みなさんこんにちは。
今週末にはいよいよミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019が開催されます。新マリガンルールが試験的に導入され、デッキリストがお互いに公開になるというという変更が加えられており、世界のトッププレイヤーがどのような答えに辿り着くのか要注目です。
さて、今回の記事ではSCGO Cleveland、第13期モダン神決定戦、グランプリ・横浜2019の入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCGO Cleveland
新たな形のコントロールが登場
2019年4月6-7日
- 1位 Amulet Titan
- 2位 Esper Control
- 3位 Amulet Titan
- 4位 Izzet Phoenix
- 5位 Humans
- 6位 Izzet Phoenix
- 7位 Four-Color Shadow
- 8位 Grixis Death’s Shadow
Sam Lawrence
トップ8のデッキリストはこちら
今大会では、現環境のトップメタであるIzzet Phoenixが安定した成績を残していました。そのほかには、DredgeとIzzet Phoenixに強くコントロールにも有利なAmulet Titanがリードしています。
墓地デッキを意識したEsper Controlは、復権してきているHumansにも強く今大会では勝ち組のひとつでした。
SCGO Cleveland デッキ紹介
「Esper Control」
Esper Control
1 《平地》
1 《沼》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《汚染された三角州》
2 《神聖なる泉》
2 《湿った墓》
1 《神無き祭殿》
2 《氷河の城砦》
1 《忍び寄るタール坑》
3 《廃墟の地》
-土地 (24)- 4 《瞬唱の魔道士》
-クリーチャー (4)-
3 《選択》
3 《致命的な一押し》
2 《否認》
2 《論理の結び目》
1 《喪心》
3 《エスパーの魔除け》
3 《謎めいた命令》
2 《至高の評決》
3 《虚無の呪文爆弾》
1 《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
3 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (32)-
Zach Allen選手は、従来のAzorius Controlに《致命的な一押し》や《エスパーの魔除け》、《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》などを追加したEsper Controlで準優勝という戦績を収めました。
メインに墓地対策が採用されており、トップメタのIzzet Phoenixに強い構成となっています。Humansや上位に多いDeath’s Shadowにも強く、黒をタッチしているのでコンボデッキへの耐性も上がりました。
☆注目ポイント
《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》の[+1]能力は、Izzet PhoenixやDredgeなど墓地を使うデッキが多いモダンでは非常に有用です。[-1]能力は《虚空の杯》、 《精力の護符》、《硬化した鱗》、《霊気の薬瓶》など、コントロールにとって厄介となる置物対策になります。また、《死の影》や《僧院の速槍》なども除去できるのでモダンでは受けが広く、黒をタッチする価値のあるカードです。
黒をタッチすることで《虚無の呪文爆弾》を有効に使えるようになりました。双方の墓地を追放してしまう《大祖始の遺産》と異なり、相手側の墓地だけ一方的に追放できるので《瞬唱の魔道士》を邪魔しないメリットがあります。
《エスパーの魔除け》は小回りの利くカードで、このスペルの魅力は《紅蓮術士の昇天》、《硬化した鱗》、《拘留の宝球》、《アズカンタの探索》といったエンチャントをメインから対策できることです。1ターンに何枚もスペルを連打するIzzet Phoenixに対しては、手数を減らすためにハンデスモードも積極的に使っていきます。
サイドの《ゲトの裏切り者、カリタス》はHumansやAffinityなどとのマッチアップで強く、特にHardened Scales Affinityとのマッチアップでは《搭載歩行機械》や「接合」対策になり、《至高の評決》との組み合わせが強力です。役割の多い《集団的蛮行》はBurn対して有効で、そのほかHumansなど多くのマッチアップで活躍します。《漂流自我》はTron、Amulet Titanなど、このデッキが苦手とする土地コンボデッキ対策になります。
第13期モダン神決定戦
コントロールの復権
2019年4月13日
- 1位 Azorius Control
- 2位 Azorius Control
- 3位 UW Control
- 4位 Esper Control
- 5位 Dredge
- 6位 Blue Tron
- 7位 Grixis Shadow
- 8位 Burn
高橋 優太
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グランプリ・横浜2019の直前に開催されたこともあり、参加者300人以上と大盛況でした。
メタゲームブレイクダウンによれば、現環境のトップメタであるIzzet Phoenixは15パーセント以上を占めましたがプレイオフには残らず、第2勢力のTronも勝ち切れていないようでした。
最近はHumansが増加傾向にあり、その影響でAzorius Controlも復権し今大会ではなんとトップ4のすべてがAzorius Controlでした。特に決勝戦の高橋 優太選手と市川 ユウキ選手の対戦は、一流プロ同士の対戦らしく見ごたえがありました。
第13期モダン神決定戦 デッキ紹介
「Azorius Control」
Azorius Control
今大会でプレイオフの半数を占めたAzorius Controlは、復権してきたHumansやDeath’s Shadowを始めとした環境の多くのデッキに強く、柔軟に対応できるところがこのデッキの特徴です。
Hareruya ProsのGregory Orange選手もグランプリ・タンパ2019でトップ16という好成績を残しており、環境が固まってきて調整がしやすくなったのも勝因だと思われます。今回は決勝戦まで勝ち残った高橋選手と市川選手のリストを見ていきたいと思います。
☆注目ポイント
Izzet PhoenixやDredgeなどがメタゲームの上位を占めているので、《大祖始の遺産》や《外科的摘出》といった墓地対策がメインから採用されています。高橋選手がメインから採用している《外科的摘出》はIzzet Phoenixのブン回りや、《廃墟の地》との組み合わせでこのデッキが苦手とするTronやTitan Shiftといった土地コンボにも対応できます。
《大祖始の遺産》はキャントリップ付きで無駄になりにくく、メインから採用する墓地対策としては最も使いやすい部類です。相手ターンに「奇跡」を誘発させる手段にもなるので、市川選手のリストにはメインからフルに採用されています。
デッキの種類が多いモダンですが、その多くはHumans、Dredge、Death’s Shadow、Golgariなどクリーチャーを使う戦略なので、《終末》をフル活用する構成は理に適っています。高橋選手のように《ドミナリアの英雄、テフェリー》が多めの方が、《精神を刻む者、ジェイス》と《ドミナリアの英雄、テフェリー》を並べてアドバンテージを稼ぐというシナリオが作りやすいので、コントロールミラーやGolgari Midrangeなど枚数が重要となるマッチでは分がありそうです。高橋選手のプレインズウォーカーの選択理由については、彼自身の記事でも詳しく説明がされています。
市川選手のリストは、サイドに《機を見た援軍》、《悪斬の天使》、《黎明をもたらす者ライラ》を採用している分Burnとのマッチアップに耐性があります。高橋選手のリストには追加の脅威として《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が採用されており、コントロールミラーやGolgari Midrangeとのマッチアップで活躍します。高橋選手がサイドに採っている《仕組まれた爆薬》は、HumansやHardened Scale Affinityに対して有効な受けが広いカードです。
グランプリ・横浜2019
優勝はHardened Scale Affinity
2019年4月20-21日
- 1位 Hardened Scale Affinity
- 2位 Bant Spirit
- 3位 Golgari Midrange
- 4位 Dredge
- 5位 Izzet Phoenix
- 6位 Dredge
- 7位 Esper Control
- 8位 Dredge
小林 崇人
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グランプリ・横浜2019は参加者2499名が集う大盛況なイベントとなりました。Izzet Phoenixの2日目進出率が非常に高く、そのほかではHumans、Burn、Tron、Golgari Midrangeなど様々なデッキが勝ち残っていました。
環境トップメタであるIzzet Phoenixは、対策が厳しかったのか母数に反してプレイオフに進出したのはわずか1名でした。
決勝戦まで勝ち残ったのは、Hardened Scale AffinityとBant Spiritという旧環境でトップメタの一角として活躍していたデッキだったのも印象的でした。
グランプリ・横浜2019 デッキ紹介
「Hardened Scale Affinity」「Humans」
Hardened Scale Affinity
1 《地平線の梢》
4 《ラノワールの再生地》
2 《ペンデルヘイヴン》
4 《ダークスティールの城塞》
4 《墨蛾の生息地》
1 《ちらつき蛾の生息地》
-土地 (21)- 4 《搭載歩行機械》
4 《歩行バリスタ》
4 《電結の働き手》
4 《電結の荒廃者》
1 《金属ミミック》
-クリーチャー (17)-
MOを主戦場とする小林 崇人選手は、モダンの中でも複雑な動きをするHardened Scale Affinityを使いこなし、見事優勝しました。
《硬化した鱗》によってブーストされた《搭載歩行機械》や、《歩行バリスタ》による直接ダメージ、《墨蛾の生息地》による毒殺など多角的な攻めを展開できるデッキです。その分習得難易度も高めで、Izzet Phoenixに不利というのもあり減少傾向にありました。
Izzet Phoenixは依然としてトップメタですが、最近はTronやHumansも増加傾向にありHardened Scale Affinityにとって勝ちやすいメタになってきているようです。
☆注目ポイント
Hardened Scale Affinityは、《硬化した鱗》によって《電結の働き手》や《歩行バリスタ》といったクリーチャーを強化させていきます。小林選手のリストは《鋼の監視者》が不採用で、《ゲスの玉座》が多めに採用されているのが特徴です。《鋼の監視者》は出した直後に《稲妻》や《致命的な一押し》除去されてしまうことが多く、Izzet Phoenix、Death’s Shadow、Golgariなど軽い除去を多用するデッキが多い現環境では、カードの強さが活かしきれないので妥当な判断だと思います。
《ゲスの玉座》は《墨蛾の生息地》で一度でもダメージを与えていれば、毒カウンターを「増殖」させることで勝ち手段としても機能します。Humansなどの《霊気の薬瓶》やIzzet Phoenixの《氷の中の存在》のカウンターを「増殖」させることで妨害もできたりと、使用用途が広いカードです。
《活性機構》はコンボや速いデッキに対しては動き出しが遅く、それ以外のフェアデッキに対して特に強いカードです。カードアドバンテージによってロングゲームにも対応できます。Affinityと異なり、Izzet Phoenixがサイドインする《粉砕の嵐》は、《搭載歩行機械》のようなクリーチャーのおかげで壊滅状態になりにくく、Tronの《忘却石》も《搭載歩行機械》と《溶接の壺》によって被害を最小限に抑えられるのがこのデッキの長所です。
Humans
1 《島》
1 《金属海の沿岸》
4 《地平線の梢》
4 《魂の洞窟》
4 《手付かずの領土》
4 《古代の聖塔》
-土地 (19)- 4 《教区の勇者》
4 《貴族の教主》
4 《帆凧の掠め盗り》
4 《翻弄する魔道士》
4 《幻影の像》
4 《サリアの副官》
3 《スレイベンの守護者、サリア》
4 《カマキリの乗り手》
4 《反射魔道士》
1 《先頭に立つもの、アナフェンザ》
1 《ケッシグの不満分子》
-クリーチャー (37)-
2 《拘留代理人》
2 《秋の騎士》
2 《減衰球》
2 《四肢切断》
1 《凶兆艦隊の向こう見ず》
1 《ガドック・ティーグ》
1 《配分の領事、カンバール》
1 《罪の収集者》
1 《墓掘りの檻》
-サイドボード (15)-
最近また数を増やしてきているHumans。昨年は、トップメタの一角として大きな大会の上位では必ずと言って良いほど見られましたが、DredgeやKCIといったコンボデッキの隆盛により、《石のような静寂》や《安らかなる眠り》といったカードをサイドに採れるBant Spiritの方が有力なデッキとして使われ始め数を減らしていきました。
今年の1月25日に《Krark-Clan Ironworks》が禁止カードに指定されたことにより環境が激変しました。相性の良いマッチアップのひとつであったKCIが環境からいなくなり、相性の悪いIzzet Phoenixの増加によりBant Spiritはトップメタから追い出されました。そして、それらのデッキが台頭してきたことにより、Humansにも再びチャンスが巡ってきたのです。
☆注目ポイント
《スレイベンの守護者、サリア》はIzzet Phoenixを始めとした環境の多くのデッキに強いカードです。最近のIzzet Phoenixは、同型やDredgeなどを意識して《はらわた撃ち》よりも《外科的摘出》を優先してメインから採用していることもあり、《貴族の教主》、《幻影の像》、《スレイベンの守護者、サリア》などが生き残りやすくなったこともこのデッキにとっては追い風です。
《先頭に立つもの、アナフェンザ》は、《氷の中の存在》で止まらない墓地対策付きのクロックで、Izzet Phoenixにとって脅威となります。Dredgeに対してももちろん有効で、現環境においてはメインから2枚採用しても問題ないでしょう。
《ケッシグの不満分子》は戦闘以外でのダメージ源となり、中盤以降の膠着状態を打開する手段として重宝します。フル搭載されている《幻影の像》との組み合わせも強力です。サイドに採用されている《拘留代理人》は人間クリーチャーではないものの、このデッキにとって期待の新カードです。複数並んだ《弧光のフェニックス》、《恐血鬼》、《秘蔵の縫合体》、トークンの群れや《罠の橋》のような厄介な置物を処理できるフレキシブルさが魅力です。
ボーナストピック:『灯争大戦』in モダン
『灯争大戦』の発売も迫っているので、今回はおまけとしてモダンでも使えそうなカードを考えていこうと思います。
《リリアナの勝利》
《悪魔の布告》系の除去は、モダンでは《ヴェールのリリアナ》など一部を除いてあまり見られなかったので、Golgari Midrange、Grixis Death’s Shadow、Faeriesなど黒を使うデッキの除去のバリエーションとして注目が集まっています。黒いデッキの多くは《ヴェールのリリアナ》や《最後の望み、リリアナ》を採用していることが多いので、手札を捨てさせる能力も発動させやすくなります。《致命的な一押し》や《喪心》など最近の黒い除去は優秀ですね。
《ドビンの拒否権》
カウンターされない効果は、モダンで極めて重要です。Amulet、Storm、Ad Nauseamなどカウンターを採用したコンボや、ほかの青いデッキとのマッチアップを考慮すると、色拘束がきつくなければ《否認》に代わる主要な打ち消しとして青白系のデッキに採用されそうです。
《爆発域》
《爆発域》は《仕組まれた爆薬》と似た効果を持つ土地です。カウンターされず、《死の影》や《精力の護符》、《霊気の薬瓶》などをメインにスロットを割くことなく対処できます。Tronでは《探検の地図》、《森の占術》、《古きものの活性》といったカードでサーチできる全体除去として使われそうです。Amulet Titanも《トレイリア西部》でサーチできます。
Dredgeでは《壌土からの生命》で使いまわすことができます。サイド後は《墓掘りの檻》や《安らかなる眠り》、《虚空の力線》といったカードを破壊する手段として採用されそうです。
《崇高な工匠、サヒーリ》
《若き紅蓮術士》、《僧院の導師》を彷彿とさせる能力を持ち、《致命的な一押し》などの除去が効かないのが強みです。初期忠誠値も5と高めなので意外と対処されにくく、Izzet Phoenixのように軽いスペルを多用するデッキや、 [-2]能力を活かせる《発明品の唸り》デッキなどで追加の勝ち手段として採用されそうです。
総括
新マリガンルールによって今週末のミシックチャンピオンシップは、同じモダンでも全く異なる環境になることが予想されます。TronやDredgeなどのデッキはこの恩恵を受けそうで、Azorius Controlなどマリガンする頻度が少ないデッキは、相手のブン回る確率が上がる分あまり良い変更には見えない印象です。しかし、新マリガンルールが先行導入されているModern Challengeの結果を見る限りでは、青白系のコントロールも結果を残していました。
グランプリ・横浜2019は終了しましたが、『灯争大戦』や『モダンホライゾン』がこれから発売されるのでモダンはまだまだ熱いフォーマットです。
USA Modern Express vol.27は以上になります。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!