Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/08/07)
朝礼
みなさんおはよう。先日の禁止告知は予想外かつ衝撃的なものであった。大変動が起きるフォーマットも出てくることだろう。
本日の講義では、ヒストリックを取り上げる。このフォーマットにとって今回の禁止告知がどんな意味を持つのか。そして、これからどんなデッキを使っていけばいいのか。この2点について解説していこう。2本先取(BO3)と1本先取(BO1)のどちらにも対応するつもりだ。
禁止後に起きる変化
まず、《荒野の再生》と《時を解す者、テフェリー》の一時停止はどれほどの意味を持つだろうか?私が思うに、その影響は甚大だ。環境のベストデッキが消え去ったのだ。ティムール再生はデッキ名となっているエンチャントなしでは存立し得ない。
これを受けて立場をよくしたデッキがある。ひとつは、インスタントタイミングでの全体除去に弱いゴブリン。もうひとつは、ティムール再生側の多角的な攻撃(《死者の原野》のトークン、大型の《発破》、サメトークン、高速ランプ)を漏らすことなく対処することができなかった純粋なコントロールだ。ゴロス原野はティムール再生ほど環境の幅を狭めるものではなく、ゲームプランも読みやすいため、コントロールは比較的対策しやすい(それでも《死者の原野》や《絶え間ない飢餓、ウラモグ》は悪夢だろうが)。
他方、《時を解す者、テフェリー》の一時停止は、バントがスゥルタイに色変えする動機となるのではないだろうか。《風景の変容》デッキがバントという色を選択していた最大の理由は、このプレインズウォーカーにあった。彼がいなくなった今、《空の粉砕》を《衰滅》に変更すれば、マナベースとサイドボードの強化を図れる。
禁止告知に関してもうひとつ重要な点は、ケシスコンボの弱体化だ。《時を解す者、テフェリー》は”自然と対策の対策になる”カードだった。自分のゲームプランに噛み合っているうえに、コンボまでの時間を稼げるため、メインデッキに4枚入るだけの強さを持っており、同時にサイド後に《虚空の力線》や《墓掘りの檻》に直面したときの保険としての役割を果たしていたのだ。
これでケシスコンボは対策カードを対処する別のカードを用意する必要が出てきた。その代替となるものは伝説ではないだろうし、対処する過程でドローするものでもないだろうから、デッキにとって無視できない負担となるはずだ。ゴブリンが立場をよくし、ケシスコンボが対策に脆くなったとなれば、《墓掘りの檻》は今後さらに採用率が高まる1枚となるだろう。
BO3向けのデッキリスト
さて、ここまでは環境予測であったが、ここからはより実践的なアドバイスをしていこう。私のTwitterを見て気づいていた人もいるかもしれないが、アリーナ・オープンのBO1とBO3に向けて私は赤単バーンを調整し、非常に優れた成績を収めた。速さと楽しさを備えており、相性のよい相手が多いデッキだ(ただし、環境が適応し、サイドボードにライフ回復手段が増加すると相性は変わり得る。試すなら今すぐ使おう😉)。
最新のBO3用のリストはこれだ。
4 《忘れられた洞窟》
-土地 (20)- 4 《ギトゥの溶岩走り》
3 《渋面の溶岩使い》
4 《熱錬金術師》
4 《ヴィーアシーノの紅蓮術師》
2 《砕骨の巨人》
-クリーチャー (17)-
2 《猛火の斉射》
2 《レッドキャップの乱闘》
2 《実験の狂乱》
2 《墓掘りの檻》
2 《炎の職工、チャンドラ》
1 《ゴブリンの鎖回し》
1 《湧き出る源、ジェガンサ》
-サイドボード (15)-
ワンポイントアドバイス:プレイング編
ワンポイントアドバイス:サイドボーディング編
ヒストリックは群雄割拠であるため、具体的なサイドボードガイドを示すことはできない(特に禁止告知直後の現在、プレイヤーたちは新しいデッキの開発・既存のデッキの調整をしている)。メタゲームは2週間もすれば変わっているだろうし、デッキの内容にも変化が出ているだろう。古典的なサイドボードガイドを今示したところで意味はないはずだ。
その代わり、マクロのアーキタイプに対してのサイドボーディング、それとサイドカードの採用理由について解説しよう。この知識を駆使すれば、未来に何が起ころうと対応できるはずだ。
《猛火の斉射》《ゴブリンの鎖回し》
この2枚は主にゴブリン対策だ。気をつけて欲しいのだが、この2枚は役割が違う!《猛火の斉射》はタフネス1のクリーチャーが多いあらゆるデッキに対して有効で、《ゴブリンの鎖回し》は3ターン目にタフネス1のクリーチャーが並ぶ相手にだけ有効だ。例を挙げると、どちらもゴブリンには有効だが、オーラデッキに対して《ゴブリンの鎖回し》はサイドインせず、《猛火の斉射》は2枚とも進んで投入する。
《レッドキャップの乱闘》
これは簡単だ。赤のクリーチャーと対峙する全マッチアップで使用する。現在想定している相手はゴブリン、ラクドスサクリファイス、ミラーマッチ、グルールアグロだ。
《無頼な扇動者、ティボルト》
前環境では《ウーロ》デッキに効果的なカードだった。今後は主にスゥルタイプレインズウォーカー対策となっていくだろう。そのほかの相手でもライフ回復カードをサイドインしてくると思う場合は投入しよう。偶然にもソウルシスターズに刺さるカードだ。
《実験の狂乱》《炎の職工、チャンドラ》
コントロールとして立ち回りたいマッチアップで使う2枚。使い道は2つある。
早期決着をつける必要があり、かつこちらのカードアドバンテージを意に介さない相手にはサイドインしない。たとえば、ケシスコンボや《死の国からの脱出》コンボが該当する。
《墓掘りの檻》
墓地利用するデッキに対して入れる。《実験の狂乱》との相性が悪いことは覚えておこう。この2枚を戦場に揃えてしまうと、身動きが取れなくなってしまう。両者をデッキに共存させるマッチアップは、どちらも単体で勝ち得るラクドスサクリファイス戦だけである(どうか戦場で”コンボ”を成立させないように)。そのほかのマッチアップでは、より有効なほうを1枚だけ選択しよう。
何をサイドアウトすべき?
対 小型クリーチャーデッキ
基本的に《心火》と《殺戮の火》がサイドアウト対象だ(例外は《贖いし者、フェザー》デッキ)。2マナ + クリーチャー1体、あるいは3マナは1~2マナのクリーチャーと交換しては分が悪い。アグロと戦うのならば、除去はできるだけマナコストを軽くしよう。
対 《ゴブリンの鎖回し》デッキ (ゴブリン、赤単)
《ヴィーアシーノの紅蓮術師》と《渋面の溶岩使い》を部分的にサイドアウトする。
対 コントロール
まずは《ショック》、続いてマナコストの重い火力呪文を数枚、《渋面の溶岩使い》を1~2枚抜く。
原則論だが、《批判家刺殺》と《魔術師の稲妻》のどちらをサイドアウトするかで迷ったら、クリーチャーをすべて残すときはソーサリーを優先して抜き、ウィザードクリーチャーの枚数が9枚を下回るときは《魔術師の稲妻》を優先して抜く。
後手なら土地をサイドアウトしてもいいときがある(主に4マナの呪文をサイドインしない相手に対してだ)。土地を減らすときは《忘れられた洞窟》から抜いていこう。《山》の枚数は変えてはならない。
ここまでの解説でもわからないことがあったらTwitterで尋ねてほしい。みなさんの力になろう。
BO1向けのデッキリスト
高速のゲーム展開が好きなら、BO1を検討してみてはどうだろう。私の1ゲームにかかった最短記録は58秒だ(投了されたのではなく、4ターンで勝った)。MTGアリーナで効率よくランクアップするにはBO1がうってつけだ。
BO1のメタゲームはややアグロ寄りになっている。そのため、こちらのリストではメインデッキに《ゴブリンの鎖回し》を入れ、《実験の狂乱》も1:1交換のあとに勝負を決定づけることを期待して採用している。
マナベースにも違いがある。BO1には初手補正があり、マナフラッドする機会が減るため、《忘れられた洞窟》はそこまで必要ではない。マナカーブ通りに手札を消費していくことのほうが断然重要だ。こういったことを踏まえれば、土地は19枚が適正だろうと思う。BO3のリストよりもマナカーブがやや高くなっていてもだ。
1 《忘れられた洞窟》
-土地 (19)- 4 《ギトゥの溶岩走り》
2 《渋面の溶岩使い》
4 《熱錬金術師》
4 《ヴィーアシーノの紅蓮術師》
4 《ゴブリンの鎖回し》
2 《砕骨の巨人》
-クリーチャー (20)-
終礼
赤単バーンはおすすめのデッキだ。強さも楽しさもあるデッキであり、こうしてみなさんにシェアできたことを嬉しく思う。何か疑問点がある生徒、理解が進まなかった生徒、何らかの手助けが必要な生徒はTwitterまで聞きにくるように!
それではまた次回の講義で。