メタゲームブレイクダウン
アジア地域では北九州で開催となるプレイヤーズツアー2020#2。その参加権利をかけたWPNプレイヤーズツアー予選が、本日、ここ晴れる屋トーナメントセンターで開催されている。本格的なスタンダードシーズンが到来する中で、参加者118名はどのようなデッキを選択したのか。メタゲームブレイクダウンを見ていこう。
アーキタイプ | 使用者数 | 使用率 |
---|---|---|
アゾリウスコントロール(エスパー4人含む) | 27 | 22.88% |
ジャンドサクリファイス | 12 | 10.17% |
バントランプ | 11 | 9.32% |
シミックフラッシュ | 9 | 7.63% |
赤単アグロ | 8 | 6.78% |
シミックランプ | 7 | 5.93% |
ティムール再生 | 7 | 5.93% |
ティムールアドベンチャー | 6 | 5.08% |
ラクドスサクリファイス | 5 | 4.24% |
グルールアグロ | 5 | 4.24% |
その他 | 21 | 17.8% |
大パーマネント時代
アゾリウスコントロール
最大勢力となったアゾリウスコントロールは、実に参加者の5人に1人が選択している。アグロデッキが隆盛しがちな環境初期において、『テーロス還魂記』より加入した《夢さらい》はかみ合ったカードだろう。アグロマッチではダメージレースをひっくり返し、コントロールマッチでは《空の粉砕》などのリセットスペル以外では対処できない、完全無欠のフィニッシャーである。
わきを固める《メレティス誕生》、《海の神のお告げ》、《エルズペス、死に打ち勝つ》の存在も大きい。3種のエンチャントは序盤の防御、デッキの安定性をもたらしただけではなく、プレインズウォーカーへの対処手段も得たことになる。
これによって従来のコントロール後にフィニッシャーを展開するパーミッションスタイルから大きく姿を変え、カウンターの枚数を減らして《覆いを割く者、ナーセット》まで搭載し、パーマネントによる防御と早期の《夢さらい》着地を目指すタップアウト型へと移行している。
ジャンドサクリファイス
2番手につけたのは前環境から活躍しているジャンドサクリファイスだ。使い慣れたデッキであると同時に、前述のアゾリウスコントロールの増加を見越しての選択者もいることだろう。新カード《苦悶の悔恨》は《金のガチョウ》スタートを切れなかった場合に2マナを埋めてくれるだけではなく、アゾリウスコントロールへ対しても《吸収》を潜り抜けることができる。
クリーチャーベースのデッキでありながら戦闘以外でも多数のダメージソースをもつため、アゾリウスコントロールの防御網を突破することができる。カードアドバンテージ獲得手段も豊富に持ち合わせ、その中心である《魔女のかまど》と《パンくずの道標》は《エルズペス、死に打ち勝つ》で対処されないもの見逃せられないだろう。
また、メインボードから無理なく《打ち壊すブロントドン》を採用できるのも嬉しく、《荒野の再生》や《創案の火》と対処したいカードも多いことから、サイドボードと合わせて4枚採用するプレイヤーも見られた。
バントランプ
続くのはこれまでのランプへ1色足した、バントランプとなった。ベースとなっているシミックカラーでは《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が加わり、マナ加速とライフゲイン手段を同時に手に入れている。《茨の騎兵》とのシナジーも見逃せず、ランプを一つ上のアーキタイプへと進化させたことは間違いない。
今回は3色構成のバントランプが多数をしめたが、一口に“バント”といっても、採用されている白いカードは《時を解す者、テフェリー》を除けば多岐にわたる。プレインズウォーカーに留めてタッチ程度もあれば、ユーティリティを求めて《払拭の光》や《拘留代理人》を採用したもの、《エルズペス、死に打ち勝つ》や《栄光の終焉》といったカードパワーを選択するものも見られた。
環境からカウンターを採用枚数が減ったことで、マナ加速により一手早く脅威を連打できるランプ系が増加しつつあるようだ。
巨星落つ…?
もう一点見逃せない点は、ジェスカイファイアーズの減少だろう。上位10個のアーキタイプに残らなかっただけではなく、使用者はわずか3人となっていた。クリーチャーベースのデッキに対しては無類の強さを誇り、環境的にカウンターも減少と追い風が吹いているように感じられたが、なぜだろうか。
準コンボコントロールであるジェスカイファイアーズにとって、キーカードである《創案の火》の着地は勝敗に直結するといっても過言ではない。これまでは《時を解す者、テフェリー》の先置きや《神秘の論争》を駆使しての着地を目指していたが、現在は着地を巡る攻防から着地後への対処へと変化しつつある。
本来ジェスカイファイアーズは《創案の火》着地後、1~3ターンに渡り脅威を連打することで、相手の対処手段を上回り攻め切るデッキだ。1ターンに2枚しか呪文を使えない特性上、押し切るには最低でも2ターンを要することになる。メタゲームブレイクダウンの上位3デッキはいずれもキーカードの着地を許さない、若しくは場に出た後に対処できる《エルズペス、死に打ち勝つ》、《打ち壊すブロントドン》をメインから採用している。つまりは押し切るために必要な2ターン目が来るよりもはやく、《創案の火》を対処できることになる。
《創案の火》がなければ《帰還した王、ケンリス》や《炎の騎兵》は真価を発揮できず、押し切れずに相手の土俵へと引きずり込まれてしまう。苦難の時代となりそうだ。
『テーロス還魂記』により大きく変化したスタンダードだが、これはまだはじまりに過ぎない。メタゲームの変化とともにデッキは栄枯盛衰を繰り返し、新デッキが生まれ、既存デッキも構成が変化していく。それこそアゾリウスコントロールがパーミッションからタップアウトへと姿を変えつつあるように、だ。環境の変化にこれからも着目していこう。