リミテッドプレイヤーによるデッキ選択のすゝめ

Ben Hull

Translated by Ryosuke Igarashi

原文はこちら
(掲載日 2019/02/06)

はじめに

あと数週間でプロツアー『ラヴニカの献身』……ではなくミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019だ。俺はこの前のプロツアー以降スタンダードを1マッチもプレイしていないし、おそらくデッキ提出の2、3日前までプレイすることはないだろうね。

俺はリミテッドプレイヤーなんだ。構築は楽しめないし、大体はプロツアーの準備でしかやってない。それもちょっとしか時間をかけていないんだ。プロツアー前はMagic Onlineの構築リーグを2、3回とドラフトを30~50回する程度かな。

プロツアーのラウンドの大半を占めるフォーマットを軽視しつつも、俺は今までかなりの回数プロツアーで勝ってきた。とてもラッキーだったのは間違いないが、同時に準備不足でも負担が少ないようなデッキを選べていたと思うよ。

幸運な生き残り

準備不足でも好成績を残すことはできるが、もちろんそれで勝機を逃すこともある。俺のプロツアーでの構築ラウンドの勝率はかろうじて50%を超えるくらいだ。ドラフトは大体60%もあるのにね。

もし大会で勝つ可能性を高めることのみが目的なら、できる限り準備に時間を費やすべきだ。だが君がリミテッドプレイヤーで構築に費やす時間や情熱がなく、その短い時間を最大限に活用したいなら――これまでに俺がデッキ選択・大会の準備について学んできたことが助けになるだろう。

デッキ選択

コントロール・コンボデッキはやめよう

ドミナリアの英雄、テフェリー運命のきずな

ちょっとの練習だけでトーナメントに出るなら、今までの経験を生かせるデッキを選ぶのが非常に有用だ。リミテッドプレイヤーの主な経験は、戦闘で勝つ、クリーチャー主体のミッドレンジデッキでほぼ占められるだろう。

リミテッドではコンボデッキは存在しないし、コントロールデッキですら大体はちょっと変わったミッドレンジだからな。構築でアグロ・ミッドレンジデッキを使うなら、リミテッドでの経験はコンバットからマリガン・プレイの手順までの少なくともどこかで関わってくる。一方コントロール・コンボデッキを使うなら、その経験ははるかに役に立たないだろう。

これは主にスタンダードでの話だ。モダン・レガシーなどのカードプールが広いフォーマットに比べて、スタンダードではゲームがリミテッドに近くなるのでそこでの経験が役に立つ。それにスタンダードには大抵、多くのプレイアブルなアグロ・ミッドレンジデッキの選択肢があるからな。

簡単なデッキを使おう

燃え立つ調査虚ろな者

デッキパワーが落ちても、プレイが簡単なデッキを選ぶ方がいいこともある。完璧にプレイしたらどのデッキが強いかって話じゃなくて、自分の練習時間で最高の力を発揮できるデッキを選ぶべきだ。マジック25周年記念プロツアーのデッキを選ぶ際、俺はアイアンワークスや5色人間ではなくホロウワンを選んだ。なんてったってこいつは一番簡単なデッキだったからね。

相手の動きに左右されないデッキを使おう

これは大きな欠点のひとつだが、あまり準備せずに大会に出ると他のデッキについてあまり知らないものだ。特にモダンはデッキの選択肢が多いからその傾向が強い。必ずしも相手のデッキについて詳しいわけではない……そんなときはどんな相手でもプレイがほぼ変わらないデッキを使うべきだ。

思考囲い翻弄する魔道士

相手のどのカードが重要かわからないとき、《思考囲い》のような手札破壊呪文は分かりやすく弱くなる。《翻弄する魔道士》なんかは相手のデッキを知らなければほぼ無価値だ。

この点において、どんなマッチアップでも自身の役割が変わらないデッキは好都合だと言える。もしアグロデッキをプレイするなら、相手のデッキを知らなくても自分のすべきことは大体わかるだろう。これはいくつかのコンボデッキにも当てはまるね。

そのときのベストデッキを選ぼう

選択

これはプロツアーに初めて出る選手にはおおむねいいアドバイスだと思う。新セットの発売とそれに対応するプロツアー開催までにはタイムラグがある。そのため、そのフォーマットのベストデッキで大会に出るのは少なくとも合理的ではあるし、それが最良の選択になることも多々ある。環境を打破するのはとても難しい。その一方で、自分のオリジナルデッキを実際のマッチアップよりも有利だ、って思い込むのはとても簡単だ。無理に挑戦することは勧められないね

また、今まで書いてきたことを活用するのはいいが、そのためにあまりデッキパワーを下げすぎないように。ちょっとデッキパワーが低いけれど自分がうまく扱えるというデッキを使うのは構わないが、それ以外の要素ではデッキパワーの低さの埋め合わせはできないからな。

準備

記事・動画から学ぼう

入念な研究

俺が新しいデッキを練習するときはまず記事を読み、動画を見る。他人が既にそのデッキを習得しているのならば、そこからできる限り多くのものを吸収することでより良いスタートが切れるんだ。デッキのあらゆる面について学べるため、動画を見るのは特に助けになる。最初はデッキをプレイする様子を数ゲーム分見るだけでも非常に役に立つね。

動画を見るときは積極的に学ぼうとする姿勢が大事だ。そのプレイヤーの立場に立って自分ならどのようにプレイするか考え、彼が違う選択をしたならその理由を考える。この段階ではまだ自分が何かを見逃していることが多く、それが何なのかを学べるいい機会だ。

サイドボードガイドを読もう

知恵の拝借

もうひとつ、サイドボードガイドはあまり時間をかけずに学べる素晴らしい勉強法だ。間違えたサイドボーディングで練習を行っていたなら、サイド後のゲームについて歪んだ認識を得てしまうことになる。もしサイドボードガイドがあるなら、自分がデッキを安心して使えるようになるまで忠実に従うようにしているよ。それにそのガイドを信頼できるなら、大会でもその通りにサイドボーディングすることは多々あるね。

また、記事のサイドボードガイドを使っていようがいまいが、大会にはメモを持ち込むことをお勧めする。自分のサイドボードプランをちゃんと分かっていても、長い大会では何か忘れたり、見逃したりしてしまうってのはよくある話だ。あまり練習せずに大会に出場するのは非常に大きな精神的負荷に繋がるから、疲れによるつまらないミスを減らすのは特に大切だね。

デッキを回そう

今日の魅せ場

記事や動画から学ぶのは非常に有意義だが、それだけでは実際にデッキを回す代わりにはならない。他人のプレイを見てそれに頷くのは、自分で選択することと同じではない。その選択がなぜ正しいのか分かっているとしても、自分ではその選択を思いつかないかもしれない。それに、他人のプレイを見ている際には気付かないような細かな選択がたくさんあるのだ。

また、少しは紙での練習をすることを強くお勧めしたい。これにより誘発に慣れ、様々なことに気を配らずともデッキを回せるようになる。特にそのデッキが珍しい動きをするときには大事だね。例えば青赤ストームでマナと「ストーム」をカウントするとか、ドレッジで積み重なった墓地を見えるようにしておくとか……。デッキによっては一人回しも役に立つが、手順の省略は厳禁だ。

おわりに

もしリミテッドの経験を活かせる簡単なデッキを選んだなら、非常に少ない労力でも構築で立派な成績を残せるだろう。より練習してる相手には不利だろうが、それでもその差は驚くほど小さいものだ。

ベン・ハル

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Ben Hull アメリカ出身のプロプレイヤー。プロツアー『カラデシュ』でトップ4に入賞し、33歳にしてその年の最優秀新人賞(ルーキー・オブ・ザ・イヤー)を勝ち取った、遅咲きの強豪。2018年8月に開催されたマジック25周年記念プロツアーではアレン・ウー、グレゴリー・オレンジと共に優勝。さらなる研鑽を積むべく、チームメイトたちと共にHareruya Prosに加入した。 Ben Hullの記事はこちら