Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/07/04)
はじめに
みなさんこんにちは。
『モダンホライゾン』の発売から1か月が経とうとしていますが、『基本セット2020』の発売も間近に迫ってきています。『モダンホライゾン』はモダンの環境を変化させることを目的としてデザインされ(実際に《甦る死滅都市、ホガーク》がその役割を果たしていますが)、新たな基本セットもモダンに変化をもたらす可能性があることを忘れてはなりません。
全カードリストが先週に公開されていますので、今回は『基本セット2020』から化けるかもしれないカードたちをひとつひとつ見ていきましょう。
注目のカード10選
《帰寂からの帰還》
一見したところでは、《不屈の自然》2枚分に相当するように思えます。しかし、最初の2ターンでフェッチランドを連続して置く必要があるうえに、1ターン目にフェッチランドは使えないという条件付きです。モダンで1ターン目にマナが使えないというのは、決して小さな代償ではありません。
このカードが実際に活躍するのは、《廃墟の地》や《幽霊街》を使うヘイトベアー戦術ではないでしょうか。相手の基本土地を枯らせれば、《帰寂からの帰還》が《不毛の大地》2枚分になります!
《幽体の船乗り》
スピリットデッキが待ちに待った1マナ域となれるでしょうか?現在のバントスピリットは《貴族の教主》を使うことをひとつの目的として緑を含めていますが、他のデッキパーツとはほとんどシナジーがない1マナ域です。
他方、《幽体の船乗り》は瞬速を持つため、インスタントタイミングで動くスピリットデッキと噛み合っています。マナを構えたままターンを渡すことは、脅威的なプレイであり、その結果としてテンポアドバンテージを獲得できることもあります。このようなプレイがあることを認識し、実際に使えるようになっておくと良いでしょう。インスタントタイミングで動くデッキは相手の動きに合わせて常に最適なプレイができるのに対し、相手は警戒して弱めのプレイから入らなければなりません。まさにこれこそが、スピリットのようなデッキの王道の勝ち方なのです。
また、余剰のマナを使えるドロー能力は、終盤戦を戦う糧となります。もっとも、今のモダンで6ターン目まで生き延びようとするのは、求めすぎかもしれませんけどね。
《対称な対応》
《吸血の教示者》の再来です!モダンは特定のカードがカギを握っているのが常であり、サーチ効果は大きな意味を持ちます。ただ、相手にも効果が及ぶため、悪用しづらいデザインです。サーチしたカードを何らかの方法でドローし、ターンを返すことなく勝利することが定石となるのではないでしょうか。
たとえば、アドグレイスは2マナでサーチしたカードを手札に加えられます(1マナで《対称な対応》、もう1マナでキャントリップ呪文)。また、《御霊の復讐》デッキも似た動きが可能です。《傲慢な新生子》は《対称な対応》と相性が抜群で、1ターン目にドロー手段である《傲慢な新生子》に先行投資しておけば、2ターン目に《対称な対応》でサーチしたカードをマナを使うことなく手札に加えられます。
《炎の侍祭、チャンドラ》
《瞬唱の魔道士》を彷彿とさせます。3マナはやや重いですが、1マナでも余っていれば《稲妻》などを再利用し、即座に盤面に影響を与えることができるのです。1ターンでも生き残ればさらなるアドバンテージにつながり、放置されればその傾向は一層強まります。まだ実際に試したわけではないですが、この一連のプレイはお膳立てをほとんど必要とないですし、一級品の強さでしょう。
具体的には《炎の侍祭、チャンドラ》はマルドゥパイロマンサーやジャンドに加わるのではないかと思います。黒ベースのミッドレンジは現在の立ち位置が厳しいですが、近日中に何らかの禁止改定があれば、この苦境を脱せるでしょう。《炎の侍祭、チャンドラ》がモダンで居場所を見つけるのはそう難しくないはずです。
《ゴブリンの首謀者》
本当にゴブリンデッキがモダンで組めるようになる日が来たのでしょうか?部族デッキは、盤面に膨大な数のクリーチャーを展開し、シナジーを発生させることを狙いとしています。ですから、相手が除去でシナジーの達成を妨害してくる場合、長期戦を戦うためのカードアドバンテージ源が重要となるのです。実際のところ、エルフでは《エルフの幻想家》、マーフォークでは《銀エラの達人》、人間では《帆凧の掠め盗り》がキーカードとなっています。
ゴブリンは人間などの部族デッキに比べれば見劣りしてしまいますが、《ゴブリンの首謀者》はアーキタイプ成立に向けて大きな一歩となるでしょう。
《雷族の呼び覚まし》
《ボール・ライトニング》や《稲妻の骨精霊》を毎ターン蘇生できます。この動きがモダンで通用するのかはわかりませんが、6/1トランプルが毎ターン攻撃するのは、赤が好きなプレイヤーにとって夢のような動きでしょう。
《発掘》、《立身/出世》、《信仰無き物あさり》を盛り込み、《炎族の先触れ》でエレメンタルクリーチャーをサーチできるようにしたデッキが出てくる可能性があります。単なるファンデッキかもしれませんが、ぜひ実際に動いているところを見てみたいですね。
《豊穣の力線》
自分のデッキの動きを加速させる「力戦」であり、能動的であることには価値があります。マナクリーチャーを使うデッキならばロケットスタートを切ることができるからです。どんなカードであれ、ゲームの開始時点からコストなしで動けるのは、常軌を逸した強さである可能性があります。《豊穣の力線》の起動型能力はマナの注ぎ口となるため、発生するマナが無駄になることはないでしょう。
コンボ型のエルフにとって大きな強化となるかもしれません。懸念点としては、カード1枚を消費してしまうことで、デッキの安定性が損なわれるおそれがあることです。多少の時間をかければ、適切な構築、適切なバランスが見つかることでしょう。
《死体騎士》
5~8枚目の《むら気な召使い》としての使い道が考えられます。このカードの登場により、《先祖の結集》や《戦列への復帰》を採用したゾンビデッキが現実的になったのです。ホガークヴァインでご存知の通り、ゾンビには《縫い師への供給者》、《墓所這い》、《屍肉喰らい》といった優秀なクリーチャーが揃っています。それだけでなく、《墓所破り》や『モダンホライゾン』で新たに加わった《アンデッドの占い師》がいるため、カードアドバンテージを獲得することにも抜かりはありません。
禁止改定によって墓地戦術の過剰な強さが抑えられるようなことがあれば、ゾンビデッキが密かにTier2にふさわしいデッキになる可能性があります。
《死者の原野》
《死者の原野》は《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》系の効果を持っていて、機能させるには土地を伸ばしていく必要があります。(認めたくない人もいるかもしれませんが)アミュレットタイタンは鳴りを潜めているのが現状であり、《死者の原野》が待望のもうひとつの勝ち筋となるかもしれません。
アミュレットタイタンと対面した相手は、必ずや全てのリソースを使って《原始のタイタン》を止めたり、トップスピードでゲームを押し切ろうとしてくるでしょう。そこで《死者の原野》があれば、速度で勝負してくる相手にはブロッカーを複数並べることが可能です。あるいは、リソースの枯渇した相手に《桜族の斥候》や《迷える探求者、梓》によって1ターンに複数のゾンビトークンを展開し、その軍勢で相手を踏み倒すプランも使えるようになります。
《睡蓮の原野》
こちらもアミュレットタイタンの強化パーツです。《精力の護符》が設置されていれば、《シミックの成長室》などのバウンスランドはプレイしたターンから2マナを生成しますが、《睡蓮の原野》は3マナも生み出します。さらなるマナ加速によって実現可能になった動きも多いでしょう。アミュレットタイタンに1枚挿しで安定して採用されると思います。
さいごに
『基本セット2020』からモダンで注目のカードをご紹介してきました。現在のモダンは《甦る死滅都市、ホガーク》が圧倒的な強さを見せており、一種の異常な状態にあります。唯一望みがあるとすれば、ホガークヴァイン以上に他のデッキがロンドンマリガンの恩恵を受けることぐらいでしょう。しかし、それが現実になる見込みは非常に低いでしょうから、1~2か月以内に何かしらの禁止が出る可能性が濃厚です。
また、開催目前まで迫っているミシックチャンピオンシップ・バルセロナ2019のフォーマットはモダンとなっています。事前の禁止改定で何も変更がなければ、当日のメタゲームは《新生化》 VS 《甦る死滅都市、ホガーク》のようなもので一色になるでしょう。
私はモダンで飛びぬけたデッキがあることを楽しめる人間ですが、コミュニティも同様の傾向にあるのかは疑問が残ります。というのも、モダンというフォーマットは、各々がお気に入りのデッキを使い続け、そのときそのときのメタゲームに合わせて調整していくものだからです。
モダンが良い方向に向かうことを期待しましょう。