Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/05/29)
柔軟な対応力を備えたエスパーヒーロー
やぁ、みんな!元気かい?スタンダードは無限の可能性を秘めているね!『灯争大戦』が発売されて1か月ほど経つけど、その間に活躍したデッキを思い出せないほどさ。今後も多くの大会を控えているから、今回は変幻自在なデッキを分析していこう。
もしみんながミッドレンジ好きで、メタゲームに応じて週ごとにチューニング、アップデートすることも好きなら、エスパーヒーローがピッタリだ。このデッキの戦略はあらゆるデッキに有利に戦えるものだと思っているよ。同時に全方位に有利をつけることはできないけどね。だから、有利に戦いたい相手を選択しなければならない。仮想敵の選択が重要ってことだね。
一般的なデッキリストに基づくマッチ相性
ピオトル・グロゴゥスキ/Piotr Glogowskiやブライアン・ブラウン=デュイン/Brian Braun-Duinはマジック・プロリーグでエスパーヒーローを選択し、環境の変化に合わせてデッキも調整していた。また、Magic Online上でMisplacedgingerとして知られるデレック・パイト/Derek Piteやマルシオ・カルヴァリョ/Marcio CarvalhoはMagic Online Championship(MOCS)ファイナルに参加し、それぞれ大きく異なるアプローチで構築されたエスパーヒーローを持ち込んでいる。
では現在のメタゲームはどのようになっているのだろうか?
最近はプレインズウォーカーデッキが大きな成功を収めている(ジェスカイ、エスパー、4色《戦慄衆の指揮》など)。赤単アグロはいまだにトップの使用率だし、イゼットフェニックスも健在だ。エスパーコントロールやエスパーヒーロー、白系アグロは以前より少し後退してしまっている状態にある。使用率はやや劣るものの、ネクサス、グルールアグロ、バントフラッシュ、グリクシスなども散見される。
一般的なエスパーヒーローのデッキリストでの相性は以下の通りだ。
カード選択:メインデッキ
続いては、デッキを構成するカードを1枚1枚見ていこう。
まずは「ほぼ自動的に入るカード」からだ。
必須枠
《第1管区の勇士》:4枚
僕はエスパーヒーローがこのカードから成り立っているとは思わない。だってこのカードを引けていなくても完璧に機能するからね。とはいえ、《第1管区の勇士》はデッキ内のほぼすべてのカードと相性が良い。プレインズウォーカーを守るトークンを並べたり、《正気泥棒》が空から攻撃する間にも地上を固めたり、単体でコントロールデッキに全体除去を要求する脅威にもなる。白系アグロに相性が良いのはこいつのおかげさ。
《正気泥棒》:4枚
かなり振れ幅の大きい1枚だ。《ショック》で除去されてテンポを大きく損なうこともあるし、除去できないと《ハイドロイド混成体》とお見合いすることもある。かと思えば、阻むものがないゲームでは単体で決定づける。
2ターン目に《思考消去》を唱えれば《正気泥棒》が上振れのルートをたどる可能性は高くなる。また、相手が2ターン目の《第1管区の勇士》を除去することに躍起になれば、《正気泥棒》が下振れする確率は下がる。だからエスパーヒーローにおける《正気泥棒》はとても強いカードなんだ。
《思考消去》:4枚
とても強いカードであることは言うまでもないだろうね。しかも《第1管区の勇士》の能力を誘発できるし、《時を解す者、テフェリー》の[+1]能力で相手のドローステップに使えるから、評価はAプラスだ。
《時を解す者、テフェリー》:3枚
少なくともテンポを獲得できる素晴らしいカードだし、インスタントに比重を置いている相手には常在型能力も大きなメリットになる。《荒野の再生》やあらゆる打ち消し呪文が惨めな思いをするだろう。また、[+1]、[-3]能力のいずれも手札破壊呪文と相性が良いし、[-3]能力で《ケイヤの誓い》を再利用したりもできる。
《ドミナリアの英雄、テフェリー》:3枚
以前から活躍していた5マナのテフェリーは、ゲームに決着をつけるパワーをデッキに与えてくれる。エスパーヒーローはプレインズウォーカーがもたらすカードアドバンテージの必要性が高いんだ。
《暴君の嘲笑》:2枚
十分な質を持った除去だ。仮に《第1管区の勇士》を採用していなかったら、ここの枠は《喪心》になるだろうけど、自軍のクリーチャーを手札に戻せる能力が有用な状況も時々あるんだ。
《屈辱》:2枚
汎用性が高く、インスタントタイミングで使える多色の除去。《実験の狂乱》や《アズカンタの探索》など、極力対面したくないエンチャントも破壊できる。3マナは妥当な代償だから喜んで支払おう。
《ケイヤの誓い》:1枚
小型のクリーチャーを除去できるし、プレインズウォーカーも退場させられる柔軟なエンチャントだ。プレインズウォーカーが多いエスパーヒーローのようなデッキなら、2番目の能力も大きな意味を持つ。
上記の画像のカードは、大抵のデッキリストで採用されている。しかし、ここから見ていくカード、特に4マナ域のものはデッキリスト間に違いが見られやすい部分だ。
自由枠
《復讐に燃えた血王、ソリン》
あまり目を引くプレインズウォーカーではないけど、両極端な状況で働きを見せる。アグロに対してはライフ回復と高い忠誠度という面が、コントロールに対してはクリーチャーを復活させるという面が有効なんだ。《人質取り》や《拘留代理人》が採用されているなら《復讐に燃えた血王、ソリン》の価値は高まる。こういったクリーチャーは盤面に残る必要性が高いからね。
《人質取り》
《ハイドロイド混成体》や白系アグロが多い環境なら、メインデッキにも入る可能性があるんじゃないかな。そういった環境じゃないならサイドボードに入れるだろう。
《秤の熾天使》
当初は評価が高かったんだけど、次第に嫌いになっていった。ほとんどのデッキが《溶岩コイル》かテフェリーたちを使っているんだ。正義の天使にとって最適の環境じゃないね。
《精鋭護衛魔道士》
赤単アグロとの一戦で頼もしいし、一度もガッカリしたことがない(相手が《覆いを割く者、ナーセット》をコントロールしていたらガッカリするかもしれないけどね)。手堅い選択肢だから、採用率も高まってきている。
《聖堂の鐘憑き》
赤単アグロに対してさらに頼りになるクリーチャーで、こちらも常に期待にこたえてくれた。MOCSでマルシオがメインデッキに4枚も入れていたのは驚いたね。不利だった赤単アグロとの相性も有利になるだろう。
《拘留代理人》
1/3というサイズはあまり価値がないことが普通だし、除去もされやすいから、個人的に微妙だと思っている。《復讐に燃えた血王、ソリン》の採用枚数が多ければ評価は上がるけど、僕はサイドボードに入れておきたいクリーチャーだと思うよ。
《人知を超えるもの、ウギン》、《戦慄衆の将軍、リリアナ》
大体のデッキリストは、6マナのプレインズウォーカーを1枚か2枚採用している。《戦慄衆の将軍、リリアナ》はカードパワーが高く、脅威的なアドバンテージによって単体でゲームの勝敗を決めてしまうこともある。他方、《人知を超えるもの、ウギン》は一番手堅く、相手のプレインズウォーカーや《実験の狂乱》を破壊し、窮地から救ってくれるタイミングも多いだろう。今のようにプレインズウォーカーに満ちた環境なら《人知を超えるもの、ウギン》にこだわりたいね。
《強迫》
MOCSのマルシオのリストにはメインデッキに《強迫》が2枚入っていたけど、とても良い発想だと思った。プレインズウォーカーや《戦慄衆の指揮》が支配する世界なら、手札破壊呪文を増量させたいからね。それに《時を解す者、テフェリー》の[+1]能力を使えば相手のドローフェイズにソーサリーを唱えられるから、手札破壊呪文が腐ることも減る。最も相性の良い白系アグロに対して効果抜群のカードではないけど、《強迫》の対象になるカードもそれなりに入っているね。
《灯の燼滅》
最初は嫌いなカードだったけど、イゼットフェニックスが多少人気になってきたからもう一度試してみたいね。1枚が適正枚数だと思う。
今おすすめの構成はこんな感じだね。クリーチャーを使わないデッキも多いから除去の枚数を抑え、アグロ対策には4マナ域によるライフ回復に寄せている。こうすればコントロールに対して腐るカードが減るからね。
それから、基本土地を1枚しか使わない構成はおすすめしない。挑戦的なマナベースの影響で、《廃墟の地》が環境に増えてきているからね。
カード選択:サイドボード
ここからはサイドボードの構成について解説しよう。
《覆いを割く者、ナーセット》
主にイゼットフェニックス対策だけど、大抵のコントロールや《ハイドロイド混成体》デッキにも効果抜群だ。
《古呪》
プレインズウォーカー愛好家の多さを考えれば、《古呪》が1枚以下の構成で大会に参加したくないね。それぐらいこのカードは強力なんだ。
《ドビンの拒否権》
コントロールやプレインズウォーカーデッキに強い効果を持っているのは当然だけど、実際にはこれらのデッキは《時を解す者、テフェリー》を採用してしまっている。特にサイドボード後は《時を解す者、テフェリー》を出されて腐ってしまうこともあるから、3枚以上にしたくないカードだ。
《強迫》
75枚の内、2~3枚に抑えた方が良い。《思考消去》を4枚入れているから、手札破壊呪文の枚数があまり多すぎても困るんだ。《ドビンの拒否権》が《時を解す者、テフェリー》に弱かったように、《強迫》も《伝承の収集者、タミヨウ》に弱いという弱点を抱えている。
《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》
1枚だけ入れておきたい。上手くいけば《弧光のフェニックス》や《約束の終焉》を妨害できる。それに、《戦慄衆の指揮》デッキや白系アグロ相手にもサイドインできるナイスなカードだ。
《永遠神の投入》
赤単アグロのアグロ戦略を打ち砕くこと間違いなしだ。でも《実験の狂乱》による呪文連打には警戒しておく必要がある。もし《秤の熾天使》を採用するなら、《永遠神の投入》の枠に《黎明をもたらす者ライラ》を入れると良いだろう。
《渇望の時》
序盤の妨害要素もある程度は必要だ。アグロとの一戦で、最初の数ターンにも若干の余裕を持てるようになるからね。後手のときに必要性が高いだろう。
さっき《人質取り》や《拘留代理人》、《灯の燼滅》、《聖堂の鐘憑き》などを紹介したけど、こういったカードもサイドボードに入り得る。僕がサイドボードを組むならこんな感じになるね。
デッキリストとサイドボードガイド
1 《沼》
4 《神無き祭殿》
4 《神聖なる泉》
4 《湿った墓》
4 《水没した地下墓地》
4 《孤立した礼拝堂》
3 《氷河の城砦》
-土地 (25)- 4 《第1管区の勇士》
4 《正気泥棒》
3 《精鋭護衛魔道士》
1 《聖堂の鐘憑き》
-クリーチャー (12)-
4 《思考消去》
2 《暴君の嘲笑》
1 《灯の燼滅》
2 《屈辱》
2 《ケイヤの誓い》
3 《時を解す者、テフェリー》
2 《復讐に燃えた血王、ソリン》
3 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
2 《人知を超えるもの、ウギン》
-呪文 (23)-
2 《ドビンの拒否権》
2 《渇望の時》
2 《古呪》
2 《覆いを割く者、ナーセット》
1 《拘留代理人》
1 《強迫》
1 《灯の燼滅》
1 《永遠神の投入》
1 《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》
-サイドボード (15)-
赤単アグロ
対 赤単アグロ
白系アグロ
対 白系アグロ
ジェスカイ / エスパープレインズウォーカー
対 ジェスカイ / エスパープレインズウォーカー
イゼットフェニックス
対 イゼットフェニックス
《戦慄衆の指揮》
対 《戦慄衆の指揮》
ミラーマッチ
対 ミラーマッチ(先手)
対 ミラーマッチ(後手)
エスパーコントロール
対 エスパーコントロール
《運命のきずな》
対 《運命のきずな》
バントフラッシュ
対 バントフラッシュ
グルールアグロ
対 グルールアグロ
おわりに
今のスタンダードは本当に楽しいから、みんなも楽しんで欲しい。環境の変化に応じて調整を加えることも忘れずにね!
今回も読んでくれてありがとう!またね!
セバスティアン・ポッツォ (Twitter)