はじめに
みなさん、こんにちは!
今回から、奥深きレガシーの世界を紐解く連載企画をスタートします!
記念すべき第1回のテーマに選んだのは、《秘密を掘り下げる者》!このカードを中心とした「デルバー」は、フォーマットの歴史を語るうえで絶対に外すことができない、まさにレガシーの顔ともいえるアーキタイプです。
なぜデルバーデッキは長年にわたりプレイヤーを魅了し続けるのでしょうか?
今回は、そのルーツとなる「前史」から最新の環境まで、デルバーデッキの歩んだ足跡と進化の系譜をたどっていきます。ぜひ最後までお付き合いください!
《秘密を掘り下げる者》とは
《秘密を掘り下げる者》は2011年9月に発売されたエキスパンション『イニストラード』に収録されたコモン・カードです。
日本語の名称は《秘密を掘り下げる者》ですが、英語名の《Delver of Secrets》から「デルバー」と呼ばれることが多く、そちらのほうが通りがよいですね。
さらに、「デルバー」という呼称は、単にカード名を超えてデッキ名、はたまたアーキタイプ名としてコミュニティに膾炙しています。
また、複数のエキスパンションをまたがるメガサイクルであり、『イニストラードを覆う影』で《逸脱した研究者》に、『異界月』で《完成態の講師》へと変貌を遂げる姿が描かれています。
有名なカードではありますが、あらためてどんなカードなのか見てみましょう!
クリーチャー ― 人間・ウィザード
あなたのアップキープの開始時に、あなたのライブラリーの一番上にあるカード1枚を見る。そのカードを公開してもよい。これによりインスタントやソーサリーであるカードが公開されたなら、このクリーチャーを変身させる。
1/1
というクリーチャーで、変身すると、
クリーチャー ― 人間・昆虫
飛行
3/2
になります。
『イニストラード』で登場して以来、レガシーでは主に攪乱的アグロの一つであるクロック・パーミッションデッキに採用され、現在も第一線で活躍しています。
デルバーデッキは、常にその時々で最も効率の良いカードを吸収し続け生き延びてきたアーキタイプであり、その適応力そのものがデッキの本質です。
次章では、《秘密を掘り下げる者》登場以前のレガシーにおけるクロック・パーミッションデッキがどのようなものであったか、そしてその適応の軌跡をたどりたいと思います。
《秘密を掘り下げる者》前史
クロック・パーミッションとはアーキタイプの一つで、マナコストの軽いクリーチャーを序盤に展開し、打ち消し呪文などでバックアップをしながらビートダウンの完遂を目指すデッキです。また、テンポアドバンテージを主体とすることからテンポデッキとも呼ばれます。
ティムールスレッショルド
レガシー黎明期におけるクロック・パーミッションの代表格といえばスレッショルドでしょう。
掲載のリストは赤をタッチしたものですが、緑と青をベースに白をタッチしたものや黒をタッチしたものなどが存在します。
そこから、《もみ消し》や《不毛の大地》で相手のマナ基盤を攻める構成が発展し、2007年に『未来予知』で《タルモゴイフ》が登場したことによってクリーチャーの選択にも変化が起こりました。
《タルモゴイフ》が定番のクロックとして定着すると、《熊人間》や《巣立つドラゴン》といった従来のクリーチャーは次第に姿を消していきました。
カナディアン・スレッショルド
チームアメリカ
そして緑青に赤を加えたものはカナディアン・スレッショルド、黒を加えたものはチームアメリカと呼ばれるようになっていきます。どちらも非常にファンの多いデッキで、現在も日本では「カナスレ」、「チメリカ」と呼ばれ愛好家が存在します。
以上が《秘密を掘り下げる者》登場以前のレガシーにおけるクロック・パーミッションデッキの状況です。
《秘密を掘り下げる者》の変遷
《秘密を掘り下げる者》は登場以降、先述のカナディアン・スレッショルドやチームアメリカといったデッキに組み込まれ活躍していくことになります。
イゼットデルバー
イゼットデルバーも《秘密を掘り下げる者》登場初期から存在するアーキタイプではありますが、当初はクロック・パーミッションというよりもバーンといったほうがしっくりくる構成でした。
しかし、次第にクロック・パーミッション的な要素が大きくなっていきます。これはひとえに、《若き紅蓮術士》や《真の名の宿敵》など、採用できるクリーチャーの質が向上し、火力呪文に頼らずともライフを攻めきれるようになったためと考えられます。
また、2009年に《納墓》が禁止解除(2025年に再び禁止)され強化されたリアニメイトデッキや、《引き裂かれし永劫、エムラクール》の登場により大幅に強化された《実物提示教育》系などのコンボデッキに対抗する必要があったことも要因といえるでしょう。
パトリオット
グリクシスデルバー
そのほかにも、《石鍛冶の神秘家》《聖トラフトの霊》などを採用したパトリオットと呼ばれる中長期戦も見据えたジェスカイカラーのデッキや、2012年の『ラヴニカへの回帰』で登場した《死儀礼のシャーマン》を擁するグリクシスデルバーなども活躍しました。
禁止カードと《秘密を掘り下げる者》
デルバーデッキの歴史は禁止カードの歴史などと呼ばれることもしばしばあります。
実際に、《宝船の巡航》《時を越えた探索》をはじめ《死儀礼のシャーマン》《ギタクシア派の調査》など、デルバーデッキに採用された多くのカードが禁止になっています。
少し前(7年!)には《レンと六番》、その後に《戦慄衆の秘儀術師》が禁止。比較的最近では《敏捷なこそ泥、ラガバン》と《表現の反復》が記憶に新しいですね。
デルバーデッキは長期戦で手札が不足しやすいという弱点があるため、少ないマナでアドバンテージを得られるカードとの相性が非常に良いです。
現在の《秘密を掘り下げる者》
登場から15年近く経った現在でも、《秘密を掘り下げる者》は大いに活躍しています。
近ごろ活躍しているデルバーデッキの多くは青と赤のイゼットカラーで、3色のデルバーを見かけることはずいぶん少なくなりました。
青と赤だけでも十分に強力なクリーチャーや除去、アドバンテージ源を確保できるようになり、マナ基盤を不安定にしてまで3色目を足すメリットが小さくなったことが要因といえます。
デルバーデッキでは長らく、《秘密を掘り下げる者》と並べて採用できる1マナのクリーチャーが不足していました。《死儀礼のシャーマン》や《敏捷なこそ泥、ラガバン》など強すぎたため禁止になってしまったクリーチャーもいましたが……。
しかし、『モダンホライゾン2』で《ドラゴンの怒りの媒介者》を獲得したことで、この問題はおおむね解消されました。さらに同セットからは、《濁浪の執政》というフィニッシャーまで得ることができました。
そして、『タルキール:龍嵐録』で登場した《コーリ鋼の短刀》は単体除去への耐性を上げ、対フェアデッキで無類の強さを発揮します。ただし、コンボデッキに対してはソーサリータイミングでの動きが多くなったことで隙が大きくなったり、デッキ内のパーマネント数が増えるため《秘密を掘り下げる者》の変身確率が下がるなどのマイナス面もあります。
イゼットテンポ
そのため《コーリ鋼の短刀》をサイドボードに落としたり、《秘密を掘り下げる者》の採用をひかえたイゼットテンポも存在します。
ハンド・アドバンテージ面では、『ストリクスヘイヴンの秘密』に収録された《没頭》がその役割を担っています。
ただ、《思考囲い》を採用できるディミーア系デッキと違い、イゼットカラーはソーサリーが《思案》《没頭》、あるいはまれに採用される《定業》《稲妻の連鎖》程度に限られているため、2枚を手札に加えられる条件をクリアする難易度が若干高いです。
青単デルバー
また、比較的安価に組むことができるデルバーデッキとしては青単デルバーがあります。
青単色ということもあって盤面を触るのは苦手ですが、イゼットなどの多色デルバーと比較して、《呪文貫き》や《呪文嵌め》《狼狽の嵐》など打ち消し呪文が豊富に採用されているのが特徴です。
現在のデルバーデッキの特徴
デルバーデッキは、《秘密を掘り下げる者》の変身条件を自然にクリアさせるためデッキの大部分がインスタントとソーサリーで構成されています。
攻守において非常にバランスの良いデッキで、コンボデッキには軽量クロックと打ち消し呪文によって早いターンからプレッシャーをかけつつ妨害することができるため、比較的戦いやすい構造になっています。
近年はカードパワーの上昇によりクリーチャーの質が向上したとはいえ、基本的には線の細いデッキのため、《剣を鍬に》などでクロックを効率よく除去されたり、序盤のテンポ差を取り返されたりすると苦しい展開になりやすいです。
とくに長期戦に持ち込まれると、相手のカードパワーで押し切られてしまうことも少なくありません。
さらに、《渦まく知識》や《思案》などドロー呪文は豊富にあるものの、土地枚数は18枚程度と非常に切り詰められており、マナスクリューで負けてしまうこともなくはないです。
それでも、《渦まく知識》や《思案》といったドロー呪文を駆使して、対戦相手の脅威や妨害を《目くらまし》《意志の力》といったレガシーを代表するピッチスペルで捌きつつ、《秘密を掘り下げる者》で完走できたときの充実感はほかのデッキでは得難いものがあります。
おわりに
以上、デルバーデッキの紹介でした!
「デルバー」はレガシーというフォーマットを代表するアーキタイプの一つです。
《秘密を掘り下げる者》の登場から15年近く経ち、その間に多くのカードが入れ替わってきました。それでも、軽量クリーチャーで攻めながら打ち消し呪文でバックアップするという基本的な戦い方は変わっていません。
わずかな判断の違いが勝敗を分ける、デルバーデッキならではのゲームを楽しんでください!
また、余談ではありますが、元ネタは1958年の映画『ハエ男の恐怖』をリメイクしたデヴィッド・クローネンバーグ監督の『ザ・フライ』(1986)、そしてその原初にはフランツ・カフカの『変身』があると、マローことマーク・ローズウォーター氏が公式の記事で明かしており、それを意識したアートのカードが複数あります。
みなさんもぜひお気に入りの《秘密を掘り下げる者》を使ってレガシーを遊んでみてください!
それではまた次回~。
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