Translated by Daijiro Ueno
(掲載日 2018/06/08)
みなさんこんにちは!
プロツアー『ドミナリア』が終わりましたね!私は18日間日本を離れて3つのトーナメントを戦いました。各週末で行われた3つの大会の結果はとても良いものとなりました!
グランプリ・トロント2018 (チーム構築): 7位、チームメイトはエドゥアルド・サイガリク/Eduardo Sajgalikとクレイグ・ウェスコー/Craig Wescoeです。
グランプリ・ワシントン2018 (チームリミテッド): 18位、チームメイトは齋藤 友晴さんとラファエル・レヴィ/ Raphael Levyです。
そして、プロツアー『ドミナリア』 (スタンダード+リミテッド): 18位
この旅を終え、プロポイントは38に達しました。ゴールドレベルを達成したのです!
今後のRPTQとグランプリで行われるスタンダードに参加する方に向けて、私がこの旅で培ったスタンダードの経験をみなさんに共有したいと思います。
『ドミナリア』はたくさんの良いカードに恵まれていたので、試行錯誤を繰り返して新しいデッキを作ることが楽しみでした。これはマジックの中で一番好きなことですね。
調整の中で生まれたデッキたち
3つデッキを作りましたが、プロツアーではどれも使用しませんでした。ですがどのデッキにも可能性があり、将来良い結果を残すのではないかと思っています。これらすべてのデッキには《宝物の地図》と《ウルザの後継、カーン》が入っており、この組み合わせは『ドミナリア』リリース後だれも取り組んでいないにも関わらず、もっとも良いコンビのひとつだと考えています。
「青赤ザヒード」
このデッキはプレイしていてとても楽しかったです。《カーンの経時隔離》によって追加ターンを何度も得るようなどんでん返しが可能ですからね。《ランプのジン、ザヒード》のパワー・タフネスは《鉄葉のチャンピオン》や《熱烈の神ハゾレト》とやりあうのに完璧で、《反逆の先導者、チャンドラ》、《喪心》や《栄光をもたらすもの》といったカードから生き残ることができます。《ランプのジン、ザヒード》は《宝物の地図》や《つむじ風の巨匠》、《ピア・ナラー》の助けにより4ターン目のキャストが非常に容易です。《無許可の分解》が環境にあふれていたのでこのデッキに注力するのは途中でやめましたが、「赤単」が「赤黒」よりもポピュラーになれば素晴らしい活躍をみせるでしょう。
3 《島》
4 《硫黄の滝》
4 《尖塔断の運河》
4 《霊気拠点》
2 《産業の塔》
2 《ザルファーの虚空》
-土地 (25)- 4 《つむじ風の巨匠》
2 《ピア・ナラー》
3 《ランプのジン、ザヒード》
-クリーチャー (9)-
4 《蓄霊稲妻》
3 《削剥》
2 《本質の散乱》
3 《カーンの経時隔離》
1 《徙家+忘妻》
4 《宝物の地図》
3 《反逆の先導者、チャンドラ》
3 《ウルザの後継、カーン》
-呪文 (26)-
「ジェスカイ・プレインズウォーカー」
こちらでは相手の除去を腐らせるためにノンクリーチャーデッキを試してみました。《ランプのジン、ザヒード》を《ドミナリアの英雄、テフェリー》と入れ替え、完全なコントロールへ舵をきったのです。このデッキは私と相性が良く、「白青コントロール」を使っている無名の選手たちを打ち負かすことができましたね。しかしラファエル・レヴィとフリープレイを行ったあと、「白青」の使い手が熟練ならばこのマッチアップは勝つのが難しいと気づきました。一方でクリーチャーデッキ全般には強いと言えます。「赤単」や「黒赤」が主流な環境では除去も人気でしょうから、このデッキにはチャンスがあると思います。
4 《削剥》
4 《稲妻の一撃》
1 《一瞬》
4 《不許可》
2 《至高の意志》
2 《暗記+記憶》
4 《宝物の地図》
1 《アズカンタの探索》
3 《反逆の先導者、チャンドラ》
3 《ウルザの後継、カーン》
3 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (34)-
「グリクシス《王神、ニコル・ボーラス》」
このデッキはプレインズウォーカーに簡単に対処できるという利点を持っています。黒・赤の最上級の除去たちを手札に引き込めるのでアグロに強く、コントロールには《否認》 と《強迫》が効果的です。《闇の暗示》があるのでプレインズウォーカーを失うのもいとわないでしょう。それにこのカードはアドバンテージを獲得することもできますからね。このカードのデザインは昔《残酷な根本原理》をプレイしたときのことを思い出させてくれるでしょう。
「白黒ミッドレンジ」や「ボロス・アグロ」も試しましたが、どちらもオススメではないですね。
デッキの決定 -「青黒コントロール」
ワシントンにいたとき、Team MTG Mint Cardでの調整中にもっとも素晴らしいパフォーマンスを見せたのがエドゥアルド・サイガリクの「青黒ミッドレンジ」でした。1 《島》
4 《異臭の池》
4 《霊気拠点》
4 《花盛りの湿地》
4 《水没した地下墓地》
2 《森林の墓地》
-土地 (25)- 2 《歩行バリスタ》
3 《才気ある霊基体》
3 《光袖会の収集者》
4 《機知の勇者》
1 《豪華の王、ゴンティ》
1 《貪欲なチュパカブラ》
2 《スカラベの神》
-クリーチャー (16)-
1 《板歩きの刑》
1 《喪心》
3 《大災厄》
3 《ヴラスカの侮辱》
1 《不帰+回帰》
2 《ウルザの後継、カーン》
2 《死の権威、リリアナ》
2 《秘宝探究者、ヴラスカ》
-呪文 (19)-
このデッキはコントロールデッキにはほとんど負けないと言って良く、ほぼすべてのデッキに対して相性は良いのですが、唯一赤系のデッキを苦手としています。《光袖会の収集者》と 《機知の勇者》は両方とも《ゴブリンの鎖回し》が天敵で、このカードの流行を見越していた私にはこのデッキをプレイすることは考えられませんでした。このメタゲームでは、タフネスが1のクリーチャーをたくさんプレイすることは危険すぎるのです。そこで小粒のクリーチャーはサイドボードに置いておき、コントロール相手にこれらを投入することでミッドレンジ路線をとれるようにしました。
このデッキのもう一つの弱点は、《秘宝探究者、ヴラスカ》が相性の良い相手のときにしか役に立たないということでした。このカードはプレインズウォーカーに対処できませんし、クリーチャーも追放できません。これらは小さな問題かもしれませんが、スタンダードではカードの強さを決定づけます。
《大災厄》はこのデッキではほとんど活躍できません。《ウルザの後継、カーン》や《死の権威、リリアナ》のために下地を整えることができませんし、手札破壊として使っても基本的にはほとんど役に立ちませんでした。《反逆の先導者、チャンドラ》、《再燃するフェニックス》、《ピア・ナラー》、そして《ゴブリンの鎖回し》を搭載した「赤黒」を相手にしたあと、《大災厄》をすべて《至高の意志》に変えたことを覚えています。つまりこのカードは実質何もしないといって良いので、《至高の意志》のほうが良さそうに感じました。
《ヴラスカの侮辱》は様々な脅威に対応できる現スタンダード最強のカードのように見えます。叶うことなら5枚以上デッキに入れたいカードで、《奔流の機械巨人》が素晴らしい活躍をするのもこのカードのおかげです。
《ウルザの後継、カーン》はパワーレベルが安定しないカードで、早々にゲームを決めてしまうときもあれば、”土地を引いて、6点分本体ダメージを和らげる働き”しかしないときもあります。「青黒」では各種カウンターや軽い除去のおかげで、このカードを更地に着地させることが容易です。そして一度着地すればカードアドバンテージをもたらしてくれます。
私は「青黒コントロール」を作り上げ、「赤黒」に対してテストを開始しました。戦績は非常に良く、ケルヴィン・チュウ/Kelvin Chewとエドゥアルドによるデッキ構築の手助けもあって12勝0敗を達成することもできました。これでこのデッキをプレイするべきだという確信が生まれましたね。齋藤 友晴さんとラファエル・レヴィもこのデッキを使用することにして、他のチームメイトのほとんどは「赤黒」を使いたがっていました。
このとき、まだ私たちはこのデッキが「赤黒」に強いということしか分かっていませんでした。短期間で最高のリストを追い求めるために、私たちは手分けして調整を始めることにしたのです。ケルヴィンと私は「青白コントロール」相手のメインとサイド戦を、エドゥアルドは「緑単」と「黒緑」を、そして齋藤さんは「赤単」を担当しました。
それからみんなで集まって、これらすべてのデッキ相手のサイドボードはどんな形が最良か話し合い、デッキに入れたいカードをすべてリストに起こしました。その中からより重要度の低いものを除外していき、土地以外のカード49枚(メイン34枚、サイド15枚)を選び抜きました。それから大きな弱点を作らないようにカードをメインデッキとサイドボードに割り振り、最終的にこちらのリストでプロツアーを戦うことにしたのです。
こちらがプロツアーにおける戦績のまとめです。
デッキ名 | 勝ち | 負け | 引き分け |
赤単 | 2 | 0 | – |
赤黒 | 8 | 6 | – |
緑単 | 1 | 1 | – |
青白コントロール | 2 | 0 | – |
白黒ミッドレンジ | 1 | 3 | – |
黒緑《巻きつき蛇》 | 3 | 1 | – |
青黒ミッドレンジ | 2 | 1 | – |
緑白ミッドレンジ | 1 | 1 | – |
青緑《ウルザの後継、カーン》 | 1 | 1 | – |
エスパーコントロール | 1 | 2 | – |
赤白アグロ | 1 | 1 | – |
ジェスカイコントロール | 0 | 0 | 1 |
青黒アーティファクト | 1 | 0 | – |
合計 | 24 | 17 | 1 |
サイドボーディングガイド
対「赤黒」
対「赤黒」
「赤黒」相手にはできる限り有利になるように構築したので、このマッチアップではサイドボーディングはほぼなにもすることはないでしょう。1ゲーム目はかなり有利で、2ゲーム目は相手が相性差を埋めてきます。そのため相手に脅威となるカードをできるだけ早くキャストしたくなるでしょう。これが3枚目の《スカラベの神》を採用している理由です。もし「赤黒」が《ボーマットの急使》をプレイしてくるようなら、《才気ある霊基体》をサイドインしても良いでしょう。
対「赤単」
対「赤単」
対「青白&エスパーコントロール」
対「青白&エスパーコントロール」
対「黒緑《巻きつき蛇》・緑単」
対「黒緑《巻きつき蛇》・緑単」
「青黒ミッドレンジ」や「白黒ミッドレンジ」のような、1ゲーム目で得た情報が非常に大事になってくるマッチアップもあります。終盤戦を見据えて、相手は2ゲーム目以降ロングゲームを仕掛けてくるでしょう。ここで覚えておきたいのは《強迫》はあまり効果的でないということで、むしろ打ち消し呪文のためにマナを構えていたほうが良いでしょう。基本的にはこの戦法でいきますが、リストによって差がありますし、3本目に突入すると戦略はより複雑になってきます。
対「青黒ミッドレンジ」
対「青黒ミッドレンジ」
《中略》はこのマッチアップでは不安定なカードです。《強迫》に弱いですが《機知の勇者》を打ち消し、そのまま追放することができます。
対「白黒ミッドレンジ」
対「白黒ミッドレンジ」
どこか変えるとするならば?
どこも変えたくないですが、以下の変化を加える可能性はあります。
《沼》を入れて《進化する未開地》を抜きます。《進化する未開地》はデッキ圧縮と《致命的な一押し》の「紛争」達成のために入れましたが、正直に言うとタップイン土地は《スカラベの神》や《奔流の機械巨人》を出せるタイミングが遅れてしまうため、前述の2つの利点よりもこのことの方がより重要だと思います。
「赤単」や緑系デッキが多いようなら、サイドに3枚目の《才気ある霊基体》を採用します。
もしメタが「赤単」だらけなら、サイドに1、2枚《菌類感染》を採用します。
自分のプレイ、成績、ゴールドレベル達成、プロツアーに向けてのデッキ構築、すべてに満足しています。とくにナイアガラの滝を望む素晴らしい一日を過ごしたとき、”マジックを通して世界を見る”ことを実感できました。
忘れないでほしいのは、マジックは勝ったり負けたりするゲームで、ちょっとしたことでトロフィーを掴んだり、その手から滑り落ちたりしてしまうということです。でも“自分を信じて努力し続ける”、そうすれば、きっと報われるのです。
読んでいただいてありがとうございます。
ジェレミー・デザーニ