Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/01/21)
はじめに
みなさん、おはよう。
『ラヴニカの献身』のカードリストもすべて公開された。発売ももう間近だが、ひとつみなさんに言っておこう。スタンダードの環境は変わる!強力なカードが多数収録されているため、スタンダードに変化が生まれ、環境が今までとは違ったものになる可能性があるのだ。
そしてなによりもーーーみなさんそれぞれがお気に入りのカードを見つけられるエキスパンションなのだ。短期戦のアグロデッキが好きな人も、長期戦のコントロールミラーが好きな人もだ。この新しいラヴニカのセットは、今までになく、かつ強力なカードをみなさん一人一人にプレゼントしてくれるだろう。
今回の講義では、俺の言っていることが間違いではないとみなさんに納得してもらうつもりだ。ただ、先生も新しいカードで実際にはプレイしていないことを承知いただきたい。あくまで過去の経験から判断した第一印象だ。だから間違っている部分もあるかもしれない。
また、今回の記事で紹介するデッキリストは、あくまで新しいカードやシナジーを使った、ひとつの例にすぎない。調整したわけでもないため、完成されたデッキとは程遠いに違いない。みなさんには、この例をひとつのインスピレーションとして使って欲しい。決して「よし!この75枚で大会に出よう!」なんて思わないように。
その代わり、次回の講義のころには新セットが発売され、実際に新しいカードを使えるようになっているから、調整を重ねたデッキリストを題材にするつもりだ!
アグロ好きの生徒向け
おすすめのカードがわかりやすいアーキタイプだ。2つのギルド、2つのキーワード能力がある。ラクドスもグルールもメカニズムが超攻撃的だが、構築方法は両者で異なる。
ラクドスアグロ
まずはラクドスアグロから解説しよう。
“絢爛”
– このターンに対戦相手がライフを失っていたなら、あなたはこの呪文を、これのマナコストではなく絢爛コストで唱えてもよい。
「絢爛」は非常に特徴的なメカニズムだ。十分に活用するには、軽量のカードを多く採用する必要があり、かつ最初のターンからプレッシャーをかけていかなければならない。
なかでも《騒乱の落とし子》は注目だ。こいつを中心にデッキを構築する価値すらあるように思える。一番良いのは、1マナと2マナのカードを多く使った構築だ。欲を言えば、《熱錬金術師》のようなカードがあれば良かったなと思う。そうすれば、戦闘をせずとも「絢爛」の条件を安定して満たせるからだ。残念だが《槍播き》が構築級だとは思えない。しかし、試してみないとわからないな。
ラクドスアグロの『ラヴニカの献身』からの収穫
その他のラクドスアグロ向けの注目カード
サンプルデッキリスト
サイドボードやメインデッキに入る可能性のあるカード
過去の実績から見ても、ゲーム中盤に墓地から復活する軽量クリーチャーがいる場合、黒ベースのアグロデッキは活躍する可能性が高い。序盤から全力で相手を倒しに行き、仮に相手に妨害されたとしても、それ以降に建て直す力があったのだ。《恐血鬼》や《戦慄の放浪者》、《無情な死者》の活躍を思い出してほしい。
そして今、《どぶ骨》と《墓地の司令官》に加えて、オーバーパワーの《騒乱の落とし子》がいる (4/4で飛行とトランプルを持ち、しかも他にもメリットがある。それがたったの3マナ?冗談だろ?単体のカードパワーで見れば、このデーモンこそがこのセット内で最強のカードだろう)。しかも、《血の墓所》が加わってマナベースが強くなり、赤の除去をタッチしやすくなっているのだ。
グルールアグロ
グルールは、ラクドスよりもクリーチャーのサイズが大きい。しかしそれでもアグロデッキに分類されると思う。なぜなら、いかに早く相手の20点のライフを削り切るかに焦点を当てているからだ。ただ、採用するカードはラクドスと異なっている。ラクドスのように1マナでパワー2のクリーチャーを使うのではなく、《ラノワールのエルフ》のような軽量のマナ加速を使い、速攻を持ったサイズの大きいクリーチャーへと繋げていくのだ。速攻に関連して、グルールのメカニズムを紹介しよう。
“暴動”
– このクリーチャーは+1/+1カウンター1個か速攻のうちあなたが選んだ1つを持った状態で戦場に出る。
通常は速攻のモードを選ぶだろう。しかし、選択肢があるのは良いことだ。特に相手の戦場にサイズの大きいブロッカーがいるときなどは有用と言える。それにしても、まさか《殺戮の暴君》が4ターン目に速攻を持って攻撃できると思ったことはあっただろうか?しかし今やそれが可能になった。しかも現実的な確率でだ!すべてはグルールのリーダーである《混沌をもたらす者、ドムリ》のおかげさ!
グルールアグロの『ラヴニカの献身』からの収穫
その他のグルールアグロ向けの注目カード
サンプルデッキリスト
5 《山》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《根縛りの岩山》
-土地 (23)- 4 《ラノワールのエルフ》
4 《ザル=ターのゴブリン》
3 《培養ドルイド》
4 《グルールの呪文砕き》
4 《鉄葉のチャンピオン》
4 《無効皮のフェロックス》
2 《スカルガンのヘルカイト》
3 《殺戮の暴君》
2 《原初の飢え、ガルタ》
-クリーチャー (30)-
サイドボードやメインデッキに入る可能性のあるカード
クリーチャーが30枚も入っているこの構築であれば、《混沌をもたらす者、ドムリ》はマナ加速として役割のみならず、「暴動」でテンポアドバンテージを得ることもできる。また、カードアドバンテージ源にもなり、奥義が決まれば単体で勝つことも可能だ。《グルールの呪文砕き》は相手の《残骸の漂着》を無力化してくれる。《培養ドルイド》はシミックのカードではあるが、グルールにとってもありがたい新カードである。序盤のマナクリーチャーとして有用なのはもちろん、それ以降も良い使い道がないマナを「順応」に使い、相手にとって脅威のサイズになる。大きなマナを注ぎ込むことで力を発揮する《苦悩火》や《火による戦い》とも相性が良い。
ミッドレンジ好きの生徒向け
オルゾフミッドレンジ
《大天使アヴァシン》を覚えているだろうか?瞬速持ちの5マナの天使は概して強いのかもしれない。《恩寵の天使》は《大天使アヴァシン》と同等の強さはないかもしれないが、相手とライフレースをする上で非常に効果的な1枚だ。
上手く活用できれば恐ろしいだろうなと思うカードは他にもある。それは《忘れられた神々の僧侶》だ。この僧侶はオルゾフのキーワード能力である「死後」と非常に相性が良いため、下記のデッキリストではこれらを組み合わせ、シナジーを有効活用してみた。1から作られたデッキというのは、確実に改善の余地がある。だからMTGアリーナやMagic Onlineで『ラヴニカの献身』が発売されるのが待ち遠しい。まずはすべてのカードを入れてみて、どうやって構築するのが一番良いのかを探していきたいところだ。
“死後 N”
– このクリーチャーが死亡したとき、飛行を持ち白であり黒である1/1のスピリット・クリーチャー・トークンをN体生成する。
オルゾフミッドレンジの『ラヴニカの献身』からの収穫
その他のオルゾフミッドレンジ向けの注目カード
サンプルデッキリスト
7 《沼》
4 《神無き祭殿》
4 《孤立した礼拝堂》
1 《オラーズカの拱門》
-土地 (23)- 4 《追われる証人》
4 《どぶ骨》
4 《オルゾフの処罰者》
4 《忘れられた神々の僧侶》
2 《無慈悲な司教》
4 《真夜中の死神》
2 《テイサ・カルロフ》
2 《秤の熾天使》
2 《恩寵の天使》
-クリーチャー (28)-
このデッキが主眼とする戦略は、できるだけ多くの2対1交換をすることだ。《忘れられた神々の僧侶》はデッキ全体と見事なシナジーを形成しているとともに、クリーチャーを除去することで相手をペースダウンさせ、同時にこちらはマナ加速ができるようになっている。
オルゾフミッドレンジは、必要以上に有用なカードが揃っているので、予想されるメタゲームに合わせて可変的にデッキを組むことができるだろう。今のスタンダードでいうところのゴルガリミッドレンジのようなイメージだ。ゴルガリミッドレンジと一口に言ってもさまざまな構築があるし、それぞれが得意としているデッキが異なっている。
サイドボードやメインデッキに入る可能性のあるカード
おまけのデッキ
とうとうショックランドもチェックランドも全種類揃ったので、このマナベースを使って色々と遊べるようになった。ワールド・マジック・カップ2018で我々ポーランド代表が使ったビッグレッドを覚えているだろうか。あのデッキは比較的悪くないものだった。相性が良いマッチアップもあれば、苦手とするものもあったのだ。ビッグレッドの大きな問題のひとつは、対コントロールにあった。《苦悩火》でライフを削り切るには、事前のプレッシャーが足りなかったのだ。もうひとつの問題点、それは戦場に出てしまったエンチャントを除去できないことだ。たとえば《実験の狂乱》のようなエンチャントを対処できる手段がたったの1種類も赤にはない。
しかし《踏み鳴らされる地》と《血の墓所》が登場したことで、緑と黒をタッチしても基本的に無理が出ない状況になった。色をタッチすれば、後者の問題点を解決するようなカードをサイドボードに採用することができる。しかしそれよりも嬉しいのは、このアップデートを待っている心の友、《ゴブリンの鎖回し》にプレゼントをあげられること!《席次+石像》だ!受け取れ!
サンプルデッキリスト
4 《血の墓所》
2 《踏み鳴らされる地》
4 《竜髑髏の山頂》
3 《根縛りの岩山》
1 《オラーズカの拱門》
-土地 (25)- 3 《ゴブリンのクレーター掘り》
4 《ゴブリンの鎖回し》
4 《再燃するフェニックス》
4 《包囲攻撃の司令官》
-クリーチャー (15)-
マナベースの構築は、サイドボードに何を採用するかによる。《強迫》を使いたいのは間違いないだろうから、黒マナソースはもう少し増やす必要があるかもしれない。ほぼ単色のデッキであれば、チェックランドはアンタップインしやすいため、ショックランドより好ましいと言える。ただ、チェックランドを多く採用し過ぎるとアンタップインできないケースもあるだろうから、両者を上手く活用するには、バランスよく採用してやるのが良いだろう。
コントロール好きの生徒向け
『ラヴニカの献身』にはコントロールデッキに最適なカードも数多く収録されている。
なかでも大きな収穫は《吸収》だろう。コントロールデッキにとって《苦悩火》は目の上のたんこぶだったが、打ち消すついでにライフを回復できる《吸収》は、ゲームの勝敗を分かつカードになり得る。この新たな打ち消し呪文が加わったことで、あの悲惨なカードを使わずに済むようになる ーーー 《活力回復》だ。
その他にも、エスパーコントロールであれば、《ケイヤの怒り》や《屈辱》が新たな戦力になった。《神無き祭殿》と《神聖なる泉》が再録されたことで、エスパーコントロールも構築しやすくなったのだ。
《予知覚》も優秀なドロー呪文だ。《薬術師の眼識》の枠に割って入るかは何とも言えない。
ここまでで紹介したカードよりもパワーこそ劣ってしまうが、強力なカードは何枚かある。具体的には《眩惑する水底種》や《予見のスフィンクス》 といったカードの存在は覚えておくべきだし、少なくとも試してみるべきだ。
新環境のコントロールデッキに関しては、グレゴリー・オレンジ/Gregory Orangeが素晴らしい記事を書いてくれている。俺の記事が長くなり過ぎても問題だし、彼の考えを丸写しするようなことも避けたいから、ぜひ彼の記事を参考にしてくれ!
- 2019/01/17
- 『ラヴニカの献身』により登場する新たなコントロールデッキ
- Gregory Orange
コンボ好きの生徒向け
ただ、1枚だけ。《荒野の再生》。
一枚の絵は一千語に匹敵、カードを見ただけで強さがわかるだろう。新環境の初期にもっとも猛威を振るうのはこのカードではないかと思っている。どのギルドにも属することさえない、ただのアンコモンのカード。しかし正しいデッキで使ってやれば、異常な価値を生み出す。唱えたターンに土地がすべてアンタップされるため、実質的にこのエンチャントは0マナで唱えることができる。しかしそれだけではない。それ以降のターンも継続して恐ろしいほどのマナを生み出し、マナ加速を実現させるのだ。
このカードを上手く使うためには、いくつか注意すべき点がある。まず、インスタントを多く採用すること。終了ステップに土地をアンタップしたとしても、そのマナを使えなければ十分に活用できているとは言えない。第2の条件は、手札にカードが潤沢にあること。生成された膨大なマナを安定して使うには、手札がなければ意味がない。だからこそドロー呪文は歓迎だ。
この2つの条件を達成すれば、強力で派手なことができる。ただ、攻撃的なデッキへの耐性がない。序盤の攻撃をしのぐカードと、もっと派手なことができるカードを入れよう!さて、これが何を意味しているのか、わかったかもしれないな。そう、リミテッドで使いものにならないあのカードと、あのBOXプロモ。《根の罠》と《運命のきずな》だ。
ターボフォグの『ラヴニカの献身』からの収穫
その他のターボフォグ向けの注目カード
サンプルデッキリスト
《荒野の再生》により、常に4枚の土地がアンタップ状態になるので、《残骸の漂着》がさらに強化された。そのため、《内省のための小休止》のような3マナの《濃霧》カードよりも、《残骸の漂着》を優先して採用している。《予知覚》は「附則」で唱えることができれば、きわめて強いカードだ。このターボフォグであれば、メインフェイズに唱えることなどどうってことないだろう!
さいごに
最後になってしまったが、忘れてはいけないことがある。『ラヴニカの献身』でショックランドはすべて出揃い、3色あるいは4色のデッキさえ十分に選択肢に入る環境になったのだ。特定の色の組み合わせにおいて使いたいカードも存在していたが、かつてはマナベースに無理があることを原因として使われてこなかった。
しかし今はやりたいことを何でもできる状況だ。マナベースがそれに対応できるだけの強さになったのだ。だからオープンな心でいよう。新しいことをどんどん試そう!さぁ、環境は未開拓だ。いろいろなカードを試し、自分のお気に入りのカードを見つける最高のタイミングがやってきたのだ!
では今回の講義はここまで。また次回の講義でもお待ちしている。
グジェゴジュ・コヴァルスキ@urlich00