USA Standard Express vol.127 -新環境は動き出し、龍と馬が駆け抜ける-

Kenta Hiroki

 皆さんこんにちは。

 新環境に入って早くも2週間以上経ち、スタンダードの大規模なイベントもいくつか開催されました。

 今回の連載では、チーム構築戦のSCGO WorcesterSCGO Philadelphiaの入賞デッキを見ていきたいと思います。

SCGO Worcester
新環境に強い赤アグロ

2018年07月14日

  • 1位 RB Aggro
  • 2位 RB Aggro
  • 3位 UW Control
  • 4位 RB Aggro
  • 5位 Grixis Midrange
  • 6位 UW Control
  • 7位 UW Gift
  • 8位 Mono Green Aggro
Matthew Cotrupe, Jacob Saracino, and Bryant Cook

Cotrupe/Saracino/Cook

StarCityGames.com

トップ8のデッキリストはこちら

 新環境最初のイベントでは、予想どおり旧環境でも猛威を振るったRB Aggroが安定した成績を残していました。

 RB Aggroは『基本セット2019』から得たカードはほとんどありませんでしたが、多くのデッキが試行錯誤段階である環境初期では、完成されたプロアクティブな戦略が有利な選択となる傾向にあります

 『基本セット2019』からの新カードを得て強化されたデッキはMono Green AggroとGrixis Midrangeで、数名の入賞チームを出していたことからも要注目です。

SCGO Worcester デッキ紹介

「RB Aggro」

RB Aggro

 旧環境でもトップメタの一角として活躍していたRB Aggroは新環境になってもその強さは変わらず、多数のチームを上位に導きました

 メタが固まり切っていない新環境では赤いアグロデッキは人気が出る傾向にあります、クリーチャーの質、除去の種類ともにバランスも取れているRB Aggroは、無難なチョイスとして多くのチームが選択していました。

☆注目ポイント

ボーマットの急使ゴブリンの鎖回し屑鉄場のたかり屋

 旧環境では《ゴブリンの鎖回し》同型をケアして《地揺すりのケンラ》をカットするなど、タフネス1のクリーチャーを極力減らす構築がされていましたが、新環境でもそれは変わっていません。採用されているタフネス1のクリーチャーはコントロールなどに対してクロックとなり、アドバンテージも取れる《ボーマットの急使》のみで、《キランの真意号》《屑鉄場のたかり屋》が中心です。

無許可の分解アルゲールの断血

 黒を足すメリットとして《無許可の分解》《ヴラスカの侮辱》といった多彩な除去に加えて、手札破壊の《強迫》《アルゲールの断血》《大災厄》といった豊富なサイドボードの選択肢が挙げられます。赤単色バージョンと比較すると相手のプレインズウォーカーも処理しやすく、ロングゲームにも強いので、現環境の選択肢としては単色よりも黒を足したバージョンの方が有利になりそうです

熱烈の神ハゾレト再燃するフェニックス

 軽めの構成の赤単色バージョンと異なり手札の消費も遅く、《熱烈の神ハゾレト》を活かすのが難しいため、1枚のみの採用です。今大会で結果を残していた『基本セット2019』からの新カードによって強化されたMono Green Aggroに対して飛行クリーチャーは安定したクロックとなるので、今後は《再燃するフェニックス》《栄光をもたらすもの》が優先されそうです

苦悩火

 『基本セット2019』から採用された唯一のカードは、再録カードの《苦悩火》です。UW Controlなどカウンターを多数採用したデッキとのマッチアップでも希望が持てるようになりました。

SCGO Philadelphia
恐竜と馬の競演

2017年07月21日

  • 1位 Mono Green Aggro
  • 2位 RB Aggro
  • 3位 Grixis Midrange
  • 4位 GB Constrictor
  • 5位 RB Aggro
  • 6位 RB Aggro
  • 7位 Grixis Energy
  • 8位 Grixis Midrange
Daniel Barkon, Kellen Pastore, and Steve Noga

Barkon/Pastore/Noga

StarCityGames.com

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 先週末に開催されたSCGO Philadelphiaは、SCGO Worcesterと同様のチーム戦で競われました。

 Worcesterで結果を残していたRB Aggroは今大会でも安定した成績を残していましたが、今大会で一番の2日目進出率を出していたのは《破滅の龍、ニコル・ボーラス》という新戦力を得たGrixis Midrangeでした。

 今回の優勝チームはMono Green Aggroを選択しており、このデッキもまた『基本セット2019』からの新カードにより大幅に強化されました。現環境で人気の赤いアグロデッキに対しても強いデッキなので、今後も人気が出そうなデッキです

SCGO Philadelphia デッキ紹介

「Mono Green Aggro」「Grixis Midrange」「Grixis Energy」

Mono Green Aggro

 『ドミナリア』から《ラノワールのエルフ》が再録され、《鉄葉のチャンピオン》という緑単専用ともいえるクリーチャーを得たことによって旧環境でも見られた緑単色のアグロデッキですが、『基本セット2019』からも新戦力となるカードが加入したことで強化されました

 クリーチャーの質とサイズで赤いアグロデッキに対して有利なデッキで、相手の除去も《顕在的防御》でクリーチャーを強化しつつ弾きます。《原初の飢え、ガルタ》のような巨大なクリーチャーでアタックするのは他のデッキでは中々味わえない爽快感です。

☆注目ポイント

蔦草牝馬

 《蔦草牝馬》は4マナ、5/3、呪禁と緑単色のアグロデッキにとって主力のクリーチャーらしい性能です。青黒系のミッドレンジやBR Aggroのような単体除去を多用するデッキとのマッチアップにも強く、このデッキの強化に貢献しています。

茨の副官

 《茨の副官》《マーフォークの枝渡り》に代わる新たな2マナ域のクリーチャーとして採用されています。単体除去で処理されてもトークンが残るのでアドバンテージが取れる上に、自身を強化する能力によって中盤以降も戦力になり、余ったマナの使い道になるのでマナフラッド防止にもなります。

不屈の神ロナス原初の飢え、ガルタ

 また、このクリーチャーとパワーが5の《蔦草牝馬》の恩恵で、《不屈の神ロナス》の戦闘条件を満たしやすくなり、《原初の飢え、ガルタ》を早い段階でキャストしやすくなりました。

ビビアン・リード

 サイドに採用されている新プレインズウォーカーの《ビビアン・リード》はカードアドバンテージ、パーマネント除去、全体強化の奥義と一通り揃っています。クリーチャーを多数採用したこのデッキでは「+1」能力は高性能なドローエンジンとして機能し、「-3」能力はUW Controlの《排斥》を始めとするエンチャントや、フィニッシャーの《黎明をもたらす者ライラ》も対策できるので、コントロールやミッドレンジとのマッチアップで活躍します

Grixis Midrange

 『基本セット2019』のトップレアである《破滅の龍、ニコル・ボーラス》が登場したことにより、新環境のUB MidrangeはGrixisカラーにシフトしていきました

 旧環境のUB Midrangeと同様に《機知の勇者》《スカラベの神》を軸にしたミッドレンジで、マナベースになるべく負担をかけないように、3色目の赤も《破滅の龍、ニコル・ボーラス》《削剥》《木端+微塵》《チャンドラの敗北》と必要最低限に絞られています。

☆注目ポイント

破滅の龍、ニコル・ボーラス

 《破滅の龍、ニコル・ボーラス》は4マナ、4/4、飛行という性能に加えて、手札破壊のETB能力によってアドバンテージも得られます。さらに、7マナを払うことでプレインズウォーカーの《覚醒の龍、ニコル・ボーラス》に変身します。

覚醒の龍、ニコル・ボーラス

 《予言》と同様の「+2」能力を持ち、与えるダメージの高さからほぼ《戦慄掘り》と同様に機能する「-3」能力と、クリーチャーかプレインズウォーカーをリアニメイトする「-4」能力の相性も抜群です。そして、決まればほぼ勝ちである奥義もあり、7マナという重い変身コストに見合う強力な能力が揃っています。4ターン目に《破滅の龍、ニコル・ボーラス》、5ターン目に《スカラベの神》という流れは青黒のときにはなかった動きで、脅威が高まっています。タフネス4は火力除去に耐性がある点も注目です。《破滅の龍、ニコル・ボーラス》の加入によって従来のミッドレンジよりも攻めに転じやすくなったと言えるでしょう

削剥

 赤を足したことでメインから《削剥》も使えるようになったので、《キランの真意号》《王神の贈り物》などを対策しやすくなったのもプラスです

ヴォーナの飢え

 《ヴォーナの飢え》《殺戮の暴君》《蔦草牝馬》《不屈の神ロナス》を対策できる追加の布告系の除去です。《大災厄》と異なりインスタントなので除去として使いやすくなっていますが、手札破壊としても使える《大災厄》はコントロールが相手でもアグロデッキが相手でも使えるフレキシブルなスペルなので、うまく使い分けていきたいところです。

Grixis Energy

 Jordan Berkowitzのリストは旧環境でも見られた《つむじ風の巨匠》《蓄霊稲妻》も採用されたGrixis Energyで、アドバンテージを獲得する手段が豊富で対応力も高いところがこのデッキの強みです

 Grixis Midrangeのバリエーションの1つとして扱われていますが、青黒タッチ赤のミッドレンジと異なり、赤いカードを多数採用した完全な3色のミッドレンジです《本質の散乱》《至高の意志》といったカウンターよりも、《蓄霊稲妻》のように軽い除去を優先して採用し、より能動的に動けるように調整されています

☆注目ポイント

つむじ風の巨匠蓄霊稲妻

 メインから打ち消し呪文をカットして《つむじ風の巨匠》《蓄霊稲妻》いったエネルギー要素を加えることによって、アグロ寄りの構成になっています。《ボーマットの急使》を除いたタフネス1のクリーチャーが抜けて、トークンを一掃する《ゴブリンの鎖回し》が採用された現環境の赤いアグロデッキに対しては、《つむじ風の巨匠》の強さは以前ほどではなくなったものの、まだまだ活躍の機会はあります

破滅の龍、ニコル・ボーラス

 Grixis Midrangeを紹介する際にお伝えしたように、《破滅の龍、ニコル・ボーラス》《スカラベの神》《死の権威、リリアナ》といったフィニッシャーよりも軽いエンドカードとして機能します。

破滅の刻バントゥ最後の算段

 Mono Green Aggroなどに対抗するために、《破滅の刻》《バントゥ最後の算段》といったスイーパーもサイドに見られます。特に《破滅の刻》《覚醒の龍、ニコル・ボーラス》を残しつつ相手の戦場を一掃できるため、その後に「-4」能力で相手のクリーチャーやプレインズウォーカーをリアニメイトをするという強力な動きが可能です。

ボーナストピック -注目のコンボデッキ-

Mono Blue Outcome

 最後にご紹介するデッキはMagic OnlineのPTQでもプレイオフに進出し、SCG Classicsでも入賞するなど、密かに注目を集めているスタンダードのコンボデッキです

霊気貯蔵器逆説的な結果

 《霊気貯蔵器》《逆説的な結果》を使ったコンボデッキで、呪文をキャストするたびにライフゲインする《霊気貯蔵器》はこのデッキのキーカードです。コンボが決まるまでの時間を稼ぐと同時に50点以上のライフを得ることでゲームに勝利することができます。自分が唱えたスペル限定ですが「ストーム」と似た能力なので、スタンダード版のストームコンボとも形容されています

羽ばたき飛行機械モックス・アンバー予言のプリズム

 《羽ばたき飛行機械》のような0マナのアーティファクトや、《予言のプリズム》《改革派の地図》といった低コストアーティファクトを《逆説的な結果》でバウンスして、呪文を唱え続けて大量のライフを得ます。ドローによってより多くのスペルをキャストすることも可能になります。

☆注目ポイント

鼓舞する彫像

 アーティファクトでないスペルに「即席」を与える《鼓舞する彫像》は、《逆説的な結果》わずか1マナで唱えることを可能にするアーティファクトです。タップしたアーティファクトをバウンスすることで1ターンに複数の呪文を唱えやすくなります。

練達飛行機械職人、サイ

 『基本セット2019』からの新カードである《練達飛行機械職人、サイ》は、《モックス・アンバー》の条件を満たしつつコンボ以外の勝ち手段にもなるクリーチャーで、このデッキを競技レベルにまで強化することに貢献しています。強化はされないものの呪文を唱えるたびにトークンを生成する能力は、レガシーでも活躍している《僧院の導師》を彷彿させます。

総括

ゴブリンの鎖回し蔦草牝馬

 SCGO Worcester、Philadelphiaと両大会ともにチーム戦だったので、個人戦の成績までは分かりませんでしたが、環境の初期らしくRB AggroやMono Green Aggroといったプロアクティブな戦略が多く結果を残しています。

破滅の龍、ニコル・ボーラス

 旧環境でも結果を残し続けていたUB Midrangeは話題の新カードである《破滅の龍、ニコル・ボーラス》のためにGrixis寄りにシフトしています。

 SCGOと同様にチーム構築戦の25周年記念プロツアーもいよいよ来週末に開催されるので、お見逃しなく。

 以上USA Standard Express vol.127でした。

 それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!

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