Translated by Kohei Kido
(掲載日 2020/03/18)
はじめに
みなさんこんにちは!
今回の主題であるパイオニアですが、私はプレイヤーズツアー・名古屋から白単信心を使っています(チームから3名が上位入賞をはたしました)。これからパイオニアでもっとも過小評価されているこのデッキに関する情報をみなさんに共有しましょう。一見するとあまり強そうに見えませんが、現在のパイオニアでは非常に強力なデッキだと信じています。
白単信心は、《不可解な終焉》や《停滞の罠》のようなエンチャント除去でボードコントロールしつつ《太陽冠のヘリオッド》の「信心」をかせぎ、《歩行バリスタ》による無限ダメージコンボも狙うミッドレンジ型のコンボデッキです。
今でも覚えていますが、パイオニアチャレンジで八十岡 翔太が使用しているのを見たのがこのデッキとの出会いでした。それからデッキを試すと、最初の6リーグを27勝3敗の成績で終えました。ほかと比べてもデッキパワーが高く、多くの試合では接戦ですらなかったため、このデッキにとても感銘を受けました。アグロ型や《集合した中隊》型など、ほかの構成も試しましたが、ミッドレンジ型が圧倒的に上だと感じています。
先日の禁止制限告知において、パイオニアで禁止カードが出なかったのは個人的に妥当だと思っています。ただもちろん、ディミーアインバーターはとても強いデッキであるのは間違いないでしょう。インバーターデッキの中から禁止が出れば、メインデッキに《試練に臨むギデオン》のような専用カードを採用する必要はないでしょう。
ですが、インバーターデッキの中から何かしら禁止が出るとするなら、クリーチャー戦略を否定する白単信心からも禁止を出さないとフォーマットとしてバランスが取れないとも思います。クリーチャー中心のデッキはどれも白単信心にとって有利な相手であり、互角か不利だと感じたのはインバーター、ロータスコンボとアゾリウスコントロールのみです。
デッキリスト
これが地元の予備予選イベント2つで無敗だったデッキリストです。
3 《のどかな農場》
2 《アーデンベイル城》
3 《ニクスの祭殿、ニクソス》
-土地 (26)- 4 《歩行バリスタ》
4 《スレイベンの検査官》
3 《白蘭の騎士》
2 《族樹の精霊、アナフェンザ》
2 《太陽に祝福されしダクソス》
1 《高名な弁護士、トミク》
4 《太陽冠のヘリオッド》
4 《秘儀術師のフクロウ》
-クリーチャー (24)-
2 《不可解な終焉》
2 《安らかなる眠り》
2 《停滞の罠》
2 《減衰球》
2 《黒き剣のギデオン》
1 《高名な弁護士、トミク》
1 《神討ち》
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
-サイドボード (15)-
白単信心が強い理由
このデッキを強力にしている理由のひとつはコンボスピードであり、最速4ターン目に決まるため、相性が最悪の相手と当たってもチャンスがあります。《太陽冠のヘリオッド》はライフレースを否定するカードであり、あらゆるクリーチャー戦略に対して強力なカードです。
採用されている除去はどれも相手を減速させながら《太陽冠のヘリオッド》が顕現するための「信心」をかせぎ、いずれは神が高速のクロックへと転じます。 パイオニアにある多くのデッキは白単信心ほど優秀な勝利手段を持っておらず、咎めることができるのは干渉しにくい別角度からのコンボを有するディミーアインバーターとロータスブリーチだけです。
《ニクスの祭殿、ニクソス》も試合を一方的にするカードで、《歩行バリスタ》のために大量のマナを生みだしたり、パーマネントの大量展開を可能とするため盤面で数的優位を築くことができます。
カードの選択
《不可解な終焉》と《停滞の罠》
1ゲーム目から《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を「脱出」させない解答を用意しつつ、マナコストの軽い除去も欲しかったため、《不可解な終焉》と《停滞の罠》に分散しました。多くの場合は信心を2つかせぎ、インスタントタイミングで《太陽冠のヘリオッド》を顕現させられる《停滞の罠》の方が優れた除去です。
《領事の旗艦、スカイソブリン》
スピリットと対峙したとき、1ゲーム目はダイスの勝敗がそのまま対戦に色濃く影響する、一種のコイントスのようなものだと感じていました。そのためスピリットに効果的で、且つほかのデッキ相手にも役割を持てるカードを探す必要があったのです。《エルズペス、死に打ち勝つ》はメタゲーム的に魅力を失ってきていたため、《領事の旗艦、スカイソブリン》と入れ替えることに迷いはありませんでした。
この機体はどんなクリーチャーデッキ相手にも繰り返し使える除去であり、特に緑単信心がメタ上で増している現在においては、《太陽冠のヘリオッド》が絆魂を付与することで、相手がライフレースでリードするのは困難を極めます。《秘儀術師のフクロウ》は《領事の旗艦、スカイソブリン》を探してくるだけではなく「搭乗」できるため、相性が良いカードです。
《高名な弁護士、トミク》
最悪の相手であるロータスコンボに対しての切り札です。対戦相手が《睡蓮の原野》を《見えざる糸》や《砂時計の侍臣》、《演劇の舞台》で対象にとるのを防ぐことができ、こちらのコンボが成立するまでの時間稼ぎをしてくれます。《高名な弁護士、トミク》はそれなりのサイズがある飛行クリーチャーなので、黒単アグロとスピリットに対してはブロッカーとしても機能します。
《アーデンベイル城》2枚と《のどかな農場》3枚
プレイヤーズツアーでは《アーデンベイル城》3枚と《のどかな農場》2枚で参加しましたが、追加の《のどかな農場》があるとコンボ完成の確率が高まるとわかりました。また、《アーデンベイル城》でクロックをじりじりと刻むことを要求してくるデッキは、今の環境にあまりいません。このデッキは《ニクスの祭殿、ニクソス》を3枚も入れるほどマナを必要としていて、土地を置けないリスクは割に合わないためぜひ26枚入れてください。
サイドボードガイド
ディミーアインバーター
このデッキとの対戦は結構練習しましたが、1ゲーム目はやや不利でサイドボード後は有利となります。相手にコンボに特化した手札を引かれるとひたすらビートダウンするしかありませんが、基本的にはプレインズウォーカーがいない限り速度で負けてしまいます。また、相手のコンボに介入できるのは《試練に臨むギデオン》しかいません。
サイドボード後は6ターン目に《真実を覆すもの》と《タッサの神託者》を同時に揃える以外の勝利手段をなくしつつ、《時を越えた探索》を止める《安らかなる眠り》があります。《試練に臨むギデオン》の紋章があれば、相手はギデオン・プレインズウォーカーをすべて排除しない限り勝てないため、各種ギデオンをサイドインしましょう。デッキに残す除去の枚数は相手がサイドボードに《ゲトの裏切り者、カリタス》や《群れネズミ》のような追加のクリーチャーがあるかどうかによって調整します。
対 ディミーアインバーター
ミラーマッチ
1ゲーム目の勝敗はどちらが先にコンボを成立させるかにかかっています。サイドボード後は《太陽冠のヘリオッド》を除去する手段をお互い増やすので、試合はよりゆっくり進むようになるでしょう。たいていは、より強力なフィニッシャーを持っているほうが勝ちます。
対 ミラーマッチ
ロータスブリーチ
最悪の対戦相手。1ゲーム目はほとんど干渉できず相手の方がコンボとして優秀だからです。4ターン目にこちらがコンボを決められることを祈るしかありません。サイドボード後は対策カード(《安らかなる眠り》、《減衰球》と《高名な弁護士、トミク》)が1枚もない手札をキープすることが一番大きな負け筋となるため、マリガンするようにしてください。
対 ロータスブリーチ
バントスピリット
1ゲーム目は互角で、多くの場合は相手が殴り切る前にコンボを決められるかにかかっています。コンボパーツが手札に揃っていれば《呪文捕らえ》を回避するために、2ターン目に《歩行バリスタ》をX=1で唱えることが多いです。《領事の旗艦、スカイソブリン》は《呪文捕らえ》の対象にならず、継続的に相手のスピリットを除去できるため、とても強力なカードです。
サイドボート後は大量の除去に加え、ブロッカーとしていい仕事をする《高名な弁護士、トミク》もサイドインするため、こちらがかなり有利です。相手が《呪文捕らえ》を持っていると思ったらテンポを稼がれないように、同一ターンに呪文を2枚唱えられる状況まで取っておくとよいでしょう。
あまりほかの人が勧めているのを見ないですが、多くの場合サイドボード後は《太陽冠のヘリオッド》を2枚サイドアウトします。2枚以上を引いてしまうと敗着の原因となりやすく、たいていはボードコントロールできるかに勝敗がかかっているからです。
対 バントスピリット
スゥルタイ昂揚
スゥルタイ昂揚との試合は十分にやれていませんが、対戦したときは有利に感じました。相手は着地した《太陽冠のヘリオッド》を除去することができないため、すべてのクリーチャーが脅威へと変貌します。相手が対処に追われている間に引いた《歩行バリスタ》で勝利することができます。
相手のクリーチャーは全てマナコストが3以下であるため、《不可解な終焉》は非常に有効なカードです。《停滞の罠》と違い《突然の衰微》で破壊されても追放したクリーチャーが戻ってこないため、《ヴリンの神童、ジェイス》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》、《不屈の追跡者》を永久追放するにはうってつけのカードといえますね。サイドボード後は《安らかなる眠り》が一度着地すると、相手の「昂揚」も《ヴリンの神童、ジェイス》も《自然の怒りのタイタン、ウーロ》も止まります。
対 スゥルタイ昂揚
黒単アグロ
白単信心がもっとも対戦したい相手はクリーチャー軸のデッキであり、これらのデッキに対しては基本的にコントロールとして立ち回ります。クリーチャーと除去を使って序盤から試合を制御することを目指します。終盤になると絶対に相手は《太陽冠のヘリオッド》に勝てません。ただ、《ゲトの裏切り者、カリタス》は放置すると負け筋になるので、除去をとっておくことだけは忘れないでください。
対 黒単アグロ
赤単アグロ
1ゲーム目は除去を引かないと殴り倒される可能性がありますが、サイドボード後は8枚の除去を使うことができます。除去の増加によって《太陽冠のヘリオッド》は顕現しやすくなり、相手が《損魂魔道士》を駆使しない限り対処されません。《暴れ回るフェロキドン》はかなり厄介なので可能なら除去を残しておいてください。
対 赤単アグロ
イゼットエンソウル
非常に有利なマッチアップで、多くの場合は《アーティファクトの魂込め》か《技量ある活性師》の対象先へ、丁寧に除去を使うだけです。《試練に臨むギデオン》も相手の最も大きいクリーチャーを足止めするのに一役買います。《太陽に祝福されしダクソス》は相手に除去が最小限しかなく、「信心」がすぐかせげる1ゲーム目は非常にいいブロッカーです。《爆片破》の炸裂で負ける可能性があるため、ライフが5以下にならないようにだけ気をつけてください。
対 イゼットエンソウル
コツと小技
おわりに
これで私の記事は終わりです!この記事があなたの白単信心への理解を深めてくれることを祈っています。パイオニアのどんなデッキを相手にしても立ち回れる、非常に器用なデッキだと考えています。白単信心について質問があれば、喜んでTwitterでお答えしますよ。
最後まで読んでくれてありがとう!
ケルヴィン・チュウ (Twitter)