王者の帰還、世界選手権2019へ
ハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguezはスペインを代表するプレイヤー。グランプリトップ8入賞回数は2桁にのぼり、内2回の優勝経験を有する。グランプリでは一定の成果を残しつつも、プロツアーではあと一歩が遠いことが続いた。特にプロツアー『戦乱のゼンディカー』、プロツアー『破滅の刻』は2度9位に終わっている。
変化の兆しがあったのはマジック:ザ・ギャザリング世界選手権2017だ。この大会でにおいてウィリアム ジェンセン/William Jensenに敗れたものの、準優勝で終えたことで風向きが変わってくる。その後のプロツアー『イクサランの相克』にて悲願のトップ8入賞を果たすと、マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2018では優勝!
2019年のミシックチャンピオンシップでは3度のトップ8入賞を経験し、その内2019ミシックチャンピオンシップⅤ(MTGアリーナ)では輝かしい優勝トロフィーを手にしている。ミシックチャンピオンシップ優勝、そして「世界王者」と、今最も勢いがあるプレイヤーに違いない。
現世界王者として、マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2019へ参戦する。
《栄光の探求者》
――別インタビューより「トップクラスの選手になるにはまだまだ勉強が足りないことを自覚したのが大きかった。いつかの記事で『優れたプレイヤーと世界有数のプレイヤーの違いは大きい』と書かれていたけど、それが本当なのか全くわからない時期もあった」とありますが、今まさにその世界有数のプレイヤーになったのでは?もしそうなら、次に求めるもの、目指す目標を教えてください。
「大会で優勝できるくらいの選手にはなれたと思う。けれどもマジック界の頂点にたつプレイヤーに比べたら、私のプレイはまだまだだろう。それは彼らとともに練習したり、大会でのリプレイを見れば実感することだ」
――私たちからすれば、あなたは世界有数のプレイヤーであると思いますが。
「決して謙遜して述べているわけではない。むしろ私自身が学ぶべきことがたくさんあり、まだまだ伸びしろを感じている。プレイヤーとして非常に喜ばしいことだね。私の目標はより最高の自分を目指しながら、その道程を一歩一歩楽しむことだと思っている」
マジック好きのハビエルさ
――ミシックチャンピオンシップ、世界選手権とビッグタイトルを次々獲得していますが、それによって生活環境などいい意味で変化はありましたか?
「実はあまり変化はないんだ。ミシックチャンピオンシップで優勝しようとも、世界王者となろうとも、私は変わらずに私のままだ。マジック好きのハビエルさ」
今回の注目選手
――世界選手権はあなたも含めて世界トップレベルのプレイヤーが揃っています。ご自身を除いて、勝ち上がってくると考えている注目選手がいたら教えてください。
「これは非常に難しい質問だね。なんたって今回の参加者はみんな勝つ可能性をしっかりと持っている。そうだな」
「注目すべきは、マジック界の頂点に君臨するようなプレイヤーだろう。つまりマルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalho、セス・マンフィールド/Seth Manfield、そしてパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaかな」
《血まなこの練習生》
――練習量が異常だという話を耳にしますが、意図的に集中できる環境を作り出しているのですか?(たとえば携帯の電源を切っておくとか、テレビは置かないとか)
「これは場合によるんだ。私には2つの練習方法がある。まずはカードがどのような動きをするか、または相手がどの様なリアクションをするかを見たいときは、特に気にせずひたすらゴリゴリと色々回すよ」
「一方で、もしこのフォーマットを熟知する必要があったり、何かの特定なマッチアップを研究するときは練習の邪魔になるものをすべて排除するね。深く潜り込む必要があるなら、全神経を傾けてマジックに集中しなければならないからね」
王者の姿
Some days playing cards can be really rough, but I’m glad it’s over now. Thanks everyone for the support and gl @KbolMagic !!!! #MTGworlds
— Javier Domínguez "Thalai" (@JavierDmagic) February 15, 2020
時にマジックをプレイすることが辛くなる瞬間もあるけど、もう終わって嬉しいよ。みんな応援ありがとう!そしてマルシオおめでとう!
信じられない幕切れだった。未だに2日目にハビエル・ドミンゲスの名前がないのは、何かの間違いではないかと思っている。
ディフェンディングチャンピオンとして挑んだ今大会、コメンテーターも口にしていたとおり、ハビエルには相当のプレッシャーがかかっていたことだろう。成し遂げたことの大小は関係なしに、人々は安易に同じ結果を求めてしまう。プレイヤーの苦悩を知らずに、切り取られた栄光だけを、さも当然と認識してしまうためだ。
しかし、初日落ちの憂き目にあおうとも、ハビエルはハビエルであった。親友であるマルシオが決勝戦へと進み、パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサと対決する。プレッシャーがかかった対戦の合間に、マルシオの精神的支えとなっていたのは、他ならぬハビエルであった。
「大会での結果だけが努力の対価とは考えたくない」これは繰り返し、ハビエルの口から語られる言葉だ。ハビエルは自身の大会が終わると、まだできる最善を見つけ、つまりマルシオへ手を差し伸べたのだ。
世界王者は一つの称号であり、素晴らしい結果には違いないが、プレイヤー自身を厳格に定義するわけではない。それでもこの立ち振る舞いを見てしまうと、ハビエル・ドミンゲスを王者と思わずにはいられないだろう。
今回こそ残念な結果に終わってしまったが、次の大会では王者としての姿をみることになるだろう。