USA Standard Express vol.128 -環境の最前線、25周年記念プロツアー-

Kenta Hiroki

 皆さんこんにちは。

 先週末、マジックの25年の歴史を記念して開催された『マジック25周年記念プロツアー』はスペシャルなイベントらしく、歴代のプロツアーでも最も盛り上がったイベントの1つでした

 今回の連載ではその記念すべきイベントで活躍したスタンダードのデッキを見ていきたいと思います。

『マジック25周年記念プロツアー』
真っ赤に染まった環境

2018年08月3-5日

  • 1位 UW Control
  • 2位 RB Aggro
  • 3位 RB Aggro
  • 4位 UW Gift

トップ4のデッキリストはこちら

 チーム構築戦のプロツアーということもあり、多くのプレイヤーはリスクのある選択を避け、旧環境から引き続いて安定した成績を残し続けている赤いアグロデッキを選択していました。

屑鉄場のたかり屋ゴブリンの鎖回し無許可の分解

 優勝こそ逃したものの、赤単色に《屑鉄場のたかり屋》《無許可の分解》《強迫》といったカードのために黒をタッチしたRB Aggroが40パーセントという驚異的な使用率を出していました(参考:メタゲームブレイクダウン:スタンダード)。

逆説的な結果運命のきずな

 他にもプレイオフ進出は逃しましたが、直前の大会で結果を残したことで話題となっていたスタンダード版の「ストーム」コンボのMono Blue Outcome、『基本セット2019』のプレビューで話題となっていたボックスプロモの《運命のきずな》を活用したTurbo Fogといったデッキも見られました。

『マジック25周年記念プロツアー』 デッキ紹介

「RB Aggro」「UW Control」「Turbo Fog」「Mono Blue Outcome」

RB Aggro

 旧環境のメタを支配したRB Aggroは今大会でも無難な選択肢として多くのチームが選択していました

 『基本セット2019』がリリースされた直後の環境では《破滅の龍、ニコル・ボーラス》のために青をタッチしたバージョンも見られましたが、安定性を優先して赤黒の2色が主流です。黒も《屑鉄場のたかり屋》《無許可の分解》《強迫》など必要最低限のカードのためにタッチされていて、基本的には赤単のアグロデッキです。

☆注目ポイント

ゴブリンの鎖回し

 『ドミナリア』の時点で完成されていたRB Aggroは『基本セット2019』のカードは皆無で、旧環境と同様に相手の《ゴブリンの鎖回し》をケアして、タフネスが1のクリーチャーを必要最低限にまで減量されています。Hareruya LatinのCarlos RomaoのリストはUW Controlのようなメインではクリーチャーをあまり採用していないデッキも意識した構成です。

反逆の先導者、チャンドラ

 《削剥》《無許可の分解》はメインでは2枚ずつと少なめで、《反逆の先導者、チャンドラ》が多めに採られています。プレインズウォーカーはUW Controlの《封じ込め》《残骸の漂着》などで処理されない脅威となるので、今後コントロールが流行るのなら多めに採りたいカードの1枚です

木端+微塵

 《木端+微塵》は除去として機能しつつ、マナが余る中盤以降はフィニッシャーとしても使えるので、他の除去と比べるとコントロールが相手でも腐りづらいカードです。多くのリストでは1枚のところ、Carlosは2枚採用することを選択しています

再燃するフェニックス栄光をもたらすもの

 直前に開催されたSCGOなどで結果を残していた《蔦草牝馬》《原初の飢え、ガルタ》といったサイズで勝るクリーチャーを高速展開してくるMono Green Aggroに対抗するために、《再燃するフェニックス》《栄光をもたらすもの》といった飛行クリーチャーを多めに採用しているのも特徴です

ピア・ナラー

 コントロールとのマッチアップでアドバンテージを得て活躍する《ピア・ナラー》もメインから多めに採られています。ミッドレンジ寄りの構成になっているので手札を早い段階で消費し切るのは難しく、《熱烈の神ハゾレト》の採用は見送られています。

栄光の刻チャンドラの敗北マグマのしぶき

 今大会でも多発していたミラーマッチも想定していたようで、サイドには《熱烈の神ハゾレト》《再燃するフェニックス》《栄光をもたらすもの》といったクリーチャーをインスタントスピードで追放できる《栄光の刻》や、軽い除去である《チャンドラの敗北》《マグマのしぶき》などが多めに採用されています。

UW Control

ドミナリアの英雄、テフェリー

 フォーマットを跨いで活躍している青白のプレインズウォーカーである《ドミナリアの英雄、テフェリー》を軸にしたコントロールデッキは、旧環境からコンスタントに結果を残しています

 RB Aggroと同様に『基本セット2019』からの収穫はほとんどなかったものの、前環境の時点で既に完成されたデッキだったので今大会でも安定した選択肢とされていたようです。

黎明をもたらす者ライラ奔流の機械巨人

 クリーチャーをメインにほとんど採用していないため、RB Aggroの《ゴブリンの鎖回し》の影響を受けず、《無許可の分解》などの除去スペルも腐らせることができるので、環境の多くのデッキに対してメイン戦は有利が取れます。しかし、サイド後は相手も不要牌を《強迫》のようなカードに変えてくるので、《黎明をもたらす者ライラ》《奔流の機械巨人》といった追加のフィニッシャーがサイドインされます。

☆注目ポイント

残骸の漂着天才の片鱗

 《残骸の漂着》は呪禁持ちの《蔦草牝馬》《顕在的防御》に守られたクリーチャーも対策できるのでMono Green Aggroとのマッチアップや《再燃するフェニックス》を採用したRB Aggroとのマッチアップで特に有効です。相手がこのインスタントをケアして少数のクリーチャーでアタック、またはアタックしてこなかった場合でも《天才の片鱗》《ヒエログリフの輝き》でドローを進めるという動きも可能です。ターンを無駄に消費することも少なく、このデッキのメインのフィニッシャーである《ドミナリアの英雄、テフェリー》も守りやすくなっています

周到の神ケフネト

 サイドには追加のクリーチャーが数種類採用されていますが、その中でも目を引くのは《周到の神ケフネト》です。3マナと軽く、ドローエンジンとしてアドバンテージを稼ぎ出します。戦闘条件も達成しやすく、回避能力、除去耐性と一通り揃っている優秀なクリーチャーです。

俗物の放棄

 Mono Blue OutcomeやUW Giftのような置物対策が必要なデッキが増えてきたため、《俗物の放棄》がサイドに2枚しっかり採用しています

Turbo Fog

運命のきずな

 『基本セット2019』のボックス購入特典限定プロモとして配布された《運命のきずな》はインスタントスピードで追加のターンを得られるというスペルで、プレビューでも注目されていたカードでした。使用後はライブラリーに戻るので使い回しやすく、《花粉のもや》などで時間を稼ぎつつ追加ターンを利用して《ドミナリアの英雄、テフェリー》《ウルザの後継、カーン》でアドバンテージを稼いでいき、最終的に《運命のきずな》を毎ターンキャストして相手をロックします

 今回トップ8という好成績を残していたDavid Williams以外にも、Raphael LevyやLee Shi Tian、Ben Rubinといったプレイヤーが選択していたことで話題になりました。

☆注目ポイント

カーンの経時隔離花粉のもや運命のきずな

 干渉する手段に貧しいRB AggroやMono Green Aggroに対しては、《花粉のもや》のような《濃霧》系のスペルで時間を稼ぎ、《カーンの経時隔離》《運命のきずな》で追加ターンを得ます。《ドミナリアの英雄、テフェリー》《ウルザの後継、カーン》の追加ドロー能力を使うほどデッキが圧縮されていくので、最終的に《運命のきずな》をループさせることが可能となります。《運命のきずな》が引けなくとも《濃霧》系のスペルで時間を稼げるので、アグロデッキに対してはそこまで問題になることはありません

楽園の贈り物アズカンタの探索黄金都市の秘密

 《楽園の贈り物》はライフゲインによって時間を稼ぎつつマナ加速をしていき、《アズカンタの探索》《天才の片鱗》《航路の作成》《黄金都市の秘密》といったスペルでデッキを掘り進め、追加ターンスペルを探し出します

ミラーリ予想

 《ミラーリ予想》は第Ⅰ-Ⅱ章で《濃霧》系のスペルやドロースペルを回収し、第Ⅲ章で追加ターンスペルをコピーするのが理想です。

否認ジェイスの敗北原初の潮流、ネザール

 相性が悪いコントロールやコンボに対しては、カウンター呪文の《否認》《ジェイスの敗北》でバックアップしていくと同時に、追加のフィニッシャーとして《原初の潮流、ネザール》も投入されます。コントロールとのマッチアップは不利が付くので《原初の潮流、ネザール》をもう1枚追加しても良さそうです。

殺戮の暴君

 このリストでは採用は見送られていますが、《殺戮の暴君》を採用していたチームも見られました《原初の潮流、ネザール》よりも1マナ軽く、《大災厄》などのスペル以外では対策されづらいため、信頼できるフィニッシャーとなります。

Mono Blue Outcome

 先ほどのTurbo Fogは近年稀に見るかなり凶悪なロックデッキです。しかし、ボックス購入特典の《運命のきずな》が4枚必須という資産の問題があるので、このデッキを使うのではなく、倒す側に回りたいという方も多いのではないでしょうか?

霊気貯蔵器

 多くのデッキと同様にTurbo Fogにも死角がまったくないわけではなく、性質上RB AggroやMono Green Aggroのようなクリーチャーデッキには無類の強さを見せますが、クリーチャー以外の妨害要素に貧しいため、この「青単ストーム」とも呼ばれている《霊気貯蔵器》コンボがTurbo Fogに対して相性の良いデッキの1つとして挙げられます

 『基本セット2019』からの新戦力により大幅に強化され、一気にトップメタへと上り詰めたこのデッキは、自軍の低マナアーティファクトを《逆説的な結果》によってバウンスしながらドローを進めつつ、《霊気貯蔵器》でライフゲインしていき、最終的にゲームに勝利します。

☆注目ポイント

練達飛行機械職人、サイ

 『基本セット2019』の新戦力である《練達飛行機械職人、サイ》は、モダンのコンボデッキの「KCI」でも使われるほどのクリーチャーです。このデッキではコンボ以外の勝ち手段として機能すると同時にカードアドバンテージエンジンとなるので、コントロールデッキのように振る舞うことも可能にします。タフネスが4あり、《削剥》を始めとする環境の主力の除去に耐性がある点も評価に値します。

ウルザの後継、カーン

 同様に、《ウルザの後継、カーン》もコンボ以外の勝ち手段となり、カードアドバンテージも稼ぐことができます。飛行機械・アーティファクト・クリーチャー・トークンを生み出す《練達飛行機械職人、サイ》とも相性が良く、このデッキならば「-2」能力でフィニッシャー級のサイズのトークンを生成することができるので、コンボに頼るまでもなくゲームに勝つことも可能になります

総括

ゴブリンの鎖回し

 『マジック25周年記念プロツアー』のスタンダードではRB Aggroがダントツの使用率で、優勝は逃したものの上位に多数のチームを送り込みました。同週末に開催されたMOのPTQでもプレイオフに7名が進出する、というかなり偏った結果を残しており、『基本セット2019』からの収穫は特にありませんでしたが、旧環境から引き続いて最高のデッキとしての名を欲しいままにしています

練達飛行機械職人、サイ破滅の龍、ニコル・ボーラス運命のきずな

 『基本セット2019』からの新カードはMono Blue Outcomeの強化に貢献している《練達飛行機械職人、サイ》、Grixis Midrangeの主力である《破滅の龍、ニコル・ボーラス》、Turbo Fogのキーカードである追加ターンスペルの《運命のきずな》以外には特に目立った新しい戦略はあまり見られなかったものの、個人戦のスタンダードのグランプリではまた違った結果になりそうです

 以上USA Standard Express vol.128でした。

 それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!

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