Translated by Nobukazu Kato & Kohei Kido
(掲載日 2020/6/16)
はじめに
やぁ、みんな!こんにちは!
キャントリップの使い方。これはマジックの歴史を通して何度も書かれてきた話題だ。だけど、僕らが愛するゲームは変化し続けている。
今日はキャントリップの使い方や、これらを使うに当たって知っておくべき時代の変化について解説していこう。この記事ではレガシーで人気のキャントリップを話題の中心にしていくけど、キャントリップを使うどのフォーマットにも使える考え方だ。
キャントリップの種類
《渦まく知識》
最強とは断言できなくとも、《渦まく知識》はレガシー全体で見ても最強クラスのカードだ。同時にマジック全体を通してもっとも扱いが難しい1枚でもある。《渦まく知識》とライブラリーのシャッフル効果の組み合わせは、不要牌を新鮮なカードに入れかえるという意味で実質的なカードアドバンテージを発生させる手段といえる。だけど、必ずしもこれだけが《渦まく知識》の使い方ではないし、このパワフルなインスタントの最善な使い方とも限らない。
基本的な話をすると、《渦まく知識》の価値が高まるのは不要な2枚(たいていは土地2枚)をライブラリーに混ぜ、カードアドバンテージを生んだときだ。しかし《渦まく知識》が強いタイミングはほかにもある。
まともに勝負できないような手札であっても、《渦まく知識》はその窮地から救ってくれるんだ。わかりやすい例をあげると、土地が1枚しかない手札でも、追加で3枚ドローすればマナスクリューを回避できる。ほかのキャントリップも土地を探す役割を担えるけど、不要なカードを必要なカードに変える力はない。だからこそ、複数のキャントリップが手札にある場合、《渦まく知識》はのちのちの展開のために取っておくわけだね。
《渦まく知識》の価値が高い場面はまだある。コンボパーツや《終末》といったカードなど、積極的にライブラリーに戻したいカードがあるデッキを使うときだ。《渦まく知識》が単なるキャントリップを超えてシナジーを有するカードであるデッキにおいては、できるだけ手札に温存しておくことが求められる。
《思案》/《定業》
特定のカードを探しているときに1番ライブラリーを深く掘り進められるキャントリップは《思案》だ。シャッフル効果を使用すれば、4枚まで確認できるからね。こういった理由から、土地が少ない状況で最初に使うのは往々にして《思案》になる。このキャントリップは《渦まく知識》と相性のよいシャッフル効果の呪文としても使える。個人的な意見だけど、《思案》に関連する判断で特に難しいと思うのは、それを唱えるのか《意志の力》のピッチコストに充てるのかの判断だね。
《渦まく知識》《思案》《定業》の使い方は、《意志の力》を自分しか使っていないのか、あるいはお互いに使っているのかに影響されることが多い(特に1ゲーム目)。《意志の力》は致命的な脅威への解答になることもあれば、不要牌になることもあるためだ。各ゲームでそのどちらなのかを判断することで、キャントリップの使い道を判断しやすくなる。
青でないシナジー重視のキャントリップ
レガシーで採用されているキャントリップのほとんどが青である一方で、モダンにおける多くのデッキでは《ミシュラのガラクタ》などが採用される傾向にある。これらのキャントリップを使い分けるうえでの基本は、それぞれの効果的な使い方を覚えておくことだ。
《信仰無き物あさり》であれば墓地で効果を発揮するカードを2枚捨てることだろうし、《ミシュラのガラクタ》ならフェッチランドと組み合わせて疑似的な占術をすることだろう。すでにマナの適切な使い道がすでに確定しているなら、多くの場合こういったキャントリップ呪文は1~2ターンの間使わず、手札に持っておいたほうがいい。
何が変わったのか?
レガシーをプレイしていると、特定のカードを引ければゲームの流れが劇的に変わり得る状況に巡り合うことがある。たとえば、コンボで勝利に向かうには何らかのパーツが欠けているが、相手はまだ妨害を多くは構えられていない状況だとしよう(デルバー相手の先手1ターン目などだね)。たいていの場合、この状況では《渦まく知識》を唱え、コンボに向かう選択肢を持てるかどうかを確認する価値がある。中盤戦まで進むとこのような転換点を見分けることは難しいけどね。
総じて、昨今のセットは”脅威”のカードパワーがかなり高まってきていて、カードパワーとカードアドバンテージの力関係が変わってきている。《王冠泥棒、オーコ》は戦場に残ればゲームを支配するだけの力があるから、対戦中は常に念頭に入れておかなきゃいけない。対処が困難であればあるほど、脅威となるカードを先出しすることは今まで以上に大切だし、ここまでカードパワーが高くなったことでカードアドバンテージよりも脅威のほうがゲーム展開に影響しやすくなっている。
キャントリップの本質的な意味は、盤面に干渉しない代わりにマナを使って手札の質を上げることだ。つまり、キャントリップを使っても盤面の展開を進めることはできないから、テンポを失うことになる。これは、キャントリップばかりの手札が必ずしも強力な手札とはいえない理由でもある。昨今の脅威は以前よりもカードパワーの高いものがほとんどで、そういった脅威をいち早く展開するほうがゲームを有利に進められる場合が以前よりも増えている。そのため、キャントリップを温存するプランが肯定されづらくなってきているといえる。
カードパワーの上昇がキャントリップの使い方に与える影響をわかりやすく捉えるには、《タルモゴイフ》と《戦慄衆の秘儀術師》を比較するといい。《タルモゴイフ》は相手のライフを減らすという意味でゲームを優位に進めてくれる。他方、《戦慄衆の秘儀術師》はカードアドバンテージを得るという意味でゲームを優位に進めてくれる。これは基本的に巻き返すのが難しい。
《戦慄衆の秘儀術師》は、こちらのライフを攻めてこない相手に対する《森の知恵》と似た働きをする。戦場に残った状態でターンが返ってくれば、そこから勝つのが極めて困難になる状況に相手を追い込めるんだ。
《王冠泥棒、オーコ》もフェアデッキに対して似たような働きをする。戦場に最初に着地する脅威が《王冠泥棒、オーコ》だった場合、それ以降のあらゆるプレインズウォーカー/クリーチャーを大幅に弱体化することができる。これは同時に、《王冠泥棒、オーコ》を打ち消すことがとても大切であることを意味しているのはいうまでもない。
こういった経緯から《意志の力》はフェアな青同士のマッチアップにおいて徐々に価値が高まってきている。かつてはフェアなマッチアップで弱く、サイドアウトされやすかったカードが、なかなか対処しづらいカードへの解答となっているんだ。
相手もしくは自分が不利な状況から巻き返せそうにないときほど、キャントリップを温存すべきではない。たとえフェアなマッチアップだったとしても《王冠泥棒、オーコ》などにとても弱い遅めの手札だった場合、マナを効率的に使ったり、のちのちの展開に役立つカードを探し求めたりするよりも、《意志の力》か自らの《王冠泥棒、オーコ》を目指してライブラリーを掘り進めたほうがいい。たとえば《思案》と《アーカムの天測儀》を唱える優先順位で迷ったときは、この知識を念頭に置いておく必要がある。
氷雪コントロールのミラーマッチを例にとってみよう。相手が返しのターンに《王冠泥棒、オーコ》を展開してくる可能性があり、こちらの手札には《意志の力》がない状況で《アーカムの天測儀》と《思案》のどちらを唱えるか選択を迫られているとする。こういうときには《思案》を唱えることを検討して欲しい。
キャントリップに関する古くからの教えに従えば、キャントリップを温存する時間が長くなるほどよりよい判断が下せる。しかし、ここで気をつけるべきは、例として挙げた場面においては欲しいものがすでにわかっている、ということだ。だからこれ以上キャントリップを温存する必要はない。これは、特定のパーマネントへの解答が少ない1ゲーム目において特に大切なことだね。
脅威が先か、キャントリップが先か
《秘密を掘り下げる者》を戦場に送り込むか、それとも《意志の力》のピッチコストととして残しておくか。この判断はデルバーデッキを使ううえで昔から難しかった部分だ。だけど、デルバーデッキを使っていると、もっと捉えがたいことに巡り合う。ときとして、《秘密を掘り下げる者》よりも《思案》をプレイしたほうがいい状況が起こるんだ。
定石から外れるかどうか判断するうえで大切なのは、どういった方向性でゲームに勝利をするのかを考えることだ。この判断は対コンボ戦で求められることが多く、そのほかのデッキに対してはそう一般的ではない。というのも、相手のライフを攻めるもの(つまりクリーチャー)は相手のプレインズウォーカーにプレッシャーをかけることもできれば、相手のクリーチャーとトレードすることもできるからだ。
だけど、コンボデッキや一切干渉してこないデッキと戦うのならば事情が変わる。即座に勝利する呪文を相手に唱えさせてしまったら、相手のライフが1だろうと20だろうと大して意味はない。そこでゲームが終わってしまうからだ。
こういった理由から、十分にプレッシャーがかかっていると一度判断したのであれば、さらなるクリーチャーを並べたところでゲームに大きな影響を与えない。カードアドバンテージという方向性で勝利を狙い、大きなプレッシャーをかける必要がないと判断した場合も同じだ。
これを特にわかりやすく示すのが《森の知恵》と《戦慄衆の秘儀術師》の関係性だけど、もっと大きな脅威である《王冠泥棒、オーコ》や《精神を刻む者、ジェイス》との関係性にも表れている。
こちらは氷雪コントロール、相手はストームを使っているとする。相手は手札破壊を何度か唱え、3ターン目を迎えたこちらの手札はこのような内容になった。
この状況では《思案》を唱えて《意志の力》か《否定の力》を探しに行くべきだ。自らを守りつつ、《精神を刻む者、ジェイス》で勝利を目指す。《精神を刻む者、ジェイス》が残った状態でターンが返ってくれば、相手のトップデッキに対応できるだけのカードアドバンテージが手に入るため、1~2ターンで勝負を決められる可能性がある。
しかし、もしもこのリソース争いで負けてしまうと《王冠泥棒、オーコ》が戦場にいたところでまったく意味がない。リソース争いに勝ったとすれば、いずれ勝てるはずだ。というわけで、《王冠泥棒、オーコ》の最善の使い道は《意志の力》や《否定の力》を引いたときのピッチコストに充てることだ。ここで《王冠泥棒、オーコ》によるプレッシャーをかけるのはミスだろうと思う。
キャントリップを唱えるか、温存するか
レガシーのフェアデッキ同士の戦いにおいては、かつてないほどテンポが重要になっている。だからこそ、各キャントリップの価値を最大限引き出せるまでずっと温存することが正しかった奇跡ミラーはとっくの昔になくなってしまったのだろう。
《氷牙のコアトル》などの採用率が高まったことで、比較的長いゲームが増えると同時に、毎ターンマナを余すことなく使えるようになっている。こういった理由から、ライブラリーを掘り進めることで相手にテンポ差をつけられる可能性がある状況ならば《渦まく知識》は温存すべきではないと最近は思うようになった。
《渦まく知識》で土地を2枚戻してアドバンテージを獲得すると、それを温存した甲斐があったと理解しやすい。だけど、もしその《渦まく知識》を早めに唱えていたら、4ターン目に《王冠泥棒、オーコ》が戦場にいる状態でターンを迎えられていたかもしれない、とは気づきづらい。
俺にとっての結論は、2020年のレガシーの呪文が持つ高いカードパワーのレベルを考えたら、迷ったら《渦まく知識》を唱えろということだ。
もちろん、温存しておくほうがいい状況はいくつもある。手札に役割が重複する呪文が多すぎるときとかね。だけど、キャントリップを以前より早いタイミングで打つべき理屈が肯定される状況は頻繁にあると思うね。
サイドボードに《覆いを割く者、ナーセット》が潜んでいることすらあるんだから!
キャントリップを「すぐ」打たない場合も存在する。そのなかでも特筆すべきは、デルバーテンポのミラーマッチだ。もし相手が《王冠泥棒、オーコ》のような極めて強力な脅威をプレイしてくることが想定されるなかで打ち消し呪文をすでに持っているなら、《目くらまし》を回避するために《思案》を唱えないことを選ぶべきだ。
テンポデッキ同士の1ゲーム目の場合、《王冠泥棒、オーコ》が着地すれば、それが勝利に直結する可能性が高い。だから、キャントリップを唱えるのを遅らせてでも着地しにくくするのはよくあるプレイだね。
おわりに
注意深く見ていけば、キャントリップを抱えておくのが正しいことも、唱えることが正しいこともあるいろいろなシナリオが見つかるだろう。マジックはとても奥深いゲームで、それがやっぱり楽しいんだ!
読んでくれてありがとう!