16回戦の長い戦いが終わり、ついにミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019の優勝者を決める戦いに参加できるチケットが8人のプレイヤーに配られた。本稿では、そのデッキリストからロンドンマリガンがモダンに与えた影響などについての結論を述べていこうと思う。
モダンはトップ8に同じデッキがないことがあるほど、環境で通用するレベルのデッキが多いと言われているフォーマットだ。今回も多種多様なデッキがトップ8に並ぶことが予想されていた。
しかし、蓋を開けてみれば、人間が3名、トロンが2名、そしてイゼットフェニックスとタイタンシフトと親和が1名ずつという結果だった。これはロンドンマリガンやデッキリスト公開の影響を色濃く受けていると断言してもいいだろう。
では早速、各デッキを掘り下げてみていこう。
人間
4 《古代の聖塔》
4 《魂の洞窟》
4 《地平線の梢》
4 《手付かずの領土》
2 《金属海の沿岸》
-土地 (19)- 4 《教区の勇者》
4 《貴族の教主》
4 《翻弄する魔道士》
4 《幻影の像》
4 《スレイベンの守護者、サリア》
4 《サリアの副官》
3 《帆凧の掠め盗り》
4 《カマキリの乗り手》
4 《反射魔道士》
2 《民兵のラッパ手》
-クリーチャー (37)-
3 《拘留代理人》
2 《減衰球》
1 《ガドック・ティーグ》
1 《配分の領事、カンバール》
1 《民兵のラッパ手》
1 《罪の収集者》
1 《四肢切断》
1 《虚空の杯》
1 《墓掘りの檻》
-サイドボード (15)-
MPLプレイヤーであるブライアン・ブラウン=デュイン/Brian Braun-Duinも使用し、今回最も多くのプレイヤーをプレイオフに送り込んだのがこの5色人間というデッキだ。今回のミシックチャンピオンシップにおいては、勝ち組のデッキといえるだろう。
なぜ人間がここまで勝てたのか。その秘密は、やはりというか当然というべきか、ロンドンマリガンとデッキリスト公開にあるようだ。
ロンドンマリガンによって《霊気の薬瓶》キープがしやすく、その際に不要な土地をデッキに戻せるため、その恩恵を強く受けている。また、デッキリスト公開によって《翻弄する魔道士》をいつも以上に強く使えることも、人間というデッキをプレイオフに送り込んだ一因だろう。
トロン
これまたMPLプレイヤーである、アレクサンダー・ヘイン/Alexander Hayneが選択したのは、今回のミシックチャンピオンシップで最多勢力であったトロンだ。事前予想の段階から今大会優勝デッキの最有力候補として噂されていたトロンからは、その前評判通り2名のプレイヤーがプレイオフへと進出した。
トロンの特徴はなんといってもブン回りに必要なカード枚数が圧倒的に少ないことが挙げられる。それゆえに、非常に今回のロンドンマリガンとの相性が良いのだ。
特殊ルールの恩恵を最も強く受けていると言われるトロンは、その他のアーキタイプを使用したプレイヤーから非常に強く意識された存在であったことが、サイドボードに採用された《減衰球/Damping Sphere》の枚数からも伺える。
大げさかもしれないが今大会はトロンを中心に回っていた大会といっても過言ではないのかもしれない。
イゼットフェニックス
我らがハビエル・ドミンゲスが使用したのはイゼットフェニックスだ。直近の大会では常に高い使用率であったイゼットフェニックスだが、今回の特殊ルールの恩恵を受けにくいということもあり本大会ではトップメタとはならなかった。
しかし、その高いデッキパワーを駆使してハビエルは見事プレイオフへと歩を進めた。
サイドボードに目をやると、通常よりやや多い対トロンカードが見受けられる。これは正しいメタ読みが出来る地力があったからこその結果だろう。恐らく、最多勢力であるトロンを倒し、ここまで勝ち上がってきたのだろう。
タイタンシフト
2 《森》
4 《燃えがらの林間地》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《樹木茂る山麓》
3 《吹きさらしの荒野》
4 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》
-土地 (27)- 4 《桜族の長老》
4 《原始のタイタン》
-クリーチャー (8)-
3 《稲妻》
4 《遥か見》
4 《明日への探索》
4 《風景の変容》
3 《ムウォンヴーリーの酸苔》
1 《仕組まれた爆薬》
3 《大祖始の遺産》
1 《反逆の先導者、チャンドラ》
-呪文 (25)-
Hareruya Hopesのティエン・ヌウェンが使用したのはタイタンシフトだ。タイタンシフトは今回の特殊ルールの恩恵を受けにくく、事前予想ではあまり良い選択ではないとされていた。
ティエンはその下馬評を見事ひっくり返しプレイオフへと進出した。その要因を探るため、デッキリストに目をやると何やらあまり見かけない名前がそこにはあった。
《ムウォンヴーリーの酸苔》。たまに採用されることもあるが、少しニッチなカードだ。しかしこれが見事にメタゲームにはまっている。
今回の最多勢力、トロンに強いことはもちろんのこと、最近はやりの青白コントロールに対してもマナ差をつけるアクションは非常に強力だ。
特殊ルールの恩恵こそ受けにくいものの、その恩恵を存分に受け増えるであろうデッキに強いデッキ。一歩先を行ったメタゲーム読みの勝利か。
親和
3 《産業の塔》
4 《ちらつき蛾の生息地》
4 《ダークスティールの城塞》
4 《墨蛾の生息地》
-土地 (17)- 4 《羽ばたき飛行機械》
2 《メムナイト》
4 《信号の邪魔者》
4 《電結の荒廃者》
4 《鋼の監視者》
4 《大霊堂のスカージ》
1 《エーテリウムの達人》
-クリーチャー (23)-
スイスラウンド8位で滑り込んだマシュー・スパーリング/Matthew Sperlingの使用デッキは親和だ。鱗親和が出来てからあまり日の目を見ることが少なくなっていたデッキだが、メタゲーム上の立ち位置の良さから復権しつつあるデッキである。
こちらもティエンのタイタンシフトと同じく、最多勢力トロンに対して有利なデッキだ。トロンや人間のような軽い干渉手段を持たないデッキには滅法強く、今回のメタゲームブレイクダウンを見るに立ち位置はかなり良かったといえるだろう。
まとめ
以上がトップ8デッキリスト雑感だ。こうして見るとそれぞれのデッキに勝つだけの理由があり、デッキ選択はもちろんそのリスト1枚1枚が、非常に考えられていると感じた。
特殊ルールや『灯争大戦』ドラフトで慌ただしいなかでも、正確無比な”解答”を導き出せる腕前にプロたちのプロたる所以をみた。果たしてその中からトロフィーを手にするのはどのデッキなのか。その結果を楽しみにしよう。