コヴァルスキ先生のモダン禁止改定講座

Grzegorz Kowalski

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2019/07/11)

朝礼

みなさんおはよう。

公式のアナウンスを見ての通り、モダンに素晴らしい変化が訪れた!

黄泉からの橋

なかにはこの変更を良く思わない人もいるだろう。だが、これが現実であり、立ち止まっているわけにはいかない。本日の講義では、この禁止改定がモダンにとってどんな意味があるのかなぜ私が素晴らしい変化だと思っているのか、そしてミシックチャンピオンシップ・バルセロナ2019にどんな影響が出るのかを取り扱う。

禁止改定の是非

大半のプレイヤーが禁止を快く思っていないことは知っているし、その理由にも納得がいく。ただ、モダンのように多くのセットが存在する広大なフォーマットでは、健全な環境を害するカードには禁止の鉄槌を下さなければならない。マジックは、昨今の競技ゲームとは性質が違う。ハースストーンやグウェントのようなオンラインゲームは、カードのテキストを変更したり、上方修正や下方修正するなど、カード間のバランスに対策を講じやすい。

しかし、マジックではこのような方法は使えない。一度印刷してしまえば、そのままの形で永久に残り続けるのだ(エラッタという例外があるが、あまり乱発するわけにはいかない。ゲームを破壊してしまうからだ。《稲妻》を2/2と印刷されたクリーチャーに使ったら、「あ、ドンマイ。ミスプレイだね。このクリーチャーは昨日のエラッタで4/4になったんだぜ」なんて言われたら、たまったもんじゃないだろう?)

今回は《黄泉からの橋》が鉄槌を食らうことになった。主にホガークヴァインを弱体化させることが目的だね。できることならさらに推し進めて、ネオブランドのような「ツイてたら1ターン/2ターンキルできるデッキ」からも禁止を出して欲しいと思っている。マジックは、互いの初手を比べて勝者を選ぶのではなく、もっとゲームを楽しむべきものだろう。

甦る死滅都市、ホガーク黄泉からの橋狂気の祭壇
アロサウルス乗り新生化グリセルブランド

モダンに起きる変化

虚空の力線貪欲な罠安らかなる眠り外科的摘出

禁止改定で勝者と敗者が出たことには間違いない。しかし、最大の勝者はモダンそのものではないだろうか。以前までは墓地対策カードを狂気じみた枚数で採用しなければならなかった。《虚空の力線》《貪欲な罠》、あるいは《安らかなる眠り》をサイドボードに4枚採用せずに競技大会に参加することはできなかったのだ。

青白コントロールに至っては、メインデッキにも《外科的摘出》を2枚入れていた。そして今、ホガークヴァインとの直接対決に勝てなかったデッキから復活を遂げるものが出てくるだろう。メタゲームは多様性を取り戻すことになるため、サイドボードの墓地対策を別のカードと入れ替え、さまざまな相手と戦えるようにできるのだ。

勝者たち

ドレッジ

《黄泉からの橋》の禁止で息を吹き返すデッキとしては、ドレッジが筆頭に挙がる。かつてのドレッジプレイヤーは、ここ1か月はホガークヴァインに乗り換えていた。《黄泉からの橋》の禁止は《秘蔵の縫合体》を愛するプレイヤーには何ら影響がない上に、改定直後は《安らかなる眠り》の採用枚数が減ると予想されるため、ドレッジは今回の変更で最も恩恵を受けることになるだろう。

秘蔵の縫合体信仰無き物あさり這い寄る恐怖

ウルザソプター

人間やウルザソプターのようなデッキを使うプレイヤーは増えるだろう。これらのデッキはホガークヴァインの高速展開への介入手段が乏しく、太刀打ちできるだけのクロックの速さもなかったため、メタゲーム外に追いやられていた。最も抑圧的だったデッキが退場したことから、復権するチャンスが巡ってきたと言える。《最高工匠卿、ウルザ》デッキはいまだに改良の余地があるため、法外な強さを持った構成が登場してくる可能性はある。

今までは《甦る死滅都市、ホガーク》を使う方が賢明であったため、《最高工匠卿、ウルザ》を研究する理由がなかったのだ。完成された構築が見つかれば、アイアンワークスの後継となる日がやってくるかもしれない。

最高工匠卿、ウルザ飛行機械の鋳造所弱者の剣

敗者たち

禁止改定で最も被害を受けたのはジャンドだろう。ミッドレンジは、メタゲームが予想しやすいときに本領を発揮する傾向にある。万能でいることはできないが、狙いをすませばどんな相手も打ち取ることができる。たとえばホガークヴァインがメタゲームを支配しているなら、サイドボードに《虚空の力線》《夢を引き裂く者、アショク》《外科的摘出》、加えてメインデッキに《虚無の呪文爆弾》を採用することだろう。

青白コントロールとは異なり、ジャンドには優良なクリーチャーが豊富なため、ホガークヴァインのサブプラン(小型クリーチャーで攻撃するプラン)は機能しない。したがって、ジャンド側が墓地対策を増量し、墓地シナジーが機能しなくなるサイドボード後はホガークヴァインに勝ち目はなかった。

今後はメタゲームが移り変わっていき、モダンでは色々なデッキが活躍することだろう。ジャンドが環境に適応するには時間がかかるはずだ。

タルモゴイフレンと六番ヴェールのリリアナ

ミシックチャンピオンシップ・バルセロナ2019はどうなる?

最後になるが、これも忘れてはならない。禁止改定によってミシックチャンピオンシップはデッキを考案するいい機会になったのだ。モダンは変化を遂げ、目に見えてメタゲームは存在しなくなった。誰しもが新しい環境への適応方法を模索している……一般の視聴者からすれば、最高のイベントとなるだろう!

退屈なホガークヴァインのミラーマッチもなければ、特定のデッキが大会の30%を占めることもない。いわば新鮮なフォーマットで最高のショーが見られる。カバレージは必見だ!お気に入りのプレイヤーを応援しようじゃないか!

ではまた次回の講義で。

グジェゴジュ・コヴァルスキ (Twitter / Twitch)

この記事内で掲載されたカード

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Grzegorz Kowalski ポーランド出身。 【グランプリ・リール2012】、【グランプリ・ブリュッセル2015】でトップ8入賞。【グランプリ・サンティアゴ2017】では見事準優勝を果たした。 その高い実力はプロツアーでも発揮され、多数の上位入賞、マネーフィニッシュを経験している。 Grzegorz Kowalskiの記事はこちら