『ラヴニカの献身』により登場する新たなコントロールデッキ

Gregory Orange

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2019/01/16)

2018年を振り返って

年も明けましたので、昨年がマジックプレイヤーとしてどんな年だったのか、簡単に振り返ってみようと思います。2018年は私にとって総じて素晴らしい年でしたが、年の初めは少々不安定なスタートになりました。2月に行われたプロツアー『イクサランの相克』で初日落ちしてしまったのです。プロツアー以前もあまり勝てずにいましたが、2017-2018シーズンにはまだプロツアーが2つ残されていました。それらのプロツアーで少なくとも1回は好成績を収め、ゴールドレベルを維持し、プロツアーに参加し続けられる形になれば良いなと思っていました。

そしてプロツアー『ドミナリア』では13回戦終了時には2位につけるという好成績を収めたのですが、勝てばトップ8というマッチを2度も負けてしまい、21位に終わってしまいました。この結果には落ち込みましたね。

Gregory Orange

写真左から:ベン・ハル、私、アレン・ウー
※画像はMAGIC: THE GATHERINGより引用しました。

しかし、私の故郷で開催されたシーズン最後のプロツアー、マジック25周年記念プロツアーにて優勝。これで私はプラチナレベルとなり、人生初の世界選手権に参加できることになったのです。そして2018年の締めはプロツアー『ラヴニカのギルド』ジェスカイコントロールを使い、なんとか11-5という成績で終えました。

ドミナリアの英雄、テフェリー

2018年は私にとって大成功の年になりましたが、その成功の要因には《ドミナリアの英雄、テフェリー》の存在があるのではないかと思ってる方もいるでしょう。《ドミナリアの英雄、テフェリー》を使うデッキとしては、最近はジェスカイコントロールが一番のお気に入りです。ジェスカイコントロールが『ラヴニカの献身』発売後も手堅いデッキであり続ける実力を持っているのは確かですね。

『ラヴニカの献身』でコントロールデッキに生まれる変化

神聖なる泉吸収

『ラヴニカの献身』が発売されれば、《神聖なる泉》が加わってマナベースを改善できますし、《悪意ある妨害》に代わって《吸収》を使えるようになります。しかし、従来のジェスカイコントロールを1から考え直させられるようなカードは『ラヴニカの献身』にはありません。とはいえ、オルゾフやシミックのカードが登場したので、《ドミナリアの英雄、テフェリー》の活躍の場は、エスパーコントロールやバントコントロールにもあるかもしれません。

バントコントロール

《成長のらせん》

成長のらせん

《成長のらせん》は、私が『ラヴニカの献身』で注目しているカードの1枚です。《ドミナリアの英雄、テフェリー》《浄化の輝き》1ターン早く唱えられるようになります。また、基本的にインスタントタイミングで動くデッキにとっては、《成長のらせん》がインスタントであることが嬉しいところです。基本的には《探検》と同じですが、《探検》自体がとても優秀なカードなので、《成長のらせん》もその例にならうことでしょう。

《荒野の再生》

荒野の再生

《荒野の再生》 は大きな可能性を秘めているように感じます。インスタントが多いデッキであれば、実質的に使用できるマナが2倍になります。《水没遺跡、アズカンタ》との相性も素晴らしいですね。また、《荒野の再生》 を唱えたターンに土地がすべてアンタップされるので、マナコストは実質的に0マナです。歴史的に見ても0マナの呪文というのは非常に強力なことが多いですよね。

しかし、《荒野の再生》 がコントロールデッキで本領を発揮するかは怪しいところです。コントロールデッキはもともと受け身なデッキであるため、マナが倍になったところで有効活用できない可能性があります。そう考えると《荒野の再生》はターボフォグの方が合っているかもしれませんね。

《拘留代理人》

拘留代理人

《拘留代理人》はカードパワーが高いのですが、今回のデッキリストではクリーチャーを採用しないことで相手のクリーチャー除去を腐らせようとしているため、唯一のクリーチャーとしてメインデッキに採用するのは難しいでしょう。とはいえ、サイドボーディング後には相手がクリーチャー除去を減らしている可能性があるので、2ゲーム目以降に活躍が見込めるのは間違いありません。

バントコントロール総評

全体的な評価ですが、バントコントロールが相当に強そうだ、とは言えません。もう少し強力なカードがあれば、デッキとして完成していたかもしれませんね。もし『ラヴニカの献身』に《排斥》《拘留の宝球》のようなカードが収録されていたら違っただろうなと思います。バントというカラーは厄介なパーマネントたちを対処できる万能な除去が欲しいところだったのです。また、バントコントロールにはジェスカイコントロールにおける《パルン、ニヴ=ミゼット》のような強力なフィニッシャーがいないことも評価を下げています。

エスパーコントロール

《ケイヤの怒り》

ケイヤの怒り

マナベース的に唱えられるのであれば、《ケイヤの怒り》はかなり強そうです。現在のスタンダードであれば、3色のマナベースは非常に強固だと思われるので、間違いなく唱えられるマナベースでしょう。ただ、そのマナベースを構築するためには、小さな犠牲を伴うかもしれません。というのも、《ケイヤの怒り》を採用するのであれば、《島》は最小限に抑えた構築にしたいはずです。そうなると、若干ではありますが、デッキに採用される青マナソースが制限されてしまうのです。今回のデッキリストでは、青マナソースが16枚になっていますが、理想よりも1~2枚ほど足りないのではないかなという印象です。

《屈辱》

屈辱

現在のスタンダードでは、何種類か強力なエンチャントが活躍していますので、《屈辱》は嬉しい再録です。3マナは少々重いので、メインデッキには2~3枚が限度だと思われます。

《万全+番人》

万全+番人

《万全+番人》2マナの除去としても、ゲームの勝ち筋としても運用できるカードです。《万全》は一時的な解決にしかならないため、これよりも多少優秀な除去は他にもあると思います。すでにゲームを掌握していてあとは勝つだけという展開であれば、《番人》はフィニッシャーになり得るため、別途でフィニッシャーを採用しなくて良いのはありがたいですね。

《ギルドパクトの秘本》

ギルドパクトの秘本

《ギルドパクトの秘本》は5マナと少々重いですが、大量にドローできる可能性があります。今回のデッキリストで採用している大半の呪文は多色になっているからです。上記のデッキリストでは多色の呪文は21枚ありますが、やろうと思えばもう少し枚数を増やせるかもしれません。みなさんがお望みであれば、《薬術師の眼識》のところに《スフィンクスの眼識》を入れることもできます。ただ、私はそこまでする価値はないのかなと考えています。

《ギルドパクトの秘本》が裏目に出る可能性があるひとつの点としては、《ギルドパクトの秘本》が戦場にあると、《ドミナリアの英雄、テフェリー》で自分自身を-3能力でライブラリーに戻し、ライブラリーアウトを防ぐというループが起こせなくなることです。ですから《ギルドパクトの秘本》が戦場にある場合には、それ以外の方法で相手を倒す必要があります。

《思考消去》

思考消去

《思考消去》は非常に使い勝手の良い万能な解答です。また、相手が《ドミナリアの英雄、テフェリー》を対処するためにとっておいたカードも、《ドミナリアの英雄、テフェリー》を唱える前に手札から捨てさせることもできます。

《思考囲い》のような手札破壊呪文は、トップデッキ勝負になったときに何の使い道もないので、コントロールデッキでは少々心許ないカードではあります。ただ、その時点では使い道のない《思考消去》も、《ドミナリアの英雄、テフェリー》を唱える直前まで手札に抱えておきましょう。そうすれば、《ドミナリアの英雄、テフェリー》を安全に着地させられます。その他の《思考消去》の長所としては、「諜報」が1回できること、そして《ギルドパクトの秘本》が戦場にあればサイクリング付きのカードになることがあげられます。

《聖堂の鐘憑き》

聖堂の鐘憑き

《聖堂の鐘憑き》は赤単に対して大活躍するのではないかと思われます。おそらくですが、コントロールデッキに対してもそこまで悪いカードではないでしょう。

《拘留代理人》

拘留代理人正気泥棒

《拘留代理人》は、バントコントロールのときほどサイドボードとして優秀でないように感じます。なぜかと言いますと、《ケイヤの怒り》をサイドアウトしたい場面がほとんどないだろうと考えられるからです。仮に《ケイヤの怒り》 をサイドアウトするとしても、《正気泥棒》の方が適役でしょう。

エスパーコントロール総評

総じて、エスパーコントロールは相当に強そうなデッキだと思われます。あらゆる脅威に対応できる解答が揃っていますし、それらは非常に優秀なものばかりです。『ラヴニカの献身』発売後にはたくさんの選択肢が存在し、それらすべてをデッキに入れることができないほどです。本当にさまざまな軽量除去や万能除去がありますからね。今後は、ジェスカイコントロールに代わってエスパーコントロールが私のお気に入りのデッキになる可能性も十分にあるでしょう。

グレゴリー・オレンジ@orange_greg

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Gregory Orange アメリカ出身のプロプレイヤー。HotSauceGames.comの一員であり、ゴールド・レベル・プロとしてプロシーンの第一線で長年戦っているアメリカの強豪。グランプリ・サントニオ2017優勝のほか、プロツアーでも安定した成績を残し続けている。2018年8月に開催されたマジック25周年記念プロツアーでアレン・ウー、ベン・ハルと共に優勝。さらなる研鑽を積むべく、チームメイトたちと共にHareruya Prosに加入した。 Gregory Orangeの記事はこちら