愛しのコントロール ~テフェリーを添えて~

Gregory Orange

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2018/11/29)

はじめに

みなさん、こんにちは。グレゴリー・オレンジ/Gregory Orangeです。今回が初めての記事なので、簡単に自己紹介しておきましょう。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、私は大のコントロール好きです。環境的にコントロールが強いときはもちろんコントロールを進んで使いますし、ときにはコントロールが環境的に強くなくても使ってしまうぐらいコントロールが好きなのです。

プロツアーへの準備

今のスタンダードの環境ではコントロールが強いのでラッキーですね。《ドミナリアの英雄、テフェリー》のおかげで、かつてないほどにコントロールがしやすくなったのです。《ドミナリアの英雄、テフェリー》は、青白コントロールが抱えがちな問題を大体解決してくれる、ただただ強いカードなんですよね。能動的な勝ち手段としても使えますし、やっかいなパーマネントを除去する手段としても使えます。

これだけ強いカードを使わない手はないので、プロツアー『ラヴニカのギルド』《ドミナリアの英雄、テフェリー》を4枚使うことはほぼ確定させていました。ここまで決めてしまえば、デッキ選択は大体決まったようなものです。脳内でデッキを構築してから、Magic Onlineのリーグを数回やった結果、以下のようなデッキにまとまりました。

グランプリ・アトランタ2018とプロツアーの間、Airbnbを利用して宿泊していました。チームメイトのベン・ハル/Ben Hullと、カナダ人のマニ/Mani・ジョン/Jonも一緒でした。私のプロツアーに向けた準備は終始リラックスしたもので、Family Feudを見たり、マニがMagic Onlineでターボ・フォグを回しているのを見たりしていることがほとんどだったのです。何をしているんだと思う人もいらっしゃるかもしれませんが、私にはすでに満足のいくジェスカイコントロールのデッキリストがありました。そのリストでMagic Onlineのリーグに参加し、翌日にはネット上に私のデッキリストが公開されてしまいました。

私はもともと、デッキを隠すことに神経を張り詰めらせるタイプの人間ではないので、ネットで公開されてもそんなに気にしませんでした。もっというと「私は《ドミナリアの英雄、テフェリー》を4枚使ったデッキでプロツアーに出るよ」とツイートしてましたからね。もっとも、ツイートなんてしなくても、私を知っている人であればそういうデッキを使うだろうなと予想できていたかもしれませんけどね。

グレゴリー・オレンジ「プロツアーのデッキ登録が完了しました。《ドミナリアの英雄、テフェリー》を4枚使ったデッキです。 覚えておくといいかもしれないですね。」

プロツアーは、スタンダードで7勝3敗という結果を収めることができ、33位に入ることができました。

サイドボードガイド

ボロスアグロ/白単アグロ

不屈の護衛ベナリア史軍団の上陸

プロツアーではボロスアグロ/白単アグロと2回あたり、1勝1敗という結果でした。まぁこんなもんだろうなという感じですね。プロツアーでボロスアグロを使うプレイヤーは一定数いるだろうなと予想していました。ここ最近はプロツアーでアグロデッキを選択するプレイヤーが多いですし、Magic Onlineでも多くの結果を残していましたからね。私の友人たちもボロスアグロのことを話題に出していましたし、実際に使っている人も多かったです。

轟音のクラリオンアダントの先兵封じ込め

ジェスカイコントロールからすると、相性は結構いいと言えます。ボロスアグロに《轟音のクラリオン》が刺さるからですね。ただ《アダントの先兵》には苦戦を強いられるので、単体除去の枠には《アダントの先兵》を対処できる《封じ込め》を採用しました。

対 ボロスアグロ/白単アグロ

Out

薬術師の眼識 薬術師の眼識 悪意ある妨害 アズカンタの探索
発展+発破 竜英傑、ニヴ=ミゼット ドミナリアの英雄、テフェリー

In

神聖の発動 神聖の発動 封じ込め 軽蔑的な一撃
黎明をもたらす者ライラ 黎明をもたらす者ライラ 浄化の輝き

《神聖の発動》

《弾けるドレイク》《黎明をもたらす者ライラ》がいたとしても、こちらのライフが少なければ相手は総攻撃をしかけてくることがあります。そのため、そこで《神聖の発動》で4点を回復するとライフ計算を狂わせることができます。また、《神聖の発動》《実験の狂乱》への回答にもなりますし、ライフを4点回復できるのも大きいですね。

《軽蔑的な一撃》

この対戦では《敬慕されるロクソドン》《実験の狂乱》《議事会の裁き》といった絶対にカウンターしたいカードがあります。そのほとんどをカウンターできる軽量の打ち消し呪文として《軽蔑的な一撃》を入れます。サイドインしたいカードの優先順位としてはもっとも低いので、何か他にサイドインしたいカードがあればこの枠に入れるようにしましょう。

《浄化の輝き》

赤単アグロが相手の場合でも、基本的にボロスアグロや白単アグロに対するサイドボーディングと同じで良いのですが、《浄化の輝き》だけは入れなくて大丈夫です。その場合、《浄化の輝き》の枠はメインデッキで残したいカードを入れたままにしておきましょう。

ゴルガリミッドレンジ

プロツアーでは4回当たり、3勝1敗で勝ち越したのですが、どれも接戦であり、下振れしていた可能性は十分にありました。今考えてみれば、ゴルガリミッドレンジを過小評価していたかなと思っています。事前の予想として、ゴルガリミッドレンジはかなり人気のデッキのひとつだろうと考えていました。もっともセーフティなデッキ選択に思えたからです。

マーフォークの枝渡りビビアン・リード殺戮の暴君

ゴルガリミッドレンジとの基本的な戦い方は、「探査」クリーチャーを《轟音のクラリオン》で一掃し、プレインズウォーカーを打ち消し、《殺戮の暴君》を採用しているタイプに対しては可能な限り《殺戮の暴君》への回答を温存しておくことです。ゴルガリミッドレンジは《ドミナリアの英雄、テフェリー》を除去する手段をあまり持っていないことが多いので、一番簡単な勝ち筋は《ドミナリアの英雄、テフェリー》を盤面に維持することです。また、できる範囲で構わないので、《ビビアン・リード》にこちらのクリーチャーを除去されないようなプレイングを心がけましょう。

対ゴルガリミッドレンジ

Out

パルン、ニヴ=ミゼット 封じ込め 封じ込め 一瞬

In

絶滅の星 浄化の輝き 軽蔑的な一撃 軽蔑的な一撃

《封じ込め》

基本的にゴルガリミッドレンジに対して有効なカードではないため2枚は抜くのですが、《野茂み歩き》に対しての回答になるので1枚は残します。ただ、特に先手のような場合であれば、最後の1枚も《否認》《発展+発破》と入れ替えてしまっても良いでしょう。

《発展+発破》

正直なところ、このカードには少しガッカリしました。というのも、このカードの真価が発揮される頃にはゲームが終わってしまうことが多いからです。ゴルガリミッドレンジに負ける主なパターンとしては、プレインズウォーカーか《殺戮の暴君》であり、《発展+発破》はいずれのカードに対して特に有効なカードともいえなません。とはいっても、ゲーム終盤にリソースが尽きてしまうような状況を避けられるので、その意味では価値のあるカードと言えます。

《ドミナリアの英雄、テフェリー》同型

事前の予想では《ドミナリアの英雄、テフェリー》を使うデッキは多いだろうと思っていたのですが、今考えてみれば過大評価だったと思います。実際にプロツアーで当たったのは1回で、エスパーコントロールとの対戦でした。その対戦では、サイドボード後にかなり引きが良かったので勝つことができました。

『ラヴニカのギルド』が出る前の方がコントロールミラーの対戦は面白かったですね。なぜかというと、今の環境ではライブラリーアウトで勝敗がつくまでゲームが長引くことが滅多になくなってしまったからです。別の要因としては、打ち消しできない呪文が環境に増えてしまったこともあげられます。どっちが打ち消されない呪文を引けるか、といったゲームになることが増えてきてしまったんですね。エイドリアン・サリバン/Adrian Sullivanは《パルン、ニヴ=ミゼット》を4枚入れた構築でグランプリ・ミルウォーキー2018を優勝しましたが、私のデッキはその結果が出る前に構築したものなので、また構築を大きく変えないといけなくなってきたかもしれないですね。


《ドミナリアの英雄、テフェリー》同型

Out

残骸の漂着 封じ込め 封じ込め 封じ込め
轟音のクラリオン 轟音のクラリオン 轟音のクラリオン 轟音のクラリオン

In

否認 否認 軽蔑的な一撃 軽蔑的な一撃
発展+発破 原初の潮流、ネザール 軍勢の戦親分 軍勢の戦親分

《神聖の発動》

もし相手のデッキに《宝物の地図》《アゾールの門口》といったカードが入っていたら、《神聖の発動》を2枚入れましょう。その場合に抜くカードは、《本質の散乱》《弾けるドレイク》です。

《軍勢の戦親分》

《ドミナリアの英雄、テフェリー》に対して非常に有効なカードです。また、マナコストが軽いため、相手の打ち消し呪文戦略に対しても強いという長所があります。ただ、役割が狭く、相手の《パルン、ニヴ=ミゼット》のようなクリーチャーにはなす術もなくなります。自信をもっておすすめできるカードではありませんが、選択肢として覚えておいて損はないカードですね。

《原初の潮流、ネザール》

戦場に出てしまえば手をつけられなくなるクリーチャーですが、役割が狭い上に、マナコストも重いですね。しかし、相手の圧倒的有利でない限り、この恐竜を出すことができれば勝利は目前です。《ドミナリアの英雄、テフェリー》ですら対処できません。

青赤ドレイク

弧光のフェニックス弾けるドレイクパルン、ニヴ=ミゼット

正直にいいますと、青赤ドレイクがここまで結果を残すとは思っていませんでした。《弧光のフェニックス》という3/2飛行のクリーチャーを出すために、あまりにも多くの労力をかけすぎているように思えたからです。また、すでに《弾けるドレイク》を十分うまく使えているのに、そこまでして《弧光のフェニックス》を使う理由はないだろうと思っていたのです。

青赤ドレイクと戦う上でもっとも恐ろしいカードは《パルン、ニヴ=ミゼット》です。できることなら、相手が《パルン、ニヴ=ミゼット》を出してくる前に《ドミナリアの英雄、テフェリー》を着地させておきたいところですね。青赤ドレイクは基本的にメインデッキに打ち消し呪文を入れていないので、チャンスがあれば《ドミナリアの英雄、テフェリー》を出していきましょう。私のデッキリストでは《パルン、ニヴ=ミゼット》への対策があまりないですが、その理由は《パルン、ニヴ=ミゼット》に対応できるようなカードは受けが狭く、カードパワーも低いため、わざわざデッキに入れるほどではないと考えていたからです。

プロツアーで一度対戦しましたが、3ゲーム目に《ボーラスの手中》《ドミナリアの英雄、テフェリー》を奪われて負けました。やっぱり《ドミナリアの英雄、テフェリー》は強いですね。

対イゼットドレイク

Out

轟音のクラリオン 轟音のクラリオン 轟音のクラリオン 轟音のクラリオン
一瞬

In

黎明をもたらす者ライラ 黎明をもたらす者ライラ 否認 否認
封じ込め

グランプリ・ミルウォーキー2018

グランプリ・ミルウォーキー2018はプロツアーの翌週に開催されました。プロツアーで使用したデッキから変更したのは1点だけです。サイドボードの《発展+発破》《パルン、ニヴ=ミゼット》と入れ替えました。プロツアーでの感触が良かったので、デッキを大幅に変更する気はありませんでしたね。

ですが、グランプリは10勝5敗というそこそこの成績で幕を閉じました。私のリストは白単や赤単といったアグレッシブなデッキに有利な構成でしたが、グランプリでそういったデッキを使っている人はあまりいなかったのです。

パルン、ニヴ=ミゼット宝物の地図発展+発破

その代わりに、ミラーマッチやゴルガリミッドレンジと当たることが多かったですね。そのため、もっと消耗戦に強く、インパクトの大きなカードを入れたリストにした方がいい結果が出せていたかもしれません。とはいえ、そこまで頭をひねらせることもないと思いますね。なぜなら、エイドリアン・サリバンがまさにそれに近しいデッキを作ってグランプリを優勝しているのですから。

ジェスカイコントロールのこれから

ジェスカイカラーには強力なカードが豊富に揃っており、デッキ構築の幅もかなり広いです。場合によっては、環境のさまざまな問題に対応できる回答を見つけるのに苦労することもあるかもしれませんが、今のスタンダードのカードプールには、どんな問題にも対応できるだけのカードが揃っているように思います。ですから、みなさんが考えるべきは「デッキが環境に適応し進化していくには、どのカードを使うのがベストなのか」ということだけです。

グレゴリー・オレンジ

この記事内で掲載されたカード

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Gregory Orange アメリカ出身のプロプレイヤー。HotSauceGames.comの一員であり、ゴールド・レベル・プロとしてプロシーンの第一線で長年戦っているアメリカの強豪。グランプリ・サントニオ2017優勝のほか、プロツアーでも安定した成績を残し続けている。2018年8月に開催されたマジック25周年記念プロツアーでアレン・ウー、ベン・ハルと共に優勝。さらなる研鑽を積むべく、チームメイトたちと共にHareruya Prosに加入した。 Gregory Orangeの記事はこちら