Translated by Kenji Tsumura
(掲載日 2018/08/24)
やあ!俺の名前はマルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carbalho。ポルトガル出身のプラチナ・レベル・プロで、Hareruya Latinの一員だ。
今シーズン振り返り
ラテンは今シーズンの開幕戦となったプロツアー『イクサラン』で、良いスタートを切ることができなかった。チーム内の最高成績はティアゴ・サポリート/Thiago Saporito、ルイス・サルヴァット/Luis Salvatto、そして俺が記録した10勝6敗だ。決して悪い成績とは言えないが、それほど誇らしいもんでもないよね。
事態が急変したのは、続くプロツアー『イクサランの相克』でのこと。そこでルイスは優勝トロフィーを持ち帰り、ルーカス・エスペル・ベルサウド/Lucas Esper Berthoudが16位に、カルロス・ロマオ/Carlos Romaoが23位に入賞した。この結果により、ラテンはチームシリーズランキングで4位まで上昇したんだ!
3回目のプロツアー『ドミナリア』では俺が4位に入賞し、ルーカスとルイスは10勝6敗を記録して貴重なプロポイントを積み上げた。これでラテンはチームシリーズで2位につけることができた。
マルシオのトップ8進出を祝うHareruya Latinの面々
マジック25周年記念プロツアーに向けて
チームプロツアーの詳細がアナウンスされるや否や、俺たちは俺/ティアゴ・サポリート/カルロス・ロマオをひとつめのチームに、ルイス・サルヴァット/セバスティアン・ポッツォ/ルーカス・ベルサウドをふたつめのチームにすることを速やかに決定した。
Really happy to be teaming up with @KbolMagic and @Jabsmtg. When I started playing they were already two legends so it’s an honor to be part of this team, hope everything goes well. #PT25A pic.twitter.com/GEmLSR4ARV
— thiago saporito (@bolov0) 2018年8月2日
また、俺たちは「最も古くからプレイしている人をレガシー担当にする」というトレンドに乗っかることにして、カルロスにレガシーを担当してもらい、モダンとスタンダードはじゃんけんで決めることにしたんだ。
ひとつの事実として、ラテンの面々はチームメイトを兄弟のように慕っている。プロプレイヤーとして結果を出さなければいけないというプレッシャーに苛まれることもままあるけれど、そんな中でも俺たちは重要な決断を下す際にカジュアルなマジックのゲームを用いるんだ。例えば、今回はドラフトの残りのカードを使ってティアゴと “無限マナ” のゲームをしたね。まだまだ未熟なティアゴを圧倒したことで、モダンをティアゴに押し付け、俺はスタンダードを担当することになった。
そうそう、知らない人のために言及しておくと、カルロスはとんでもなく優れた技能を持つ一方で、凄まじく怠慢なんだ。これを踏まえて検討を重ねた結果、bolov0 (ティアゴ・サポリートのあだ名) と俺はカルロスをスタンダード担当にした方が良いということに気が付いた。彼は少なくともプロツアー『ドミナリア』でスタンダードをプレイしているから、試合中に何が起こるかくらいは分かるだろうからね。
ここでプロツアー前日まで時間を早送りしてみよう。
「これほどまでにしっかりと準備ができていると感じた大会は今回が初めてだ」
「えっ?Magic Onlineで10回かそこらリーグに参加しただけじゃなかったっけ……」
「あぁ、その通りさ!超準備万端だ!!」
ご存知のように、彼は過去2年間で2回のプロツアートップ8、さらにはブラジル選手権優勝を成し遂げ、2年連続でプラチナ・レベルに到達したんだ。本当にすごいプレイヤーだよね!
禁止制限告知を終えて
そんなこんなでかなり遅い段階で担当フォーマットを変えることになったんだけど、幸運にも禁止制限告知がレガシー環境を激変させたために大きな被害を被ることはなかった。
俺はほとんどレガシー初心者同然で、ここ最近はグランプリ・バーミンガム2018をプレイしただけだった。そこでは、今では禁止カードになってしまった2種類のカードを擁する「グリクシス (青黒赤)・デルバー」で2日目進出を逃してしまった。
また、ラテンでレガシーを担当するもう1人はルーカスだった。彼が同じ調整チームにいるのはいつだってとても有益なんだ。彼は調整過程と献身性において、カルロスと対極に位置するからね。ルーカスは最新の技術やサイドボーディングガイドを手にするために、有名なウェブサイトから全ての掲示板までをくまなく調べ上げる。それにカルロスがプロツアー調整期間中にプレイしたであろうゲームの合計数を、ルーカスはそれと同じ数をたった一晩でこなすと確信を持っているよ。
それも、本業である弁護士としてちゃんと働きながらね。どうやったらそんなことができるのか誰にも分からないけど、ルーカスはそれをやってのけるんだ。さらにさらに、彼は時間を捻出して調整記も書いている。もしまだ見たことがないのなら、こちらから見ることができるよ。
ルーカスに関するお気に入りのエピソードは、グランプリ・ミネアポリス2018での一コマだ。そこで対戦相手の1人が、ルーカスに翌週のマジック25周年記念プロツアーで誰とチームを組むのかを尋ねたんだ。
「ルイス・サルヴァットとセバスティアン・ポッツォと一緒に参加するよ。」
「まじかよ!ルイスは俺の憧れのプレイヤーなんだ!」
「あぁ、彼は素晴らしいプレイヤーだね。」
「友達にこんなこと言っても絶対信じてくれないだろうな~!人生初のグランプリで、まさかプロツアーチャンピオンのルイス・サルヴァットのチームメイトと対戦できるだなんて!」
ルーカスが調整チームにいるということは、Facebookの調整用の掲示板を見るだけでここ最近どんな出来事があったのかを簡単に把握できることを意味している。そして、真のレガシースペシャリストであるマイケル・ボンデ/Michael Bondeとトーマス・エネヴォルドセン/Thomas Enevoldsenが調整に加わったことで情報と議論の信頼性は増し、それらはより有意義なものとなった。
調整を開始するにあたって、まずは「ティムール (青赤緑)・デルバー」を試すのが最適だと考えた。グランプリ・バーミンガム2018の調整中に「グリクシス・デルバー」を使ってみてデッキのスタイルが好みだったもんだから、《秘密を掘り下げる者》を使ったデッキは絶対に試しておきたいと思ったんだ。
しかし、「ティムール・デルバー」は何と言ったらいいだろうか。このデッキには君を最高にカッコ良く見せるようなクールなカードがいくつか入っているものの、実際には相性の良いマッチアップがそれほど多くはないし、君自身をカッコ良く見せたい以外にこのデッキを選ぶ真っ当な理由が見当たらない。これはモダンにおける《死の影》デッキの現状にとてもよく似ている。《敏捷なマングース》、《タルモゴイフ》はしばしば期待外れのカードになってしまうし、以前ほど強力というわけじゃない。そしてもうひとつ……《もみ消し》は採用しないように!!
あまり強くないデッキを使うってだけでも十分に大変なのに、自身の手によってそれをさらに難しくする必要なんてないよね!
ルーカスはいずれかのコンボデッキをプレイするつもりだと語った。その理由は納得のいくもので、彼よりも長きにわたってレガシーをプレイしているプレイヤーとタイトな長期戦をしたくないというものだった。「リアニメイト」、「スニーク・ショー」、「ANT」のようなコンボデッキをプレイすればゲームのターン数は短くなり、小さな意思決定が敗因となってしまう可能性を減らすことができる。
ただ、俺はコンボデッキがそれほど好きじゃない。それに3人チーム構築戦のグランプリで、「リアニメイト」をプレイしていたレガシー担当のチームメイトが散々な目にあっていたのが目に焼き付いている。サイドボード後のゲームは悪夢のようなもので、ほとんどのゲームは対戦相手が対策カードを何枚引くかで結果が決まってしまう。
ゴンサロ・ピント/Goncalo Pintoは「デス&タックス」に夢中だった。ピントは調整初期にFacebook上で「スタンダードで緑単を、モダンでトロンを、レガシーで白単を使おうよ」なんて言ってマイケル・ボンデをからかっていたんだけど、彼は「デス&タックス」を実際に手に取ってみてかなり驚いている様子だった。
そして、「デス&タックス」こそ俺が求めているタイプのデッキだった。知らない人のために明記しておくと、俺は打ち消し呪文が入っておらず、コントロールデッキを消耗戦で打ち負かす術があり、それでいて対戦相手がもたつくようならそれを蹴散らせるような序盤のアクションを持ったミッドレンジデッキが大好きなんだ。「デス&タックス」はレガシー界におけるモダンの「ジャンド」デッキのようなもので、俺はこの部分を気に入った。実際にプレイしてみるまでは。
Magic Onlineで大会に数回出てみて、後手で1ターン目や2ターン目に死ななかったゲームに関しては悪くないと思ったよ。要するに、何もプレイすらできずに負けてしまったゲームがたくさんあって気分は最悪だった。それこそ、《意志の力》が入っていないデッキはプレイすべきじゃないとすら思ったよ。
ミネアポリスに移動するにあたって、最終的に「デス&タックス」と「スニーク・ショー」を鞄に詰めた。そしてグランプリの最終日にマイケルとトーマスに話を聞いてみると、彼らはいくつものデッキを試した結果、最愛のデッキへと舞い戻り「デス&タックス」を使うつもりだと告げたんだ。世界でも屈指の経験豊富な2人が自分と同じデッキを使うつもりだと言ってくれたんだから、素直に喜ばないとね。
2人に《意志の力》が入っていないデッキをプレイすることへの懸念を伝えたところ、トーマスは俺に「デス&タックス」を使うと決断させるだけの返答をくれたし、それ以降この問題に関してストレスを抱えることもなくなった。
「どんなデッキにも何かしらコントロールできないものがあるということさえ理解していれば、このデッキがとても良いデッキだと分かるはずさ。」
これを聞いて、モダンで3ターン目に《解放された者、カーン》を出されたり、トップデッキされた《風景の変容》に負けたとしても、それが「ジャンド」や「マルドゥ・パイロマンサー」からデッキを変更したいと思う理由にならないのと同じだと考えられるようになった。これらの事柄はマジックをやっていれば当然起こるもんだし、各デッキには相性が悪いマッチアップがあるもんだ。君はそれを受け入れるべきだし、それほど深刻に捉える必要なんてないんだ。
デス&タックスガイド
マイケルとトーマスと一緒に「デス&タックス」を調整したから、物事はすんなりと運んだ。ただ彼らが言った通りにすれば良くて、それに関して何か疑問があったとしてもほんの僅かなものだからね。
下記はほとんど確定パーツのようなものだ。
残るスロットはこのようにしたよ。
《ファイレクシアの破棄者》3枚
必要悪だ。こいつ以上に採用したいと思うような2マナ域は存在しない。
《聖域の僧院長》2枚
こいつについてはよく知っていたし、「土地単」や「《秘密を掘り下げる者》」系のデッキをロックできるこの能力は非常に強力に映っていたよ。
《セラの報復者》2枚
マイケルとトーマスはこいつには枠を割くだけの価値があると言った。そして、実際にその通りだった。
《護衛募集員》1枚、《宮殿の看守》2枚
最初は《護衛募集員》2枚、《宮殿の看守》1枚だったんだけど、俺とピントは追加の0マナ墓地対策用にサイドボードのスロットを空けたかったから、2枚目の《宮殿の看守》をメインボードに移すことにした。2枚目の《宮殿の看守》はコントロール戦で必要になるし、対「エルドラージ」や対「スニーク・ショー」戦では普通に引きたいと思うカードだ。
土地構成
《カラカス》3枚、《魂の洞窟》1枚とフリースロット1枚
全員が《カラカス》3枚と《魂の洞窟》1枚の形に落ち着いたが、残る1枚の枠は判断が分かれた。俺とピントは2枚目の《魂の洞窟》を、トーマスは《古えの墳墓》を、マイケルは《地平線の梢》を選択したよ。
《平地》10枚
俺は《冠雪の平地》を持っていたにもかかわらず、ピントと完全に同じデッキリストにしたいという理由だけで《平地》10枚でいくことした。最後にピントと同じリストを使ったときは成績が良かったからね。ついでに、もし対戦相手が《予報》で『ゼンディカー』の《平地》を落とした場合には、晩御飯を奢ってもらえる約束をした。よっ!ちゃっかり者!
マジック25周年記念プロツアー本戦結果
プロツアーのメタゲームは「デス&タックス」にとってすこぶる良いものだった。マイケル、トーマス、ピントと俺は、ほとんどアンフェアなコンボデッキに当たらなかったんだ。
俺の個人成績はこんな感じだった。
ラウンド | 対戦相手 | 結果 |
---|---|---|
Round 1 | エルドラージ | 〇 |
Round 2 | 青白《石鍛冶の神秘家》 | チームメイトの試合が先に終了 |
Round 3 | グリクシス・デルバー | 〇 |
Round 4 | スゥルタイ・デルバー | 〇 |
Round 5 | マーヴェリック | チームメイトの試合が先に終了 |
Round 6 | エルドラージ | 〇 |
Round 7 | エルドラージ | 〇 |
Round 8 | ティムール・デルバー | 〇 |
Round 9 | 青黒《死の影》 | チームメイトの試合が先に終了 |
Round 10 | デス&タックス | × |
Round 11 | 土地単 | 〇 |
Round 12 | エルドラージ | 〇 |
Round 13 | グリクシス・デルバー | 〇 |
Round 14 | 青黒《死の影》 | 〇 |
【PT25A】マジック25周年記念プロツアー、最終日の放送が23時より開始!Silver Showcaseの決勝戦の行方は?そしてチーム戦頂点に立つチームは!?お楽しみに!
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) 2018年8月5日
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俺たちはトップ4に残ることができたわけだが、これは俺個人にとって特別な意味を持つ5回目のプロツアートップ8になった。なぜならば、カルロス、そしてティアゴという最高の友人とこの幸せを分かち合えただけでなく、もうひとつのラテンチーム (ルイス / セバスティアン / ルーカス) が6位に入賞したことで、後にラスベガスで開催されるチームシリーズの決勝戦に1位で進出できることが決まったんだからね。
準決勝では、ChannelFireball.comの殿堂顕彰者の3人チームと対峙した。ジョシュ・アター=レイトン/Josh Utter-Leytonを倒すための策はメインボードの2戦に勝利し、3枚もの《夜の戦慄》、そして2枚の《最後の望み、リリアナ》が入ってくる3本目以降でなんとか1本をもぎ取るというものだった。しかし俺は2本目を落としてしまい、サイドボード後に1本しか取ることができずこれを埋め合わせることができなかった。カルロスもマーティン・ジュザ/Martin Juzaに敗れたことで、俺たちの旅はここで終わりを告げた。
新しいデッキリストとサイドボードガイド
もし君も “どんなデッキにも何かしらコントロールできないものがある” という事実を喜んで受け入れて「デス&タックス」を使ってくれるのであれば、俺のサイドボードじゃなくてトーマスのサイドボードを使ってほしい。
「エルドラージ」に4回も当たったから2枚目の《宮殿の看守》は素晴らしかったけど、サイドボードに目を向ける度に使い道のないたくさんのカードを眺めては自分は愚かだと感じたもんさ。トーマスが採用していた《漸増爆弾》と《真髄の針》は多くの状況でとても役に立つし、特にジョシュのように《夜の戦慄》と《最後の望み、リリアナ》を採用したデッキと対峙したときにはなおさらそうだね。
サイドボーディングガイドは、俺がプレイすべきだったと考えるリストでお送りしよう。
青白奇跡
対 青白奇跡
注意点: もし《天使への願い》を考慮するなら、3枚目の《剣を鍬に》を抜いて《漸増爆弾》を入れよう。
グリクシス・コントロール
対 グリクシス・コントロール
土地単
対 土地単
後手の場合は《スレイベンの守護者、サリア》をもう1枚抜いて、《漸増爆弾》を入れる。
スニーク・ショー
対 スニーク・ショー
《剣を鍬に》を1枚だけ残すのは、《実物提示教育》で《ファイレクシアの破棄者》対《グリセルブランド》という構図になった場合に役に立つからだ。また、《渋面の溶岩使い》や《秘儀の職工》を対処するのにも使えるね。
黒赤リアニメイト
対 黒赤リアニメイト
ANT
対 ANT
エルフ
対 エルフ
エルドラージ
対 エルドラージ
デス&タックス
対 デス&タックス
先手の場合は、《真髄の針》の代わりに《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を入れよう。
ティムール・デルバー
対 ティムール・デルバー
後手のときは《宮殿の看守》をサイドアウトして、2枚目の《安らかなる眠り》を入れる。
《死の影》
対 《死の影》
おわりに
この記事を楽しんでくれたのなら嬉しいよ。もし質問があれば英語記事の下にあるコメント欄で聞いてくれ。
それじゃあまた。
マルシオ