Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/7/14)
朝礼
みなさん、おはよう。みなさんはティムール再生やバントランプ、ラクドスサクリファイスを使ってスタンダード環境を満喫しているだろうか?え、楽しめていないって?できたばかりの新しいデッキを探している?それは好都合だ!そんなみなさんにお見せしたいものがある!
『基本セット2021』の発売により、今までにない刺激的なデッキがいくつか成立するようになった。そのひとつが黒単アグロだ。
以前にツイートで投稿したが、私は先日のメタゲームチャレンジで7-0を達成している。そのときに唯一”全勝のトロフィー”をもたらしてくれたのが黒単であり、少し構成に変更を加えて再度挑戦したところ、またもや全勝を成し遂げた。この記事を執筆している時点で14-0であり、Tier1のすべてのデッキにこの連戦中に少なくとも一度以上は勝利している。
覚えておいて欲しい、《悪魔の抱擁》は黒の《エンバレスの宝剣》だ!
デッキリスト
これが最新のデッキリストだ。
デッキの動きは思うほどわかりやすくない。まずはその動きについて解説しよう。このデッキには特に有効なプランが主に2つある。
ひとつ目は非常にシンプル。《朽ちゆくレギサウルス》を唱える、《悪魔の抱擁》をエンチャントする、勝ち。このプランが成立せず、現実的な試合を展開しなくてはならないのであれば、軽量のクリーチャーをテンポよく並べつつ、厄介なカードを除去で対処していくのが一般的なプランになる。このプランが成立するようになったからこそ、『基本セット2021』発売以降の黒単はここまで強力なデッキになっている。
黒単は極めて効率的な除去を手に入れた。サイドボーディングで除去の構成を調整すれば、望むものを対処できる体制が整っている。
このデッキでは、適切なマリガンが重要となる。序盤に動けない重たい手札は絶対にキープしないようにしよう。《朽ちゆくレギサウルス》のカードパワーのおかげで、マリガンはさほど痛手ではない(手札がなければ捨てる必要もなくなる。儲けものだ!)遅い手札をキープすれば痛い目にあうだろう。
カード選択
ここまでの解説で黒単アグロが《欠片の双子》コンボと《秘密を掘り下げる者》デッキを足して2で割ったものだとおわかりいただけただろうか。続いては、特に重要なカード選択やメタに合わせたリストの調整方法について少々説明しておこう。
クリーチャー
クリーチャー部分は完成されている。一切いじらないほうがいいだろう。《黒槍の模範》は単体で見ればたいしたクリーチャーではないが、《悪魔の抱擁》のエンチャント先としては優れているし、守る展開では3点回復付きの《神聖なる矢》になる。
1マナ域の12枚体制には確かな手ごたえを感じている。部分的にサイドアウトすることが多いとはいえ、1ゲーム目に”《秘密を掘り下げる者》デッキ”としての立ち回りを可能にしてくれる存在だ。
なかには《石とぐろの海蛇》を採用したリストもあるが、個人的には好きになれない。黒単アグロは余剰の土地を《朽ちゆくレギサウルス》や《悪魔の抱擁》のコストに充てるデッキであり、基本的に3~4枚の土地でゲームを組み立てていく。また、《水晶壊し》にアクセスできないデッキでは《石とぐろの海蛇》の強みを存分に引き出せない。1マナ域として捉えた場合には、あらゆる同マナ域の選択肢に圧倒的に劣る。《石とぐろの海蛇》は緑単のプレイヤーたちに譲ろう。彼らのほうが上手く使えるはずだ。
除去
ここは難しい部分であり、状況に合わせて変更がききやすい部分でもある。みなさんが望むような構成にできるため、ここでは各選択肢が実力を発揮できる状況に絞って解説しよう。
《取り除き》
非常に有効な相手: 黒単アグロ、赤単アグロ、バントランプ、スゥルタイランプ、ラクドスサクリファイス
有効な相手: 緑単アグロ、グルールアグロ
除去できないもの: 《夜群れの伏兵》《探索する獣》《長老ガーガロス》《朱地洞の族長、トーブラン》
《闇の掌握》
非常に有効な相手: 赤単アグロ、グルールアグロ、シミックフラッシュ、ラクドスサクリファイス
有効な相手: 黒単アグロ、緑単アグロ
除去できないもの: 《朽ちゆくレギサウルス》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《恋煩いの野獣》、大型のサメトークン/《ハイドロイド混成体》/《石とぐろの海蛇》
《害悪な掌握》
非常に有効な相手: 緑単アグロ、グルールアグロ、スゥルタイランプ、バントランプ
有効な相手: 特になし。非常に有効か、使い物にならないかのどっちかだ。メインには絶対に入れないようにしよう。
除去できないもの: 緑でも白でもないクリーチャー/プレインズウォーカー
メインに《取り除き》3枚 + 《闇の掌握》1枚、サイドに追加の選択肢を用意するという除去の構成に今のところ不満はない。相手に合わせてその構成を調整できるようになっている。
エンチャント
《悪魔の抱擁》
エンチャントは数少ないが、実に重要なパートである。《悪魔の抱擁》は黒単アグロの強さの源泉であり、メインに必ず4枚採用すべきものだ。相手が単体除去をサイドインしてくるマッチアップや、こちらが完全なコントロールモードに入るときには、数枚サイドアウトすることはある。
アーティファクト
《影槍》
驚いただろうか?私が施した最新の変更点だ。5枚目の《悪魔の抱擁》であり、アグロ戦ではこの1枚で勝てる。メインに1枚しか入れなかったのは、ひとえに伝説のパーマネントだったからだ。それを踏まえても、アグロ戦では2枚目を投入したくなるほど効果的である。
サイドボードガイド
ここまでは、黒単アグロの強さの秘密、そしてその構成について解説してきた。ここからは各マッチアップの戦い方とサイドボードガイドを示そう!
ティムール再生 (非常に有利)
対 ティムール再生
もっとも相性のよい相手のひとつ。しかし、《厚かましい借り手》は厄介な存在だ。《朽ちゆくレギサウルス》を唯一対処できるカードであり、《悪ふざけの名人、ランクル》をブロックしてくる。幸い、ティムール再生は1~2枚しか採用していないことが多い。この点を除けば、ほかに言及すべきカードは相手のデッキにほとんどない。
最高速度で攻め立て、手札破壊で除去を捨てさせ、黒の大型クリーチャーが突き進む道を切り開こう。サイド後は《闇の掌握》を2枚体制にし、《夜群れの伏兵》やタフネス4以下のサメトークンへの軽い除去を用意しておく。
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は厄介だが、バントランプなどに比べればティムール再生は「脱出」させる速度が遅い。エルダー・巨人が3点回復付きの《成長のらせん》以上の働きをする前に決着をつけられるようにしよう。
バントランプ (不利)
対 バントランプ
全体除去、ライフ回復、パワフルなクリーチャーの三拍子が揃ったデッキを倒すのは容易ではない。正直なところ《朽ちゆくレギサウルス》は対処されやすく基本的にこのマッチアップでは弱いが、調整の結果からいうと、勝ちを拾いに行くにはベストな手段であると思われる。相手の除去を手札から捨てさせ、事が上手く運ぶことを祈ろう。
サイド後の除去構成は相手のリストに大きく左右されるため、このサイドボードガイドを鵜呑みにしないように。2ゲーム目で確認したものを思い出し、先述の除去に関する解説を参考に調整しよう。
ラクドスサクリファイス (やや不利)
対 ラクドスサクリファイス
キーカードは《初子さらい》だ。サクリ台と合わせて引かれていると、ほぼゲームオーバーになる。逆にそれ以外の場合はたいてい勝てるはずだ。《初子さらい》の格好の的になってしまう《朽ちゆくレギサウルス》はデッキ内で最弱のクリーチャーになる。
本音を言うと、《波乱の悪魔》にあっさり除去されてしまう《どぶ骨》と《黒槍の模範》も悲惨なカードだが、12枚も入れ替えるカードがサイドにないため数枚は残さなくてはならない。《黒槍の模範》は《波乱の悪魔》の誘発が構えられていなければ瞬速のブロッカーとして使えるためまだマシだが、《どぶ骨》は《忘れられた神々の僧侶》のコストにしやすい1マナ域という点を除いては一切インパクトがない小型のクリーチャーでしかない。
緑単アグロ (非常に有利)
対 緑単アグロ
完全なコントロールとして立ち回り、最終的に大型クリーチャーで勝利をつかみ取ろう。黒単は緑単に比べ、除去の質がはるかに高く、《ロークスワイン城》によるカードアドバンテージもある。
《グレートヘンジ》の存在は常に意識しておき、着地させないようにしよう。ときには自分のターンで除去を唱えることも選択肢に入る。
赤単アグロ (非常に有利)
対 赤単アグロ
先ほどと同じだ。黒単コントロールとしてゲームを進め、《朽ちゆくレギサウルス》をフィニッシャーとする。良質な除去 + 大型クリーチャー +《影槍》の組み合わせは赤単にとって悪夢でしかないだろう。
スゥルタイランプ (有利)
対 スゥルタイランプ
相手のデッキには《時を解す者、テフェリー》と《エルズペス、死に打ち勝つ》がないため、《朽ちゆくレギサウルス》は除去されづらくなっている。バントランプ戦と似た展開になるが、ひとつだけ例外がある。《絶滅の契機》だ。クリーチャーの点数で見たマナコストに細心の注意を払い、被害を抑えられるようにマナコストを散らしていこう。
終礼
黒単アグロについて疑問点がある生徒はTwitterまで聞きに来るように!いつでもみなさんの力になろう!
さて、黒単アグロの解説講義はお楽しみいただけただろうか。ぜひ使ってみてほしい!きっと楽しめるはずだ。今回もお付き合いいただきありがとう。
ではまた次回の講義で。