白いアグロといったデッキのためのパーツだ。何度も3ラウンドのチーム戦をやったけど、白いデッキは0-3と1-2に終わったんだ。貴重な1勝はミラーマッチだったから、これは白本来の力のおかげとは言えないね。
この色に関する最大の問題は、序盤でゲームを終わらせられるほどのアグレッシブさを欠いているということだと思う。それに終盤では他のデッキのようなパワーを持っていないしね。白いデッキで成績が悪くなかったリストに共通していたのは、たくさんの飛行クリーチャーが入っていたことだ。この色はゲームが長引くにつれ弱くなっていくような使えないクリーチャーたちが多い傾向にあるから、5~6ターン目以降でも役に立つように工夫するのはとても大切なことだよ。
《ペガサスの駿馬》はこういったデッキのMVPだね。《馬上槍》と《小剣》は同じような役割を果たす。白にとって最も相性がいいのは黒と青だ。黒は中盤、終盤をちゃんと戦い抜くためのパワフルな伝説のカードや除去を供給してくれるし、青はというと追加の飛行クリーチャーを供給し、テンポ面の補強をしてくれる。
緑はかなり手堅い動きをする。自然とシナジーを形成するパーツがたくさんあるから、ほとんどの場合黒を加えているね。《苗木》をテーマに据えるなら《不純な捧げ物》は極上の除去になるし、《雑食のサリッド》は化け物に進化する。《不純な捧げ物》に加えて、黒にはコモンに 《臓腑抜き》、アンコモンに《意趣返し》と《喪心》がある。だから大抵「黒緑」というのは素晴らしい除去を備えているものなんだ。
《灰からの成長》、《這い回る偵察機》、そして《フレイアリーズの歌》は、追加の除去から多色のボムまで、あらゆるもののために色をタッチすることを容易にしてくれる。《水底のドルイド、タトヨヴァ》は特に素晴らしいから色を散らすだけの価値があるね。
《フレイアリーズの歌》について少し話そう。これほどまでに何度もテキストを読み間違えたカードは初めてだ。最初はこのカードはすごく弱いと思っていたんだけど、こいつは一時的な修正じゃなくて+1/+1カウンターを自軍全体に与えること、さらに破壊不能も付与することに気付いた。そして、もしMagic Onlineが律儀に僕の2/2《苗木》のトランプルダメージを相手に割り当てなければ、この効果についても見逃すところだったね。+1/+1/カウンターや破壊不能の付与、そして《苗木》の弱々しいトランプル諸々が僕をすごく混乱させたが、ようやくこいつの効果を理解した。こいつはものすごく強いぞ。
「青赤」は一番クールなデッキだと思うよ。テストの段階ではウィザードを主軸に据えた攻撃的な速いデッキもあれば、《火による戦い》を《ギトゥの年代記編者》で回収するような長期戦を取れるデッキもあった。序盤に注力する白とは違い、《シヴの火》や《中略》、そして《ギトゥの年代記編者》は終盤でも力を発揮できる。このセットの「キッカー」呪文に対しては、終盤でも《中略》が驚くほど役に立つ。「キッカー」呪文に対する打ち消しはたいてい大きな意味を持つんだ。《予言》や《雲読みスフィンクス》、それに《ギトゥの年代記編者》は大きなカードアドバンテージをもたらすし、デッキに眠っているボムたちをより引き当てやすくしてくれる。赤は良いクリーチャーに恵まれていないから、あまり良い色じゃないと言う人々もいるし、実際一理あると思う。だから「青赤」は大抵「青」寄りで、“普通の”リミテッドデッキほど多くクリーチャーをプレイしないんだ。
他に何回か見た色の組み合わせは「黒赤」と「赤緑」だ。ほとんどのリミテッドでは「黒赤」は前のめりなアーキタイプ、例えば『イクサラン』における「海賊」みたいな感じなんだけど、『ドミナリア』では間違いなく「コントロールデッキ」だね。どちらの色にも2マナの良い「キッカー」持ちクリーチャー(《カリゴの皮魔女》と《ギトゥの年代記編者》)があるし、大量の除去にも恵まれているからだ。しかしながら、方向性が単純すぎるし、クリーチャー以外で長期的にアドバンテージを得ようとするようなデッキに対して大きな課題がある。例をあげると、プレインズウォーカーや英雄譚に対してまともな解答がないといった具合だ。クリーチャーでプレッシャーをかけるのも「赤黒」には難しいしね。
一方「赤緑」はというと、アグレッシブなランプデッキになりやすい。《火による戦い》と《刃の翼ヴェリックス》は、《灰からの成長》や《ラノワールのエルフ》によってより早くキャストできるようになるから、このデッキが最高の居場所だ。「赤緑」は大抵の場合、クリーチャーの方は素晴らしいものの、《シヴの火》や《焦熱の介入》が通用しない相手もたくさんいるから、除去が不足してしまう。自分たちのプールの他のデッキから《臓腑抜き》か《祝福の光》を一枚回せるなら、もう一色タッチするのも良いアイデアだと思う。これは個人のシールド戦においても同じことが言えるよ。
その他 -様々なアドバイス-
もし 《ドミナリアの大修復》を手に入れたなら、僕はほとんどいつでもデッキに 《コイロスの守護者》を入れる。初見では 《コイロスの守護者》はパッとしないけど、驚くことに単体でもまずまずだし、《ドミナリアの大修復》と組み合わせるとすさまじいカードアドバンテージをもたらしてくれる。
《ギトゥの年代記編者》は《一瞬》と合わせると無限のカードアドバンテージを生み出す。このコモン2枚は『ドミナリア』のリミテッドで最高のペアだ。《一瞬》は《でたらめな砲撃》や各種英雄譚、特に《ミラーリ予想》とも相性が良い。《ギトゥの年代記編者》 + 《魂回収》の組み合わせも無限ループを形成するんだ。
《氷河期》と《氷の干渉器》はそれぞれ単体でも素晴らしいが、組み合わせるとバカバカしいほどの効果を発揮する。プールにこの2枚があるとするなら、ほとんど毎回同じデッキに2枚とも入るだろう。
《ギデオンの叱責》は《成長の資質》や《猛り狂い》、《不屈の意志》で回避される恐れがあるので、戦闘ダメージが解決したあとにプレイすることも検討しよう。このタイミングで唱えてもクリーチャーが生き残る可能性はあるけれど、たまにこういった強化呪文で追加のダメージをくらうのを防ぐことができるからね。
《冷水カミツキガメ》 は「青赤コントロール」にとっては驚くほど対処が難しい。だからサイドボード時はそのことを頭にいれておくべきだ。それから、《冷水カミツキガメ》 + 《セラからの翼》の組み合わせは《やっかい児》 + 《欠片の双子》を彷彿させるね。
自分の伝説のクリーチャーが弱ければ弱いほど、伝説のソーサリーを唱えられる可能性は高くなる。誰も「青赤コントロール」の《炎の番人、ヴァルダーク》を殺したいとは思わないだろうけど、《ウェザーライトの艦長、ジョイラ》は皆が除去しようとするだろう?
グランプリ本戦
初日
グランプリ当日の朝、僕は期待しすぎているということはなかった。チームシールドの練習をした1週間、友人たちはずっと僕たちを圧倒してきたし、敗北からいろんなことを学んだということだけが成果だった。だがフィンランドの伝説的アイスホッケーコーチ、タミ・タンミネン/Tami Tamminenはこう言った。「勝てる試合をものにする」。僕たちはそれを実行するだけだ。
さて、土曜の朝。構築を始めてプールを見ていく中で、僕らは次々とボムレアに出会った。チームシールドの場合は使えるカードが多いから、大抵の場合は良いデッキを3つ組むことができるし、そこにボムレアが混ざることも珍しくない。だから、みんな自分たちのプールを過大評価しがちだと僕は思っている。条件は他のプレイヤーだって同じだから、同じようにボムを持っている、ということをすぐに忘れてしまうのさ。12パックを開けて、好きな色を選ぶことができるのだから、少なくとも何枚か良いレアを使って構築できるのは保証されていると言っても良い。……ただ、こういったことを承知の上で言わせて欲しい。初日の僕たちに与えられたプールは、ただただ圧倒的だった。
僕たちは定石通り「青赤コントロール」、「黒緑《苗木》」、「白黒レジェンズ」を構築した。
「青赤」には《刃の翼ヴェリックス》、《ウルザの後継、カーン》、《火による戦い》、《ボーラスの手中》、そして《ヤヤの焼身猛火》が入っていた。前述の通り、弱い伝説のクリーチャーは伝説のソーサリーの良い相方だから、プールの《炎の番人、ヴァルダーク》も入れることにした。ほとんどの場合、こいつは必要な時にちょっとブロックに参加する程度の取るに足らない存在だが、戦場に残って何回か《ヤヤの焼身猛火》を唱えられるようにしてくれた。もっと良い伝説のパーマネントが葬られていったあとにね。
それから、《氷河期》と《アカデミーの修士魔道士》を入れない、という面白いデッキ構築も試みた。どちらもほとんどの「青赤」にとって素晴らしいカードだが、僕たちのデッキは”氷河のように”遅く、また《アカデミーの修士魔道士》を有効活用するためのウィザードが1枚もなかったんだ。この英雄譚と《アカデミーの修士魔道士》はよりテンポ重視のデッキで輝くけど、《悠久の壁》みたいなカードを使ったコントロールを担当しているなら、価値は大きく下がってしまうんだ。
「黒緑」は、《フレイアリーズの歌》を採用していた。こいつは「黒緑」における“神話アンコモン”とでも言うべきカードだね。それに加えて、前に話したような《コイロスの守護者》と《ファイレクシア教典》のコンボと、《先祖の刃》も採用していた。
「白黒」の方は、《黎明をもたらす者ライラ》に加えて《ウィンドグレイスの騎士、アルイェール》と《再鍛の黒き剣》が入っていた。ボムに恵まれていれば白だっていいデッキになれると分かったよ! この「白黒」は白偏重だったし、黒のダブルシンボルはどれも入れたくなかったから、黒いカードを他に分け与えたのは当然だったと思う。《不純な捧げ物》は「黒緑」でもっと輝くしね。
チームで相談すべきか? -自分自身の力で正しい判断を見出す-
試合中にあまり仲間内での議論やプレイについて相談することはなかった。これは、良い判断だったと思うよ。僕は大抵のチームがやるように、試合中に何度も何度も相談をするのは良くないと考えている。マリガン判断やサイドボーディングについては良いと思うけど、難しい局面での相談は、時に悪い結果をもたらすんだ。
大抵の場合、チームメイトの邪魔になるよりも自分自身で複雑な状況に対する解答を見つけた方が良い。最初からずっと試合に集中している自分でさえ解答を導き出せないような状況で、わずかな時間しか情報を得ていないチームメイトに期待するべきだと思うかい? それに、試合中に気をそらすことは、かなりリスキーな行為でもあるんだ。誰かにアドバイスを求めても、不確実な情報に基づいた平凡なアドバイスが返ってくるだけだと思うし、その上でプレイに臨むなんて悪い結果をもたらしかねない。チームメイトへの状況説明に時間を費やすぐらいだったら、自分自身の力で正しい判断を見出したほうが良いんだ。
時間制限については言うまでもない。チームメイトと相談し始めたら、あっという間に時間が過ぎていく。そして毎ターン数分掛けるようになってきたとしたら、引き分けで終わる可能性はかなり高くなってしまうだろう。今回のグランプリも、初日は計4チームが”無敗”でトーナメントを負えた。といってもどのチームも8-0(全勝)したわけじゃない。つまるところ、今回はIDではない”単純な時間切れによる引き分け”がすごく多かったということだ。
チーム内で前もって練習できて、特定の種類のデッキに長けたチームメイトがいるなら、本番で大きな助けになるだろう。僕らがひたすら練習に打ち込んだ一週間の中で、ヨリは基本的にずっと「青赤」を担当していて、ヨーナスは「黒緑」専門だ。そして僕はというと、いつも残った白をプレイしていた。結果、ゲーム中に問題が起きたとしても、チームメイトより自分の方がアーキタイプについてよく知っている状態になっていた。だから、自分自身のプレイに集中し、他のメンバーも同じように任された仕事をやってのけてくれると信じることができた。これによってゲーム中のあらゆる問題が解決しやすくなり、プレイしながら自分のデッキタイプに対してさらに豊富な経験を得ることになったんだ。
2日目
初日はまるで楽勝のように感じられた。パナギオーティース・パパドプーロス /Panagiotis Papadopoulos、アレクサ・テラロヴ/Aleksa Telarov、そしてステファン・スチク/Stjepan Sucicのチームに1敗を喫しただけで、彼らは初日を無敗で終えたチームの1つだった。しかし、2日目になって勝ち星を得るのが大変になった。僕らに与えられたプールは本当に奇妙なものだったんだ。ほとんどのプールでは、コモンに《雲読みスフィンクス》、《アカデミーの修士魔道士》、《一瞬》、《予言》、《中略》 などがある青が重要なんだけど、今回僕たちに与えられた青いカードは本当に貧相だった。「青赤」は青のしっかりした基盤がないとまったく機能しないから、他のデッキを模索するしかなかった。黒と緑のカードも少し変わっていて、枚数はたくさんあったのにこの色でいつも機能するようなシナジーが見当たらなかったんだ。例えば、《雑食のサリッド》をたった1枚も持っていないという具合だ。このアーキタイプのカギとなるカードなのにね。
結局、お互いの弱点を補える白と青を使ってデッキ構築を始める流れになった。青が抱える最大の弱点はクリーチャーが実質1枚もいないということで、一方の白は役に立つ呪文がない、ということだ。それらを組み合わせて、古典的な「青白飛行デッキ」を作ったんだ。
特筆すべきことが1つある。それは《ベナリアの軍司令》をデッキに入れなかったことだ。初日の「白黒」ではこいつを採用して、11枚の《平地》と6枚の《沼》を入れていたんだが、多分間違いだったね。そのデッキもこいつの居場所はなかった(もしくは、黒を減らすべきだったかもしれないな)。
この「青白」は、7枚の《島》で、2枚の《一瞬》と《ボーラスの手中》を1枚唱えようとする。《平地》が10枚しかないなら、《ベナリアの軍司令》を早い段階で安定して唱えることはできないだろう。そしてもし遅いターンになって唱えられたとしても、このデッキは序盤にこいつが必要なのであって、終盤では役に立てないんだ。横に並んだ《灰色熊》みたいなやつらを強化したとしても、相手が繰り出そうとしている大型クリーチャーに対して対抗できないからね。飛行クリーチャーで殴り勝つために時間を稼ぎたいと考えた場合、6ターン目辺りに3マナのクリーチャーを唱えるならば、「キッカー」できる《守衛官》のほうが《ベナリアの軍司令》よりも良いことが多いだろう。こっちは壁になってくれるトークンをたくさんばらまくからね。もちろん、3ターン目に唱えられる可能性が高い、という意味でも《守衛官》の方が良いだろう(結局《守衛官》もデッキから外れたけどね)。
面白いことはもう1つあって、初日と2日目の白いデッキには、両方とも《不屈の護衛》を採用していた。だけど、互いに異なった使い方をしていたんだ。初日の「白黒」では守りたいボムレアで溢れていたから、手札にあってプレイ可能だったとしても1ターン目にプレイしないことがしばしばあった。後半になれば、もっと価値を発揮するからね。例えば、《黎明をもたらす者ライラ》をこいつで守れば、基本的に「赤緑」デッキを詰みの状態にできる。一方、2日目の「青白」では守るべき対象がより少なかったから、もっとアグレッシブに使っていた。だからこのデッキでは毎回1ターン目にこいつを繰り出していたね。2/1という《不屈の護衛》のサイズを長期戦でも意味のあるものにするために、《ペガサスの駿馬》も複数採用していたくらいさ。
白と青のカードをまとめたあと、赤緑黒の三色を、プールにある多色のカードを最大限活用できるように分けた。赤緑には《炎矢師、ハラー》が、赤黒には《血の炎、ガルナ》があったんだ。《センギアの純血、カザロフ》も多色カードたちの”名誉会員”さ。赤と緑を組み合わせて、《フレイアリーズの歌》と「キッカー」つきの強化呪文を採用したアグロデッキを組みあげた。黒と赤は大量の除去とボムに恵まれていた。リミテッドでこれ以上必要なものはそんなにないだろうね。2マナの「キッカー」つきクリーチャーたちによってカードアドバンテージも得ることができる。これは「赤黒」にとってはとても重要なことなんだ。
「赤黒」については初日のデッキたちと同じようにぶっ壊れていたが、他の2つのデッキは深刻なぐらい弱かった。それでもどちらのデッキも能動的なゲームプランを持っていたし、よく練られていたから、チャンスはあると思っていたよ。
2日目の最初の試合中、ジャッジの1人が「デッキボトムをチェックしてもいいか?」と聞いてきた。それから彼は僕のデッキボックスをチェックし始めたんだ。「何が起こっているんだろう?」と不思議に思ったよ。その試合が終わったあとにデッキチェックが行われ、僕が間違って《魔術師の稲妻》の代わりに《シヴの火》をデッキリストに記入していたことが分かった。デッキリストでペナルティを課されたのは初めてだったし、8-1で迎えたゲームを落とすのはチームグランプリでは決して良いものではないね。
次のラウンドが始まったとき、チーム戦をやってきて経験したことのない奇妙なことが起こったよ。僕は対戦相手に「読み書きができず、デッキリストの記入ミスをしてしまったんだ」なんて話していたんだ。すると、中央席に座っていたヨリが自分のデッキボックスをなくしてしまったことに気付いた。さらに、その向こうに座っていた対戦相手はトイレに行きたいと言い始めた。現場は大混乱だ。色々なジャッジに、様々な質問が浴びせられていたよ。ちなみに、ヨリのデッキはすぐにジャッジステーションで見つかった。そしてジャッジが彼にデッキを返却したら、またすぐに持っていかれたんだ。「今度はデッキチェックだ」とね。ヨリは彼らに向かって叫んだよ。「ずっと持ってたんだろ!?」。
さて、あるゲームでの話だ。僕は地上をうまいこと膠着状態に持ち込んでから、《リッチの騎士、ジョス・ヴェス》で攻撃を始めた。《愚蒙の記念像》を出していたから、《リッチの騎士、ジョス・ヴェス》が墓地に行かないかな? とちょっと期待していたんだ。《愚蒙の記念像》で回収すれば、「キッカー」で唱えられるからね。でも、相手は数ターンに渡って相打ちを拒んできたから、自分の《焦熱の介入》で除去することに決めたんだ。「攻撃は最大の防御」に関する僕の過去記事を読んでくれたかな? これは最も良い例だね。僕が思うに、クロックを刻むことは、余分な除去を抱えるよりも安全な勝ち方だよ。
2ゲーム目を始める際、ヨリは僕に、「デッキチェックがあったけど、もう試合は終わった。これ以上プレイする必要はないよ」と教えてくれた。デッキリストの記入ミスが僕たちの結果に影響を及ぼさなくて、心の底から安心したよ。個人のグランプリなら1人のミスで済む。だけど、チームグランプリではチームメイトを落胆させてしまうように思えて、何倍も心苦しくなるんだ。
最も印象深い試合
この日最も印象深い試合はラウンド12のフィーチャーマッチで、マシュー・フォルクス/Matthew Foulkes、ファブリツィオ・アンテリ/Fabrizio Anteri、そしてピーター・ウォード/Peter Wardのチームを相手にした試合だ。
(Tobi) Featured in Round 12 of #gpbol are:
— Magic Pro Tour (@magicprotour) 2018年4月29日
Foulkes-Anteri-Ward (9-1-1) vs. Eloranta-Hukka-Kuisma (10-1)
Pinto-Miani-Sajjad (9-2) vs. Tenenbaum-Morgenstern-Unfried (9-2)
Watch live at: https://t.co/m2tMU1i2uL pic.twitter.com/a3YkMrL2Be
ピーターとの最初のゲームでは、デッキ内のシナジーをいくつか披露する結果になった。《飢饉の具現、トルガール》のために《ギトゥの年代記編者》 と《カリゴの皮魔女》を生け贄に捧げて、そいつらと《包囲攻撃の司令官》を回収するためだけに《血の炎、ガルナ》の誘発型能力を使ったんだ。あとでちょっと汚いプレイだと思ったね。
2本目はもっとタイトな戦いになった。最初の方はカメラに映ってないけど、僕がかなり遅めのスタートを切ったのに対して、ピーターは《フレイアリーズの歌》と共に早い展開を見せて、かなりプレッシャーをかけてきた。《フレイアリーズの歌》の猛威によってすぐにライフが危うい状態に達してしまったけれど、《飢饉の具現、トルガール》が何度か10点までライフを戻して、時間を稼いでくれた。問題は、こいつを唱えるために盤面のクリーチャーすべてを生け贄に捧げなければいけなかったことだ。ピーターの次の攻撃で盤面が少し片付いてしまったあと、僕は《センギアの純血、カザロフ》を唱えることでゲームをなんとか立て直そうと試みた。そこから僕は生き延びるためのプレイを強いられたけど、すぐに危機を脱することができると分かっていたから、ずっと機会を伺っていたんだ。
《包囲攻撃の司令官》と《飢饉の具現、トルガール》が墓地に眠っていて、《愚蒙の記念像》を抱えていた。だからもしちょっとでも戦況が落ち着けば、どちらかを回収して1、2回《センギアの純血、カザロフ》で攻撃するだけで、ピーターを倒すことができるわけだ。ここでもまた、考えられる限り最も安全な道である「防御」に入るようなことはせず、自分自身でゲームを終わらせる策を探していた。また、この問題の重要なカギは、サイドボードから投入した《放射稲妻》を唱えるタイミングを探ることだった。こいつは《センギアの純血、カザロフ》を巨大に育てることができるからね。数ターンが経過し、ついに《愚蒙の記念像》を使うチャンスが訪れた。《飢饉の具現、トルガール》を回収し、一撃でゲームを終わらせたのさ。
Congratulations to the #gpbol Top 4 teams:
— Magic Pro Tour (@magicprotour) 2018年4月29日
Joonas Eloranta, Jori Hukka, Matti Kuisma
Antonio Pinto, Davide Miani, Usama Sajjad
Matthew Foulkes, Fabrizio Anteri, Peter Ward
Andrej Rutar, Robin Dolar, Davor Detecnik pic.twitter.com/JNU1lvDjRc
ラウンド13に勝利して、Top 4入賞を確定させた。……でも、残念ながら、準決勝についてはそんなに語ることがないんだ。ラウンド12と同じチームと対戦したんだけど、マシューとファブリツィオがヨーナスとヨリを速攻で蹴散らした。一方僕もピーターに打ちのめされた。なんとも形容し難いような微妙なカードの束によってね。それはまるで……そうだな、言うなれば芸術作品のようだったよ。彼のデッキは4色で、《パーディック山の放浪者》も入っていた。準決勝についてまとめるとすれば、これでおしまいだよ。
ただし、彼は複数枚の《這い回る偵察機》を持っていて、このカードが接着剤となってデッキを機能させていたんだ。みんなで練習していたとき、チームドラフトの《這い回る偵察機》はベストコモンかもしれないと気づいていた。対戦相手に流したくない各色の強力なカードを唱えることを可能にするからね。もちろん、普通に使っても十分に強いカードだよ。
まとめ
振り返ってみれば、グランプリの週はとても素晴らしかった。そして8月のチームプロツアーを本当に楽しみにしているよ。もし機会があれば、僕たちがやったようなトーナメントに向けて友達と一緒にグループになって練習する「強化合宿」をオススメするよ。グランプリに向けた素晴らしい準備になるとともに、ものすごく楽しいからね。
『ドミナリア』のリミテッドはすごく楽しいし、クレイジーなプレイを実現できる。『イクサラン』の後に吹いた、新たな風という感じだ。この記事によって『ドミナリア』の環境と、チームシールドについて知ってもらえたなら幸いだ。
では、また会おう!
マッティ