Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/07/26)
はじめに
みなさんこんにちは。今回は『モダンホライゾン』をドラフトしていきましょう!
1パック目の8手目までをシミュレーションし、4人のHareruya Prosたちに何をピックするか聞いてみました。
この度の記事に参加してくれた親切なプレイヤーたちを紹介しましょう。
彼らについてもっと詳しく知りたい方はHareruya Prosの選手ページをご覧ください。
プロの中でもどれだけ意見が分かれるのか。要注目です!
1手目
パスカル・フィーレン
『モダンホライゾン』ドラフトはシナジーの重要性が高いですが、《終異種》はカードパワーがあまりにも高く、単体でゲームを決められます。
リー・シー・ティエン
《炎恐怖症》以外にも《終異種》、《変わり身ののけ者》、《鞍載せ霧氷鹿》の3種が候補でした。黒のカードたちを取らなかったのは、下家が黒が空いていると誤解してしまうリスクを嫌ったからです。また、除去を優先させたかったので、高性能な2マナ域は見送ることにしました。
グレゴリー・オレンジ
《終異種》と《鞍載せ霧氷鹿》はほぼ互角だと思います。《鞍載せ霧氷鹿》は基本的に2マナ4/4の氷雪パーマネントですが、《終異種》は対処に困るレアです。
ゴンサロ・ピント
《終異種》はボムレアであると同時に、私の好きなアーキタイプである青黒忍者と黒赤サクリファイスのどちらでも使える色です。《鞍載せ霧氷鹿》は強力なアンコモンですし、《炎恐怖症》と《母熊》は赤と緑のトップコモンですが、《終異種》の強さには遠く及びません。
2手目
パスカル・フィーレン
《針葉樹ワーム》は氷雪の要素が強いデッキであれば驚くべきクリーチャーとなりますが、ここでは《暴食するナメクジ》を優先させましょう。この環境ではマナカーブが極めて重要であり、《暴食するナメクジ》はこれまでのドラフトでも立派な活躍を見せてくれています。
リー・シー・ティエン
レアが抜けているだけので、上家から明確なシグナルを得ることはできません。《暴食するナメクジ》と《新月の忍者》があり、1パック目に引き続いて黒の強いカードが2枚も含まれています。この2枚も下家に流し、今後は黒を候補から完全に外すことにしましょう。
残る選択肢は《ロウクスの古参兵》か《針葉樹ワーム》で、いずれもそのマナ域で優れたクリーチャーです。ただ、氷雪は初手の赤と相性があまり良くないので、《針葉樹ワーム》には不安が残ります。青緑氷雪タッチ赤かシンプルなボロスアグロになるでしょうが、ドラフトのしやすさを重視して《ロウクスの古参兵》をピックしました。
グレゴリー・オレンジ
《針葉樹ワーム》は氷雪パーマネントを必要としますが、そこまで数を用意しなくても手を付けられなくなる脅威へと変貌します。
ゴンサロ・ピント
パック内のベストカードは《針葉樹ワーム》ですが、黒以外の色に手を出すほど《暴食するナメクジ》とカードパワーに大きな差はありません。《暴食するナメクジ》は特に意識せずとも3/6にはなります。
また、青黒忍者に優秀な2マナ域が欠かせませんが、時折不足してしまうこともあるので、ここで確保しておく価値はあるでしょう。
3手目
パスカル・フィーレン
《雷鳴のジン》、《花の壁》、《凶暴な一振り》。一級品のカードが3枚もあるパックが回ってきました。《凶暴な一振り》は緑のデッキがテンポを獲得できる手段であり、何枚でもデッキに入る除去です。
リー・シー・ティエン
《雷鳴のジン》のカードパワーはあまりにも高いので見過ごすわけにはいきません。1パック目の3手目で取れたので、これは素直にシグナルとして受け取って良いでしょう。
グレゴリー・オレンジ
《凶暴な一振り》は素晴らしい格闘呪文です。《雷鳴のジン》の方が若干強いと思いますが、ここまでのピックと全く噛み合っていません。
ゴンサロ・ピント
ここまでのピックを投げ捨てるような格好になりますが、《雷鳴のジン》にはそれだけの強さが備わっています。青赤ドローというアーキタイプは最近の私のお気に入りですし、そういった事情を差し置いても、2手目までのピックと相性が良いカードは特にありません。《イボ眼の魔女》はあまりにも平凡ですしね。
4手目
パスカル・フィーレン
選り取り見取りなパックですね。《春花のドルイド》を取り、最終的にどんな色になっても問題ないようにしておきましょう。現状では白以外の4色が選択肢だと思います。
リー・シー・ティエン
《マグマの陥没孔》も捨てがたいですが、《炎血の精霊》は大抵2:1交換できます。白赤では4マナで唱えづらいとはいえ、それでも十分なクリーチャーです。《炎血の精霊》のマナコストを軽減するためにも、青赤で重要な「カードを2枚引く」という条件を達成するためにも、《孤立した砂州》のようなサイクリングランドは優先してピックしていきましょう。
グレゴリー・オレンジ
《凶暴な一振り》と相性抜群のクリーチャーを取りましょう。《春花のドルイド》も緑の優良カードですから、そちらを優先するのもアリですね。
ゴンサロ・ピント
実に難しいピックですね。《炎血の精霊》と《マグマの陥没孔》は、2手目までのカードと合わせて赤黒に使えますし、3手目の《雷鳴のジン》と合わせて青赤を組む際にも有用ですから、赤のいずれかのカードを取るパターンも考えられます。
黒赤サクリファイスで方向性を固めたいのならば、《屍肉喰らい》が最善の選択となるでしょう。とはいえ、《小型マスティコア》はどんな結果になったとしてもデッキに入る素晴らしいアーティファクトです。
5手目
パスカル・フィーレン
《クローサの大牙獣》をピックします。ここまでのパックで氷雪土地が取られた形跡が一度もないので、氷雪多色デッキを組める可能性があります。
リー・シー・ティエン
《多角ミノタウルス》は青赤で活躍を期待できますが、4手目でお話した通り《孤立した砂州》はデッキに噛み合っています。ここでサイクリングランドを取っておけば、さらなる《炎血の精霊》を取りやすくなり、高マナ域を過剰ピックしているという心配もなくなります。
グレゴリー・オレンジ
《クローサの大牙獣》によるアドバンテージを見逃すわけにはいきません。
ゴンサロ・ピント
2枚目の《屍肉喰らい》が流れてきたということは、おそらく黒赤サクリファイスは空いているので、ここで方向性を絞り込もうと思います。《多角ミノタウルス》をピックして青赤に行っても良いですが、私は黒赤の方が好きですね。
6手目
パスカル・フィーレン
《母熊》は優良な2マナ域であり、緑ならほぼ間違いなく入ります。
リー・シー・ティエン
4マナ域として申し分ありませんし、土地が伸びた終盤には7マナ域のフィニッシャーとして機能し、相手のライフを一気に削ることができます。
グレゴリー・オレンジ
先ほどは《春花のドルイド》とパック内に同居していましたが、今回は目立ったライバルがいません。《母熊》が唯一の選択肢でしょう。
ゴンサロ・ピント
黒赤サクリファイスに飛び込んだので、これは簡単なピックでした。他に取りたいカードはないですしね。あり得るとすれば《イボ眼の魔女》ですが、これは後々ピックできるでしょう。
7手目
パスカル・フィーレン
特別お気に入りだという訳ではありませんが、《紆余曲折》を選択しました。自分の山札を削るアーキタイプはややゲームスピードが遅いと個人的に思っているものの、現状で狙える可能性があるアーキタイプです。
リー・シー・ティエン
ダメージを押し通す手段としても、相手の飛行クリーチャーに対するブロッカーとしても頼りになります。先ほどピックした《ゴブリンの戦闘隊》は《ボガーダンの龍心》のエサとなってくれるでしょう。
グレゴリー・オレンジ
クリーチャーが多いデッキならば《紆余曲折》は悪くありません。土地を選んで《母熊》が墓地に送れたら最高ですね。
ゴンサロ・ピント
先ほどと同様に迷う余地はないですね。黒赤でピックに値するカードは他にありません。
8手目
パスカル・フィーレン
《貪欲な巨人》はマナレシオに優れた巨大なクリーチャーです。パック内にはプレイアブルなカードが他に2枚もありますから、赤に移るべきタイミングだと思います。反対に、黒はあまり空いている印象がないので諦めるべきかもしれません。
リー・シー・ティエン
《Juzám Djinn》は現代でも《Juzám Djinn》です。フィニッシャーになることも多いでしょう。
グレゴリー・オレンジ
《紆余曲折》はデッキに多く入れるものではないので、ドラフトの早い段階から複数枚取る必要はないでしょう。《貪欲な巨人》は《第一球層のガルガンチュア》よりやや点数が高いですが、できることなら《終異種》を使いたいですし、《第一球層のガルガンチュア》もそんなに弱いカードではありません。
ゴンサロ・ピント
《貪欲な巨人》は黒赤サクリファイスで大きなシナジーは見込めず、赤のダブルシンボルも《終異種》とマッチしていません。4ターン目に着地すれば《貪欲な巨人》は依然として立派な脅威となりますが、《溶岩の投げ矢》の方がデッキの方向性と噛み合っていますし、マナベースの観点からも唱えやすいものとなっています。
まとめ
『モダンホライゾン』はシナジー満載のリミテッド環境です。純粋なカードパワーではなく、アーキタイプの方向性を考慮することでピックは難しくなります。だからこそ4人のプロたちはこれほどまでに異なる判断を下したのです。