Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/10/30)
薄れゆくバントカラーの強み
みなさんおはよう。先生はミシックチャンピオンシップ・ロングビーチ2019(MC V)が開催されたロサンゼルスから戻ってきたところだ。結果は芳しくなく、24名しか2日目に進出できないなかで、タイブレイカーによって25位になってしまった。マジックをしていればこういうこともあるから、不満を漏らすつもりはない。私が今回お伝えしたいのはもっと大切なことだ。本大会に持ち込んだデッキ、バントランプが実に良い選択だったのだ。
スタニスラフ・ツィフカ/Stan Cifkaは、マーティン・ジュザ/Martin Juza、オンドレイ・ストラスキー/Ondrej Strasky、オリヴァー・ティウ/Oliver Tiuらを含む我々のチームとともに調整し、同じコンセプトのデッキでトップ8に入賞した。私たちが使用したのは、《王冠泥棒、オーコ》と《金のガチョウ》を使った、みなさんご存知のパワフルなフードデッキだ。しかし、ただのフードデッキではない。さらにひとつ上の次元に押し上げ、他のフードデッキの動きを上回るデッキとしてデザインしたのだ。
《むかしむかし》4枚に加え、《成長のらせん》や《樹上の草食獣》といったマナ加速呪文を増やすことで、2ターン目に《王冠泥棒、オーコ》や3ターン目に《世界を揺るがす者、ニッサ》をプレイできる確率を最大限まで高めている。これらはスタンダードで最もパワフルな動きだ。必ずしも実現するわけではないが、プランBもある。《裏切りの工作員》が《世界を揺るがす者、ニッサ》を奪うのだ!
これが私が本番で使用したデッキリストだ。
バントランプというデッキの背後にある考え方は優れているため、禁止後の環境でもこの考え方を適応させれば良い。《死者の原野》がスタンダードから消えたことで、白の魅力は低下した。
《拘留代理人》はゾンビトークンの群れに対する最善の解答であったが、《意地悪な狼》と対峙することは悪夢のような体験であった。しかし今や、ミシックチャンピオンシップ予選のトップ16には青緑系が12つも入賞している状況であるため、《拘留代理人》をメインデッキに入れる理由はない(ミシックチャンピオンシップ予選で2日目に進出した全デッキリストはここからご覧いただける:その1 / その2)。
『エルドレインの王権』発売前は《時を解す者、テフェリー》が超一流のカードであったが、《王冠泥棒、オーコ》と比べるとどうしても見劣りする。同じマナコストのプレインズウォーカーが能力を一度起動して忠誠度が6になるのに、同じ条件で忠誠度1になるプレインズウォーカーを使う理由があるだろうか。
白の要素で唯一名残惜しいのは《狼の友、トルシミール》であるが、《森》と《島》に支配された現環境では、アグロデッキは本当に厳しい立場にある。そう考えると、《狼の友、トルシミール》さえ必要ではないように思えるのだ。
今使うべきデッキとは?
ここまでの話でバントランプから白要素を抜きたいということに同意していただけたかと思う。しかし問題はここからだ。今後は何を使うべきなのだろうか?主に2つの選択肢があるように思う。
選択肢 その1
ひとつ目の選択肢は黒を足すことだ。フードデッキに対してベストな除去である《害悪な掌握》、《王冠泥棒、オーコ》への完璧な解答である《ゴルガリの女王、ヴラスカ》、強力な追加のフィニッシャーである《呪われた狩人、ガラク》を使える。この選択肢は非常に優れていて、なおかつ安全な方法である。実際、この手法を採用しているプレイヤーは多くいるし、その判断がミスだとも思わない。
選択肢 その2
しかしもっと優れた方法があると私は思っている。フードミラーは2つのシナリオが考えられる。まずは、先手のプレイヤーが2ターン目に《王冠泥棒、オーコ》あるいは3ターン目に《世界を揺るがす者、ニッサ》をプレイし、その勢いをそのままに押し切ってしまうパターン。もうひとつは、巨大な《ハイドロイド混成体》や複数のプレインズウォーカーが並ぶような、純粋にリソースを削り合う長期戦だ。しかし実はどちらのシナリオにも対応できる方法が存在している。わかる人はいるだろうか?
そう、バントランプの背景にあったマナ加速という考え方だ。マナ加速呪文の枚数を増やし、なおかつそれらを見つける手段を用意すれば、勢いで短期決戦を狙うパターンに対応できる。また、白を抜いて2色でまとめれば、バントカラーでは現実的ではなかったマナコストの呪文を唱えやすくなる。《害悪な掌握》のような1:1交換を仕掛けてくる相手を圧倒し、強力なプレインズウォーカーたちで勝利する最善の方法をご存知だろうか?
ご名答、《集団強制》だ。以前まで《裏切りの工作員》の方が優先されていたのは、《死者の原野》のような土地のコントロールを奪えるからであった。現在の脅威はクリーチャーとプレインズウォーカーであり、《集団強制》の方が優れている。
フードデッキの定番がスゥルタイである限り、《夏の帳》はサイドボードに4枚必須だろう。スゥルタイフードに対してベストなカードだ。
《不屈の巡礼者、ゴロス》が環境から消えたため、《軽蔑的な一撃》の枚数は減らせるだろう。ただ、《予言された壊滅》や《荒野の再生》、《創案の火》の存在を忘れてはならない。2ターン目の《王冠泥棒、オーコ》ほど見る機会は少ないだろうが、確かに環境に存在している呪文たちであり、《軽蔑的な一撃》は最も有効な対抗策となる。2枚が適正枚数だろう。
最後に注意しておきたいのがアグロとの戦いだ。先ほども解説したように、相性の改善に大きな力を入れる必要はない。現在のアグロは立ち位置が良くないからだ。幸い、ちょっとしたことを意識するだけで相性は大きく改善される。《意地悪な狼》はミラーマッチでマナクリーチャーを除去するだけでなく、同時にアグロへの最強の対策になるのだ。迷うことなく4枚採用だろう!昨今は赤系のデッキと対戦する機会が少ないため、サイドボードに関しては確固たる自信が持てない。少なくとも調整のスタート地点として、《狼の友、トルシミール》の代わりに《大食のハイドラ》を入れるのは良いアイディアだろう。正直に言えば、《大食のハイドラ》が必要かすら確信できていないのだが、赤系のデッキに対して《集団強制》や《成長のらせん》をサイドアウトする場合に備えてサイドインするカードは数枚用意しておくべきである。
おすすめのデッキリスト
現時点でおすすめするデッキリストをご覧いただこう。今すぐミシックチャンピオンシップ・リッチモンド2019(MC VI)のデッキ登録をするとすれば、間違いなくこれを提出するだろう。実際にはまだ練習時間が存分にあるため、もっと良いものが見つかる可能性はある。もしそうなったら、次回の講義で解説するから楽しみにしていて欲しい!
終礼
今回の講義はここまで。ではまた次回。