キューブドラフトにおける単色ドラフト

Dmitriy Butakov

Translated by Daijiro Ueno

皆さん、ごきげんよう。

『ドミナリア』が発売された。世間には、新しいスタンダードとリミテッドに関する記事が溢れている。しかし今日は、Magic Online上で大人気のフォーマット、”キューブドラフト”について皆に話すことにしたい。ヴィンテージ、レガシー、モダンなど、キューブというフォーマットにもたくさんあるが、共通して言えることが1つある。それは、キューブデッキのパワーレベルはリミテッドのデッキよりも構築デッキのそれに近いということだ。.

相手に干渉する手段を多く持つデッキは、神話レアの詰め合わせよりも良い結果を残すものだ。この環境は非常に多様で、ドラフト戦略も他のフォーマットと異なる点が多い。そこで、今回私は「単色デッキ」に焦点を当ててみることにした。時にはキューブを用意した人に文句を言いたくなることもあるだろうが、基本的にはキューブは良くバランスが取れていて、色の役割もはっきりとしているものだ。そしてこれは、私が単色を好んで使う理由の1つでもある。様々なキューブがあるので当然カードプールもそれぞれ異なるわけだが、各色のプレイスタイルは常に同じなのだ。以下が各色のデッキのコンセプトになるので読んでみてくれ。もし、いずれかのアーキタイプについて解説してほしい、と思ったのなら、コメントを送ってほしい(編注:英語記事に、コメント欄があります)

単色デッキの戦略

白ウィニー

Savannah LionsCrusadeUmezawa's JitteGideon, Ally of ZendikarHero of Bladehold

「白ウィニー」は3マナ以下のクリーチャーが15~16体と、《十字軍》のようなカードを何枚か採用する。また同時に、《刃砦の英雄》やプレインズウォーカーのような強力な4マナ域を2~3枚、そして5マナ域に何枚かフィニッシャーを据える形だ。

Spectral ProcessionGlorious AnthemWindbrisk Heights

《栄光の頌歌》のような呪文によってサイズが増すため、《幽体の行列》のようなトークン生成手段は非常に有用だ。頭数が増えるから、相手の単体除去は有効的でなくなる。残り5回のピックまで《風立ての高地》が残っているのを見かけることも少なくない。

赤単バーン

鐘突きのズルゴ雷口のヘルカイト反逆の先導者、チャンドラ焦熱の合流点

「赤単バーン」は1~2マナ域の攻撃的なカードが10枚ほど、そこに(3)(赤)(赤)の速攻持ちドラゴンたち、《焦熱の合流点》のような4マナの”極上の”火力呪文や、プレインズウォーカーが主たる戦力で、残りは多種多様な軽量火力というラインナップだ。

焼尽の猛火灼熱の血

《焼尽の猛火》の能力を最大限活用するように心掛けるべきだ。君にとってのベストムーブは、こちらのクリーチャーで攻撃を仕掛けるために相手の壁を焼き払うことと、本体に火力呪文を叩き込むことを、1枚のカードで行うことだ。

緑単ランプ

ガイアの揺籃の地ラノワールの使者ロフェロス

「緑単ランプ」はモダンキューブではそれほど強くないが、レガシーやヴィンテージで輝くアーキタイプだ。私が良くピックするのは《ガイアの揺籃の地》《ラノワールの使者ロフェロス》である。レガシーには多数のマナクリーチャーと6マナ以上のボムが存在するので、卓に競合者がいてもこれらをピックするのは容易だ。

緑の太陽の頂点世界を目覚めさせる者、ニッサ野生語りのガラク孔蹄のビヒモス歯と爪

チートのようなマナ加速呪文をピックしたならば、すぐに《緑の太陽の頂点》《世界を目覚めさせる者、ニッサ》、あるいは《野生語りのガラク》を確保するように心掛けよう。これらのカードは、ゲーム中のどの段階でも素晴らしい仕事をするからだ。《孔蹄のビヒモス》《歯と爪》のようなゲームを速やかに終わらせてくれる”極上の”カードも存在するが、必須というわけでは決してない。

私が思うに、「ランプ」は最もドラフトがしやすいデッキだ。ごく一部の特定のカードのみをピックすれば良いし、マナ加速はどれでも良い。緑のフィニッシャーだけは必要だが、これらはプールに溢れかえっているのだ。

黒単信心リアニメイト

納墓再活性墓所のタイタンアスフォデルの灰色商人

「黒単信心リアニメイト」はレガシー・ヴィンテージキューブにおいて「緑単」の次に好きなデッキだ。だが「黒単」の方がよりトリッキーな動きをする。軽いリアニメイト呪文でクリーチャーを釣り上げるプランを取りたくなるだろうが、重要なのは《グリセルブランド》ではない。《墓所のタイタン》《アスフォデルの灰色商人》こそがこのデッキの核なのだ。最速の《繰り返す悪夢》は理想だが、リアニメイト対象は通常のキャストが可能なものこそ望ましい。サイドボードから《大祖始の遺産》を叩きつけられたとしても勝ちの目を潰されない、という意味でも非常に重要である。

生き埋め恐血鬼ウーナのうろつく者密輸人の回転翼機

黒は墓地関係のカードが豊富だ。《生き埋め》はリアニメイト対象に加えて《恐血鬼》《墓所這い》といったカードと組み合わせて最大限活用できるよう試みよう。《ウーナのうろつく者》《密輸人の回転翼機》は手札にあっても活躍しないカードたちを墓地に送り込みつつ、素晴らしいアタッカーとしても機能する。《納墓》のようなカードはアドバンテージをまったく得ていないということは、頭に入れておいた方が良いだろう。

青単

聖別されたスフィンクス精神を刻む者、ジェイス

さて、「青単」はどうか? キューブにおける青は基本的に”補助の色”に過ぎない。単色でデッキが組めないのはこの色だけだ。「青単」を目指すことは推奨しない、と強く言っておこう。というのも、青で勝利に直結するカードは、ごく一握りしかないのだ。《聖別されたスフィンクス》は言うまでもなく素晴らしいカードだが、このカードが戦場に出る頃には、すでに勝敗が決しているだろう。キューブにおいて《対抗呪文》のような打ち消し呪文は機能する。とはいえ、戦場にすでに出ている脅威に対抗するのは容易ではない上に、そもそも相性の良いコントロールデッキの数は少ない。したがって、主要な呪文さえ打ち消すだけで良い重いランプや、純粋なリアニメイトといった数少ないデッキのみが有利な相手なのだ。

精神の願望

私自身は試したことはないが、ヴィンテージでは《精神の願望》を組み込んだストームデッキが作れるかもしれない。しかし試合を見た限りでは、理想のストームデッキよりも少し不安定な印象を受けた。

各フォーマットによる違い

モダン・キューブ

密輸人の回転翼機火と氷の剣ヴェールのリリアナ原始のタイタン

通常のドラフトと同じだが、ドラフト開始前からデッキの方向性を決めてはいけない。序盤は《密輸人の回転翼機》《火と氷の剣》、もしくは強力なプレインズウォーカー(《ヴェールのリリアナ》《遍歴の騎士、エルズペス》《紅蓮の達人チャンドラ》など)といった手堅いピックを心掛けよう。《墓所のタイタン》《原始のタイタン》のようなタイタンサイクルもピックしてしまって問題ないだろう。

レガシー・キューブ

Rofellos, Llanowar EmissaryGaea's CradleNatural OrderRecurring Nightmare

レガシーでは初手から緑を狙ったほうが良いと思っている《ラノワールの使者ロフェロス》《ガイアの揺籃の地》《自然の秩序》は文字どおり反則級のカードで、速やかに勝利をもたらすだろう。また、《繰り返す悪夢》が壊れているのも言わずもがなだ。

ヴィンテージ・キューブ

Ancestral RecallTime WalkBlack Lotus魔力の墓所

ヴィンテージキューブに関しては、実はあまり好きではない。なぜならば、パワー9が存在するからだ。1ターン目から4マナを生み出せるような状況が起こり、プレイやドラフト云々よりもコイン投げといった運の要素が強すぎる。《魔力の墓所》は私が最も嫌悪するカードで、《Black Lotus》が一度のみマナ加速を可能にするのに対して、《魔力の墓所》は毎ターン猛威を振るう。3点のライフ損失さえ、この能力の前では問題にならないのだ。

単色デッキをドラフトする強み

では、ドラフト中の戦略についてお話しよう。単色デッキをドラフトする利点は主に2つある

謎めいた命令Tundra汚染された三角州

平均的な2色デッキでは、基本でない土地が戦場に1枚、デッキ全体には3,4枚ほどしか入っていない。そして、ダブルシンボルや《謎めいた命令》のようなトリプルシンボルさえも、キューブでは決して珍しいものではない。こういった理由で、多色地形は皆が欲しがる。そのため、マナ基盤を安定させるためには、これらを早期にピックしなければならないわけだ。これまで色の合わないフェッチランドがピックされていくのを何度も見たが、私ならばそんなことはしない。ピックしたフェッチランドはそのまま腐るか、なんとかして同色のデュアルランドをピックするはめになるが、どちらにしても良いとは言えないだろう

風立ての高地変わり谷

単色デッキを選べば、これらの問題はすべて解決する。「秘匿」サイクルや無色のミシュラランドは欲しいところだが、他のプレイヤーはこんなものに興味はないので、11手目でも確保できるだろう。以上を要約すると、単色の強みはマナスクリューに耐性があること。そして、多色土地を苦労してピックする必要がないというところにある。

アダントの先兵今田家の猟犬、勇丸

単色デッキは珍しいカードも扱うので、それらが活躍するのを見る機会が多いのも特徴だ。例えば、《アダントの先兵》《今田家の猟犬、勇丸》は「白ウィニー」のエースだが、他のどんなデッキでも、これらのカードがプレイされることはないだろう。もちろん、こういったカードをカットしてくる相手もいるだろうが、「その程度は許容範囲内だ」というのが私の見解である。なぜならば、キューブではプレイアブルなカードを30枚集めるのも、決して難しいことではないからだ。メインデッキの埋め合わせ要員を無視して、サイドボードカードをピックすることさえできるのだから。

まとめ

キューブは、マジックに楽しさを求める”ティミー”向けのフォーマットだというのは承知している。しかし、”スパイク”のように挑戦したいのならば、単色を試してみると良いだろう。ここまで紹介した戦略に同意してくれると思っているが、もしかしたら私が間違っている部分もあるかもしれない。いずれにせよ、どんな経験も自分のためになるものだ。2色目を探すのに必死な対戦相手に対して、こちらは4ターン目に《ファイレクシアの抹消者》を唱えたり、3ターン目に「双呪」で《歯と爪》を叩きつける……こんなに素晴らしいことはないと思わないかね?

ファイレクシアの抹消者歯と爪

マジックのフォーマットの中で、キューブは”正しい”戦略を見つけるのが最も難しいフォーマットといえるだろう。君が私のやりかたに興味を持ってくれて、願わくば実践してくれることを願っている。

読んでくれてありがとう。では、君の幸運を祈る!

ドミトリー・ブタコフ

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