決勝: 黒川 直樹(千葉) vs. 斉藤 伸夫(東京)

晴れる屋

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By Atsushi Ito


 ちょうど1年前の今日。

 黒川は【BMOレガシー vol.1】の決勝で【エルフマスター高野 成樹】に敗れ、「レガシー全一」を名乗るチャンスを紙一重で逃した。

 それでも「レガシー全二」であることに変わりはないのだが、高々と優勝トロフィーを掲げる高野の姿と「エルフの勝利」が人々の記憶に鮮烈に残る一方で、準優勝した黒川とRUG Delverについては、それ以降ほとんど顧みられることはなかった。

 だが、RUG Delverというのは元々そういうデッキだ。派手なコンボを決めることも「奇跡」を願うこともせず、効率を追求した無駄のないアクションを積み重ね、相手のわずかな緩みを突いて、常に一手だけの有利を守って勝つ。たとえ記憶に残らなくても、一流アスリートの肉体のように極限まで贅を削ぎ落とした美しさがそこにはある。

 だからそれを信仰する黒川も。準優勝に胡坐をかくようなことはもちろん、気落ちしすぎることもなく、RUG Delverというデッキを信じて、一途に、この1年ただ己を高め続けてきた。

 そして、ここにたどり着いた。



 およそ1年前のこと。

 斉藤は【第1期レガシー神決定戦】の決勝で【現レガシー神・川北 史朗】に敗れ、あと一歩というところで「レガシー神」になり損ねた。

 だからといって斉藤が日本レガシー界でも屈指の実力を持つプレイヤーである事実に変わりはないのだが、これほどの実績と安定感があるプレイヤーであっても、ほんのわずかに運が足りなかったばかりに、これまでビッグタイトルを掴んだことはなかった。

 しかし、それでも【のぶ】は誰よりもレガシーというフォーマットを愛していた。

 【グランプリでも】、そして【この挑戦者決定戦でも】。常にそのときにメタに合わせて新しいテクニックを研究し、レガシー環境の最先端を走り続けた。

 だから、ここにたどり着いた。



 1年ぶりの決勝戦。

 2人にとってここでの優勝はしたがって、宿願だった。

 しかもそこに立ちはだかったのが、黒川にとっては斉藤であり、斉藤にとっては黒川なのだ。

 滾らないはずがない。

黒川 「最高の形になったよ、決勝」

斉藤 「トップ8ほとんど知り合いだから、誰か残ると思ってたよ」

 【『レガシー神』川北は、レガシーで勝つための秘訣の1つとして『環境』を挙げた】

 黒川と斉藤。普段は互いのデッキ構築やプレイングミスを指摘し議論する間柄ながらも、いざ対戦となれば全力を出してぶつかり合える。

 そんな関係だからこそ、彼らはここまで強くなれた。



 いま2人の間には、何よりも純粋なリスペクトがある。

 ここまで来てくれて、ありがとう。

 目の前に座ってくれて、ありがとう。

 きっと最高の決勝戦になる。そんな予感がする。





 「「でも、勝つのは俺だ。」」

 そんな声を聞いた気がした。




 あの「神」のところへ、行くために。

 人としての最強を決める最後の戦いが、始まった。



Game 1


 斉藤のオープニングハンド。


島島島山

溢れかえる岸辺ギタクシア派の調査全知


 軽く悩んだ斉藤だが、《不毛の大地》《もみ消し》の心配がない点と、マリガンのリスクを加味したのだろう、この7枚でキープを宣言する。対して黒川が6枚でゲームがスタート。

 斉藤のキープを知らない以上当然だが、3枚目の土地を置いても動きがない斉藤に対し怪訝な顔を見せる黒川。ひとまず後手3ターン目に《渦まく知識》で手札を整理しつつ《敏捷なマングース》を送り出す。

 だが、返すターンに斉藤が《ギタクシア派の調査》すると、


敏捷なマングースタルモゴイフ呪文嵌め

乱撃斬不毛の大地


 カウンターが薄くいかにも頼りない手札が明らかになってしまう。

 それでも黒川はさらなる《渦まく知識》を引き込み、本体《稲妻》とフェッチ起動で一気に「スレッショルド」を達成。《敏捷なマングース》の2体目を送り出し、斉藤に明確な期限を突きつける。

 他方、こちらも《渦まく知識》をトップした斉藤。さらに《ギタクシア派の調査》で黒川の《タルモゴイフ》《不毛の大地》《呪文貫き》というラインナップを確認すると、次のターンのビッグアクションに備える。

 そして黒川の《敏捷なマングース》×2が6点を与えると、斉藤の残りライフは7点。さらに3/4の《タルモゴイフ》が戦線に追加され、いよいよ斉藤のラストターン。

 セット《裏切り者の都》プレイ《騙し討ち》

 一応《呪文貫き》が当たるが、2マナ払ってもまだ《山》が立っている。そのままターンを終える斉藤。

 鬼が出るか、蛇が出るか。黒川は愚直にフルアタックするしかない。


グリセルブランド


 だがブロック前に飛び出てきたのは、《グリセルブランド》

 《タルモゴイフ》をブロックすると、「絆魂」で本体へのダメージ分は相殺され、《タルモゴイフ》を失った上に斉藤は残り7点を維持。《敏捷なマングース》2体は生き残っているものの、依然《騙し討ち》は健在。

 それでも、戦闘後に《Volcanic Island》《不毛の大地》で割ってマナを縛り、わずかな可能性に賭ける黒川だったが。

 返しで《引き裂かれし永劫、エムラクール》が走ると、「滅殺6」に対してパーマネントが綺麗に6個、消え去った。


黒川 0-1 斉藤


黒川 「最後セットランドしてればよかった……」

 黒川の最後の手札は土地が2枚。セットさえしていれば《敏捷なマングース》が1体、さらに《不毛の大地》も起動しなければ2体が「滅殺6」から生き延びられていた。ライフも17点あり、《引き裂かれし永劫、エムラクール》の一撃に耐えられた以上、ライフが7しかない斉藤に対して、まだ勝機は十分あった。

 長丁場の疲れが出たか。黒川らしからぬ、それはプレイミスだった。


Game 2


 黒川が斉藤のドロー操作を徹底して妨害しにいく。

 《定業》《呪文貫き》、さらに《渦まく知識》《呪文貫き》し、斉藤が2マナを払おうとフェッチを切ったところで《もみ消し》。コンボパーツを揃えにいくことを許さない。

 そしてそれが功を奏したか、斉藤は土地ばかりの通常ドローを整理できず、ひたすら土地を置いてターンを終えるのみとなってしまう。

 その間にもたった1体の<昆虫の逸脱者>が斉藤のライフを3点ずつ削っていき、やがて残り7点まで追い詰められる。

 もはや動くしかない。《思案》から《思案》、さらにフェッチを切って《時を越えた探索》《紅蓮破》を探しにいく。


時を越えた探索赤霊破


 だが、これにも黒川の《赤霊破》が突き刺さると。

 《稲妻》が、綺麗に斉藤を介錯した。


黒川 1-1 斉藤


Game 3


斉藤 「わかりやすいハンド来ないかな」

 シャッフルしながらそう言っていた斉藤。《ギタクシア派の調査》でカウンターのない黒川の手札を確認すると《定業》でターンを終え、《秘密を掘り下げる者》をプレイされた返しの先手2ターン目。

 《水蓮の花びら》《古えの墳墓》から《騙し討ち》!!


水蓮の花びら古えの墳墓騙し討ち


 それはこれ以上ないほどに「わかりやすいハンド」だった。

斉藤 「引いてる?」

 黒川のドローは。



黒川 直樹



 これしかない《Force of Will》!!


騙し討ちForce of Will


 これによりゲームの焦点は、斉藤の次弾装填と、黒川がライフを詰めきる速度のどちらが早いかに絞られた。

 返すターン黒川の《秘密を掘り下げる者》は変身しないものの、《不毛の大地》《古えの墳墓》を割り、斉藤のマナベースを《島》1枚まで後退させる。

 斉藤も《渦まく知識》からの《ギタクシア派の調査》をファイレクシアマナでプレイして安全を確認しつつ不要牌をフェッチランドでリシャッフル、さらに《思案》と、持てる速度の限りを尽くしてリカバリーしようとするが、ここで黒川の《秘密を掘り下げる者》《稲妻》をめくって変身!

 アタック後、さらに5/6の《タルモゴイフ》を送り出し、残りライフ8点の斉藤をあと一歩というところまで追い詰める。



斉藤 伸夫



 しかし斉藤は。

 既に次弾を装填し終えていた。

 セット《裏切り者の都》《実物提示教育》


実物提示教育引き裂かれし永劫、エムラクール


 今度は土地を置いてもきっちり「滅殺6」されてしまうパーマネント数。逃れる方法はない。

 それでも、黒川のラストチャンス。

 《稲妻》の2枚目を引き込めれば、勝てる。

 だが、黒川のドローが何であれ。

 斉藤の最後の手札2枚は《ギタクシア派の調査》と、《Force of Will》なのであった。


黒川 1-2 斉藤


黒川 「3本目、マリガンだったかな?」

斉藤 「いや、絶対しないでしょ」

 ゲームが終わると、2人はすぐに感想戦に移行する。そんな黒川と斉藤だからこそ、この高みまで登ってこれたのだろう。

 しかもそれだけではない。さらなる高みへと、行こうとしているのだ。

黒川 「『神』を、倒してこいよ」

斉藤 「ああ、倒してくるわ」

 1年ぶりの神決定戦で、もう1人の強敵(とも)、川北 史朗(東京)が待っている。

 きっと斉藤は今よりももっとレガシーを研究して、レガシーのまた新たな一面を見せてくれることだろう。



 第4期レガシー神挑戦者決定戦、優勝は斉藤 伸夫(東京)!おめでとう!!