現在のスタンダードで重要な、4つのデッキ

Oliver Polak-Rottmann

Translated by Takuma Kusuzawa

編集者注:この記事は『25周年記念プロツアー』の前に書かれたものです。


最初に、また記事を書けて光栄だ。このことは長い間悩んでいたんだけど、来年のプロツアーには出場しない予定で、その間は記事も書かないつもりなんだ。身の回りのことに目を向けるために、プロプレイヤーとしての活動はしばらく控えることになる。どれくらいの期間になるか分からないけど、充電期間を取ることにしたんだ。

稼働停止

近くプレーしなくなるわけなんだが、目下盛り上がっている『25周年記念プロツアー』にはまだ出場する予定だ。今回はどのチームも二日目の足切りなく14ラウンド戦えて、まったく新しい形式でやるこの大会のために3人チームが結成される。私はマルク・トビアシュピエール・ダジョンの2人と組んでいるんだが、すごく楽しみにしていて、結果を残すためにどんなことでも議論しているよ。マルクがレガシーを担当することはかなり前に決めたんだけど、ピエールと私がどちらを担当するか、お互い決めかねていたんだ。最終的にピエールがモダンをプレイして、私がスタンダード担当になった。

Marc Tobiasch Pierre DagJN

マルク・トビアシュ、ピエール・ダジョン

パッとみた感じ、スタンダードは他のフォーマットよりつまらなく見えたけど、今回は結構楽しみだ。プロツアー『ドミナリア』が終わった頃から、このフォーマットにビッと感じるものがあったんだけど、『基本セット2019』は環境にいい影響があったね。グジェゴジュ・コヴァルスキが記事で注目カードを紹介してくれたから、私が1から説明するのはやめておくよ。

その変わりにプロツアーで使おうか考えているデッキを4つ教えるよ。総合的に最善に見える赤黒ミッドレンジがその1つなんだが、このデッキの情報は十分ネットに出回ってるし、これ以外を紹介していこうと思う。

プロツアー『ドミナリア』と「基本セット2019」で何が起きたか

すでに書いたけど、初めはあんまり楽しみじゃなかったんだ。そこら中、赤だらけだったからね。まずは赤いデッキを倒すことから試して、青黒ミッドレンジっていう無難な選択肢にたどり着いたんだけど、そこで『基本セット2019』がきた。赤色が分かりやすい強化を受けてなくて、面白そうなカードがたくさん出てきたからともかく安心したよ。

グリクシス

破滅の龍、ニコル・ボーラス破滅の龍、ニコル・ボーラス

特に気になっていたのは、両面とも結構な強さを持つ《破滅の龍、ニコル・ボーラス》だ。4/4、飛行は《キランの真意号》《鉄葉のチャンピオン》と相打ちできるし、対戦相手にカードを捨てさせるのはかなり良く見えた。「変身」する脅威が大きすぎて、相手はできる限り早く倒さないといけないってプレッシャーに苛まれる。

はじめは、《ドミナリアの英雄、テフェリー》のために白を足したのと同じ要領で、青黒ミッドレンジに赤をタッチする形を試してみたんだけど、環境がガラッと変わっていて、今までの戦略はやり方がバレている、という課題を乗り越えないといけないとすぐ気付いた。そして、緑デッキが台頭してきたうえに、青単ストームがどこからともなく現れたんだ。マルクが2017年のプロツアー『霊気紛争』で試していたから、青単ストームのことは知っていたけど、多くの人はこのデッキが《練達飛行機械職人、サイ》が入ることで戦えるようになったことにビックリしていたみたいだね。だから、今は青単ストームに備えて《削剥》が必要だし、緑や赤黒のアグロ/ミッドレンジに対して《マグマのしぶき》が必要だと気付いたんだ。

AbradeInspiring StatuaryMagma SprayScrapheap Scrounger

すぐに青黒タッチ《破滅の龍、ニコル・ボーラス》から、きっちり3色のグリクシスに変えて、国別選手権で試してみた。イマニュエル・ゲルシェンソン/Immanuel Gerschensonがオーストリア選手権で決勝戦まで上り詰めたデッキを記しておくよ。

Glint-Sleeve SiphonerVraska's ContemptLiliana, Death's Majesty

これはまだベストな形ではないけど、基本的にはスタンダードにおけるジャンドだと言っていい。特定のアーキタイプに強いというわけじゃないが、すごく苦手な相手もいない。どの対戦もギリギリで、文字どおり勝ち筋をこじ開けないといけない。除去についても豊富な選択肢があって、メインとサイドで調整する。イマニュエルは自身が予想したメタゲームに合わせてこの形を選んでいるわけだが、このデッキは打ち消しとして《不許可》を足す選択肢もあるし、《機知の勇者》を入れることで「似ている」相手やコントロールまで広く対応できるようになる。

DisallowChampion of Wits

このデッキの強みは『カラデシュ』ブロック、『アモンケット』ブロックから最強のカードの一角である《奔流の機械巨人》《スカラベの神》を投入できることだ《天才の片鱗》が入っていない(入れられなくもない)ので最高の《奔流の機械巨人》デッキでもないし、《貪欲なチュパカブラ》《機知の勇者》が入っていないから最高の《スカラベの神》デッキでもない。しかし、入っているカードのパワーレベルは理不尽なまでに強い。想像してほしい、3ターン目までに除去2枚を唱えた後に、そこから《破滅の龍、ニコル・ボーラス》《スカラベの神》《奔流の機械巨人》と出てくるんだ。それぞれのカードが強すぎるのに、場に出てきただけでアドバンテージを取られているので、これに対する解答はとても難しい。

Torrential GearhulkThe Scarab God

さらに別の強みはサイドボード後の多彩な変形で、エネルギー基軸のデッキから、除去満載のコントロールや除去を抜いた超破壊的なデッキに変えることができる。1ゲーム目は可能な限り受けを広くしている都合で激戦になることが多いけど、サイドボード後はどんな相手にも合わせられるようになっている。それでも《蔦草牝馬》は厄介だ。ブロックしにくいし、毎ターン5点を叩き出してくるからね。

Vine Mare

プロツアーにはグリクシスがたくさん出てくると思うけど、どの形にするかは使うプレイヤー次第だし、どれが最高の形になるかは正直分からないね。

緑単ガルタ

次に紹介するのは、オーストリア代表となったマルク・ミュールベック/Marc Muehlboeckを優勝まで導いた《原初の飢え、ガルタ》入りの緑単だ。

このデッキはまっすぐな戦略で、メインボードはいじれるところがほとんどない。気になったのは、サイドボードに《野望のカルトーシュ》が入っていることで《蔦草牝馬》《原初の飢え、ガルタ》に付けることで何ゲームも勝っていた。

Vine MareCartouche of AmbitionGhalta, Primal Hunger

現環境でもっとも直線的なアグロで、2ターン目の《キランの真意号》から《不屈の神ロナス》《鉄葉のチャンピオン》を出すのは、メインデッキに入っている除去を拒むことで、プレッシャーをかけ続けられる。《顕在的防御》で恐竜を守って純粋に殴るだけだ。経験豊富なプレイヤーには魅力的に見えなかったかもしれないけど、他のデッキに比べて走らせるのに考えることが少なく、対処しにくいクリーチャーで最速のクロックを叩き出すというのが純粋な強さだ

Heart of KiranRhonas the IndomitableSteel Leaf ChampionBlossoming Defense

黒の代わりに青や赤を足す選択肢もある《屑鉄場のたかり屋》を失うことになるけど、パーマネントの対処手段、幅広い脅威への対策方法を得られる。他の色を入れると《導路の召使い》に頼ることになるので、強くなる分、速度は落ちる。

Commit // MemoryAbradeServant of the Conduit

《茨の副官》は、このデッキの中でポテンシャルが高いカードの1枚だ。変わり身が出てくるし、終盤で強い能力も持っていて、特に赤いデッキ相手に輝く。

Thorn Lieutenant

青単ストーム

最後に紹介するのは世界中のプロの注目を浴びたデッキ、青単ストームだ

Inspiring StatuaryParadoxical OutcomeAetherflux Reservoir

スタンダードでは、《ジェスカイの隆盛》以来となるプレイアブルな純コンボデッキだ。4ターン目には1マナの《マナ漏出》で守りながら、勝ちまで繋げられる。

Metallic Rebuke

このデッキの新の強さは、コンボが生き残ることにつながること。つまり、長期戦もやれるということだ。《霊気貯蔵器》《バラルの巧技》《練達飛行機械職人、サイ》《光り物集めの鶴》は全部、コンボを組み上げるまでの延命手段になる。多くのコンボデッキはコンボ自体に特化されているため、やむをえない状況になるまでコントロールの立ち回りはできないが、このデッキは長引かせるのは得意だ。私が回している中で、《原初の飢え、ガルタ》に何度か殴られた上でまだ十分に余裕がある、なんてこともあった。

Aetherflux ReservoirBaral's ExpertiseSai, Master ThopteristGlint-Nest Crane

いろんなリストが出てくるだろうけど、プロツアーで突発的に流行するのは確かだろうね。誰もが初めに取り組んでいるリストだけど、コンボを速やかに決められるように固めたり、《霊気貯蔵器》なしでも勝てるように《アンティキティー戦争》《解放された者、カーン》を入れたりと、選択肢が多い。

The Antiquities WarKarn, Scion of Urza

結論

この3つと赤黒ミッドレンジが私がプロツアーで使う選択肢だ。80%はこの4つのアーキタイプのバリエーションで埋まると思ってるが、白単や青白コントロールあたりのデッキが、あっと言わせる可能性もある。

Lyra DawnbringerTeferi, Hero of Dominaria

晴れる屋での記事を読んでくれたみんなに感謝だ。記事を届けられて光栄だし、必ず帰ってくることを約束しよう。感想や応援をくれて本当に感謝しているよ。プロマジックからは一歩引くけれど、マジックから離れるわけじゃないから、これからも付いてきてくれるとうれしいな。

オリヴァー

この記事内で掲載されたカード

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