佐藤レイのグランプリ・ラスベガス2018レポート

佐藤 レイ

佐藤 レイ

はじめに

去年の10月にグランプリを優勝したときに、今シーズンゴールドレベルを目指すことを決めた。シーズン1回目のプロツアーが始まる前に8点を得た状態から始められること、2つのプロツアーの権利を持っていたことから到達可能な目標のように思えた。

今の自分が若手でないことなど百も承知だったが(少し離れていた時期があるとはいえ、ぼくが初めてプロツアーに出たのは16歳のころ、今から10年以上前のことだ)、一応マジックにある程度コミットするという決意としてHareruya Hopesに加入した。

そうして今なおプロツアーでは思うようには勝ててないものの、グランプリの調子がよく、なんとか先日このグランプリ・ラスベガス2018(リミテッド)において3点のプロポイントを取ることができて、シーズン最後のプロツアーを前にシーズン目標であったプロポイント35点に到達した。

ゴールドレベルになることができたので、今後よりマジックをしていくことになるだろう。それに合わせて今後は大会でプレイするだけでなく、いろいろな活動もしていきたい。そうした思いから今回GPラスベガスのレポートを書かせてもらうことになった。

ってことでよろしくお願いします。

GPラスベガス 1日目

シールド・デッキ構築

シールド・黒緑苗木

幸運にもプールの緑と黒のカードを適当に並べて純然たるボムの《多勢の兜》を足すだけで、そこらのドラフトデッキよりも美しい黒緑苗木デッキがカードを余らせつつ組めた。

シールド・黒緑余り

余ったカードたち

除去が少なめで負けるデッキは飛行が多いデッキになりそうなので、飛行除去である《空を射抜く》をメインに投入するかが悩ましいが、抜く候補が《ヤヴィマヤの苗飼い》《ウィンドグレイスの見習い》といったレベルのカードになるので、おそらく対象が明確になるサイドからでよいだろう。よし。

3分で構築終わってしまったな。よしよし、いい初日になりそうだぞ、これは対戦が待たれるな。

というわけにはいかない。まだやる作業は残っている。

サイドボーディング

シールドにおけるサイドボーディングの重要性はどれだけ言い過ぎても言い足りない。

なにせシールドはあらゆるフォーマットの中で唯一、メインボードで使えるカードよりもサイドボードで使えるカードのほうがずっと多いのだ。ほかのフォーマットのサイドボーディングとは別物と思ったほうがいい。そして2戦行う可能性のあるサイド戦は、メイン戦よりも重要なのは言うまでもない。

まず今回の緑黒苗木デッキは、かなりデッキパワーは高いがアーティファクトやエンチャントに対する耐性がない。そこで白をみると《神聖の発動》が2枚あったので、これを有効活用する緑白を組むことにした。

シールド・白緑

白は2枚の《セラの天使》こそ目を引くものの、プレイできるカード自体が少なくメインカラーとして使うに至らなかったが、《神聖の発動》が価値ある有効牌として扱えるのならば使い分ける選択肢になるだろう。具体的には《氷の干渉器》《クルーグの災い魔、トラクソス》《セラからの翼》《ファイレクシア教典》などの超強力アーティファクト、エンチャントを複数枚見たとき、ぼくは黒緑苗木ではなくこの緑白をプレイすることになる。

それ以外にも《抜去》《カリゴの皮魔女》のハンデスコンビも良いサイドカードとして使うことになるだろう。

サイドイン

ぼくはこのようにシチュエーションごとに何をサイドインするかを構築段階で決めておくことにしている。

実戦において予測していない出来事に多々遭遇するリミテッドこそ、決めておけることは決めておかないと見逃し・見落としが増えてしまうからだ。またサイドアウトのほうがより各対戦相手に対応する必要があり、そちらに力を割きたいという理由もある。

どのようなデッキに当たったとき、どのような対策をとるかをできるだけ考えられるだけ考えておく。それもふんわりとではなく、細かく、明確な基準で。カード単位で変更を決めておくと楽だ。

例えば《空を射抜く》は?

《雲読みスフィンクス》《セラの天使》《ランプのジン、ザヒード》などを見たとき。

雲読みスフィンクス空を射抜くセラの天使

じゃあ《抜去》は?

《氷の干渉器》《黎明をもたらす者ライラ》など強力な歴史的カードを見たときはもちろん、”伝説のソーサリー”を見たときもレジェンドを対処すれば無力化できるため入れたい。相手がコントロールデッキを使用しているときも優先度が上がる。相手の特定のカードを狙うイメージで理想の打つターンを考えておく。コントロール相手には常に《カリゴの皮魔女》と共に入れ後手を選ぶプランを検討する。

氷の干渉器抜去黎明をもたらす者ライラ

適切なサイドインのためにはカードごとの相性をしっかり知っておく必要がある。相手のチョキに対して常にグーを出せるよう、そのために普段から様々なカードを様々な状況でプレイしておきたい。

サイドインに必要なのは前もった準備だ。

サイドアウト

一方でサイドアウトに必要なのはイメージだ。センスといってもいいかもしれない。

リミテッド、特にシールドでは相手のデッキは多岐にわたるため、サイドアウトはその場で何が不必要か考える必要がある。あらかじめこういう相手にはこれを抜くと決めておいて、当てはめるには、相手の使用してくるデッキは複雑で多様すぎる。

正確なサイドアウトのためには自分のデッキに入っているカードが相手のデッキに対してどのように作用するのかがわからなければならない。しかし、多くのカードが複数枚ずつ投入されていて少ない種類のカードで対戦することが一般的な構築戦と異なり、リミテッドでは、デッキに同じ種類のカードが1,2枚しか基本的に入っていないため、サイドボーディングにおいてカードごとの相性を照らし合わせるという作業が多い。

よって多くの場合、見ていないものをイメージする必要性がある。出会ったものだけに対策しているだけでは足りなく、効果的ではないのだ。

実際の例をあげると、今回ぼくは7戦目、相手の2枚の《一瞬》と2枚の《祝福の光》が入っているトリコカラーの除去コントロールデッキに対して、1戦目にはプレイしなかったが、《ベルゼンロック典礼》をサイドアウトした(ちなみに《抜去》《カリゴの皮魔女》を入れて後手を選ぶプランに変えた)。

一瞬ベルゼンロック典礼祝福の光

6/6のデーモン・トークンに実際にバウンスを打たれてみればサイドアウトできるかもしれないけれど、実戦において、強力なレアをプレイすることなくサイドアウトするのは、状況をしっかりイメージできなければ難しいだろう。

おさらいしておくと、サイドボードの多いシールドでは、適切なサイドインアウトをすることによって、他のフォーマットに比べよりエッジ(他のプレイヤーとの差。優位性)を得ることができる。そのために以下のことをしておくとよい。

ということでデッキ構築時間中はずっとサイドボードについて考えていた。

そんなこんなで初日は8-1だった。《多勢の兜》で何度も《新緑の魔力》をコピーして気持ちが良かった。

GPラスベガス 2日目

『ドミナリア』ドラフト

『ドミナリア』環境のドラフトは勝つために様々なアプローチが取れるが、いずれにせよ問題となるのは環境自体のカードパワーが低く強力なカードもそこまで多くないということだ。

そのためほぼ微妙なカードが2-3枚デッキに入ることになる。今回はいかにこの最後の3枚を上手く埋められるかを意識した。カードプールが弱めだからこそ、自分のデッキを他のデッキだと微妙なカードも上手く使えるように寄せていく必要があるのだ。

個人的にはその3枚を《叙爵》《治癒の恩寵》《新ベナリアの騎士》などで埋められる白系のテンポビートデッキ(ほぼほぼ白赤になる)か、《抜去》《魂回収》《闇の取り引き》などで埋められる黒系のコントロールデッキ(黒緑か青黒になることが多く、後手を取ることも多い)が好みだったので、そのどちらかを多少意識的に狙っていくことにした。

叙爵治癒の恩寵抜去魂回収

それと普段の環境よりも下家と被らないことを意識した。本来ドラフトはよほど強力なカードが取れているのでなければ上家と被らないということが唯一の命題で、下をコントロールするなどと考えるのは基本的にはフィッシュプレイ(弱者の取る行動)なのだが、現環境ではプレイアブルなカードが少なめで、しかも強力なカードは限られているため、返し(2パック目)の重要度が普段よりも大きい。

よって受けを広くしすぎないことにした。受けを広くするというのは要するにある程度流した色に後から参入するということで、下のプレイヤーが上級者でない限り、下とは色が被る確率が上がるためだ。

1stドラフト

1stドラフト・黒緑青

完全に理論武装したはずだったのだけれども、とんでもないゴミ束を組んでしまった。

《ヤヴィマヤの苗飼い》は、《ベイロスの大喰らい》は、《マンモスグモ》はどこへいってしまったのだろうか。クリーチャーのマナカーブはぽっかり空いて、パワー2以上のクリーチャーは数えるほどしかおらず、意識しすぎた結果からか3枚入ると説明していた微妙なカードは7枚くらい入ってしまった。

2ターン目《エルフェイムのドルイド》⇒3ターン目《血の儀式司、ウィスパー》⇒4ターン目《最後の別れ》から《墓場波、ムルドローサ》を落として釣るというデッキ最強のブン回りと、《フレイアリーズの歌》から出た赤マナで《センギアの純血、カザロフ》が頑張ってなんとか1勝して1-2。

2ndドラフト

2ndドラフト・白赤

こちらはほぼ完全に狙い通りのデッキを構築することができた。欲を言えば《シヴの火》などの除去カードがないのが寂しいが、その分強力な装備があるから良いだろう。

構築済みデッキのような美しく安定した回り、サイドから必殺の2枚目の《治癒の恩寵》、超強力な2種類の装備withレジェンドなどの活躍もあり3-0。


ということでGPラスベガスをトータル12勝3敗の22位で終えることができ、無事目標であったゴールドレベルプロになることもできた。

読んでくれた人にとって得るものがあればと思い、そのままのトーナメントレポートというよりは、自分がどのようにリミテッドについてアプローチしているかなどの話にしてみた。役立つことが何か1つでもあれば幸いだ。

その他のことでなにか聞きたいことがあったらぼくのtwitterアカウントにでも質問してくれ。

それではまた。

あなたが、あなただけのサイドボーディングでゲームを取ることを祈りつつ。

この記事内で掲載されたカード

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