Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2018/10/11)
みなさん、どうも!
私の名前はゴンサロ・ピント/Goncalo Pinto、ポルトガル出身のゴールド・レベル・プロです。
新環境のスタンダードは1週目を終え、とても楽しそうな様相を呈してきました。前環境の赤黒ミラーマッチにうんざりしていた人も多いと思います。ですが『アモンケット』がローテーションで落ち、『ラヴニカのギルド』が新たに加わったことで、スタンダードに新たな風が吹き込まれました。
リミテッドだけしていて、スタンダードには手が回らなかったという人も安心してください。Hareruya Prosのアーネ・ハーシェンビスが『今週末、スタンダードで勝ちたいあなたへ』という素晴らしい記事を書いてくれています。これを読めばきっとあなたも「ジャンプ・スタート」できることでしょう。
この記事では、アブザン(白黒緑)とその3色のいずれかを使ったデッキたちに焦点を当てていこうと思います。
アブザン騎士
Hareruyawayfinder用のデッキ作成依頼をいただいたとき、私はセレズニアの新しい2体の騎士に注目しました。それは《秋の騎士》と《議事会の騎兵》です。
私がHareruyawayfinderに投稿したデッキリストは、Magic Online上で最初の数日間、大活躍を収めていました。私は1回目のリーグに、投稿したリストから数枚変えただけのデッキを持ち込みましたが、結果は5-0でした。
回数を重ねていくうちに、気になる点がいくつか出てきました。具体的には、
また、Magic Online上の友人であるSalseoは《ゴブリンの鎖回し》が環境からいなくなると信じていたようですが、実際にはそんなことはありませんでした。その結果、《不屈の護衛》は抜かざるを得なくなりました。
このデッキはもう少しミッドレンジ寄りにした方がいいと考えています。赤アグロがきれいに動いてしまった場合、絶対に勝てないのです。また、アグレッシブなデッキが展開してくる第一陣に対処できるように、《シヴの火》や《溶岩コイル》といった軽量の除去であったり、《煤の儀式》や《轟音のクラリオン》といった序盤に使える全体除去が採用され始めているのです。
《蔦草牝馬》や《協約の魂、イマーラ》、《クロールの銛撃ち》、《ビビアン・リード》といったカードも試してみました。それぞれ良いところがあったのですが、最終的には追加の2マナ域として《茨の副官》を、そして追加のクリーチャーが必要と感じたため《無効皮のフェロックス》と《黎明をもたらす者ライラ》・《豊潤の声、シャライ》をメインデッキに入れました。
環境に存在する除去は2マナ以上のため、《茨の副官》は自身より軽い呪文で除去されることもないですし、ゲーム終盤の脅威としても悪くない活躍をしてくれます。《無効皮のフェロックス》は赤単に対してはほぼ除去されることがない4マナ6/6のクリーチャーとして使えますし、青白コントロールに対しても多少なりとも耐性のあるクリーチャーとして運用できます。また、手札から捨てられたときに誘発する能力も《破滅の龍、ニコル・ボーラス》に対して有効であることを覚えておきましょう。対コントロールのサイドボード後には「あなたはクリーチャーでない呪文を唱えられない」という能力がつらい場面はあるかと思います。4ターン目に《無効皮のフェロックス》、5ターン目に《ビビアン・リード》と動きたい場合などですね。ですが、盤面に6/6というクリーチャーが生き残っているのであれば、状況としては悪くないはずです。
《無効皮のフェロックス》を入れた関係で《開花+華麗》は抜くことにしました。また、《進化する未開地》を試してみることにしました。理由は2つあります。まず、必ずしも1ターン目にアンタップインの土地がほしいというわけではないこと。そして2つ目の理由は、1ターン目に《進化する未開地》を使うことで将来必要になる土地をサーチしてくることができるということです(サーチしてくる土地としては、《沼》や2つ目の白マナを生み出せる土地であることが多いですね)。《進化する未開地》を使うことでマナ基盤が驚くほど改善されました。このとき初めてマナベースに満足できたように思います。
黒は《暗殺者の戦利品》と《悪意の騎士》のためだけにタッチしているので、そこまでする価値があるのか疑問に思う人もいるかもしれませんが、それだけの価値があると断言できます。《悪意の騎士》はこの3色のデッキであれば最高の2マナ域ですし、《暗殺者の戦利品》と《強迫》はサイドボードとして使わないのはもったいなさすぎるぐらいだと思います。
また、2色でまとめたところでマナベースもそこまで良くなるとは思いません。2色土地を抜いて基本土地を入れる程度でしょうね (《草むした墓》を《森》に、《孤立した礼拝堂》を《平地》にする) 。なぜかといいますと、3ターン目の《ベナリア史》や4ターン目の《無効皮のフェロックス》を考えると、結局《進化する未開地》の枠にギルド門を入れることになるでしょうから。
そしてこれが現在のデッキリストになります。
今のところは、アブザン騎士に関してはこれが完成形だと思っています。「アブザンが好きだけど、騎士型には興味がない」という人に朗報です。白・黒・緑という色は幅広いデッキを作ることができ、さまざまなプレイヤーのスタイルや好みに合わせられるようになっていますよ。
緑黒ストンピィ
1 《沼》
4 《草むした墓》
4 <《森林の墓地》
-土地 (24)- 4 《ラノワールのエルフ》
4 《生皮収集家》
4 《クロールの銛撃ち》
4 《茨の副官》
4 《鉄葉のチャンピオン》
4 《打ち壊すブロントドン》
3 《無効皮のフェロックス》
4 《原初の飢え、ガルタ》
-クリーチャー (31)-
《生皮収集家》はこのデッキであればポテンシャルを十分に発揮してくれます。手が付けられないほどにサイズが大きくなっていくのです。従来の問題点であった《ラノワールのエルフ》に依存しすぎていたという問題点を見事に解消してくれています。
《クロールの銛撃ち》もこのデッキにとって大きな収穫です。《原初の飢え、ガルタ》を唱える場合には一種の“マナ加速”になりますし、新環境で飛び回っている天使たちをメインデッキから除去できるようになったのです。
3枚しかクリーチャーでない呪文を入れていないのに、《無効皮のフェロックス》を3枚しか入れていないのは驚きですね。(※)《原初の飢え、ガルタ》も4枚入っているのですから、当然のように4枚入るカードだと思います。
(※)編注:非生物呪文は5枚入っています。
白緑「召集」
1 《森》
4 《寺院の庭》
4 《陽花弁の木立ち》
-土地 (21)- 4 《追われる証人》
3 《短角獣の歩哨》
4 《茨の副官》
3 《協約の魂、イマーラ》
4 《ベナリアの軍司令》
2 《豊潤の声、シャライ》
4 《敬慕されるロクソドン》
-クリーチャー (24)-
私もこのデッキの初期バージョンはしばらく使っていたのですが、改善できない部分があったため使用するのをやめていました。ですが、その部分を改善して結果を残してくれたことを嬉しく思います。
このリストは1マナ域を11枚使っているため、《敬慕されるロクソドン》が非常にうまく使えるようになっています。《苗木の移牧》がデッキから抜けたことで、後手のときに非常にやっかいだった《ゴブリンの鎖回し》への耐性が向上しました。
《ベナリアの軍司令》が《ベナリア史》よりも良いかわかりませんが、《十字軍》効果はこのデッキには必要だと思いました。《削剥》がはびこっている環境でもないので、《不滅の太陽》の方がいいという可能性もありますが、時間がたてばわかることでしょう。
《華麗》はこのデッキだと非常に強力です。土地が必要でないならば、《開花》として序盤に使うようなことはやめましょう。
黒緑系ミッドレンジ
Tulio_Jaudyのデッキリストにはいつも驚かされます。彼のデッキはどれも素晴らしいのですが、彼にしか扱えないものもあったりします。今回のデッキは彼以外の人でも扱えそうなものですし、彼の一番のファンであるウィリー・エデル/Willy Edelも太鼓判のものに仕上がっています。
1 《森》
4 《草むした墓》
4 《寺院の庭》
4 《陽花弁の木立ち》
4 《森林の墓地》
2 《孤立した礼拝堂》
2 《愚蒙の記念像》
-土地 (25)- 4 《探求者の従者》
4 《野茂み歩き》
2 《マーフォークの枝渡り》
4 《翡翠光のレインジャー》
4 《秋の騎士》
2 《呼び覚ます者イザレス》
1 《ゴルガリの拾売人》
2 《貪欲なチュパカブラ》
-クリーチャー (23)-
さまざまな黒緑系のデッキとあたった経験から言いますと、今の環境であれば《野茂み歩き》入りのリストをプレイすべきだと感じています。赤アグロに対して強くなりますし、コントロールデッキに対しても《野茂み歩き》は非常に早いスピードで大きな脅威へとサイズアップしていきます。
Tulio_Jaudyも私と同じ考えだと思いますが、緑黒の2色にまとめる理由はなく、《秋の騎士》のために白をタッチしています。《秋の騎士》は私もお気に入りのカードです。このデッキだと4枚はちょっと多いかもしれませんね。
私が衝撃を受けたカードは《ゴルガリの拾売人》です。《愚蒙の記念像》との強烈なシナジーを考えると、1枚しか使っていないというのも驚きです。「探査」のカードがデッキに多く入っていることから、《ゴルガリの拾売人》で《ゴルガリの拾売人》を回収し、回収した《ゴルガリの拾売人》で《貪欲なチュパカブラ》を回収するという動きを何度かやられました。ゲームに蓋をできる動きです。
《採取+最終》もこのデッキだと非常に強力です。「安定して土地を6枚まで伸び、《最終》がアグロデッキに対して間に合うから」というのもありますが、《採取》のおかげで《ゴルガリの拾売人》や《翡翠光のレインジャー》などを手札に戻すことで、コントロールデッキとの消耗戦を制することができるようになっているのです。
少し気になっているのは《暗殺者の戦利品》を使っていないという点です。ゲームを長引かせようとするデッキで、カウンター呪文が入っていないのなら、こういった万能な除去を搭載すべきです。同様の理由から《秘宝探究者、ヴラスカ》も追加したいところです。
まとめ
スタンダード1週目は非常に面白く、プロツアーまでにスタンダードがどのように進化していくのか楽しみでしかたありません。アブザンがお好きなのであれば、黒緑に何かをタッチしたミッドレンジのものが今のメタにあっていると思います。しばらく活躍するデッキになるでしょうし、メタに合わせて調整がしやすいデッキなので、使い込むほど恩恵は大きくなっていくはずです。
とは言ったものの、まだ1週目だということを忘れてはいけません。まだ誰しもが手さぐりの状態なのです。なにか新しいアイディアが思いついたら、ぜひ試してみましょう。今がまさにチャンスです!
今回の記事はお楽しみいただけたでしょうか。もし何か知りたいことがありましたら、下記のコメント欄に書き込んでみてくださいね。(※)
(※)編注:コメントは原文に、英語でお願いします。
ゴンサロ