「緑単」の新たな相棒、《暗記+記憶》

Pierre Dagen

Translated by Daijiro Ueno


バージニア州のリッチモンドでプロツアー『ドミナリア』が開催された。俺は”Team Catharsis”のメンバー(マルク・トビアシュ/Marc Tobiasch、オリヴァー・ポラック=ロットマン/Oliver Polak-Rottman、ニールス・モール/Niels Molle、ピーター・フィーレン/Peter Vieren、ピオトル・グロゴウスキ/Piotr Glogowski)を引き連れ、旧友であり昔“Team Eureka”に所属していたイマニュエル・ガーシェンソン/ Immanuel Gerchensonとアレクサ・テラロフ/Aleksa Telarovとともに調整を行っていた。

良く知れたメンバーで調整を行うことの利点は、(1)一緒にいるだけで本当に楽しい、(2)彼らを心の底から信頼できる、といったところだ。今回は特にこのことが本当に大きな意味を持っていたよ。

プロツアー前 、「緑単ストンピィ」の発見

王神の贈り物豊潤の声、シャライ発明の天使

さて、テスト週間の内ほとんどは刺激的で革新的なデッキの開発に費やしていた。その内1つは「白青緑《王神の贈り物》で、これは《来世への門》を運用しつつ《豊潤の声、シャライ》《発明の天使》を強化するといったサブプランも持ち合わせたものだった。「青単ストーム」やその他にも良いデッキはあったんだが、特筆すべきはマルクと共同で開発した「赤単《ケルドの炎》」で、実際のところ、彼よりも俺の方がこういう基本土地だらけのデッキを楽しんでいたね。

ケルドの炎

こういうデッキたちのほとんどは、すぐに没になっていった。しかし、この「赤単」は最終候補の1つとなり、デッキリスト提出の4時間前になるまで調整を続けていたんだ。ただこいつが強いという確証が得られたわけではなかったし、パフォーマンスのブレも激しい。Magic Online上で5-0の山を築くこともあれば、次の日には1勝もできない、という状態だったんだ。

そんな中、ニールスがアレクサに”彼のデッキはグランプリで使うと実に面白そうだね”と言っているのを聞いて、”ああそうだな”と完全に同意している自分に気が付いた。その言い方といったら非常に礼儀正しいものだったから、彼なりの皮肉だったのは間違いなかった。そういうわけでそのデッキは諦めたんだが、チームという支えの他は何も残っていない状態に陥った。それからほとんどのプレイヤーがイマニュエルが使っていた「緑単ストンピィ」に注力しているのに気づいて、俺も使いたくなったんだ。

ラノワールのエルフ鉄葉のチャンピオン

彼らが試したあらゆるマッチアップを見て、デッキの方向性はおおむね間違っていないようだったし、少なくとも手堅いデッキだと思った。そこで自然と俺も使い始めて、Magic Onlineでリーグに臨んでみたんだ。F6キーの連打で戦闘ステップを飛ばす失態を何度も犯したわけだが、それでもリーグで勝ち上がれたね。そしてデッキ提出を済ませたら、あとは残された1日でデッキを徹底的に研究した。デッキリスト提出期限1日早めてくれたウィザーズ・オブ・ザ・コーストに感謝するべきだな!

「緑単ストンピィ」の弱点と解決策

さて、イマニュエルが使っていたデッキはMagic Online上でありふれた「緑単ストンピィ」とは少しレシピが違って、他と大きく異なる点が2つある。

1つ目は、基本的に「緑単」はほとんどのマッチアップで簡単に勝てるが、特定のカードを1枚引かれた場合、それに対してまったく対処できないという弱点を克服していることだ。ここでいう特定のカードとは以下の4枚に代表される。


《燻蒸》《残骸の漂着》は青をタッチして《否認》を使うことで回避でき、残り2枚は黒をタッチして《栄光の刻》を使えば対処できる。だが、もっとスマートに考えてみよう。《暗記+記憶》を使うんだ。このカードは上の4枚すべてに対応できるだけでなく、赤単以外で赤を採用しているデッキ全般に有効だ。これが俺たちのリストの大きな売りだよ。「青白コントロール」みたいな強力な相手のマッチアップを”五分”から”かなり有利”にまで変えてくれる。マナベースに大きな負担をかける必要がないのもポイントだ。

暗記+記憶

2つ目のポイントは、「探検」持ちクリーチャーはかなり弱い、ということに気付いて、これを入れなかったことだ。《マーフォークの枝渡り》は2マナのクリーチャーとしては少し力不足だ。3/2で占術するだけ、もしくは土地を引いた直後に《ゴブリンの鎖回し》によって散っていくというのはそんなに良いとは言えない。《翡翠光のレインジャー》の方が少しマシだが、それでもアグロデッキからしたらマナ効率が良いとは言えないだろう。

マーフォークの枝渡り翡翠光のレインジャーゴブリンの鎖回し

俺たちは《緑地帯の暴れ者》もあまり好きじゃなかった。能力を失った《打ち壊すブロントドン》のようなものだからな。

緑地帯の暴れ者打ち壊すブロントドン

「緑単タッチ《暗記+記憶》

最終的に俺が提出したデッキリストは以下の通りだ。

導路の召使い冒険の衝動縄張り持ちのアロサウルス

《導路の召使い》は最高の2マナクリーチャーで、《ゴブリンの鎖回し》で死なない点も見逃せない。《冒険の衝動》はデッキに少し持続力を与えたかったので採用した。《縄張り持ちのアロサウルス》は面白いチョイスだろう?追加の戦力になるだけでなく、マナ生成手段に長けたこのデッキでは3ターン目のキャストはもちろん、「キッカー」して使うことも十分可能なんだ。

サイドボード選択

押し潰す梢川の叱責

サイドボードのカードの目的は明瞭だ。《押し潰す梢》は「青白」に対する強力な対策カードで、《封じ込め》《排斥》のような除去や《黎明をもたらす者ライラ》に対応できる。《川の叱責》はミラーマッチで有効だ。追加で用意した《原初の飢え、ガルタ》よりも評価しているよ。

サイドボーディングのポイント

相手が除去を入れてくることが予想されるなら、《原初の飢え、ガルタ》はサイドアウトしたいし、逆にミラーや「《王神の贈り物》」に対しては1枚追加しよう。これとは関係なしに、デカブツは何でもプレッシャーになるからマッチアップによっては追加しよう。特に「青白コントロール」相手には《導路の召使い》をサイドアウトして、全体除去で細かいクリーチャーを何体も失うよりも、1枚で強力なカードを展開していけるようにしたほうが良い

原初の飢え、ガルタ

そして、1つだけ絶対に守らなければならないことがある。《ラノワールのエルフ》は絶対にサイドアウトしてはいけない。《ゴブリンの鎖回し》《歩行バリスタ》、全体除去で死ぬだけじゃないか」って? ああ、たしかにそうだ。しかし、1ターン目に出して除去されなかった《ラノワールのエルフ》はとても大きなインパクトを持つから、このカードを使わないというのは考えられないんだ《ラノワールのエルフ》を1ターン目に出してそのままターンが返ってきたら、勝率は8割を超えると思うよ。

ラノワールのエルフ

プロツアーでの戦績と各マッチアップ

プロツアーの構築ラウンドは6勝4敗で終わった。いつもの俺の戦績よりも少し低い、あまり良くない結果となったね。以下にマッチアップと所感をまとめておくよ。

ラウンド4 「白黒機体」:勝ち (2-1)

このマッチアップはかなり有利だ。1ゲーム目は全体除去に怯えなくて済むし、サイズで上回るこちらのクリーチャーを除去する手段はかなり限られている。サイド後は全体除去を少し入れてくるが、相手はゲームが長引けば長引くほどアドバンテージを得られず、差がなくなってくる。だから、こちらはただ長期戦に持ち込むように立ち回れば良い。

ラウンド5 「青白コントロール」:勝ち (2-0)

このデッキ相手の1ゲーム目はいつも同じだ。(1) こちらはデカブツを投入し、そいつで殴る、(2) 相手は危険を感じたときに《残骸の漂着》を使ってくるから、その時手札に《暗記+記憶》があるならそれだけで勝ちだ!

残骸の漂着暗記+記憶

しかし、もし《暗記+記憶》がなかったらたいていの場合負けと言って良い。長期戦にもちこんでも相手は《ドミナリアの英雄、テフェリー》をプレイしつつ「+1」能力で《残骸の漂着》を構えられるからね。それでも相手を出し抜くことはもちろんできるが、クリーチャーを展開することに消極的になりすぎるのは良くない。ほとんどの場合相手は5ターン目にはすでに《ドミナリアの英雄、テフェリー》を手札に引き込んでいるから、プレッシャーをかけ続けるんだ。もうひとつ、《排斥》に対応して《打ち壊すブロントドン》の能力を起動すればこちらのデカブツを守れるから、攻めを継続することができることも覚えておこう。

ドミナリアの英雄、テフェリー

ラウンド6 「青緑《王神の贈り物》」:勝ち (2-1)

対「青白」と似通っていて、《暗記+記憶》を引けば1ゲーム目は勝利できる。こちらがクリーチャーでプレッシャーをかけている状況では、相手はこのカードをケアして立ち回るのは不可能だからだ。2ゲーム目以降も《打ち壊すブロントドン》のおかげで、いつでも都合の悪い状況を回避できる。相手が勝ち得る最高の状況としては4体《新緑の機械巨人》を並べてこちらよりも強固な盤面を作る形だが、こんなことは起こりそうもないし、こちらが《原初の飢え、ガルタ》を持っていれば、もう盤面で上回るのは不可能だろうね。ただ、《否認》みたいな守りに入るカードはサイドインしないように気を付けよう。

王神の贈り物打ち壊すブロントドン

ラウンド7 「赤黒ミッドレンジ」:勝ち (2-1)

このマッチアップは五分と言わせてもらおう。今回のジェリー・トンプソン/Gerry Thompsonとのゲームは3本とも運で決まったようなもので、彼の運がただ悪かっただけだね。このデッキはまあまあプレッシャーをかけてくる。しかし、この点では俺たちのデッキの方が優れているんだ。

再燃するフェニックス

何が問題かというと、相手はこちらの展開を阻害する除去に恵まれていて、《原初の飢え、ガルタ》をキャストするのが不可能になることだ。それにこちらのクリーチャーの大半は《再燃するフェニックス》相手に歯が立たない。

不屈の神ロナス領事の旗艦、スカイソブリン

ここで鍵になってくるのが《不屈の神ロナス》《領事の旗艦、スカイソブリン》だ。この2枚はどちらも《再燃するフェニックス》と相手の除去に対してかなり有効だね。

ラウンド8 「青白《副陽の接近》」:勝ち (2-1)

1ゲーム目は友人でもある対戦相手のマーティン・ダン/Martin Dangに献上することになったが、サイド後は《生命の力、ニッサ》《造命師の動物記》の組み合わせで相手を相当困らせることができた。

生命の力、ニッサ造命師の動物記

ラウンド12 「青白黒(エスパー)ミッドレンジ」:勝ち (2-1)

このデッキは調整中にスティーブ・ハット/Steve Hattoが使っていたからどんなものか知っていた。変わったデッキで、基本的には除去偏重の遅い「《スカラベの神》デッキ」だが、《悪意の騎士》《善意の騎士》、それに《ベナリア史》というカードも合わせて使ってくる。この構成により、初手によってかなり速い展開から遅い展開まで様々な攻め方を可能にしているわけだ。だからこのデッキに対するサイドボーディングは難しい。こちらの利点はクリーチャーのサイズ差で勝っているところで、相手のアグロプランを無視して除去にどうやって向き合うかだけを考えれば良いことだ。

悪意の騎士善意の騎士ベナリア史

ラウンド13 「エスパーミッドレンジ」:負け (1-2)

ピオトル・グロゴウスキ/Piotr Glogowskiは前ラウンドのスティーブと同じリストを持ち込んできた。3ゲームともかなり接戦だったが、《スカラベの神》が単純に強すぎる。それに彼はかなりのやり手だしね。

スカラベの神

ラウンド14 「緑単」:負け (0-2)

こいつはかなりの地雷だ。先に《原初の飢え、ガルタ》を出したほうの勝ちという単純なゲーム (俺たちには《川の叱責》もあるけどな)で、《ラノワールのエルフ》と合わせて初手にあれば勝ちだから、積極的にマリガンすべきだったのが悔やまれるね。

原初の飢え、ガルタ川の叱責

ラウンド15 「黒単」:負け (0-2)

ウィリ・エーデル/Willy Edelとの試合は楽しめたが、0-2で負けてしまった。それでも俺はこちらがかなり有利だと感じたし、負けたのは運がなかったからだと思っているよ。相手は除去をたくさん飛ばしてくるんだが、《戦慄の影》を引かれない限りはこちらにプレッシャーをかける手段に乏しいね。だから《不屈の神ロナス》《領事の旗艦、スカイソブリン》は相手にとってかなり厄介な存在だし、《造命師の動物記》があればほとんど無敵に近いよ。

戦慄の影造命師の動物記

ラウンド16 「緑単タッチ《暗記+記憶》」:負け (0-2)

ラウンド14とほとんど同じことの繰り返しだ。唯一違うのは、相手がチームメイトのヤーン・クサンドル/Jan Ksandrだったから俺とまったく同じリストを使っていたことだね

デッキの改良点

俺のプロツアーは平凡な結果に終わった。それでも俺は「緑単タッチ《暗記+記憶》」は注目されるべき存在だと思っている。トップ8とも対等に渡り合え、「赤黒」とは互角、「エスパーコントロール」や「赤単」にはかなり有利だ。それにRPTQでチーム戦が控えているから、環境の強力なデッキに対抗できるこのデッキはチームの大きな戦力になる。試してみる価値は大いにあるよ。

機体の重要性

今後少しだけ変えてみたい部分もあるからこれについても話しておこう。

導路の召使い

《マーフォークの枝渡り》はあまり好きじゃないと言ったが、代わりに4枚採用した《導路の召使い》のこともあまり良いカードだとは思っていないんだ。こいつは機体の乗り方を知らないだろう?

打ち壊すブロントドン緑地帯の暴れ者

《打ち壊すブロントドン》には驚かされたね。こいつの能力はかなり役に立つし、3/4のパワー・タフネスはほとんどの状況で有用だ。こいつを4枚に増やすだけでなく、初心に戻って2枚ほど《緑地帯の暴れ者》を採用することで《キランの真意号》を動かしやすくしたいところだ。

キランの真意号領事の旗艦、スカイソブリン

《導路の召使い》を2枚減らすと《縄張り持ちのアロサウルス》が活かしづらいから、こいつを減らしてもっとインパクトのある5マナ域を増やしたい。第一候補であり、重要だと考えているのは追加の《領事の旗艦、スカイソブリン》で、メインで2枚積んでおけば、苦戦を強いられる「赤黒ミッドレンジ」相手に輝くだけでなく、「青黒ミッドレンジ」にも牙を剥く。このデッキは現時点でポピュラーなデッキの1つだしね。

ついでにもう1枚《新緑の機械巨人》も欲しい。デッキに良く合うし、単純にカードパワーがすさまじいだろう?

新緑の機械巨人

改良後のデッキ

ということで、改良後のデッキリストだ。「青黒ミッドレンジ」調整中のやつらに揉まれない限りはグランプリ・コペンハーゲン2018で使うと思うよ。

みんな、読んでくれてありがとう。また次の機会にお目にかかろう。

ピエール・ダジョン

この記事内で掲載されたカード

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