メタゲームへの適応 ~MPLでジェスカイプレインズウォーカーを使った理由~

Luis Salvatto

Translated by Ryosuke Igarashi

原文はこちら
(掲載日 2019/08/23)

「死のグループ」

ある日、俺は「死のグループ」(サッカーのワールドカップで使われている言葉だ)へ配属されるという通知を受けたんだ……。そう、とてつもないプレイヤーしかいないグループだ!

スケジュールは以下のようになっていた。

スケジュール 対戦相手
月曜日 10時 マーティン・ジュザ
月曜日 12時 セス・マンフィールド
月曜日 13時 エリック・フローリッヒ
月曜日 14時 アレクサンダー・ヘイン
火曜日 15時 八十岡 翔太
火曜日 16時 ジェシカ・エステファン
水曜日 10時 パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ

前週のPearlディビジョンは6人が吸血鬼、あとはスケープシフトとディミーアコントロールが1人ずつと吸血鬼まみれの結果になった。当時は吸血鬼、スケープシフトがスタンダードのベストデッキで、今週はそれを考慮した上でのメタゲームになるだろうと考えていた。熟考を重ねた末、俺は忘れられていたデッキ、ジェスカイプレインズウォーカーに決めたんだ。各プレイヤーのリストはここから見られるようになっている。

崇高な工匠、サヒーリ謎めいた指導者、カズミナ主無き者、サルカン

なぜジェスカイプレインズウォーカー?

空渡りの野心家ゴブリンの鎖回しアダントの先兵

この週に最も多いと予想したデッキは、《山》が20枚入ったデッキだった。まさしく吸血鬼の天敵だからね。そんな赤単との相性が段違いに良かった、というのがジェスカイプレインズウォーカーを選んだ理由だ。

古呪

対戦相手のデッキ選択については、スケープシフト、吸血鬼や赤単がそれなりにばらけるだろうとも考えていた。だがここで最も重要なのは、だれもコントロールデッキを使わないだろうし、もし使用するにしろ《古呪》をたくさん採用したりはしないだろうということだ。《古呪》がなければ、ジェスカイプレインズウォーカーには手を焼くことになるだろうね。全てのプレインズウォーカーが自分の役割を果たし、最後には《主無き者、サルカン》がゲームを決めてくれる。

メタゲーム予想には自信があったものの、この読みはそこまで当たってもいなかったね。とはいえ、非常に相性のいいマッチアップが2つそれなりのマッチアップ(エスパーヒーロー)が3つ悪いマッチアップ(エスパーコントロール)が2つという結果になった。

次元間の標ドビンの拒否権軍勢の戦親分

コントロール相手は諦めることにしたよ。ライフを回復できる《次元間の標》を4枚マナ基盤に採用したかったため、マナベースの観点から《ドビンの拒否権》を採用する余裕がなく、代わりに予測していたデッキへの対策カードを入れていたんだ。《軍勢の戦親分》を採用しなかったのはミスで、4枚採用するべきだったと思っているよ。

「どうしてジェスカイプレインズウォーカーを今になって?」という質問をたくさんもらったが、《古呪》を何度も唱えられさえしなければこのデッキは本当に強いんだ。プレインズウォーカーたちが初めてみんなで力を合わせたときからそれは変わっていないね。だがこの記事はデッキについてではなく、いかにメタゲームへと取り組むかについて書いていこうと思う。

また、「フォーマットXの最強デッキって何?」と頻繁に尋ねられるが。その答えはほとんどいつも同じだ。モダンでは、自分が一番知っていて、安心できるデッキ。そしてスタンダードでは、メタゲームが全てだ。時には1週間、数日でメタが変わってしまうこともあるし、現在のスタンダードはいまだに解明されていないから、それゆえに実に多くの戦略からデッキを選ぶ必要がある。そこそこ、もしくは良質な成績を収めたたくさんの候補の中からね。

デッキの名前を出す必要もないのだが、スタンダードを最初から追ってるわけではない、という人たちのために説明しておこう。

アーキタイプ 該当のデッキ
単色 赤単
白単
青単
緑単
シミックカラー 《運命のきずな》
ランプ
エレメンタル
ミッドレンジ エスパーヒーロー
ボロス/ナヤ/マルドゥ 《贖いし者、フェザー》
バントランプ
スケープシフト
ジャンド恐竜
コントロール エスパー
ジェスカイ
アゾリウス
グリクシス
(ある種の)コンボ 「探検」パッケージと《戦慄衆の指揮》
(ああ、まだリーガルだし実戦級だ!)
イゼットフェニックス

そして、マスターであるスタニスラフ・ツィフカ/Stanislav Cifkaによる新星、《隠された手、ケシス》コンボがここに加わった!

どのように新たなメタゲームへ取り組むべき?

不屈の護衛漆黒軍の騎士狂信的扇動者

熟達したプレイヤーはみな同じことを言うだろう。「何を予想すべきか分からないときは、攻める側にまわって対処を迫るようなデッキを選ぶべきだ。攻めるのは簡単だが、未知のメタゲームで相手に対応するのは難しいのだから」と……。

では、現在のように移り変わっていくメタゲームではどうだろう?ああ、まずはどのデッキがTier1かを知り、その中から1つを選ぶか、それらのデッキに少なくとも互角に戦えるようなデッキを組み上げよう。みんなが張り切って回しているような、流行りのデッキがあるかどうかを知っておき、それに勝てるようにするのも非常に大事だ。

敬虔な命令霊気の疾風害悪な掌握
丸焼き夏の帳

『基本セット2020』で様々なカードがもたらされたから、今なら特定のデッキを倒すのも容易になったね。このセットの個人的なベストカードは、わずか緑1マナしかかからない令和の《謎めいた命令》だ。

Emeraldディビジョン、リーグ戦レポート

初日となった月曜日は非常にいいスタートを切ることができた。読者諸君はこのスプリットでの結果をもうご存知かもしれないが、それぞれのマッチについて少しずつ言及しておこう。

1戦目:マーティン・ジュザ(赤単)

実験の狂乱

初戦の相手はジュザの赤単、相性のいいマッチアップの一つだ。《実験の狂乱》がジェスカイに勝てる唯一のカードで、 敗北を喫したゲームはまさにそのカードに負けてしまった。

いい勝負が見たいなら、このマッチの2ゲーム目がお勧めだ。俺は《実験の狂乱》を止められなかったものの、ジュザのデッキが残り9枚になるまで生き延びたんだ。赤単がこの量のプレインズウォーカー、そしてライフゲインに対処するのがどれほど難しいか想像できることだろう。

2戦目:セス・マンフィールド(エスパーコントロール)

2戦目はセス・マンフィールドと相まみえた。こちらは手札破壊呪文も打ち消し呪文もないため厳しいマッチアップだと分かってはいたものの、これもまたマジックだし、俺は最善を尽くそうとした。だが、運は彼に味方した。もちろん彼にとって相性の良いマッチアップではあったし、そもそも彼は優れたプレイヤーだ。加えて引きもよかったとなると……俺は木端微塵にされてしまったってわけだ。

3戦目:エリック・フローリッヒ(エスパーヒーロー)

ボーラスの城塞

3戦目はエリック・フローリッヒだったが、非常に簡単な試合だった。危ういカードは《ボーラスの城塞》のみで、彼は2ゲームとも引き込むことができなかった。

4戦目:アレクサンダー・ヘイン(エスパーヒーロー)

アレクサンダー・ヘインとの4戦目、《ボーラスの城塞》2枚に《古呪》1枚が採用されていたものの、非常に有利なマッチアップなため難なく勝利することができた。

5戦目:八十岡 翔太(エスパーコントロール)

5戦目はコントロールマスター、八十岡 翔太との試合だ。1ゲーム目に1枚挿しの《古呪》を引かれ、2ゲーム目は完封されてしまった。悲しきかなこの0-2というスコア、そしてジュザに負けた1ゲームによってタイブレイク争いで最下位となり、トップ4の足切りをくらってしまったんだ。本当に悲しかったけれど、結局は公平だから仕方がないね。

6戦目:ジェシカ・エステファン(エスパーヒーロー)

覆いを割く者、ナーセット

6戦目もなかなか手痛い試合だった。ジェシカ・エステファンのエスパーヒーロー(《覆いを割く者、ナーセット》なし)とのマッチだったのだが、MTGアリーナは俺も《覆いを割く者、ナーセット》を採用していないと勘違いしたのだろうか?2ゲーム目は《覆いを割く者、ナーセット》を引かなかったために敗北しかけ、3ゲーム目もデッキの上20枚に《覆いを割く者、ナーセット》が見つかることはなく敗北してしまった。

こちらが有利なマッチアップと感じていたため、非常に堪えたね。だが、この後に最高のマッチアップと戦える最後のチャンスが残っていた。

7戦目:パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ(赤単)

最終戦はパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ、そして再びの赤単が相手だ。非常に楽なゲームだったね。2ゲーム目は白マナを引き込めず敗れてしまったが、最終的には勝利することができた。

最終戦績

最終戦績は4-3。タイブレイカーでトップ4に残れなかったのは悲しいものの、デッキ選択、プレイには満足しているよ。

おわりに

さて、ここまで読んでくれてありがとう!忘れないでほしいのだが、このゲームで、そして人生で学ぶための最善策は新しいことを試し、失敗することだ。俺は自分で試す時間がないときのみ、デッキリスト、サイドボーディングガイドに従うことを勧めている。各マッチアップでのカードの評価を学び、理解することはできるからね。

ただ、ネットでデッキを探したとしても、それは異なったメタゲームで成功を収めたものだ。仮に当時の最強デッキであったとしても、1週間も経ってしまえば以前の輝きは失われてしまうだろう。

ルイス・サルヴァット (Twitter / Twitch)

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Luis Salvatto 長きにわたってプロツアーでの成功を夢見ていたルイスは、2016年に開催されたプロツアー『イニストラードを覆う影』で悲願のトップ8入賞を成し遂げた。その後さらなる研鑽を積み、プロツアー『イクサランの相克』ではアルゼンチン出身のプレイヤーとして初となるプロツアー王者に輝く。この優勝によりプレイヤーオブザイヤーへの足掛かりを得たルイスは、熾烈なタイトル争いの末にセス・マンフィールドを下し年間最優秀賞のタイトルをも獲得。史上最高の南米選手の1人として認知されるほどの成長を遂げ、2019年にはマジック・プロ・リーグに選出された。 Luis Salvattoの記事はこちら