(掲載日 2026/05/15)
“驚異的なコントロールプレイヤー”
私の配信で誰かがサブスクライブしたときに流れる通知があるのですが、みなさんの中にはこれが何か分からない方もいるでしょう。
このクリップは、サイモン・ゴーツェン/Simon Goertzenが私を「驚異的なコントロールプレイヤー(Phenomenal Control Player)」と評している動画の切り抜きです。
これはまだ自分のマジックのキャリアが浅いときに、初めてトップ8に入賞したプロツアーの配信での出来事でした(それにしても、時が経つのは早いですね!)。
当時はほとんど無名で、サイモンはヨーロッパのグランプリで私を見かけた記憶と「いつもランタンコントロールを使ってプロツアー出場を決めている人」という認識から、私をコントロールプレイヤーとして紹介したのでした。
グランプリ・バーミンガム2017 トップ8
この出来事から、少し皮肉も込めてこれをサブスクライブの通知に設定しています。というのも、「ランタンコントロール」は名前こそコントロールがついていますが、実際はあまり典型的なコントロールデッキではありませんでした。
私は本来、純粋なコントロールデッキをほとんど使いません。むしろ好みなのは、広い意味でのコンボデッキです。
ただし、どんなコンボでも好きというわけではありません。たとえばストーム系のデッキは、私の心にそこまで刺さらないのです。
──それはなぜか?その理由をずっと考えていました。
好きなプレイスタイル
マジックを始めたころから、クリーチャーで攻撃するかブロックに残すかを選べる場面では、本能的に常に「残しておく」ほうを選んでいました。これは「万が一に備えて」という感覚からです。
もちろん年々改善されてはきましたが、自分の理想的には「まず守りを固め、デッキに搭載されたエンジンを完成させてから、最終的に相手のやっていることを上回る形で勝ちたい」のです。
相手の脅威を1枚ずつ丁寧に交換していくゲームや、序盤の1点1点が極めて重要なアグロデッキは、あまり得意ではありません。
この性質はリミテッドではかなり足を引っ張りました。シールドやドラフトでは、いわゆる”殴り得”な機会を逃す代償が非常に大きいからです。戦闘の比重も大きく、終盤のプランが相手より強い保証もありません。
そのため構築では「序盤は多少のダメージを受けながらも、準備が整ったところで一気に反撃して勝つタイプのデッキ」を主に選んできました。
じっくり自己分析して気づいたのは、自分がデッキに求めているのは「ゲーム終盤に強力なプランを備えているか」ということでした。それが私の好きな戦略であり、プレイヤーとしての強みでもあります。
たとえばモダンのアミュレットタイタンは、マナ加速し、生き延び、準備を整えて逆転するデッキです。またランタンコントロールは、ハンデスとロックで相手のプランを崩し、《罠の橋》で完全に封殺するデッキでした。
そしてこれは、デッキ構築にも表れています。パイオニアのイゼットフェニックスでは、決まって《時間への侵入》+《感電の反復》コンボを採用していたほどです。
スタンダードのイゼット講義を使う際も、これと同じ感覚があります。
ゲーム序盤は耐えてカードを交換していき、《美術家の才能》や《忍耐の記念碑》を設置している間に少しリードを許しますが、最後はストームのような止めようのないフィニッシュを叩きこんで勝利します。これはまさに自分の好みに合った展開です。
一方で、《渦泥の蟹》と《没頭》を使うタイプのイゼット講義にはまったく興味がありませんでした。その構築は少し重めのイゼット果敢のようになってしまい、相手へのプレッシャーが減るだけでなく《安らかなる眠り》への弱点が増えるだけに思えたのです。
自分の強みを活かしてプレイすること
「デッキ構築」や「プレイスタイルの好み」は、ときにプレイヤーの弱点のように語られます。
理想を言えば、そのときどきで最も勝利期待値の高い「デッキ選択」「サイドボードプラン」「プレイング」を選ぶべきだと考えられているからです。
そのため、自分の好みのプレイスタイルにこだわることは、マジックプレイヤーとしての可能性を狭める“一種の制約”のように見なされがちです。
一方で私たちは、自分の戦略を完全に理解し尽くし、どんな状況でも最善手を導き出せるようなプレイヤーに強く惹かれます。何度も同じ状況を経験し、何をすべきか自然と分かっている。そんな「1つのデッキを極めた達人」を理想像として語ることもあるでしょう。
しかし、現実はそう単純ではありません。
人生の時間には限りがありますし、この趣味を学び、極めるために使える時間はなおさらです。
もしあなたが世界屈指の才能を持つプレイヤーでないのなら、自分の強みを活かせる選択をすることもまた、十分に現実的な道となるでしょう。
たとえプロツアーのために大規模なチームで調整していたとしても、あらゆる可能性を検証し、すべてを試し尽くすことなどできません。
最終的に提出できるデッキは1つだけ。そして、その判断を下すのは自分自身なのです。
スポットライトに向けての準備
ロンドンのスポットライトに向けて調整を始めたのは、プロツアー『ストリクスヘイヴンの秘密』の結果を見てからでした。プロツアーではセレズニア上陸が圧倒的な存在感を示し、一方でイゼット系のデッキは全体的にやや期待外れな結果に終わっていました。
メタゲームの流れを考えると、《アナグマモグラの仔》デッキは有力な対抗馬に見えました。私は二晩かけて、自分なりに納得できる《アナグマモグラの仔》リストを作ろうとしましたが、満足のいくものにはなりませんでした。《量子の謎かけ屋》型は構築も難しく、マナベースを組むのにも苦労しました。
トップ8に入ったマット・ナス/Matt Nassのセレズニアウロボロイドは、まとまりがありましたが、かなり横並び重視のアグロに寄ったデッキでした。盤面が均衡するとトップデッキするカードが弱く、さらに上陸デッキがメインから《浸食作用》を採用している環境で、《ウロボロイド》頼りのプランには魅力を感じませんでした。
その後、イゼット講義を使用していたルイ・ジャン/Rui Zhangとダニエル・ゲッチェル/Daniel Goetschelの結果に刺激を受け、再びイゼット講義に戻ってきました。
プロツアーのサイドボードはイゼット講義をかなり軽視していて、《忍耐の記念碑》を破壊できるカードはほとんど見当たらなかったのです。また、《浸食作用》をほぼ完全に回避できる点も非常に魅力的でした。
私はダニエルの、よりクラシックな《嵐追いの才能》+《ブーメランの基礎》型と、ルイの《フラッシュバック》《星間航路の助言》《三歩先》といった、後半戦重視のカードを採用した構成を比較検討していました。
実際にルイの構築を試してそれらのカードを使ってみましたが、結局納得はできませんでした。
それぞれ活躍する場面はありましたが、《星間航路の助言》は快適に唱えられるタイミングが見つけにくかったです。《三歩先》も、マナコストの重いカードが少ない現環境では優先度が高いとは思えませんでした。
特に《フラッシュバック》にはかなり違和感がありました。《積み重ねられた叡智》を再利用して、さらにカードを引く魅力は理解できます。しかし、墓地の講義を3枚そろえるのに苦労するような状況では、《フラッシュバック》自体が講義・呪文ではないうえに、墓地の講義を1枚消費してしまいます。明確に強力とも言い切れず、状況に依存するカードにしてはデメリットが大きすぎるように感じました。
転機となったのは、ロンドンへ向かうポーランド勢(私、Xerk、TSPJendrek)で集まり、デッキリストやサイドボードについて話し合ったときでした。
Xerkは、使い慣れた上陸をやめて、経験の少ないイゼット講義でJendrekと私に合流するか検討していました。そして初手について一緒に考えてほしいと言ってきました。
キープやマリガンについて議論しているうちに、私は《星間航路の助言》や《三歩先》が、どれほど頻繁に初手を悪くしているかに気づいたのです。
Jendrekと私は、いくつかの手札をもとにマリガン判断でキープできるかどうかで意見が分かれました。Xerkは私たちに明確な指針を示してもらえないことに気づき、結局このデッキを断念してしまいました。
私はそこで、《嵐追いの才能》と《ブーメランの基礎》が初手にある素晴らしさを思い出しました。
ダニエルに連絡して構成について改めて話し合い、その結果、2か月前のトリノの地域チャンピオンシップで使った75枚中71枚を、そのまま採用することに決めたのです。
今回の経験から得た教訓は、ある選択がほかのプレイヤーにとって正しかったとしても、最終的にそのデッキを使うのは自分自身だということです。
どれほど《星間航路の助言》や《三歩先》がメタゲーム的に理にかなっていて、マリガンやサイドボード、プレイ方針が異なるプレイヤーには合っていたとしても、自分が引くたびに弱く感じるカードなら、大会本番で急に強くなる理由はありません。
《ブーメランの基礎》と《嵐追いの才能》は、より強力で軽く、まとまりがありデッキを機能させる核となるカードでした。そして講義・呪文の枚数も自然に維持できます。個人的にも、この2枚には非常に満足していました。
採用した4枚のサイドボードカードは以下の通りです。
2枚目の《金屑の嵐》:《大空の賢人》や《脚当ての補充兵》への対策として重要なカードです。
《舷側砲の一斉射撃》:大流行の《渦泥の蟹》に対応するために採用したのが主な理由です。
《すべきでない悪ふざけ》:《鋭い目の管理者》や《彩嵐の雄馬》に強いシンプルな除去です。後手時には1マナ除去を増やせる点も価値がありました。
《観念の名誉教授》:長期戦向けの新たなフィニッシャーです。この枠は以前、やや物足りなさのあった《量子の謎かけ屋》が入っていました。《観念の名誉教授》の2枚目も試しましたが、5マナ域ということもあり、手札で詰まる場面が多すぎました。
デッキリストが完成した後、簡単にサイドボードプランを書き出して眠りにつきました。
プラン自体はおおむね一般的なものです。一番悩んだのは、クリーチャーデッキ相手に《ばあば》を抜くかどうかでしたが、《安らかなる眠り》や豊富なブロッカー、さらに自分の《金屑の嵐》まで考えると、《ばあば》を頼りにするのは難しいと感じました。
デッキリスト:イゼット講義
サイドボードガイド
サイドボードはこちらのシートからもご覧いただけます。
上陸アグロ
vs. 上陸アグロ (先手)
vs. 上陸アグロ (後手)
《アナグマモグラの仔》デッキ
vs. 《アナグマモグラの仔》デッキ (先手)
vs. 《アナグマモグラの仔》デッキ (後手)
イゼット果敢
vs. イゼット果敢 (先手)
vs. イゼット果敢 (後手)
イゼットスペルメンタル
vs. イゼットスペルメンタル
ミラーマッチ
vs. ミラーマッチ
《空飛ぶ友だち、モモ》デッキ
vs. 《空飛ぶ友だち、モモ》デッキ
コントロール
vs. コントロール
トーナメントレポート
本大会は2日間に渡って行われ、特に過酷だった初日9回戦を含め、合計15回戦を戦いました。
vs. イゼット果敢
イゼット果敢とは合計6回対戦し、戦績は5勝1敗でした。
初日の時点では《観念の名誉教授》をサイドインし続けていましたが、時間が経つにつれて《忍耐の記念碑》という勝ち筋から離れる理由はないという確信が強まっていき、結局サイドインしないことにしました。
負けたゲームは、序盤に《嵐追いの才能》や《ブーメランの基礎》を連打されたり、《精鋭射手団の目立ちたがり》の大量展開に押し切られたときだけでした。
逆に、相手が1ターン目《手練》スタートだったゲームは全勝しました。
vs. ディミーア加虐者
次によく当たったアーキタイプは、なんとディミーア加虐者でした。
このマッチアップは普段かなり有利に感じていますが、《魂の洞窟》があるため打ち消しの信頼度がそこまで高くありません。また、《軽蔑的な一撃》が《爆裂の技》より本当に優れているかもよく分かりませんでした。
ラッキーだったのは、そのうちの1人が《ベイルマークの大主》を採用したクリーチャーが多めのリストだったことです。サイド後に《カルシの帰還者》まで入れてきたため、《爆裂の技》をメインに残す選択が簡単で、そのおかげで勝つことができました。
vs. ジェスカイコントロール
6回戦は《発見の石板》入りのジェスカイコントロールと対戦しました。
1ゲーム目では、相手のマナが立っている状況で早々に《忍耐の記念碑》を出してしまい、打ち消されてしまいました。そのあとは、残りの《忍耐の記念碑》を1〜2枚通す大きなターンを作ろうと動きましたが、そういったカードを探すのにかなり時間を使いました。
最終的には超長期戦の末、対象になったカードを自分の除去で処理して《ジェスカイの啓示》を不発にする場面もありながら、《忍耐の記念碑》の着地に成功。最後は《美術家の才能》の誘発で残り3点を削り切りました。
しかも、そのとき引いたカードはデッキ最後の1枚。本当に紙一重でしたね。
vs. ミラーマッチ
5回戦は唯一のミラーマッチでした。残念ながら、デッキリスト非公開性であることがここで響くことになります。
自分の先手で《ばあば》で攻撃。相手の場に見えていたのが《尖塔断の運河》と《嵐追いの才能》だけだったため、おそらくイゼット果敢だろうと判断し、《爆裂の技》ではなく《アグナ・ケラ》を捨てました。
結果的にミラーマッチであることが判明し、この判断は7ターン後に大きな代償となりました。土地を引きすぎてしまい、最終的に《忍耐の記念碑》を起動するための最後の数点が足りなくなってしまったのです。
ひどいよ!
vs. セレズニア律動
7回戦では、同じアミュレットタイタン好きのネイサン・ゴールドバーグ/Nathan Goldbergと対戦しました。相手はセレズニア律動で、非常に接戦でした。
《轟く機知、ラル》の奥義でライフ1から長期戦をひっくり返して勝った試合もありましたが、最終的には3回マリガンしてしまい押し切られてしまいました。もちろんマリガン自体は運の悪さとも言えますが、サイド後の構成がかなり重くなっていたのも事実です。
私がマリガンした初手はこちらでした。
もし《舷側砲の一斉射撃》がもっと軽い除去だったなら、キープできたかもしれません。これは、今後サイドボードを構築する際に考慮すべき点ですね。
vs. アゾリウスモモ
15回戦では、のちにこの大会の優勝者となるクーン・デ・フォス/Koen de Vosと当たりました。
《量子の謎かけ屋》と《白昼夢》入りのアゾリウスモモは未経験のマッチアップでした。まったく噛み合わない引きをしてしまい、両ゲームとも5/7の《量子の謎かけ屋》に押し潰されました。
最終戦では「勝てば抜け」の一戦を落とし、モダンで行われるアムステルダムのプロツアー出場権も逃してしましましたが、次こそはですね。
もちろん、ゴール目前まで来ながら届かなかったのは少し悔しいものです。それでも素晴らしい週末でした!競技そのものを心から楽しめましたし、少なくとも自分にとっては正しいデッキ選択ができたと思っています!


































































