スタンダード環境で今使うべきデッキ4選

Pascal Vieren

Translated by Nobukazu Kato

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(掲載日 2018/10/30)

はじめに

いよいよ新環境のスタンダードが始まりました。そして先週末にはスタンダードのグランプリが2つも開催されました。グランプリ・リール2018グランプリ・ニュージャージー2018です。新環境の序盤に開催されたこれらの大会は、今後私たちが倒すべき相手を教えてくれるはずです。そこで、この2つのグランプリでトップ8に入ったデッキたちを見ていきましょう。

環境初期のメタゲーム

実験の狂乱遁走する蒸気族危険因子ゴブリンの鎖回し

一般的に新環境の最初期というのは、攻撃的なデッキが活躍することが多いですね。今回の場合ですと、多くの人が思いついたであろう赤単でした。《実験の狂乱》《遁走する蒸気族》《危険因子》といった新しいカードを使ったものです。万能な《ゴブリンの鎖回し》もいますし、構築のイメージも湧きやすいものでしたが、その実力は確かなものでした。

破滅を囁くもの

そして新環境が始まって数週間が経ったころ、Magic Onlineで新環境2度目のプロツアー予選が開催されました。なんとトップ8にゴルガリミッドレンジが6つも入りました。しかもプロツアー予選を勝ち抜いたエリオット・ブソー/Elliot Boussaudは《破滅を囁くもの》を4枚も使っていました《破滅を囁くもの》は、赤単がさばききれない速いクロックをしかけられるという強みがあったのです。

そしてリールとニュージャージーのグランプリが間近に迫ってきたころ、ゴルガリが一強のように思われました。しかし、いくつか気になる点があったのです。まず、ゴルガリ以外にも意識すべき相手は存在しており、ゴルガリ自体も倒せない相手ではないということ。そして、ゴルガリもゴルガリで、ミラーマッチでどう差をつけるのか答えが出ずにいたのです。

グランプリトップ8のメタゲーム

もちろんトップ8のデッキを見ただけで全体のメタゲームがわかるわけではないのですが、今後の動向を予測するうえで良いサンプルになるはずです。というのも、この16個のデッキリストは最も注目され、プレイヤーたちがデッキを選ぶうえで真っ先に参考にすべきものだからです。

デッキ名 トップ8入賞数
ジェスカイコントロール 5
ゴルガリミッドレンジ 2
イゼットフェニックス 2
セレズニアトークン 2
赤単アグロ 1
青単テンポ 1
ボロスエンジェルズ 1
教導ボロス 1
セレズニアエンジェルズ 1

ご覧いただいた通り、ゴルガリは倒せない相手ではないというのは事実のようです。いずれのグランプリでも最も使用率の高かったデッキでしたが、トップ8の入賞率は悲惨なものでした。

注目のデッキ

ゴルガリミッドレンジ

ゴルガリの拾売人ゴルガリの女王、ヴラスカ貪欲なチュパカブラ

グランプリ・リールでは世界チャンピオンでありHareruya Prosの仲間でもあるハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguezが、ゴルガリミッドレンジを使って再びグランプリトップ8に入りました。

殺戮の暴君採取+最終暗殺者の戦利品

ここで注目していただきたいのは《殺戮の暴君》です。このカードはゴルガリのミラーマッチで勝つためのカードとして採用されています。《最終》と組み合わせると、ミラーマッチでは手が付けられなくなるのです。言うまでもないですが、コントロールデッキ相手にも実に強力なカードです。しかし、単色のアグロデッキに対しては無力なカードであり、リールで決勝に残ったのはその単色のアグロデッキだったのです。

また、ドミンゲスは《暗殺者の戦利品》を1枚しか使っていません。出た当初はゴルガリなら絶対に4枚入るカードだという認識が一般的だったようですが、相手に土地を与えてしまうというデメリットが予想以上に厳しかったのです。スタンダードでは重い呪文が使われるため、このデメリットがより一層厳しいものでした。

強迫貪る死肉あさり

サイドボードに目を移してみると、ドミンゲスは《強迫》《貪る死肉あさり》を入れることで、ジェスカイコントロールやイゼットフェニックスへの対策をしたようです。リールの決勝に青単と赤単が残ったという事実を踏まえると、今後はクリーチャーへの軽量除去が必要になってくるかもしれませんね。

ボロスエンジェルズ

グランプリ・ニュージャージーでは構築マスターのブラッド・ネルソン/Brad Nelsonがボロスエンジェルズを使ってトップ8に入賞しました。リールではほとんどいなかったようですが、ネルソンがスタンダードで使ったということは、このデッキは本物だと思った方がいいでしょう。

トカートリの儀仗兵アダントの先兵輝かしい天使

《トカートリの儀仗兵》が4枚投入されており、ゴルガリが対処できない攻め方をすることが可能になっています。環境に存在するコストパフォーマンスの高いクリーチャーたちを使うことで、速いクロックをしかけ、大きなダメージを与えるデッキです。また、《アダントの先兵》や飛行クリーチャーがいるため、イゼットフェニックスに対して非常に有利になっている点も見逃せません。

以前のボロスエンジェルズから、もう一つ重要な変更点があります。それは土地が25枚になっている点です。マナコストの重いカードをマナカーブ通りに使えるようにしたいというネルソンの意図です。ゲームへの影響力が大きいカードが満載のこのデッキでは、マナカーブ通りに唱えられるということが何よりも重要なのです。また、《輝かしい天使》のおかげでゲーム終盤のマナフラッドにも強くなっています。

もうひとつ忘れてはならないのは、Peach Garden Oath(リード・デューク/Reid Duke、ウィリアム・ジェンセン/William Jensen、オーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwald)全員がこのデッキを使っていたということです。この事実だけでも、ボロスエンジェルズが本物のデッキだということがわかりますよね……。

イゼットフェニックス

先週はこのデッキの話題で持ちきりでした。私の友人であり、Hareruya Prosのアーネ・ハーシェンビス/Arne Huschenbethはこのデッキを使ってリールでトップ8に入りました。

ゴブリンの電術師奇怪なドレイク弾けるドレイク

このデッキはスタンダードにおいて最高クラスの理不尽な動きができます。たとえば、《ゴブリンの電術師》が除去されないと、ゲーム序盤からありえないような動きができるのです。また、《奇怪なドレイク》《弾けるドレイク》は非常に高いパワーになり、相手は即座に除去できなければ負けてしまいます。

最大速度

この2種のドレイクに《最大速度》を使うと、一瞬で勝つことができます。相手にしてみれば突然死のようなものです。ゴルガリミッドレンジが対戦相手に干渉する手段はソーサリータイミングのものがほとんどですし、インスタントタイミングでの干渉手段が豊富なコントロールデッキでさえも、このコンボに屈しないように決して土地をフルタップしないように注意し続けなければならないのです。

選択航路の作成苦しめる声弧光のフェニックス

このデッキをただのアグレッシブなコンボデッキだと思ってはいけません。《選択》によるドロー操作や手札入れ替えのカードが多くあるうえ、《弧光のフェニックス》が何度でも蘇ってくるので、リソースを削りあうロングゲームにも対応できるようになっているのです。

ジェスカイコントロール

最後に、ニュージャージーで優勝したエリ・カシス/Eli Kassisのジェスカイコントロールを見てみましょう。2つのグランプリを通じて5つもトップ8に入っているので、ジェスカイコントロールは今週末の勝ち組といっていいでしょう。

発展+発破アゾールの門口

カシスはメインデッキにクリーチャーを中途半端に入れるようなことはせず、《発展+発破》《アゾールの門口》をフル投入しています。こうすることで、ゲームをいち早く終わらせることができるようになっているうえ、相手の除去を腐らせることができるようになっています。

このデッキリストは非常によく調整されているので、ぜひ使ってみることをおすすめします。《予言》がメインデッキに2枚入っているのも特徴的ですね。私のお気に入りのカードです(ドラフトで、ですが)。とはいえ、マナカーブを埋めながらも、土地を順調に伸ばしたいというカシスの意図なのでしょう。

再燃するフェニックス黎明をもたらす者ライラパルン、ニヴ=ミゼット原初の潮流、ネザール

サイドボードについてですが、カシスはクリーチャー一式を採用しています。こんなことをされたら相手としては混乱するに違いありません。除去をサイドアウトしてしまった相手はたちまち《再燃するフェニックス》に負けてしまうでしょう。

補足

      不和のトロスターニ協約の魂、イマーラ豊潤の声、シャライ

私はといいますと、グランプリ・リールでイゼットフェニックスを使い、12-3という成績で13位に入ることができました。プロポイントも3点、賞金も1000$手に入りました。デッキもすごく良かったですし、決して話題性だけのデッキではないと感じました。

今回はここまでになります。何か質問があれば Twitter(@VierenPascal)で聞いてくださいね。

パスカル・フィーレン

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