これで安心!九印のマジック入門講座 vol.1 ~パンプアップ呪文の正しい使い方~

三輪 祐介

 はじめまして。わたしは北海道で公認レベル2ジャッジ兼TCGショップ『ちくたくハウス』の店長をしている、三輪 祐介といいます。ネット上では活動する際に使用している九印えらり(@kuin_erari)という名前の方をご存知という方も多いかもしれません。

 今回は晴れる屋さんで、全5回にわたってマジックの基本的なプレイングについての記事を連載させていただくことになりました。短い間ですが、よろしくお願いします。

連載に至った経緯と趣旨

 わたしたちジャッジやカードショップの人間は、プレイヤーのみなさんにどんどんお店のイベントへ参加してほしいと願っています。なぜなら、イベントでたくさんの新しい対戦相手と遊ぶことは、とても楽しくておもしろいからです。

晴れる屋スタッフ交流会の様子

 しかしながら、ショップのイベントに参加するにあたって、さまざまな不安を持つ方も多いと思います。

「自分が参加しても大丈夫かな……」

「なんだか怖そう……」

「行ったことのないお店で、知らない人と対戦は……」

 ジャッジやショップの人間も、みなさんが快適にマジックを楽しめるよう努力していますが、プレイヤーの皆さんがおっかなびっくりになってしまう気持ちもわかります。だれでも最初は緊張するものですよね。

 そういったプレイヤーの不安の一つとして、「人前できちんとプレイできるかどうかが不安……」というものもあるでしょう。今回はその不安を少しでも解消して、ショップでのイベントを楽しんでもらえる助けになればと思い、筆を執ることにしました。

 最後にはあなたが不安をはねのけてショップのイベントに参加し、その刺激的で新しい世界に足を踏み入れることを願っています。

 それではさっそく、今回の話をはじめましょう。

「クリーチャーを大きくして、アタック!」

 あなたはパンプアップ呪文をどんなときに使っていますか?

巨大化

 「自分のターンがきたらクリーチャーに使って、大きくなったクリーチャーで攻撃してるよ!」

 たしかにそういう使い方もできます。では、他にも使い方があることは知っていますか?

 そして、パンプアップ呪文の正しい使い方とは、どんなものなのでしょうか?

「パンプアップ呪文」って何?

 ここまで読んで、「そもそも、パンプアップ呪文って何?」と思った方もいるかもしれません。この記事はあなたのためのものです! どうぞ先へと進んでください。

 パンプアップ呪文は、クリーチャーのパワーやタフネスを一時的に強化する呪文の総称で、最初のパンプアップ呪文にちなんで『《巨大化》系呪文』、とも呼ばれます。

 大好評発売中の『ドミナリア』で言えば《成長の資質》《不屈の意志》、7月13日(金)発売予定の『基本セット2019』で言えば《剛力化》《力強い跳躍》などが、代表的なパンプアップ呪文ですね。

剛力化力強い跳躍

 他にも様々なパンプアップ呪文があります。今回はその中でも、インスタントで、クリーチャー1体のパワーとタフネスを両方とも強化するタイプの、基本的なパンプアップ呪文について解説していきます。

パンプアップ呪文の使い方

 実はパンプアップ呪文には、クリーチャーに使ってから攻撃する以外にも、さまざまな使い道があります。まずは代表的な使い方を見ていきましょう。

パンプアップでクリーチャー除去!

 例えば、こんな状況を想像してみてください。

パンプアップでクリーチャー除去!
陰謀団の福音者ホマリッドの探検者

 あなたは2/2の《陰謀団の福音者》を、対戦相手は3/3の《ホマリッドの探検者》を、それぞれコントロールしています。あなたが不利な状態ですね。攻撃すると一方的に倒されてしまいます。しかし手札に《成長の資質》があればどうでしょうか?

成長の資質

 ブロックされた状態になってから《成長の資質》を使いましょう。《陰謀団の福音者》のサイズはこのターン中4/4になり、《ホマリッドの探検者》を一方的に倒せます!

 あなたのパンプアップ呪文と対戦相手のクリーチャーがそれぞれ失われるわけですから、これは実質クリーチャーを除去する呪文だと言えるでしょう。

 「使ってから攻撃しても相手のクリーチャーは倒せるから、同じじゃないの?」と思いましたか? いい着眼点ですね。

 この使い方のポイントは、対戦相手にこちらの行動を悟らせないという部分です。もし先に使ってしまうと、対戦相手は「クリーチャーを失う(ブロックする)」か「ライフを失う(ブロックしない)」かを自由に選べるようになってしまいます。そして《陰謀団の福音者》が大きいのはこのターンだけです。

 つまり相手がライフを失うことを選ぶと、次からはまたあなたの不利な状態に戻ってしまいます。ですので、相手に選択肢を与えず、しっかりクリーチャー除去呪文として活躍させましょう。

パンプアップで打ち消し!?

 次は、相手が火力呪文(クリーチャーやプレイヤーなどにダメージを与える呪文)を使ってくる場合についてです。

パンプアップで打ち消し!?

 あなたは《陰謀団の福音者》で攻撃します。対戦相手はそれに対して《稲妻の一撃》を使ってきました。このままでは《陰謀団の福音者》が倒されてしまいます。

陰謀団の福音者稲妻の一撃

 そこで、《稲妻の一撃》が解決されるまえに、対応してインスタントである《剛力化》を使いましょう。そうすると先に《剛力化》が解決されて、《陰謀団の福音者》6/6になります。それから《稲妻の一撃》が解決されて3点のダメージを食らいますが、タフネスは6なので倒されません。

 これが攻撃中のやりとりであることも思い出してください。そうです、このターンは対戦相手に6点のダメージを与えることもできました!

 もしこれが逆だったらどうでしょうか。

 あなたは意気揚々と《剛力化》を使います。そして対戦相手はそれに対応して《稲妻の一撃》を使い、《陰謀団の福音者》先に3点のダメージを食らって倒されてしまいます。《剛力化》は何もせず、結果としてあなたは2枚のカードを失いました。ここでも、使ってから攻撃するのはよくないことになりますね。

 さて、相手の呪文に対応して使うことができれば、相手の火力呪文をこちらのパンプアップ呪文で無効化できることがわかりましたか? これはの得意技、カウンター呪文と同じ結果ですね!

 ……というのは言いすぎかもしれませんが、白の得意技、ダメージを軽減する呪文以上の成果を得ることができます。パンプアップ呪文をうまく活用すれば、クリーチャーを除去するだけでなく自分のクリーチャーを守るためにも使えることを覚えておきましょう。

パンプアップで本体火力

 さて、では最初に出した例についても説明します。

 あなたは《成長の資質》を手札に持っていて、2体の《陰謀団の福音者》で攻撃しています。そのうちの1体は、対戦相手の《ホマリッドの探検者》でブロックされました。どうしましょうか?

パンプアップで本体火力

 ブロックされた《陰謀団の福音者》にパンプアップ呪文を使い、クリーチャー除去呪文とするのもありでしょう。しかし、対戦相手のライフが4だったとしたら? そして、対戦相手に手札がなかったら?

 そのときは、対戦相手に与えるダメージを増やすために、ブロックされなかった《陰謀団の福音者》に対してパンプアップ呪文を使いましょう! 《成長の資質》を使えば4/4になり、4点のダメージを与えてそのままゲームに勝つことができます!

 もし先に《成長の資質》を使ってから2体で攻撃すると、対戦相手は当然4/4のほうを《ホマリッドの探検者》でブロックするでしょう。そうしないと負けてしまうからです。

 結果として対戦相手のライフは2になりますし、《ホマリッドの探検者》も倒せて、こちらは《陰謀団の福音者》が2体とも残ることになります。有利な状況には変わりないですが、まだ勝っていません。

 勝てるときに勝っておかなければ、何がおこるかわからないのがマジックです。対戦相手が次のターンに《恐竜変化》し立場を逆転、牙をむいて襲い掛かってくるかもしれませんからね! やはり、パンプアップ呪文を先に使ってから攻撃するのはよくないのかもしれませんよ。

恐竜変化

 手札1枚を使って、対戦相手に与えるダメージを増やす……これは対戦相手にダメージを与える呪文と同じ結果です。自分だけ一方的にカードが減るので、勝ちが決まらない場面でこの使い方を選ぶことはあまりおすすめしません。しかし、使えば勝てる場面なら、思いきって使ってみましょう。対戦相手のライフを常に意識しておくのが、チャンスを見のがさないコツです!

パンプアップは柔軟な呪文

 クリーチャー除去呪文やダメージ軽減呪文では、本体にダメージを与えられません。火力呪文は自分のクリーチャーを守れませんし、カウンター呪文は戦場に干渉できません。しかしパンプアップ呪文なら、さまざまな役割を1枚でこなせます。

 もちろん、自分がクリーチャーを戦場に出しているという前提は必要になります。パンプアップ呪文に対応して相手が除去呪文を使ってきたら、”自分のクリーチャーとパンプアップ呪文の2枚を一度に失う”という危険性もあります。それでも、パンプアップ呪文には状況に応じて使い道を変えられる柔軟性があるということは伝わったでしょうか。

 さて、では、さまざまな使い方があることを知った上で、あらためて考えてみましょう。パンプアップ呪文の正しい使い方とは、どんなものなのでしょうか?

パンプアップ呪文の正しい使い方は?

 もうお気づきかもしれませんが、パンプアップ呪文の正しい使い方は、一つの使い方に固執せず、状況に合わせて使い分けることです。今回はこれを覚えていってください。

 いま現在の状況を見て、「対戦相手に追加のダメージを与えるために使おうか、ブロックしてきたクリーチャーを倒すために使おうか?」と判断するだけでなく、ゲームの先に何が起こるのかを想像して、必要となる場面があるかどうかも考えましょう。いま使ったあなたのパンプアップ呪文は、3ターン後にクリーチャーを守るために取っておきたかったパンプアップ呪文かもしれません。

 その判断の指針を一つだけ紹介します。基本的に、パンプアップ呪文1枚を使うときは、対戦相手のカードを何か1枚道連れにしましょう。その結果、自分のクリーチャーが戦場に残り続けるなら、それはよい使い方です。この指針のはっきりとした例外となるのは、使えば対戦相手をそのまま倒して勝ちが確定するときになります。

おわりに

 パンプアップ呪文の強さは1枚で行えることの多さ、状況への対応力にあります。パンプアップ呪文をデッキに入れるときは、あなたのデッキ、そして対戦相手のデッキに応じて、どのような使い方をすればもっともよい結果になるかを考えましょう。

 例えば、対戦相手が火力呪文の入った赤緑のクリーチャーデッキだった場合と、クリーチャーをほとんど出してこない青黒のコントロールデッキだった場合では、あなたのパンプアップ呪文の使い方には差が出てくるはずです。

 「火力で焼かれないように、パンプアップ呪文を温存したほうがいいかな?」

 「クリーチャーを破壊する呪文は防げないし、カウンター呪文もありそうだから、相手にマナが無いときに本体へのダメージを増やすために使おうかな?」

 使い方について考えるべきことは、たくさんあります。そして、ひとくちにパンプアップ呪文といっても、防御向きのもの、攻撃向きのもの、クリーチャー戦向きのもの、対呪文向きのものなど、その特徴もさまざまです。自分のデッキとまわりのデッキに合わせて、何を入れるかも考えてみましょう。

顕在的防御暴力の激励吸血鬼の士気

 今回の記事はここまでとなります。パンプアップ呪文のこの先は、また書く機会があればお話ししたいと思っています。このパンプアップ呪文の記事が役に立った、あるいは始めたばかりのプレイヤーに見せたい記事だと感じてもらえたなら、ぜひTwitterやFacebookなどで宣伝していただければと思います。

 あなたのパンプアップ呪文が対戦相手を打ち砕きますように。

この記事内で掲載されたカード

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