マジック25周年記念プロツアーにて、「ターボ・フォグ」という新たなデッキがスタンダードに誕生するのを私たちは目の当たりにしました。ターボ・フォグをプロツアーでプレイしたのはたったの6人であり、そのうちの3人は私たちの調整チームのメンバーでした(ヤン・ウィンチュン/Yam Wing-Chun、リー・シー・ティエン/Lee Shi Tian、ラファエル・レヴィ/Raphael Levyの3人です)。私たちのバージョンはチームFace to Faceが使用したバージョンとは少し異なっていますが、どちらも同じ発想から構築されています。
フィールドの66%が赤黒アグロか緑単アグロをプレイしており、ターボ・フォグにとってメタゲームは完璧でした。デッキは期待通りのパフォーマンスを発揮し、ソーサリーバージョン・《予期》バージョンのどちらのタイプも好成績を残したのです。今回の記事では、バージョン毎の違いを分析した上で、今後ターボフォグというデッキがどうなっていくと感じているか、どんなデッキ/カードがこの新しいスタンダードの脅威に対して有利に戦えると考えているかをお届けしたいと思います。
それでは、デイヴィッド・ウィリアムズ/David Williamsが使用し5位入賞を果たした、ソーサリーバージョンから見ていきましょう。
“ソーサリー型”ターボ・フォグ
4 《花粉のもや》
4 《根の罠》
2 《黄金都市の秘密》
2 《天才の片鱗》
1 《カーンの経時隔離》
4 《運命のきずな》
2 《アズカンタの探索》
4 《楽園の贈り物》
1 《ミラーリ予想》
2 《ウルザの後継、カーン》
4 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (34)-
このバージョンのターボ・フォグは《航路の作成》、《黄金都市の秘密》そして《天才の片鱗》をドロースペルとして採用していて、4-5ターン目の「《ドミナリアの英雄、テフェリー》+《濃霧》」を確実に成立させようと試みています。出したターンさえ《ドミナリアの英雄、テフェリー》が生き残れば、《運命のきずな》からスタートすることができ、そしてあっという間に相手を突き放していきます。
《航路の作成》は、実際に多くの役割をこなしてくれます。《アズカンタの探索》のために墓地を早く肥やしてくれますし、《濃霧》系のカードが不要なマッチアップ(コントロールやミラーマッチ)でその《濃霧》系カードを捨てることもできます。また、デイヴィッドは計6枚ものソーサリーを採用しているため、《ミラーリ予想》を採用することが可能になっています。
デッキリストを見たときに、一番興奮したのがこのカードです。なぜなら、これは「《ドミナリアの英雄、テフェリー》+《濃霧》」を行うターンの素晴らしいフォローアップとなるからです。第Ⅰ賞で追加の1ターンを得るための《濃霧》を回収することができ、翌ターンには第Ⅱ章で《航路の作成》を回収して最後のピースを探し当て、第Ⅲ章では《運命のきずな》やドロー呪文をコピーして実質的にゲームを終わらせることになるでしょう。
サイドボードに目を向けると、Face to Faceのメンバーたちは青単アーティファクトデッキをとても脅威に感じていたのが分かります。そのため、このプロツアーにおいて本当に助けが必要となる数少ないマッチアップであった、青単アーティファクトとコントロールの両方に大量のサイドボードを用意しているのです。
まずはソーサリーバージョンのターボ・フォグをご覧いただきました。続いては、私のチームメイトたちがプロツアーで使用したバージョンを見ていきましょう。
“《予期》型”ターボ・フォグ
4 《花粉のもや》
4 《根の罠》
2 《砂の下から》
4 《運命のきずな》
3 《アズカンタの探索》
4 《楽園の贈り物》
1 《テフェリーの誓い》
2 《自然に仕える者、ニッサ》
2 《ウルザの後継、カーン》
4 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (34)-
ご覧の通り、先程のリストとはいくつか異なる点があります。私たちのバージョンでは《航路の作成》よりも《予期》を優先していますし、追加のドローである《黄金都市の秘密》よりも優先して追加のマナ加速である《砂の下から》を採用しています。また、《ミラーリ予想》ではなく追加のプレインズウォーカーである《自然に仕える者、ニッサ》と《テフェリーの誓い》を採用しています(先程のリストよりもソーサリーが少なく、プレインズウォーカーが多いのです)。
《航路の作成》は墓地を肥やしますし、1ゲーム目において不要なカードを捨てるという良い仕事をしますが、私は複数の理由から《予期》の方が好みです。まず1つめの理由として、《予期》の方が《航路の作成》よりも1枚多く掘ることができ、この1枚の差が各パーツを集める際にとても重要になるからです。2つめの理由として、《ドミナリアの英雄、テフェリー》でアンタップした2マナから唱えられることが上げられます。何回か《航路の作成》を試した際、《ドミナリアの英雄、テフェリー》のドローで《航路の作成》を引いたものの、エンドにアンタップした2マナを使えなかったことが何回かあったのです。
《砂の下から》は早いターンのマナ加速ができる優れたカードであり、さらに後半は《濃霧》や足りないパーツを探しにいくために「サイクリング」することもできます。似たような役割のカードとして《開拓+精神》がありますが、こちらはドローする前に一度《開拓》を打たなければならないため、すぐに探しにいける《砂の下から》の方が優れていると感じています。
《自然に仕える者、ニッサ》はこのデッキにおいて非常に強力なカードです。正しいマッチアップにおいては、これを3ターン目に出すだけで簡単にゲームに勝てることすらあります。それだけでなく、このデッキにおいてはドローを促進し、マナ加速ができ、そしてときには「-6」の奥義を2回起動してゲームに勝利することもある、ただただ強力なカードなのです。
最後に取り上げるカードは《テフェリーの誓い》です。このカードは一見《カーンの経時隔離》より劣っているように見えるでしょうが、いくつかの理由により素晴らしいカードなのです。1つめのポイントとして、このカードを唱えるのにプレインズウォーカーが必要ではない点です。2つめのポイントは、《楽園の贈り物》をコントロールしている場合、この《ちらつき》能力で3ゲインできる上に、1マナ増えるので《テフェリーの誓い》と《運命のきずな》を同一ターンに唱えられることが時々あるという点です。そして最後のポイントは、プレインズウォーカーの起動型能力を複数回起動できるようになるため、《Time Walk》効果がより効果的になるという点です。《テフェリーの誓い》は《運命のきずな》+プレインズウォーカーでのマウントをより強く速くしてくれるので、私はこのカードの大ファンになりました。
私たちのリストのサイドボードはFace to Faceのものと異なっていますが、どちらも青単アーティファクトとコントロールを意識しているという点は同じです。私たちは4枚の《殺戮の暴君》と8枚のカウンター呪文を搭載し、よりコントロールを意識した形になっています。青単アーティファクトのために《ジェイスの敗北》も4枚採用しました。さらにあらゆる脅威を対処するために、《排斥》も3枚用意したのです。
今後私がターボ・フォグを使うのであれば、私はチームメイトたちが使ったのに近い形のものをプレイするでしょう。《航路の作成》を追加で採用した上で《アズカンタの探索》を4枚に増やし、2ターン目のアクションをできるだけ重視した形を検討してみたいです。こんな感じですね。
4 《花粉のもや》
4 《根の罠》
2 《航路の作成》
1 《砂の下から》
4 《運命のきずな》
4 《アズカンタの探索》
4 《楽園の贈り物》
1 《テフェリーの誓い》
1 《自然に仕える者、ニッサ》
1 《ウルザの後継、カーン》
4 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (34)-
ターボ・フォグの倒し方
ターボ・フォグが今後のメタゲームに多大な影響を与えるであろうとプロツアーで判明したので、プレイヤーたちはターボ・フォグへの最良の対抗策を模索し始めました。ターボ・フォグに対して有効なカードはいくつかあり、有名な所では《強迫》や《大災厄》、またカウンター呪文を上げることができます。その他にはどんなカードがあるでしょうか?
赤いビートダウンは《嘲笑+負傷》で《濃霧》効果を無効化しつつ大ダメージを与えることができますし、ゾンビやグリクシス、青黒といった黒ベースのデッキであれば《失われた遺産》で《運命のきずな》を追放することができます。
ですが、緑のデッキでは何ができるでしょうか?緑単は今のメタゲームにおいてターボ・フォグの被害を最も受けているデッキではありますが、デッキ自体のパフォーマンスはまだまだ通用します。色を簡単に足すことができるので、《否認》や《ジェイスの敗北》、《暗記+記憶》のために青を足すのもいいでしょう。カウンターでバックアップされた速いプレッシャーを打ち倒すのは、ターボ・フォグにとっても困難です。また他のアプローチとして、黒をタッチしたり、私がプロツアーで使ったように単色で戦うのであれば、《魔術遠眼鏡》で対抗しましょう。ターボ・フォグというデッキは、動き出しの起点を《ドミナリアの英雄、テフェリー》にかなり依存しています。《ドミナリアの英雄、テフェリー》を使えなければ、いつか《濃霧》系のカードが尽き、クリーチャーの攻撃が対戦相手を打ち砕くことになるでしょう。
しかしながら、今週末にジェレミー・デザーニ/Jeremy Dezaniの手によってグランプリ・ブリュッセル2018を優勝しただけでなく、同グランプリでほかに2名、グランプリ・オーランド2018で1名のトップ8進出者を輩出したエスパー・コントロールこそが、ターボ・フォグに対して最も相性が良いデッキです。
エスパー・コントロールは手札破壊、カウンター、プレインズウォーカーへの《ヴラスカの侮辱》とあらゆる角度でターボ・フォグを妨害することができます。4枚の《奔流の機械巨人》まで含めると、ターボ・フォグ側が出せる脅威の数に対して、多すぎるほどの解答を提示できるのです。
今週末、2つのグランプリを合わせてもブリュッセルのトーマス・メシーン/Thomas Mechinただ1人しかターボ・フォグはトップ8に残りませんでしたが、それは今週末は参加者全員がターボ・フォグに対してしっかり準備をしていたため、相性が良いマッチアップが減っていたからだと思います。《嘲笑+負傷》、《失われた遺産》といったあらゆるヘイトカードが使われていましたし、より多くのコントロールデッキがターボ・フォグを倒すために調整されていました。そんな逆境の中でも、1人がトップ4入賞したということは、デッキの強さを示しているといえるでしょう。
まとめ
結論として、今のスタンダードは急速に変化しているといえるでしょう。使用に値するデッキがメタゲームに多く存在していることが、大会の結果からも分かります。ゲームプレイという観点から見ると、ターボ・フォグはゲーム・プレイに少し問題を抱えているかもしれませんが(ターボ・フォグが動き出すのを止められなければ、あなたは何もできなくなるでしょう)、他のデッキが参入する余地があるほどにスタンダードというフォーマットは開かれていますし、その中の1つの存在でしかないと私は考えています。
ターボ・フォグが隆盛している現在でも赤黒系のデッキはいまだにベストデッキかもしれません。実際に現時点では最もプレイされているデッキですし、今の赤黒にはターボ・フォグを倒すための武器がしっかりと用意されています。今後もターボ・フォグをスタンダード環境で見続けることになると思いますが、今週末の両グランプリをコントロールが制し、これからスタンダードがどうなっていくかは興味深いです。
コントロールが隆盛するということはまたビートダウンのポジションが良くなることを意味します。ですがもし人々がコントロールを倒すためにビートダウンを手に取るようであれば、そのときはそれらのデッキをターボフォグが捕食するでしょう。私はこのようにメタゲームがぐるぐる回るのがとても楽しみです。将来のトーナメントにおいて、皆さんに幸運がありますように!
読んでくれてありがとうございます。
クリスティアン・カルカノ